思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『熊と踊れ』アンデシュ・ルースルンド/ステファン・トゥンベリ

2019-12-18 12:35:24 | 日記
『ミレニアム』以来盛り上がっている(らしい)北欧ミステリで
<このミス 2017>海外編第1位となった『熊と踊れ』読了しました。
文庫で上下巻。ぼちぼちの厚さ。

実際にスウェーデンで起きた連続強盗事件をモチーフにした小説です。

作者はそういう作風(?)の人で、
服役経験があったり、犯罪のごく近くにいた人とタッグを組み、
現実に起きている事件や社会問題を取材して咀嚼して小説化します。

『熊と踊れ』は、崩壊した家庭で育った三兄弟
レオ・フェリックス・ヴィンセントと、友人ヤスペルの4人が
チームとなって銀行強盗をするお話し。

強盗としての14カ月間の合間に
暴力的な父親に育てられたこども時代のエピソードが挿入されます。

“北欧ミステリ”と言われることもありますが、
まあ、プロットはいたってシンプル。
三兄弟それぞれが持つ「親」「家族」への複雑な思いと、兄弟の絆、
レオのいびつな家長意識
(弟たちを幸せにしなくちゃ=銀行強盗で大金稼がなくちゃ、
という式がなんの疑問もなく成立するとか)、
上巻を半分くらい読めば、もう、流れは読めますよね。

残りはもう「レオ兄、やめなよ、やめようよ」と言う気分で
ハラハラ読むしかない。
ってわかってても、ガーッと読めました。
わかってるからこそ、ガーッと読んだとも言える。

兄弟と対決する立ち位置の警部さんは創作らしいのですが、
兄弟の年齢(若さ)とか強盗作戦の内容とかは、
結構、現実に則しているようです。

何しろ、共著者のステファン・トゥンベリこそが兄弟のひとりなのです。
え?なにそれ?
そういう共著者ってあり?

と、だいぶビックリしましたが、
実際にはレオ・ステファン・フェリックス・ヴィンセントの
四兄弟で、ステファンは強盗には参加していないものの
彼らと一緒に育ち、彼らの起こした事件も近くで認知していたのだとか。
家族内の暴力やエピソードも実際に彼が体験したことが
多く盛り込まれていると言われると、読む姿勢も変わってきます。


繰り返しになりますが、アンデシュ・ルースルンドという作家は
現実世界の「犯罪」とその周辺(環境)を取材して描く人です。

だからこそリアルで、切実で、心を打つ部分もあれば、
目を背けたいことや答えの無いモヤッとする部分もあります。
正直、純然たるエンタメミステリもしくは「小説」としては
私はあまり評価しないなあって感想です。
まあでも、それだけじゃないってのが、この作品の肝だとも思います。
そこをどう評価するのかは、難しいですよね。

私は読書の時間くらいモヤモヤせずに楽しみたいんですけどね。
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【読書メモ】2012年4月 ② マーロウかっこいい

2019-12-17 13:32:36 | 【読書メモ】2012年
<読書メモ 2012年4月 ② マーロウかっこいい>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『さよなら、愛しい人』レイモンド・チャンドラー 村上春樹 (訳)

『さらば愛しき人よ』(清水訳)は原文を結構省略しているらしい。
確かに、村上版を読んでいると、ちょっとしつこいなあと思う文章がある。
でもやっぱり読みやすかった!おもしろかった!
『ロング・グッドバイ』も読まなくちゃ。

(『さらば愛しき人よ』は映画字幕界の大家・清水俊二氏の訳ですね。
 1956年に早川書房から出版されました。

 チャンドラーの文章に関しては、比喩がスペシャルうまいのと、
 もってまわった描写(特にマーロウの複雑な心理描写、ひねくれ者だから!)
 の多さが、よく言われますが。

 清水氏は、時と場合によってはガツっと意訳するタイプだそうです。
 センテンス単位で略すこともあるとか。
 一方で村上氏は、原文を尊重しながら、いかに読みやすい日本語にするかを
 意識した訳し方なのかな、と。
 
 あなたはどっち派?みたいな流れが多いようですが、
 どっちか聞かれたら村上派と答えちゃうであろう私ですが、
 どっちも楽しめば良いんじゃないかなあと思います。
 せっかくの読書なんだし。
 せっかくのマーロウなんだし!
 マーロウ、かっこいいよ。マーロウ

 ちなみにAmazonの『さよなら、愛しい人』のレビューで
 原文と、清水訳、村上訳、を数カ所抜き出してくれている人がいます。
 3つを並べて読み比べるとなかなかおもしろいです。

 ちなみにちなみに、70歳を超えたごく普通のご隠居さんが
 原文、清水訳、村上訳を読み比べまくって出版した本
もあるそうです。
 なにそれおもしろそう)
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【読書メモ】2012年4月 ① 浅見光彦を読んでみた

2019-12-16 12:24:52 | 【読書メモ】2012年
<読書メモ 2012年4月 ①>
浅見光彦といえば、2時間サスペンス!
名家の次男坊で限りなくフリーターに近いフリーライター!
永遠の33歳、独身貴族!
うらやましいぞ!!!

で、そんな羨望の的・浅見光彦氏の大層なお宅は
所在地が東京都北区西ヶ原といいます。

当時、私も西ヶ原に住んでいまして。
ちなみに浅見家(の設定住所)は駒込駅ではなく、
上中里というマイナー駅に近いです。
そこらへんや王子駅近辺をうろついていると、
ドラマのロケ現場に遭遇したものでした。

(上中里駅近くの平塚神社と、隣接する和菓子屋さんは
ロケ地のレギュラー枠と言って良いほど頻出します)

で、せっかくご近所に住んでいるのだから、と思って
浅見光彦シリーズを読んでみた次第。
といっても二冊読んだら気が済んでしまった。
以下、読書メモ。


『後鳥羽伝説殺人事件』内田康夫
浅見光彦の登場篇。
ちょっと…妹の死に対して好奇心が勝りすぎではないか。。。


『歌枕殺人事件』内田康夫
浅見光彦シリーズ。あまり駒込近辺が出てこなくて残念。
かるーく読めて2時間ドラマぽい小説。
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町田康『告白』

2019-12-13 16:03:41 | 日記
朝日新聞がお好きな町田康『告白』。
ちょっと前に読了してたんでした。

町田康をちゃんと読んだのは初めてだと思う。
学生時代に『夫婦茶碗』か『くっすん大黒』を
読んだような気がしないでもないですが、
要するにそういうのを読むのがカッコいいと思って
泥酔しながらページめくる自分に酔う年頃だったわけで
厳密な意味で読んだとは言えないノーカン読書です。

感想としては、
結構おもしろい文章書く人なんだな!です。
知らなかった〜。
(学生時代はほぼ泥酔してたからね!)

とはいえ、ちょっとページ数が多すぎないか。
地の文に「あほたれ」とか突っ込みいれながら
飄々と話しが転がるのは楽しいけど、
とはいえ、やっぱり、ページ数が多すぎないか。

題材は河内音頭でも歌われている河内十人斬り事件。
登場人物の関係性や性格はフィクションぽいけど、
なぜか名前だけは史実ベースです。

まあ、おもしろかった。ページ数多すぎたけど。
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【読書メモ】2012年3月 ②

2019-12-13 15:17:52 | 【読書メモ】2012年
<読書メモ 2012年3月 ②>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『寝台特急殺人事件』西村京太郎
これが有名な電車ものの元祖かあーと思って読んだ。
ちょっと設定(特に動機)に無理があるような。

(『寝台特急殺人事件』の読みは『ブルートレインさつじんじけん』。
 舞台はブルートレイン「はやぶさ」です。
 って、「はやぶさ」は新幹線の名前じゃなかったんですね。
 知らなかった…。

 刊行は1978年。
 1970年代は寝台特急ブームとスーパーカーブームだったそうで。
 当時はJRも国鉄です。東京から熊本まで、一泊二日の旅。
 時代を感じるけど、旅情も感じるなあ…。
 寝台列車に乗って食堂車でお酒飲んでみたいなあ…。

 作者はこの作品で<トラベル・ミステリー>ブームを巻き起こしたので
 長らく“鉄道モノ”の発注ばかりでうんざりだったそうです。
 そんなに量産できなそうですよね)


『スープ・オペラ』阿川佐和子
この人と岸本佐知子を間違えていた。なぜだ。
内容はさらっと読めて、少しずつベッドで読むのに良かった。

(なぜ混同していたんでしょうね。
 佐知子と佐和子が似てるからかな…。
 森福都と森絵都の方が似てるけどね…。

 と言うか、当時の私がどのように混乱していたのか、
 今となっては謎ですね(すぐ忘れる)。
 同一人物だと思ってたのかな?
 図書館だと全然ちがう棚に並んでるけどね…。

 あ、『スープ・オペラ』はおもしろいですよ!
 古い日本民家。ちょっと不思議な共同生活。
 おいしそうな料理(スープ)と、ちょっとほっこりする人間関係。
 良いことばかりではない、大事件が起こるわけでもない、
 でもなんだか学びがあるし、心に残る。
 滋味のあるスープって感じの、良いお話です。

 川上弘美の作品や、木皿泉『昨夜のカレー、明日のパン』を思い出す読み口です)


『他諺の空似』米原万里
ちょっと、政治色が強いというか、
うーん、そういう話しが聞きたいんじゃないんだけど。。。
という気持ちが大きくなって、途中でやめてしまった。

(前回の『パンツの面目ふんどしの沽券』みたいな
 トリビアがトリビアを呼ぶライトな小話を期待していたので、
 世界情勢や政治批評が立っている本書は
 当時の私の読書気分には合わなかった模様。
 これ、米原氏の遺作なんですね…。
 あとで読み直しておこうかな)
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