思惟石

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『密林の語り部』ラテン文学の名作です

2022-09-06 14:57:58 | 日記
『密林の語り部』
バルガス=リョサ
西村英一郎:訳

マリオ・バルガス=リョサは南米ペルーの
ノーベル文学賞作家。(2010年)

南米アマゾンを舞台にした『緑の家』(1966)で
ラテンアメリカ文学の現代作家としての地位を確立。
同じくアマゾンがテーマの『密林の語り部』(1987)が
中期の傑作と言われています。

ペルーといえばインカ帝国があった場所ですね。
1533年、スペイン人のピサロ率いるコンキスタドールによって
滅ぼされた国。
今はマチュピチュ観光で有名。

そんなペルーの密林に暮らす部族に伝わる(?)
<語り部>にまつわるお話しです。

小説の語り手である「私」は、ほぼ、作者リョサ。
冒頭で、作者と思しき「私」が学生時代の友人を思い出すところから
物語が始まります。

その友人は、顔に大きな痣があることから
通称「マスカリータ」と呼ばれるユダヤ人のサウル。
ペルーの都市リマに住み、大学の優秀な学生である一方、
しばしば密林に旅して未開部族に強く惹かれていく
マスカリータとの思い出。
ビリヤード場で酔っ払いと喧嘩しそうになった「私」に、
マスカリータが書いた手紙がとても良かった。
良い感じの回顧小説である。

この作者が話者であろう「都会」「現代」の章と
交互に構成される奇数章が、
マチゲンガ族の<語り部>の「語り」。
断片的で、不連続な、伝承的ストーリーが、
あっちこっちいきながら語られる。
縦横無尽。

彗星カチボレリネは、元々はマチゲンガ族の男で、
怒りのあまり悪魔に変わり、空を駆け巡り続けている。
インキテ(天上)から来た月のカシリは災いを起こし、娘を攫っていく。
「それが少なくとも私の知っていることだ。」というセリフを
節目にしながら、様々な伝承が紡がれていく。

語り部の話す内容は、独特の用語もあるので凄く不思議。
(読んでいるとたまに眠くなる。)

タスリンチという名前の男が頻出するけれど、
日本の「某氏」みたいなもんだと考えるとわかりやすいかも。
マチゲンガ族の伝承では、「言葉」は「存在」より先にあったという。
そこらへんも<語り部>の存在の特殊性に繋がるのかも、と思ったり。

なかなかおもしろかった。
ガルシア・マルケスやフォークナーに通じるものがあるな。
と思ったら、マルケスとは親友だった後に喧嘩別れを
してるみたいですね。
ラテンだなあ(関係ないか)。

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