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ケイト・モートン『湖畔荘』ゴシック・ミステリ、前半もったり後半すっきり

2019-04-02 16:49:15 | 日記
ケイト・モートン 著、青木純子 訳。

ゴシック・ミステリと紹介されることが多いようですが、
要するに(?)
19世紀初頭の英国のお屋敷と庭園と
貴族階級と庶民と牧歌的風景と海とロンドンがあって、
ちょっと幻想的で懐古的な雰囲気のある、
何かと現在と過去を行き来して過ぎ去りし日を想う、
そんな感じのミステリです。

デビュー2作目の『忘れられた庭園』(2011)に続いて
『秘密』(2013)も<翻訳ミステリー大賞>を受賞したそうで、
勢いのある作家さんです。
『湖畔荘』は邦訳4作目の作品。

上下巻合わせて700ページ近くの長編です。
上巻はもったりしてます(途中で読むのやめようかと思った)が、
エンディングまで辿り着くと、スッキリします。

この方の作風はですね、常に、
イギリス庭園が舞台のひとつであり、
過去と現在を行き来するのが特長です。
あと登場人物が多めです。
そして何らかの喪失を抱えた女性がモッタリ悩んでます。
(だいたいは母性と個性の葛藤です)

はい、以上を踏まえて読むと、導入部分のもったり感というか
戸惑いが、少し解消されるのではないかと。

プロットとしてはしっかりしていて、
最後に色んな伏線を回収してスッキリしてくれるのですが、
『湖畔荘』しかり『秘密の花園』しかり、
上巻がとにかく読みにくいのです。
登場人物が多い割に、人間関係や謎部分が妙に小出しなので。

あと、この人のクセなのか主張なのかわかりませんが、
脳内で想像した風景(特にお屋敷や庭園周辺)の描写が
ものすごく細かいのです。
悪く言うとクドイ。
自分が想像した風景を、読者にも細大漏らさず共有したい
と思っているんじゃないのかな。
私は「ふてぶてしそうなアヒル」を描くのに
そんなに言葉を尽くしてくれなくても良いと思うタイプなので、
ちょっと食傷気味でした。

と、文句ばかり言いましたが、
風呂敷の畳み方はうまかったし
読後感はスッキリしています。

18世紀から19世紀にかけてのイギリスの雰囲気が
お好きな方には、前半も苦にならないのかもしれません。

ミステリとしては、<翻訳ミステリー大賞>は逃しましたが、
『湖畔荘』の方が『忘れられた庭園』より遥かに良くできています。
ゴシック・ミステリの、「ゴシック」より「ミステリ」に
重きを置く方は、まず『湖畔荘』を読むのが良いかと。

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