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『砂糖の世界史』岩波ジュニア新書は素晴らしい

2022-08-30 10:15:42 | 日記
『砂糖の世界史』川北稔

近代世界史の流れを
「世界商品」である砂糖を中心に、わかりやすく語る。
超絶良書!!

岩波ジュニア新書がすばらしいのか、
作者がすばらしいのか、その両方なのか。

コロンブスに始まる大航海時代に、
探検船が様々な「苗」を輸送していたとは、知らなかった。
各地で植民地植物園をつくったり。
確かに、植民地で何を栽培するか、というのは
各国の輸出入での大きなポイントだよな。

そんなヨーロパ人の手(船)で、
サトウキビはカナリア諸島から西インド諸島(カリブ海)へ。
じゃがいも・トマト・とうもろこし・タバコは
アメリカからヨーロッパ。
キャッサバはブラジルからアフリカ・コンゴ。
苗が世界を駆け巡っている。

そして、何よりも
「砂糖のあるところに奴隷あり」(エリック・ウィリアムズ)
という言葉が、この本の骨子でもある。

植民地をプランテーション化して生活必需品すら輸入する
「モノカルチャー」という概念も知らなかった。
不勉強である。反省&学習。

モノカルチャーの事例としては、
アメリカ南部の綿花、南アメリカのコーヒー豆、
セイロン(スリランカ)の茶葉、等。

言われてみれば、お茶の木も、どこでも栽培できる植物では
ないのでした。忘れてた。
イギリスではお茶も砂糖キビも育たないんだよね。

イギリスで紅茶が劇的に流行った際、
まだまだ庶民には手に入りにくい状況下で
「イギリス産の紅茶(お買い得だよ〜)」
という謎商品が出回ったのは、なかなかである。
令和では
「これ、仮想通過の実物なんですよ〜」
と言ってコインを売りつける詐欺があるらしいんですが、
それと似た味わい深さがあるな…。

以下、おもしろティップス

トマス・アクィナス『神学大全』で砂糖は薬と書かれているので、
17世期ヨーロッパでコーヒーやタバコ、チョコレートが
宗教的「堕落」と言われても砂糖はOK!だった。

ボイコットはアイルランドのイギリス人地主ボイコット大佐
(小作人に排斥される)のエポニム。

夏目漱石がイギリスのポリッジ(まずい)のことを
ジョンソン博士の『英語辞典』(ポリッジの項に
「イングランドでは馬が食べ、スコットランドでは人が食べる」と
書いてある)を引き合いに出して
「イギリス人がすべて馬になったらしい」と手紙に書いたとか。

細部も含めて、ぜんぶおもしろい良書!

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