思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

中島京子『かたづの!』おもしろ!

2020-01-28 13:38:07 | 日記
昔、駒込に住んでいた頃、
近所に「たたみ!」という看板を掲げた
畳屋さんがありまして。
ひらがなに「!」をつけると、そこはかとなく
ラノベとか日常系マンガっぽい雰囲気が出るよなあ…
ふしぎだなあ…なんて思っていました。

というどうでも良いことを思い出しました。
『かたづの!』です。

柴田錬三郎賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞、河合隼雄物語賞
の3冠受賞作品です。すごいな。

そのラインナップで、なんか硬めな歴史物かな?
と思うかもしれませんが、大丈夫です。
妻が椎茸だったりラフレシアナに恋したりする
安定の中島京子ワールドです。
というか、だいぶとぼけた味わいのあるファンタジー。

とはいえ史実は結構ちゃんと抑えているようです。
ただ、「つの」とか河童とか白蛇とかが
フリーダムに登場するわけで。
東北の民間伝承もよく調べているんだろうなあと感心しつつ、
どこからどこまでが創作なんだ?!って感じで
作者に良いように転がされます。超たのしい。

物語の語り部からしてとぼけているんですが、
南部の秘宝「片角(かたづの)」でもある
一本角の羚羊(かもしか)が、
八戸の女城主・清心尼さまとの思い出を語ります。

かもしかゆえに(?)語りがあちこち自由に行き来して、
河童の来歴やら(左甚五郎のカンナ屑が河童になったって説、
なにそれ初耳ですおもしろい!)、屏風のぺりかんやら、
かもしかの恋女房の思い出話しやら、
唐突に挿入してくるのが、良い感じです。

あらすじ紹介的なもので見かける(?)
“江戸時代唯一の女大名となった根城南部家二十一代当主・
祢々(後の清心尼)の波乱に満ちた生涯の物語“
というと、ちょっと違う感じがしますね。
もっと飄々とした読み物というか。
そのなかに人生の苦味とか、
人の世への批評みたいなところはあるけれど、
さすがの中島京子、って感じで、読んでいてとにかく楽しいです。

ちなみに、作中に出てくるかもしか模様の小袖
「黒地花卉群羚羊模様絞繍小袖
(くろじかきぐんれいようもようこうしゅうこそで)」
というのは作者の創作かな?
「黒地花卉群鹿模様小袖」という桃山時代の着物は
東京国立博物館の画像検索で出てきますね。

絵画(タペストリー)の「貴婦人と一角獣」も有名だけど、
ペリカンが逃げた屏風もモチーフがあるのかな?
見つからなかったな…。
そもそも日本画のモチーフでペリカンって
描かれたことありますかね?
動物大好き伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風(鳥まみれの左隻)」
にもペリカンはいない様子。

どうでも良いですが、若冲のクレイジー「鳥獣花木図屏風」
Google Cultural Instituteで超高画質で見られます。
70億画素って、画素数でかすぎてよくわからん。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 連城三紀彦『変調二人羽織』... | トップ | 澁澤龍彦『ねむり姫』高尚な... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事