思惟石

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『記憶に残っていること』 人間劇場短編集

2023-01-16 11:24:55 | 日記
『記憶に残っていること』
堀江敏幸:編

「新潮クレスト・ブックス 短篇小説ベスト・コレクション」
という副題がありますが、そのまんまです。
創刊以来の全短篇集から10篇を選んだベスト短編集。

パレスチナの話を読んだばかりだったので、
ジュンパ・ラヒリ『ピルザダさんが食事に来たころ』は
特に興味深かった。
こちらは、パキスタン。
インドを挟んで東西にパキスタンが分裂していた頃の話しです。
この短編に登場するピルザダさんは、
ダッカからアメリカに単身赴任中。
(ダッカは今ではバングラデッシュになっているが、
当時は東パキスタン)
故郷の混乱を、遠くアメリカからハラハラしながら
ニュースで見るしかないピルザダさん。
そして、その気持ちを想像しようとする
インド人の女の子の語りが、なんとも言えない。

イーユン・リー『あまりもの』も良かった。
51歳まで貧しく孤独に生きていた林おばさんが、
金持ち小学校の寮母さんになって
初めて「恋」のようなものを味わう。
私的にはそれは「愛」だと思うのだけど、
おばさんは「これが、恋する、ということなのか」と感じる。
それで良い、というか、そこが良い。

収録作品は、以下。
『マッサージ療法士』デイヴィッド・ベズモーズギズ
『もつれた糸』アンソニー・ドーア
『エルクの言葉』エリザベス・ギルバート
『献身的な愛』アダム・ヘイズリット
『ピルザダさんが食事に来たころ』ジュンパ・ラヒリ
『あまりもの』イーユン・リー
『島』アリステア・マクラウド  これは御伽噺っぽくて良かった。
『記憶の残っていること』アリス・マンロー
『息子』ベルンハルト・シュリンク
『死者とともに』ウィリアム・トレヴァー

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