思惟石

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『イトウの恋』たのしい!!!

2020-07-17 14:34:15 | 日記
中島京子の『イトウの恋』です。
確かにイトウが恋してるお話しですが、
それだけじゃない内容というか、
それを彩る人間と物語が超おもしろい。

事の始まりは、冴えない中学校の冴えない郷土史部の
冴えない先生・久保耕平が実家の屋根裏から
明治維新の頃に通訳をしていた「イトウ」の手記を発見し、
部の研究テーマにしようと思い立つところから。

なるほど、イトウは明治の人なのね!
恋するのは通訳として随行した外国人女性ね!
了解!!

と思った途端、章が変わると、
スーツにヒール姿で家路を急ぐ田中シゲル登場。
誰?
あと、性別なに?
あ、劇画の原作をお仕事にしてらっしゃるの。
で、誰?
あと性別は?

怒涛の展開を相変わらずうまい文章で飄々と描く中島京子。
置いてかないで!!!

ちなみにシゲルは30代後半の愉快な女性でした。

という現代に生きる二人(久保先生とシゲル)が登場し、
出会い、イトウの手記の章が挿入されます。

明治を生きるイトウ青年の恋(の兆し)と、
現代を生きるシゲル女史の「女」「母」への考察が
良い感じです。
ときどき、ハッとするような文章がさらっと入ります。
シゲルが養母を思い出す際にふんわりと抱く疑問とか、
掘れば深いジェンダー論になりそうなところを
良い感じにするんっと撫でていくんですよね。
ドキッとするけど、グサッとは来ない。
うまい。

そしてイトウの恋はどうなるのか。
というか、イトウの手記はどこをどうやって
久保先生の実家に渡ったのか。
ついでにシゲルと久保先生はくっつく気はあるのか。

イトウのモデルは明治の通訳・伊藤鶴吉で、
『秘境』を書いたイギリス人女性I・Bのモデルは
『日本奥地紀行』を書いたイザベラ・バードです。

『イトウの恋』の本歌取りな感じとか、
時代を超えた人間関係の対比とか、
デビュー作の『FUTON』を思い出させますね。

I・Bとの交流を通じて、
海の向こうの人や文化への理解を広げるイトウを見ていると
異文化の国に旅行に出たくなっちゃいますね。
しばらくは難しい気がしますが…。

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