思惟石

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オーウェル『動物農場』意外と読みやすい!

2020-05-07 11:06:33 | 日記
ソ連のスターリン独裁政権や全体主義の恐怖を
寓話風に風刺した、有名な作品です。
ジョージ・オーウェル『動物農場』。
「有名だけど実は読んだことない」人が多い小説ランキングで
上位に来るかもしれないやつ。

私は、川端康雄による翻訳の岩波文庫版を購入。
これね、よく見ると
『動物農場 おとぎばなし』
というタイトルなんですよ。
原題にも小さく「A FAIRY STORY」と書かれています。

タイトルの通りで、文章の体裁はおとぎ話風。
ジョーンズさんの農場の動物たちのおはなし。
というわけで、内容はめちゃくちゃ辛辣だけど、
文章は意外と読みやすいので、
手を出しかねている人がいたら、ぜひ!!

個人的には、『1984年』がちょっとソリッドで読みにくい
文章だった記憶があって(ほとんど覚えてないけど
『動物農場』も「オーウェルかあ…」と手を出しかねていたんですよね。
読みやすいし、おもしろいし、ついでに言うとすぐ読み切る量だし、
手にとって損はないと思います。
さっさと読んでおけば良かった!

とはいえ、若いころって、世界情勢とか政治思想とか
あまりピンときてなかったので(今も怪しいが)
良い歳になってから読んだのも楽しめたポイントかもしれません。

内容はですね。まあ、そういうことで。
動物たちが人間を追い出して自分たちで農場を運営するところから始まり。
共和制の楽園になったはずが、いつの間にか独裁制にシフトしていて、
でも、誰も気づけないというか抗えない流れになっていて、
という、ソ連のアレな感じがとってもわかりやすい。

このお話しを着想したきっかけというのが、
1937年のソビエト神話が盛り上がっている真っ最中、
しかも、ソビエトと友好関係にあったはずのイギリス人として
「暴かなければ」という思いからというのが、
とにかくすごいと思う。

オーウェルは『カタロニア賛歌』で書いているように、
その頃、内戦で混乱しているスペインに行って、
外からソビエトやらイギリスやらの思想的混沌や矛盾を見ています。
(そしてガッツリ巻き込まれている)

岩波文庫版の付録にある「ウクライナ語版のための序文」に詳述されていますが、
スペイン内戦に参加した際に(オーウェルが望んだわけじゃなく)所属した組織が
トロツキスト色の強いところで。
ソビエト内紛(トロツキスト排除)の余波でスペインで凄惨な目にあったとか。
色々とソビエト神話を疑う経験をしたという
オーウェルならではな視点とも言えるのかもしれないけれど。

そうそう、
岩波文庫版『動物農場』には、「付録」として
初版に序文として入れる予定だったが削除された「出版の自由」と、
ウクライナ難民に向けた「ウクライナ語版のための序文」が
収録されています。

イギリスで出版する際の逆風なども
当時の世相や言論にまつわる空気感がわかりやすい。
訳者の川端康雄による解説と合わせて読むと
とっても勉強になります。

角川文庫だと「短編集」になっていて
オーウェルの他作品も読めますが、「序文」は未収録。
ですが、訳者によるめちゃ長い解説が収録されているようです。
ハヤカワは岩波同様、『動物農場』にまつわる「付録」つき。
各社、作品の周辺情報の補足をがんばってくれているので
読み比べてみるのも楽しいかもしれない。

ところで農場の支配階級が「豚」ってのとか、ネーミングの含意とか、
風刺の利かせ方がめちゃくちゃ辛辣だよなあ。
と、笑えます。

馬のボクサーの最期は泣けます。

ラスト、豚たちに鉄槌が降らないのは、
おとぎばなしの「めでたしめでたし」じゃないじゃん!
という思いもあるけれど、
風刺物語として、人間と豚の区別が無くなるってのは良いと思う。

総じておもしろかった!

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