思惟石

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『何があってもおかしくない』 こういう小説が読みたいんだ!が具現化したような小説

2023-04-05 14:51:33 | 日記
『何があってもおかしくない』
エリザベス・ストラウト
小川高義:訳


こういう小説が読みたかったんだよ!
という思いが具現化されたような、
良い小説!!

自分のものではない人生を追体験できて、
共感も応援もできる人々の話し。
そんな彼らに対して、良いじゃないか
良く生きてるじゃないか、と肯定できる。
それって、自分が肯定されることでもある。
すごく良い小説!!

小説とはこういうものであるべきだな、と思います。

この小説は架空の町アムギャッシュに関わりのある人々の
群像劇であり、連作小説でもある。
作者のひとつ前の長編『私の名前はルーシー・バートン』の
主人公ルーシーの故郷がアムギャッシュ。
この短編集で描かれる人々は、
大なり小なりルーシーと関係がある(ほぼ無い人もいる)。

とはいえ、前作を読んでなくても全然OK。
というか私は未読でしたが、その方がこの短編集の良さ
(それぞれの短編の主人公の人間臭さや生き様の輝き)が
先入観無しに味わえたので、良かったと思います。

どれもこれも好きだけど、
冒頭の『標識』とラストの『贈りもの』が特に良かった。
主人公はどちらもおじいちゃんと言って良い年齢なのだけど、
そこに至るまでの人生と、いま、思い至っている「考え方」が
すごく胸に来る。
作者は人生を周回している人かな?というくらい
様々な生き方に対しての解像度と理解度が深いと思う。
(私は人生一周目なので、断言できませんが)

女性が主人公の『風車』と『ミシシッピ・メアリ』も良かった。
パティがラストで、生徒に対してフェアに接しよう、
だって大人なのだからという姿勢を取ったことも、
その過程も、胸が震える。
メアリが子供を育て上げ、51年かけた結婚生活の末に
夫をさらりと捨てたのは、かっこい〜!と思うけど、
良い歳して捨てられたと衝撃を受ける末娘(中年)
の気持ちもよくわかる。
良く描けてるな〜!!と感動すら覚えました。

以下、メモがわりの抜き書き。

『標識』
P11
そして彼は、これでよいのだと思った。

『風車』
P76
いつも大丈夫なんてわけがないよな。そううまくはいかない

『ミシシッピ・メアリ』
P158
51年もたってから結婚生活を捨てようとするだろうか。
そう、このメアリがしてのけた。

『妹』
P223
「ヴィッキー、おれたち、そんなに悪くなってないよな」

『贈りもの』
P313
すとんと腑に落ちていたー誰にでも、何があってもおかしくない。

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