Sightsong

自縄自縛日記

ジョン・ゾーン『Spy vs. Spy』

2016-03-21 23:57:15 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジョン・ゾーン『Spy vs. Spy - The Music of Ornette Coleman』(Elektra/Musician、1988年)を聴く。

John Zorn (as)
Tim Berne (as)
Mark Dresser (b)
Joey Baron (ds)
Michael Vatcher (ds)

たぶん20年以上前に聴いて以来である。当時はキッチュでわけのわからないものとしか思えなかった。いま聴いてみると、電気ドラムの籠った音などやめてほしいところはあるが、まあまあ愉しい。

オーネット・コールマンの音楽が冗談のようにスピーディーかつアクロバティックであり、これは、オーネットであろうとジャズであろうと、そうした過去の残滓を引きずっているものに対してゾーンが投げつけたメタ化爆弾だったわけである(たぶん)。その方法論は、「ネイキッド・シティ」の第1作における「Lonely Woman」でも同じようなもので、それがグロテスクでもあった。同作の中ジャケットには丸尾末広のイラストを使っていたりして、「ジャズ・ファン、イート・シット」などと言ってのけたゾーンの意図的な戦略だったのだろうね。

なぜ今ころ思い出したように入手したのかと言うと、ゾーンの相方アルトがティム・バーンだからで(そんなことも意識せず聴いていた)、耳がどうしても粘っこいバーンの音を追いかけてしまう。たぶんこれからもバーンを求めて聴くのである。

●ジョン・ゾーン
ジョン・ゾーン『Interzone』 ウィリアム・バロウズへのトリビュートなんて恥かしい(2010年)
ミッキー・スピレイン、ジョン・ゾーン(1987年)
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(1985年)
『Improvised Music New York 1981』(1981年)
ロイ・ローランド『Mickey Spillane / The Girl Hunters』(1963年)

●ティム・バーン
イングリッド・ラブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
イングリッド・ラブロック『ubatuba』(2014年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)
ティム・バーン『Electric and Acoustic Hard Cell Live』(2004年)


「万年筆の生活誌」展@国立歴史民俗博物館

2016-03-21 22:31:45 | もろもろ

佐倉市の国立歴史民俗博物館まで足を延ばし、「万年筆の生活誌 ― 筆記の近代 ―」展を観てきた。

「Fountain Pen」がなぜ「泉筆」でなく「万年筆」と意訳されたのか。そこには、おそらく、毛筆からの転換という意気込みがあった。やがて公的文書へのインクの使用が認められ、また、一般市民が記録するという近代ならではのことばのあり方も相まって、万年筆は日本において爆発的に広まっていく。

毛筆やつけペンよりも遥かに便利でモバイル的。しかし、単なる実用品としてだけではない。夏目漱石は依頼されて「余と万年筆」という面白いエッセイを書いているのだが、そこで「オノト」を使っていると書いたばかりに、後に続く文士たちにとって憧れのブランドとなった(だからこそ、いまだに丸善がオノトの形をした復刻版を出している)。

会場には、さまざまな文筆家たちが使った万年筆が展示されている。もはや漱石のことなど意識しなかったであろうが、文化的にはつながっているわけである。沖縄の施政権返還に関わった大濱信泉は、パーカーのシズレ。柳田國男は、プラチナのシンプルなもの。宮本常一は、パイロットのシンプルなもの。字がとても小さい。ブレヒトの翻訳で有名な岩淵達治は、モンブランのマイスターシュテュック。ただ胴軸が割れており、ガムテープをぐるぐる巻きにしている。こうして見ると、日本人には細字が合っていたのかなという気がしてくる。

近代は戦争の世紀でもあった。戦地から「内地」に出す葉書も万年筆で書かれることが多く、そうなるとやはり細字が好まれただろう。会場には、沖縄戦の犠牲者が持っていたものも展示されている。今なお、沖縄では遺骨とともに万年筆が掘り出されている(沖縄の渡口万年筆店)。

日本の三大万年筆メーカーといえば、セーラー、パイロット、プラチナである。実は、ほかにたくさんの中小の万年筆メーカーがあった。何だ、日本の二眼レフカメラと同じではないか(頭文字がAからZまで揃うと言われた)。大きなところも中小も、いま見ても実にハイセンスなものが少なくない。ほとんど眼福である。いいものを見せてもらった。

ところで、図録が非常に充実していて、我慢できずに買ってしまった。帰りの電車でぱらぱらとめくっていると、また夢中になってしまう。サブカルチャーにおける万年筆を論じたコラムまである。

●参照
万年筆のペンクリニック
万年筆のペンクリニック(2)
万年筆のペンクリニック(3)
万年筆のペンクリニック(4)
万年筆のペンクリニック(5)
万年筆のペンクリニック(6)
万年筆のペンクリニック(7)
本八幡のぷんぷく堂と昭和の万年筆
沖縄の渡口万年筆店
鉄ペン
行定勲『クローズド・ノート』
モンゴルのペンケース
万年筆のインクを使うローラーボール
ほぼ日手帳とカキモリのトモエリバー
リーガルパッド
さようならスティピュラ、ようこそ笑暮屋


エリック・レヴィス『In Memory of Things Yet Seen』

2016-03-21 09:36:35 | アヴァンギャルド・ジャズ

エリック・レヴィス『In Memory of Things Yet Seen』(clean feed、2014年)を聴く。そのうちにと思っていたら、運よく、新宿ディスクユニオンの千円棚にあった。

Eric Revis (b)
Chad Taylor (ds)
Bill McHenry (ts)
Darius Jones (as)
guest:
Branford Marsalis (ts)

エリック・レヴィスは鋼鉄の指を持つベーシスト。今年、新宿ピットインでオリン・エヴァンスとのデュオを観て、感心してしまった。剛の指と剛の体躯により、揺るがずホールドされたベースから重たい音が発せられる。本盤を貫いているムードもそれである。

ビル・マッケンリーもダリウス・ジョーンズも良い音色で吹いているし、2曲で参加しているブランフォード・マルサリスの巧みな滑らかさはさすがである。それはいいとして、参加者のオリジナルの他には、せっかくサニー・マレイやサン・ラのオリジナルも演奏しているのに、全体として同じようなダークな曲調になっていて何だか退屈なのだ。

●参照
オリン・エヴァンス+エリック・レヴィス@新宿ピットイン(2016年)
カート・ローゼンウィンケル@Village Vanguard(2015年)(エリック・レヴィス参加)
タールベイビー『Ballad of Sam Langford』(2013年)(エリック・レヴィス参加)
ビル・マッケンリー+アンドリュー・シリル@Village Vanguard(2014年)
ビル・マッケンリー『Ghosts of the Sun』(2006年)
US FREE 『Fish Stories』(2006年)(ビル・マッケンリー参加)
アダム・レーン『Absolute Horizon』(2010年)(ダリウス・ジョーンズ参加)
ダリウス・ジョーンズ『Man'ish Boy』(2009年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)(チャド・テイラー参加)
マーク・リボー『Spiritual Unity』(2004年)(チャド・テイラー参加)
Sticks and Stonesの2枚(2002, 03年)(チャド・テイラー参加)
及部恭子+クリス・スピード@Body & Soul(2015年)(ブランフォード・マルサリス飛び入り参加)
ハリー・コニック・ジュニア+ブランフォード・マルサリス『Occasion』(2005年)
デイヴィッド・サンボーンの映像『Best of NIGHT MUSIC』(1988-90年)(ブランフォード・マルサリス登場)


ウィリアム・フッカー『Shamballa』

2016-03-21 00:52:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

ウィリアム・フッカー『Shamballa』(Knitting Factory Works、1993年)を聴く。

William Hooker (ds)
Thurston Moore (g)
Elliott Sharp (g)

(ソニック・ユースの)サーストン・ムーアとのデュオ、エリオット・シャープとのデュオ。

これはもう、痺れるとしか言いようがないのである。ふたりのギタリストを比較すると、微妙な綾を提示するエリオット・シャープも悪くないのだが、何しろサーストン・ムーアのクールで知的な全ノイズには動悸動悸する。そしてウィリアム・フッカーの、寄せては返す波濤のような、重戦車のようなドラムス。

聴いていると意味なく元気が出てくる。今後はこれを聴いてテンションを高めることにしよう。

●参照
ウィリアム・フッカー『LIGHT. The Early Years 1975-1989』