鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

渡辺崋山『参海雑志』の旅-佐久島~藤川宿~吉田宿-その8

2015-06-12 05:27:37 | Weblog
崋山のスケッチには、「東山正緒南甫的流 帝網窟 沙羅樹下八十二歳老網書 慧鶴 白隠」と記されています。また和尚像が描かれていますが、これは頭注によると、華蔵寺開山の月船和尚の像であるということであり、肖像画(頂相)を見て崋山が写し取ったものと考えられます。「白隠」(白隠慧鶴)については、頭注に「江戸時代中期の禅僧、三島竜沢寺開山」と記されています。またもう一枚のスケッチには「華蔵世界 三岳」と記されています。頭注によると、これは華蔵寺中門の扁額であり、「華蔵世界」とは「蓮華蔵世界」の略であるとのこと。「三岳」とは、江戸時代中期の南画家池大雅の号であるという。崋山がこの扁額と題額をわざわざ写し取ったのは、一方に「三岳」と記され、一方に「白隠慧鶴」と記されていた(つまり扁額は池大雅が書いたもので、題額は白隠が書いたもの)からであるでしょう。白隠慧鶴(はくいんえかく・1686~1769)は臨済宗中興の祖といわれる禅僧であり、「達磨図」など禅画をよくした人物。池大雅(1723~1776)は与謝蕪村とともに文人画(南画)の大成者とされる人物。崋山はその二人とも、絵を通してよく知っていたものと思われます。 . . . 本文を読む