鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

渡辺崋山『参海雑志』の旅-佐久島~藤川宿~吉田宿-その7

2015-06-10 05:10:32 | Weblog
崋山のスケッチのように、茶臼山と華蔵寺のある岡山と、その手前にある横須賀畷が、このような位置合いで見える場所はあるかというと、直線道路をやや外れたところや華蔵寺前の道(岡山の南麓を通っている道)を歩いて確かめてみましたが、そういう場所はありませんでした。「華蔵寺」と記されているあたりの小高い山が「岡山」であり、その背後に聳え立っている山が「茶臼山」ですが、実際は「茶臼山」はこれほど大きく聳え立ってはおらず、「岡山」の背後ではなく、「岡山」のやや右側、奥の方になだらかな稜線を見せている山です。スケッチのように「岡山」と「茶臼山」は重なってはおらず、左と右に並んでいます(茶臼山は東方向やや離れたところにあり、標高は291mの山)。岡山は標高としては50m(私の目視による推測)ほどの低い山です。従ってこのスケッチは、「真景画」ではなく、茶臼山と、華蔵寺のある岡山と、その南方に広がる田んぼ、そしてその田んぼの中を走る横須賀畷を、一つにまとめて描き込んだもの、と推定することができます。実際その場所で描いたというよりも、あとで風景を思い出して描いたものであるのかも知れません。崋山のスケッチ(風景画)には、ままそういうものがあることをおさえておく必要があることを教えてくれる一枚です。 . . . 本文を読む