鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

1000回を振り返って その最終回

2011-08-03 04:57:01 | Weblog
「取材旅行」の楽しみは、「出会い」という言葉に尽きます。「出会い」の対象は多岐にわたりますが、二点に絞られます。第一は「人」との出会い。第二は「もの」との出会い。「人」は、生きている人もいれば死んでいる人もいます。取材旅行先の路上などで出会う人は、もちろん生きている人。まったく思いがけない出会いが生じて、貴重な話を伺うことが多々あります。これは取材旅行の醍醐味というもので、この人とお会いして話が聞けたことで、もう今日の取材旅行はこれで終わりにしてもいい、と思うことも。取材先で過去に生きた人(つまり死んだ人)と出会うこともある。歴史的に有名な人であったり無名の人たちもいます。案内パネルなどで、「ああ、かつてこの人がここに暮らしていたことがあるんだ」という感動から、その人物についてあらためていろいろなことを知っていくこともありました。「もの」との出会いの「もの」とは多岐にわたります。民家や商店や神社仏閣などの建造物、石仏や石塔やお墓などの石造物、年輪を重ねた古木や圧倒的な生命力を感じさせる巨木、道端に咲く可憐な花々、山や川や海、集落、それらをひっくるめた景観、案内板や案内マップ、図書館や博物館、関連書籍や論文…等々。そして取材旅行を重ねていく中で、私の心の中で次第にクローズアップされてきたのは「景観」の問題でした。日々の、人々の生活のたゆまない営みの繰り返しによってつくり上げられてきた(つまり歴史の蓄積の上に成り立っている)「景観」を、いろいろな取材旅行先で歩いて実地に眺め、その土地の過去の「景観」に思いを巡らし、また古写真や絵画などで、その土地の過去の「景観」を確かめていく中で、「景観」の歴史的変遷や、また人々にとっての「景観」の重要性というものを、認識していくことになりました。 . . . 本文を読む