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朝昼晩、時間を問わず飲んで喰って面白おかしく過ごす人生を歩みたいです。※旧名「日が沈む前に飲む酒はウマい」

ルーツは吉祥寺の名洋食店 高円寺『ニューバーグ』(後編)

2022年06月16日 | 洋食屋さん
かつて吉祥寺に、『バンビ』という洋食店があった。
同名の洋食店は、現在も新宿や茗荷谷にあるが、関係はわからない。
創業は1961(昭和36)年で、1999年に店名を『シャポールージュ』に変更。
2017年に閉店するまで、看板には「旧バンビ」の文字が残っていたようだ。
こちらが、最近撮影したシャポールージュ跡地。バッテンマークは以前のままの様子。


私は残念ながら、お店の存在を知らず、入店したことはなかった。
2000年頃に発行された、中央線沿線ガイド的な書籍を、最近読み返してみたところ、
まったく記憶になかった、シャポールージュの記事が掲載されていて驚く。
紹介文の一部を転記すると、「情報誌常連の店」
「休日の吉祥寺デートをここからスタートという人にもいい感じ」
「昭和通りにある懐かしい洋館の雰囲気を感じさせる一軒家の洋食屋」
だって。
どうも、記事の記憶がなかった、というか興味を惹かなかった理由は、この紹介文が原因かもしれない(苦笑)。
特に3番目は、読点がなくて読みづらく、食べロガーと同レベルの駄文だよ。

文章も稚拙だが、「情報誌常連」で、「デートに最適」な、「洋館の洋食屋」と聞いたら、
吉祥寺にありがちな、高くて気取ったおしゃれメシ屋かと思い、行く気は失せる。
縁のないお店だったが、詳細を知りたくなりネットで検索。不本意ながら、食べログの投稿にも目を通した。
いろんな方のバンビ&シャポールージュ評を読んでみたら、称賛の意見が大半。
洋館風の店舗は三階建てで、落ち着いた雰囲気の中、高級メニューだった洋食を、お手頃価格で提供。
「おいしい御馳走」と「ぜいたくな気分」の双方を味わえる、ちょっと特別な社交場だったようだ。

主な人気メニューは、オムライス、シチュウ、デザートのババロア、そしてハンバーグ
食べログで見た限り、老舗洋食店にしては安く、ファミレスと同等か、ちょっと高い程度。
ランチメニューの最初に記載されている、「デミグラスハンバーグステーキ」は993円と、千円札でお釣りがくる。

ここまで、吉祥寺のバンビ&シャポールージュについて、私が知る限りの情報をつづってきたが、
今回のテーマは、タイトルでもおわかりのように、高円寺の『ニューバーグ』である。
吉祥寺で愛されて56年。お値段以上の価値がある、洋食メニューで人気を博したバンビ&シャポールージュと、
高円寺で愛されて今年で53年目。早い、安い、そこそこウマいハンバーグで、カルトな(?)人気を誇るニューバーグ。
お店の方向性は明らかに異なるし、かつてのバンビで青春時代を過ごしたファンの中には、
「そんな安っぽい店と一緒に扱わないでほしいザマす」などと不満を抱く方もいるはず。
だが実はこちらの2店、かつては同グループだったらしい。言い換えると、
ニューバーグはバンビの支店だったようなのだ!
↑久々に最大フォントを使用したが、個人的にはそれくらい衝撃の事実だったので。

上記の情報を知ったのは、古いマッチ箱などを紹介するブログの記事。
無断転記はマズいので掲載はしないが、「マッチ箱 バンビ ニューバーグ」で検索すれば、該当ブログがヒットするはず。
開店から間もない頃のバンビが、人気商品のハンバーグだけを提供する支店を出すことになった。
メニュー数を絞り、接客なども簡略化した分、値段を安く抑え、誰でも気軽に利用できるハンバーグ専門店を、
吉祥寺、そして高円寺に出店したのが、ニューバーグの始まりだそうだ。
吉祥寺店の開業年は不明だが、高円寺店は前編で記したように、バンビ開店から8年後の1969年オープン。
当時、「マルシンハンバーグ」は魚肉などを含んでおり、「イシイのハンバーグ」販売は翌1970年で、原材料も鶏肉。
牛肉と豚肉を使用したハンバーグは、庶民には手が出なかった時代に、ニューバーグは誕生したのだ。
お店には連日、大勢の客が詰め掛けたが、中でも熱心に通っていたのが、とある3人組親子。
のちにバンビから権利を買い取り、ニューバーグ高円寺店を経営することになる父の平井氏と、現店主の息子兄弟である。

さっき触れたブログで紹介された、ニューバーグのマッチ箱の脇には、支店名と連絡先が載っており、
当初は吉祥寺店、高・中通り店、高・東通り店、高・申庚通り店と、と4店舗が存在していたことがわかる。
「高・」は高円寺の略で、中通り店は現存するお店で、東通り店は、私が初めて利用したあづま通りにあった店舗、
申庚通り店は、庚申通りの誤りと思われ、数年前まで餃子の『赤天』のそばに『MASH』という系列店があったのだが、
同じ庚申通りの別の場所にも、かつてニューバーグがあったことを、平井兄弟の弟・仁さんに教えてもらった。
仁さんとは、他にもいろいろ会話させていただいたのだが、まずは、そのとき食べたメニューを紹介。
注文したのは、ハンバーグが2枚の「ダブル」750円に、+30円で片方のソースをデミグラスからメキシカンに変更。
完成したダブル+片方メキシカンソースのセットがこちら。当然、ライス、味噌汁、目玉焼き付き。


ダブルハンバーグだけアップ。オレンジ色の方が、ピリ辛風味の自家製メキシカンソース。


ラード、タバスコ、トマト、コーンなどを5時間じっくり煮込んだソースだ。追加料金30円は安すぎる!
パン粉を付けて、あらかじめ揚げ焼きしておくハンバーグは、バンビの味とは異なると思うが、
このメキシカン&デミグラスの両ソースは、バンビから受け継いだ調理法を守っているとのこと。
伝統のソース2種を残さぬよう、ハンバーグだけでなく、炒めスパゲティとも絡めて、味わい尽くした。

食後、珍しく客足が途絶えたので、先述したように、店主兄弟の仁さんと会話させていただいた。
マッチ箱に記載された以外にも1軒あり、最盛期は高円寺だけでニューバーグが4店舗あったこと、
今年4月に値上げしたけど、食材などの値上げ幅が大きく、ほとんど儲けが出ないこと、
それでも、来てくれるお客さんのために、安価を守るべく奮闘していることなどを語ってくれた。
以前と変わらず安くて美味しいです、と告げたところ、仁さんはちょっとさみしそうに、
「高円寺もずいぶん変わったからね。昔はもっと、個人店がいっぱいあったんだけど…」とつぶやいた。
私の地元立川駅周辺よりはマシだろうが、確かに高円寺も、チェーン店が少しずつ増えてきている。
お店がある中通りも、店舗の顔ぶれがだいぶ変わり、昔から残っているのは、ニューバーグを含め数店しかないはず。
コロナ禍など、個人店ならではの苦労を乗り越え、味と安価を守り続けてきた、平井さん一家に感謝したい。

最後に、一番聞きたかった「ここって、元々はバンビというお店がやってたんですよね?」と質問。
仁さんの返答は、「…ウチの父親が、先代から引き継いだんです…」であった。
前回も記したが、最近、ニューバーグを称えるネット記事をいくつか見かけたのだが、
いずれの記事も、創業者については「先代」「前の経営者」「初代オーナー」などと表記し、バンビの名前を出さない。
【吉祥寺の人気洋食店の流れを汲む】というエピソードは、お店のイメージアップに繋がるはずなのに、
店主も雑誌記事も触れようとしないのはなぜだろう。バンビの関係者に口止めでもされているのか?
さっき紹介した、シャポールージュのデミハンバーグランチは、スープ、ライス(orパン)、目玉焼きに温野菜で、
ニューバーグの基本メニュー「Aセット」は、デミハンバーグ、味噌汁、ライス、目玉焼きにミックスベジタブル。
ほぼ同内容だし、両者はやはり、関係があるとしか思えないのだが。

最後に、つい最近食べてきた、「黒カレー」サラダ付き660円を紹介。
カレーライスは近年加わったメニューで、発案者は店主兄弟の兄・誠一さんの奥様らしい。
黒カレーの食券と一緒に、「ハンバーグを追加してください」と告げながら、現金170円を渡すと、
受け取った店員さんが、「追加ハンバーグ」と記された食券を置いていく。


ちなみに、トッピングなどの追加メニューはこちら。前回の店頭画像と同様、お店のHPから拝借。


上記以外にも、「目玉焼き」50円、「チキンカツ」80円、「キリン瓶ビール(小瓶)」350円などもある。
まずはサラダ(左端)、そして黒カレー+追加ハンバーグがやってきた。


別アングルからもう1枚。こんもり盛られたご飯と黒カレーの間に、ハンバーグが隠れている。


普段はナイフとフォークだけだが、カレーにはさすがに、スプーンも提供される。


八坂の『宝来屋』で出てきたスプーンによく似ている。実は、あまり使いやすくないのだが(笑)。


カレーの味は、野菜由来の甘味と、香味野菜由来と思われる苦みのバランスがいい、欧風タイプであった。
目玉焼きの黄身を溶かしたり、ハンバーグと絡めたりして、例のスプーンでガツガツと食べ切った。
そういえばこの日は、あらかじめ仕込んで厨房内に重ねてある、ハンバーグの撮影に成功。


1日に200枚くらい仕込むらしいが、いかんせん安価なので、これだけ売ってもあまり利益は出ないんだろうな。

以上、前後編にわたり、高円寺の名店ニューバーグについて語ってみた。
一部、失礼な表現もあったかもしれないが、愛するあまりの発言ゆえ、どうか許してほしい。
繰り返しになるが、【ニューバーグ、起源はバンビ】説が、世に出回っていないのが不思議。
どちらも知名度抜群の飲食店なのに…ひょっとしたら、私は表沙汰にしてはいけないタブーに触れたのかも。
今後もし、このブログの更新が途絶えたら、私が何者かに消されたと思ってほしい(笑)。



ニューバーグ NEW-BURG
東京都杉並区高円寺北3-1-14
JR高円寺駅から徒歩約90秒 ※信号次第
営業時間 11時~22時
定休日 年末年始
※バンビとニューバーグの関係について詳しい方、情報をお待ちしております
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13 コメント

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Unknown (hobohobo)
2022-06-22 08:02:23
吉祥寺の「ニューバーグ」は中道通りのいまの「一圓本店」のあたりにあり、「バンビ」はその一本北の大正通りにありました。
当初、この2店は系列という認識が、確かにあったように思います。情報源は記憶にありませんが、昔は口コミが発達していて、どこからともなく聞こえてくるものでしたよね。

女子と入るのが「バンビ」で、ヤローどうしまたは単独で入るのが「ニューバーグ」と使い分けていたと思いますが、いつしか「バンビ」の女子ウケが進み、男子学生には近寄り難い存在になっていきました。
もしかしたら高級志向の路線変更もあって、そのころ「バンビ」では高円寺工場のハンバーグを使わなくなったかもしれません(あくまでも推測です)。

そうやって両者の印象の隔たりが大きくなり、あるときふと思ったのは、「昔バンビとニューバーグは系列だと思っていたけど、勘違いだったかも…」
そこでストップしたままだったので、ときどき思い出してはもやもやしてたんです。

このたびのリポートで長年の疑問が解消し、霧が晴れました。
ありがとうございます。
返信する
Unknown (日が沈む~(略))
2022-06-22 13:27:10
hobohobo様、
コメントありがとうございます。
何度かメッセージを送っていただいたようで、すみませんでした。
私も先ほど、「コメント利用規約に同意する」にチェックせず送ったら、
どうやら空送信となった模様で、コメントが届きませんでした。
不親切なシステムですね(苦笑)。

さて、「ニューバーグ×バンビ」の件ですが、
当時の吉祥寺をご存知の方からの情報、誠に感謝しております。
あの頃から「バンビ系列では?」という噂はあったのですね。
その割には、ネットの紹介記事や、ニューバーグ現店主が触れないのが謎です。
何らかの事情で、口止めされてるんですかね。
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バンビ経営 (abby)
2022-08-26 15:33:49
ずっとニューバーグはバンビ経営だと思っていました。今回、こちらの記事や他の記事を読んで、あるときに平井さんという人がニューバーグを買い取ったというのを知りました(前経営者がバンビだとはっきり書いていないものもありました。「タブー」というようなことをお書きですが、ひょっとすると何か自主規制で書かなかったという場合もあるのかもしれません)。

まずは高円寺中通り(現在はセントラルロードのようです)店やそこから少し阿佐ヶ谷方面にあった店を知り(1970年代後半)、後に吉祥寺に引っ越したときに中道通りにあったニューバーグを知りました。そのときにニューバーグはバンビ経営だと誰かに聞いたのだと思います(1980年代前半のことなので、実はすでに平井さんが経営していたのだと思います)。吉祥寺店は、高円寺中通り店に比べて、なにかおしゃれな感じがして落ち着かなかった(笑)記憶があります。

余談ですが、その頃、吉祥寺店の近くに餃子の王将があり、そこが私が初めて入った餃子の王将でした。時は流れ、今は吉祥寺に餃子の王将はないようですね。
返信する
バンビ経営 追伸 (abby)
2022-08-26 15:44:19
ネットで検索すると、バンビとニューバーグとの関係に触れたものがわずかながら出てきます(パッと見、3件)。わざわざ触れる必要がないから触れないのか、何か事情があるのかはわかりません。
↓ は検索してすぐに出てくるものの中で、最も年代が古い(といっても2017年ですが)です。
ちなみにこのインスタグラムにあるように、バンビはシャポー・ルージュに名前を変え、2017年5月頃閉店してしまいましたね。ちなみに私はバンビもシャポー・ルージュも行ったことことがありません(バンビ時代に行こうとして満員なのでやめた記憶があるような、ないような)。

https://www.instagram.com/p/BURHkbhB0V5/
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Unknown (日が沈む~(略))
2022-08-27 01:56:24
abby様
コメントありがとうございます。
約40年前の記憶をお聞かせいただき、参考になります。
なお、平井氏は高円寺のニューバーグを引き継いだので、
ニューバーグ吉祥寺店は、平井氏とは無関係かもしれません。
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私の記憶 (Tommy)
2022-12-11 14:59:29
興味深い記事でしたので投稿させて頂きます。
西荻窪と吉祥寺の間に住んでいたのでバンビは小学生の頃(50年前)くらいから何度も親に連れて行ってもらった記憶がはっきりと残っています。よく食べたのでポトフのようなものでフレンチドレッシングをかけて食べていました。これがとても大好きでしたが年に一度くらいステーキを食べさせてもらったこともありましたが粒のペッパーがかけられているもので、これま当時はなんて美味しいんだと感動してました。名前が変ってからは行ったことはありませんが西荻、吉祥寺で洋食というと当時は、西荻のこけし屋(現在改装中)、吉祥寺のバンビ、駅ビルの上にあった赤べこなどがよく行っていました。 ニューバーグですが私は10代の高校生のころから頻繁に通うようになり、高円寺、吉祥寺、西荻窪の店舗は全て行きました。(内装がカウンター形式で全ての店舗が似ています。)一番古い時の価格でスタンダードが380円という記憶があります。また講演時の今はないご夫婦で経営されていた方の店舗ではスパゲッティにカレー味を付けていたのでそれを食べてくてそちらの店舗によく通ったと記憶しています。最後にバンビのニューバーグとの関係ですが私は当時からバンビの若者向けのハンバーグ専門店という認識でした。今でも定期的に食べたくなり通っています。
返信する
Unknown (日が沈む~(略))
2022-12-11 21:06:48
Tommy様
コメントありがとうございます。
かつてのバンビの情報、参考になりました。
ニューバーグは25年前に380円だった記憶があるので、
もっと安い時期もあったかと思います。
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横から失礼します (ルカリオ)
2023-05-10 17:42:46
1979年に高円寺・仲通りに越してきました。
ニューバーグは、当時、仲通りの現在のお店の他、阿佐ヶ谷方面に徒歩3、4分のところ=郵便局の手前に1店舗、東通りに1店舗、MASHになったところに1店舗、そして、西荻窪に1店舗ありました。
当時、吉祥寺のバンビと姉妹店となっていた記憶があります。
私の学生仲間は、ニューバーグがあることで、吉祥寺といっても西荻との中間点、荻窪北、阿佐ヶ谷と4人が超してきました。
当時は¥330円、メキシカンが¥360だったと思います。次郎吉があることから、ブラザーこんさん、チャーさんなどを見かけました。
駅ガード下のコロンボ=今は別の場所に移転、1981年くらいに開店した仲通りの定食屋ヤシロが私のお腹を満たしてくれました。
バイトの給料日限定で、仲通りで夫婦でやっていた豚の香味焼がうまかった定食屋、母親と2人の息子でやっていたとんかつ屋、その上2階」にはGoodyという落ち着いた喫茶店もあり、澄夫易かったなぁ。
練馬に越して36年ですが、未だにニューバーグには行き、平井さんとお話しします。最近、私が行く日はTV取材も多く、まだまだ頑張ってほしいです。
ビール小瓶とメキシカン+チーズので¥1000超すのは仕方ないと思いますが・・・。
返信する
Unknown (ブログ主)
2023-05-10 21:21:15
ルカリオ様、
コメントありがとうございます。

昔のニューバーグ情報、ありがとうございます。
私の初訪問が1997年で、基本のハンバーグセットが、
400円か380円だったと記憶しているのですが、
1979年の頃は330円だったということは、
ほとんど値上げしていなかったんですね。
当時も今も、メキシカンソースが+30円なのも驚きです。
返信する
高円寺にも (地元民)
2023-08-09 13:09:56
店の関係はわかりませんがバンビは高円寺にもありました。南口のオーケー隣で今のすだち亭というところです。新宿のバンビとかなり似ていたので同系列の店舗だと思います。70年代後半か80年代前半に閉店したんじゃないかな。平井君の話題が出てますが彼はガキ大将でした。話す機会があれば強引な方法でメンコを獲られた人が言ってたとお伝えください。
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