しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

天空の遺産 L.Mビジョルド著 小木曽絢子訳 創元推理文庫

2018-08-16 | 海外SF
「SF」ヴォルコシガン・サガに戻りました、

本作の時代設定は「ミラー・ダンス」から6年ほど遡りマイルズ22歳。
遺伝子の使命」とほぼ同時期となります。

ただ発刊順は「ミラー・ダンス」(1994年)の直後、1995年となります。

時代設定では「ミラー・ダンス」の直後にあたる「メモリー」が1996年発刊ですので間にはさまれた形です。

「ミラー・ダンス」「メモリー」ともに割と重めな展開ですので、本作のように後に直面する大変な事態を知らないマイルズの大活劇を書いておきたかったんでしょうかねぇ、本作ではマイルズ大活劇がシンプルに楽しめます。
なお本作に「ネイスミス提督」としてのマイルズは出てきません、その辺の話が好きな人には物足りないかもしれません。

こちらも現在絶版のためamazonで古本で購入。

内容紹介(裏表紙記載)
敵星セタガンダ帝国の皇太后が急逝し、マイルズがバラヤー代表として派遣された。だが行く先々でトラブルを引きあてる彼のこと、今回も······。遺伝子管理によってセダガンダを支配してきた皇太后は、帝国のゆきづまりを察知し、密かに大きな睹けに出ていたという。そしてその死に乗じて銀河を揺るがす陰謀が。後宮に残された美女たちのため、彼は厳命を破って単独行勤に出るが?


まぁ内容紹介どおりの展開で、いつもどおり厄介毎に巻き込まれるマイルズとその協力者(いやいやながらも)の従妹イワンとの珍道中と事件解決の物語となります。

バラヤーの宿敵セダガンダのホート貴族 美女ライアンに立場をわきまえず恋してしまい、ついつい肩入れして事件に巻き込まれつつ機知と行動力を生かして事件を解決し悪人を退治。

マイルズとホート貴族の美女ライアンはほのかに「引かれあう?」感じながらも立場の違いは乗り越えられずで結局結ばれず。

美女ライアンはセダガンダ皇帝の皇后に選べれ(もっとも基本遺伝子を通じて交配するだけの結びつき)、皇帝はマイルズの働きに感謝し皇太后葬儀の式典でセダガンダの最高位のメリット勲章を授け、一同唖然。

ストーリー概略書いてみるとこんな感じかと思いますが・・・。
見事なまでにベタな騎士道物語の展開です。

ライアンが最後にマイルズにブレスレットを渡す所などなんともベタベタです。(笑)

読んでいるときにはそれなりにいろいろ工夫を凝らしてあって楽しいんですけれども...。

解説によるとセダガンダのゲム貴族とホート貴族の関係は平安時代の日本を参考にしているとのことです。
ゲム貴族=武家、ホート貴族=皇族・平安貴族階級という仕組み。

ホート貴族の女性は美しく着飾り皇帝のおめがねにかなうことを競い合い、ときにはよく働いたゲム貴族に褒章として与えられ結婚することもあるという設定。

もっともホート貴族の女性は「お飾り」だけでなくホート貴族の遺伝子を操りどのような子孫を残していくかを決める立場にあり中長期的な権力の実権を握っています。

ヴォルコシガン・サガ、シリーズでは頻繁に遺伝子関係の話が出てきます。
遺伝子で「決まる」もしくは「決められる」運命と、それに抗うマイルズやその他自由意志で運命を「変える」もしくは「変えたい」人たちというのが一貫して流れるテーマなんでしょうね。

あと違和感のあったのがこの後(時代設定的には)マイルズは「無限の境界」でセダガンダの無道な捕虜収容所からの脱出作戦を指揮・成功させるわけわけですが...。

その無慈悲かつ非人間的なセダガンダ人のイメージと本作で描かれる割と和やかなイメージがかみ合いませんでした。
まぁ本作の方が発刊がかなり後(「無限の境界」は1989年ですから6年後)ですからその辺のご都合主義はしょうがないんですかねぇ。
シリーズものは最初の悪人がだんだんいい人になる傾向がある気がします。(宇宙戦艦ヤマトのデスラーとか...)

「SF」的仕掛けをつかったハラハラドキドキをお約束の範疇で楽しむにはいい作品だと思いました。

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