しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

2014年読書ふりかえり

2014-12-31 | 本リスト
大晦日といことで今年の読書を振り返ってみました。

今年は「発狂した宇宙」から読み始め、「美酒一代」まで61冊記事にしていますが、記事に書いていないものをあと4冊読んでいるので65冊。
分量は「米百俵」でも1冊ですが、「デューン/砂の惑星」1-4でも1冊カウントなのでまぁならされていると思っています。

去年が62冊でしたからあまり変わらない...。

まぁ小さい子持ちサラリーマンとしてはこれくらいが限界です。

ここ数年重点分野にしている海外SFは28冊、うち長編が24冊。
去年が43冊読んでいましたのでずいぶん減りました....。

暗闇のスキャナー」「スノウ・クラッシュ」辺りでなんだかSFにあきてしまった...。
とくに「スノウ・クラッシュ」が決定的でした...。
無理に読むこともないと思うのでしばらく離れてからまた読もうと思っています。

そんなこともあり今年は久々海外ミステリーも読んだのも印象に残っています。
久々のエラリー・クィーン新鮮でした。(「ギリシャ棺の謎」)
ピーター卿シリーズも来年全作読破したいところです。
(好みが古いですが...戦前だ)

昨年は「1984年」「幼年期の終わり」が衝撃的な読書体験でしたが、今年は残念ながらそこまでインパクトのある作品には出会えませんでした。

今年の優秀作をあげようとぱっと頭に思いついたのが
発狂した宇宙」フレドリック・ブラウン
都市」クリフォード・D・シマック
天使と宇宙船」フレドリック・ブラウン
ドゥームズデイ・ブック」コニー・ウィリス
雲なす証言」ドロシー・L・セイヤーズ
虞美人草」夏目漱石
というところ。
これまたラインナップがえらく古い...。

私の場合SFは1950年代辺りまでのものが好きなようです。
「ドゥームズデイ・ブック」は1990年代ですが割とトラデイショナルな展開ですし。
サイバーパンクは合わないんでしょうねぇ...。
(感性旧いんだろうなぁ)

あと「犬は勘定に入れません」コニー・ウィリスもピーター卿シリーズとめぐり合わせてくれた作品としてなんだか感謝している作品です。
(作品もよかったのですが喜劇は心に残りにくい)
よーく考えると「虚航船団」筒井康隆もまぁ傑作だったかなぁ。

ということで今年の1位は....。

「発狂した宇宙」ですね。
小学生か中学生時代に何回も読んだ作品ではありますが、改めて読んでいろいろな意味で感心しました。
フレドリック・ブラウンは本当に発想が凄いですね。
あらゆるSFを茶化してしまう作品を1949年に書いてしまっている...。

ディックの方が文学的に作品を仕上げる力はあったんでしょうがブラウンの方が発想のぶっ飛び加減は上です。
素晴らしい。

2位は
「ドゥームズデイ・ブック」
最初の思い切りじらす展開から最後の容赦なさ...すごい。
ブラウンとは逆に思いっきりストーリーで企んでいますがここまで上手だとぽか~んと口を開けるしかない。

ラスト辺りで涙が止まりませんでした。
エンターテインメントの名作です。

他も一言ずつ。
「都市」
これまた1950年的かつ年代記的なところが定番ですがじわっとくる名作です。
昔読んで好きで、今読んだら幻滅するかなぁとも思っていましたが相変わらず感動しました。
時を超える名作です。
中継ステーション」も地味ですがなんとも滋味溢れる作品でした。
時間があればシマックももっと読んでみたい作家ですね。

「天使と宇宙船」
ブラウンのSF短編集ではこれが一番じゃないでしょうか。
発想の素晴らしさを堪能できました。

「雲なす証言」
3位をつけるとすればこれですねぇ。
「好き」だけなら1番かもしれない...。
本作でのピーター卿のキャラ最高です。

企まず書かれた作品だと思うのですが....とにかくいいです。

「虞美人草」
一言でいえば「夏目漱石はすごい」ということですね。
漱石も数年で読破したいです。

「虚航船団」
いいんですけどねぇ。
最後が惜しいです。(あくまで私的にですが)

こんなことを書いていたら他にも一言書きたい本が出てきましたが...。
まぁこんなところで~。

今年も楽しい読書ができました。

読んでいただいた方、なにはともあれよいお年を!!!
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美酒一代 杉森久英著 新潮文庫

2014-12-26 | 日本小説
NHK朝の連ドラ「マッサン」鴨居の大将のモデル、サントリー創業者鳥井真治郎の伝記です。
私は小学生の時に著者の杉森久英氏の「天皇の料理番」を読んで以来氏のファンで、密かに(?)全作収集を目指しているのでブックオフでは必ず「す」の棚をチェックしていたりします。
そんなわけで本書も数年前にブックオフで見つけ入手していたのですが未読でした。

今回朝の連ドラを見ていて思いつき読み出しました。

なお本書連ドラに合わせて今年の夏に復刊されているようです。
朝の連ドラ恐るべし…。

内容(裏表紙記載)
大阪の一奉公人から身を起こし、世界に冠たる洋酒メーカー“サントリー”を創り上げた男、鳥井信治郎。食卓に西欧の文化と生まれた赤玉ポートワイン。スコッチに負けないウィスキーをという執念が生んだサントリー・オールド。次々と銘酒を世に送り出し、その優れた経営感覚と新しいアイディアで、常に時代をリードしてきた男の姿を、伝記文学の第一人者が浮き彫りにする。


前述の通り杉森作品は何作か読んでいて自称「デンキ屋さん」の氏は「伝記文学の第一人者」とは思いますが…本作は「伝記文学」というよりも「伝記」という感じでした。
(私的には主人公が有名でなくても「面白い」と思えるのが「伝記文学」と思っています。)

「サントリーの依頼仕事だったの?」というくらい鳥井氏に都合のよいエピソードの羅列かつ無批判な描写になっています。
(毎日新聞に連載したものらしいですが…広告もあるでしょうしねぇ)

「創業者」ですから変わった所やひどい所も当然あるでしょうし、そんなこともちらっと書いてありますが…薄っぺらです。

もうちょっと深く踏み込めば面白くなったと思いますし、充分その力のある作者だと思うのですが….。

軍人や文学者ならいいのでしょが現存する企業の「経営者」を書く場合いろいろ制約あるんでしょうねぇ。

ウィスキーを作る辺りでマッサンのモデルである竹鶴氏も登場しますがその役割はかなり小さく書かれています。
まぁもろにサントリーの商売敵のニッカの創業者ですからねぇ….。

竹鶴氏の創ったウィスキーは「ピート臭くてどうにもならなかった」と書かれており、鳥井氏がそれをなんとかして国産初のウィスキーを創ったという展開になっています。

どこに真実があるかは別として、ウィスキーを創る話は興味深かったです。
ウィスキーは醸造してから何年も寝かせて出荷するので大変なんですねぇ。
意地でも作った鳥井氏、確かにすごい人なんでしょう。

また太平洋戦争中に軍御用達の洋酒メーカーとなっていたのが、戦後に一転して進駐軍を大接待する商魂のたくましさも感心しました。
その辺も大阪商人ならではですね。

「文学」と思って読むと「???」ですが、サントリーの創業者がどんな人だったかをとりあえず知るためにさらっと読むには面白い本と思いました。
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映画:男はつらいよ 望郷編 山田洋次監督

2014-12-25 | 映画
男はつらいよシリーズ第5作、第4作の半年後、1970年8月公開です。
第2,3,4作は公開時期かなり詰まっていましたし、そのためか第4作はやっつけ感も感じましたが、本作では3,4作で監督から降りていた山田洋次が監督です。

本作でシリーズ終わらせようとしていたようでTV版でさくら役を演じた長山藍子がマドンナ、博役を演じた井川比佐志がマドンナの恋人役、団子やのおばちゃんを演じていた杉山とく子がマドンナの母親役というシリーズを総括させるような配役になっています。
ただ、本作があまりに好評だったためシリーズを終わらせることはできなかったようです。

内容(amazon商品紹介)
早トチリでおいちゃんの葬儀の用意までして大騒ぎする寅さんの元へ、昔世話になった竜岡親分の重病の報せが届いた。早速札幌へ見舞うが、別れた息子に逢いたいと頼まれ、やっとの思いで探し出すが彼は決して会おうとはしなかった。複雑な人間関係を思い知った寅さんは真面目に働くことを決心、浦安の母娘二人暮らしの豆腐屋で働くのだった。そして、娘の美容師・節子に想いを寄せ、一生豆腐屋で働こうと決意した日、実は節子に結婚の約束をした人がいることを知らされる。 ■ロケ地:千葉県浦安、北海道札幌・小樽 ■マドンナ:長山藍


山田洋次監督復活ということで、第2作に続き恒例(?)の寅さんの夢から始まります。

本作は昔からTVで何回か見ていて、結構覚えていました。

途中、江戸川の舟で寝ていた寅さんが柴又から浦安まで流されるという設定がこども心に面白かった記憶があります。
まぁ実際には途中水門があるので浦安まで流されるのは無理かと思いますが…。
まぁ夢のある設定ですね。
流されていく途中の国府台緑地の風景が現在もあまり変わっていないのが興味深かったです。

その他、北海道の宿屋で舎弟の登を追い出すシーン、SLを追いかけるシーン、ラストで登と再会するシーンなどは印象に残っていたのか結構覚えていました。
なにより覚えていたのがとらやでの、額に汗して働きたい寅さんの職業を車家一同が考える場面、笑えました。
この場面かなりの名場面だと思います。

その他山田洋次監督らしい、丁寧な場面設定で安心感のある作品に仕上がっています。
ときに背景をぼかして効果を出すカメラワークも見事です。

あと今回特に感じたのはさくら役の倍賞千恵子のキレイさ。
第1-4作までは失礼ながらあまり感じなかったのですが、浦安に訪ねていく場面など「はっ」としました。

ラスト近く柴又の花火大会の日にふらっととらやを訪れる場面もなかなか….。

正業につきたい寅さん、でも結局ムリな哀しさ…。
ペーソスあふれる寅さん像が確立されてくるのもこの作品からなんでしょうかねぇ。

あと1-4作まではマドンナの恋人役が絵に描いたような二枚目キャラで寅さんとはあまりからまなかったのに対して本作は少し3枚目キャラの井川比佐志が演じてからんでいます。
(これは博役を演じていた井川比佐志だから?)

長山藍子と寅さんの関係の描写がちょっと薄い感じもしましたが、数々の名場面がある名作と感じました。

米百俵 山本有三著 新潮文庫

2014-12-23 | 日本小説
本書「」同様これまた「祖父・小金井良精の記」を読んで読みたくなりました。
(序盤に本書が引用されています。)
小金井良精は本作の主人公小林虎三郎の甥にあたります。

最初に「祖父・小金井良精の記」を読んだ小学・中学生頃は本書を読もうと思っても絶版で入手できず、未読でした。
(図書館でも探したのですが当時の私では見つけられませんでした。)

ただし「米百俵」で名前を知った、山本有三にはその頃はまって「路傍の石」「心に太陽を持て」「生きとし生けるもの」などの少年向きな作品や小品の「無事の人」などを読んでいました。
特に「無事の人」はいまでも名作だと思っております。

なお「真実一路」「女の一生」はちょっと手が出ず未読。

山本有三、日本文学ではどの辺に位置付けられているんでしょう?
純文学…という感じでもないし、大衆文学でもない。
独特ですね。

小泉さんが首相の時に「米百俵の精神で…」なる話が出て2001年の流行語になったときに復刊されたものをブックフで見つけて入手していたのですが未読でした。

なお現在本書はまた絶版のようです、残念。

オリジナルは1943年発刊。

内容(裏表紙記載)
戊辰戦争で焦土と化した城下町・長岡。その窮状を見かねた支藩より見舞いの米百俵が届けられた。だが、配分を心待ちにする藩士が手にしたのは「米を売り学校を立てる」との通達。いきり立つ藩士を前に、大参事小林虎三郎は「百俵の米も、食えばたちまちなくなるが、教育にあてれば明日の一万、百万俵となる」と論す。「米百俵の精神」を広く知らしめた傑作戯曲。著者の講演も収録。


「祖父・小金井良精の記」で星新一が書いていましたが、太平洋戦争真っただ中の1943年によくまぁ敗戦後の心構えを書いた作品を出せたものです。
そういう意味だけでもすごい作品です。
(解説によると本作に時の政府から圧力がかかった形跡があるようなことを書いていました)

本作「小品」かつ戯曲ですのですらっと読めてしまいましたが…。
私は「名作」と感じました。

司馬遼太郎の「峠」の後に読んだのが大きいのでしょうが、戦いに負けてもとにかく人は生きなければいけないし、それもただ生きるだけでなく「よりよく」生きなければならない….。

河井継之助のように華々しく戦うのは目立ちますが、小林虎三郎のような地道な行き方をする人は実際にはとても大切ですよねぇ。

山本有三の少年向け小説にあるような「きれいごと」的なものも感じますが、真摯さがストレートに伝わってきました。
(とにかく「峠」を読んでから読むのがお薦めです)

戯曲の後に収録の著者の小林虎三郎に関する講演も興味深かったですです。
「河井継之助の名前は有名だが、小林虎三郎は無名で残念」と話しています、戦前からすでにそんな傾向だったんですねぇ。

「小金井良精」の名前も小林虎之助の甥ということでこの講演中たびたび登場します。
良精博士当時はけっこうな有名人だったようですね。

司馬遼太郎も絶対本作読んでいたでしょうに「峠」で小林虎三郎の出番はほんの少ししかありません。
あまり出すと継之助の英雄譚としての物語が成り立たなくなると思ったのでしょうか…残念ですね。

ネット上で見たら「本作が河井継之助を非難している」という評価も見受けましたが、作中直接非難はしていないように思うのですが…。
どうしようもない状況を引き受け文句もいわず最善を尽くす小林虎三郎の姿を穿ちすぎて観るとそういう気分になるんでしょうかねぇ。

そんな姿に感銘を受ける名作と感じました。
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'12年ローカス誌21世紀SF長編ベスト

2014-12-21 | 本リスト
前に書きましたが海外SF長編は基本'12年ローカス誌のオールタイムベストを参考に読んでいます。
ただ「オールタイムベスト」といいながら、このリストには21世紀に書かれた作品は入っていません。

21世紀に書かれた作品は別に集計してランキングしています。

「海外SFに詳しくなりたい」わけですが、とりあえず古典的名作を抑えてからと思っており私は新しいものに基本手を出していません。

が、まぁ自分の参考までにリストを作成しみました。

12年ローカス誌21世紀SF長編ベスト


青が既読、黄色が持っているが未読です。

「老人と宇宙」と「私を離さないで」はブックオフの108円棚で見つけて入手。
「航路」は06年SFマガジンオールタイムベストに挙がっているので入手しています。

「私を離さないで」はタイム誌ベスト英語小説100(1923-2005)にも入っていますし、週刊文春の海外ミステリベスト100にもランクインしています。
普通小説としても優れていて、SF的要素もミステリ的要素もある作品なんでしょうね。
さすが村上春樹とならぶノーベル文学賞有力候補カズオ・イシグロです。

なおリスト中既読なのはその村上春樹の「海辺のカフカ」だけ。
なんと村上春樹は「1Q84」と2作ランクイン。

海外で一番有名な日本人SF作家は村上春樹だったんですねぇ(笑)

日本人では伊藤計劃の「ハーモニー」が111位と健闘しています。
早逝された伊藤計劃氏、評価高いんですねぇ。

意味があるかないかですが….。
一応ランクに多く載っている作家は全178作中

8作=チャールズ・ストルス
7作=アレステア・レナルズ
5作=ジャック・マクデヴィット、ジョン・スコルジー、イアン・M・バンクス

ジョン・スコルジーは「老人と宇宙」の作家であるということをかろうじて理解しているのみであとの作家は全く知らない…。
でもまぁこの辺がアメリカで人気のあるSF作家なんでしょうねぇ。

でもイアン・M・バンクスなどはSF作品が翻訳すらされていません…。
(普通小説をイアン・バンクス名義で書いているようですが)

日本で名前の売れていない作家の海外SFの新作、なかなか売れなそうですが英語の読めない私のような読者としては是非翻訳して欲しいものです。

そういう私も何年後に読むかわかりませんが….。

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