しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

エスパイ 小松左京著 ハヤカワ文庫

2018-04-27 | 日本SF
こちらニッポン...」に続き、「日本アパッチ族」「復活の日」に続く小松左京の第三長編である本作を手に取りました。

本自体は小学生頃入手したものを実家からもってきていたのでその当時のハヤカワ文庫版のもので読みました。

本作は「漫画サンデー1964年4月8日号 - 10月7日号連載、1965年6月に出版されています。

日本沈没」の映画化の翌年、1974年に東宝で映画化もされています。
映画の方ももテレビで見た記憶があります。
主人公田村が藤岡弘、ヒロインマリアが由美かおるとなんんとも濃い配役で楽しめた記憶があります。

本作ハルキ文庫で復刊されていましたが、「こちらニッポン...」同様 現在絶版です。
ただ「こちらニッポン・・・」と異なりkindle化もされていないので古本、それなりの値段ついています。


内容紹介(本に記載無いのでamazonからハルキ文庫のものを引用)
“エスパイ”―それは、人の心を読み、物体を透視し、意志の力で物体を動かす超能力を持つ者たちの諜報集団である。ソ連首相暗殺計画の阻止を命じられたエスパイの一員・田村良夫は早速行動に移るが、彼の前に現れた敵も超能力者の集団だった!ニューヨーク、バルセロナ、イスタンブール、ウィーン、遂には宇宙へと繰り広げられる国際的陰謀の首謀者・ミスター“S”の正体とは果たして何者なのか。


豊田有恒氏がシリアスなSFよりも小松作品の中では「エスパイ」の方が好きというようなことをどこかに書いていたのを読んだ記憶がありますが....本当?

エスパーとスパイを合わせて「エスパイ」なんとも安直なタイトルです...。
あまり真剣に書かれたものとは思えない...「スパイ」部分は007シリーズの安直なパクリ、エスパー部分もテレパシーやらテレキネシスやら少年マンガ的に使い放題。

まぁ連載が漫画雑誌ですから、意図的にわかりやすく書いたのでしょうが...。

過剰なお色気シーン、「旅小説かい」と突っ込みたくような国際的な活躍(そんなに部隊動かす必然性ないような...)は後の映像化も視野に入れてあえて商業的なところを見据えて書いたんでしょうね。

お色気シーンではマリアが薬で意志をなくされ黒人ダンサーとからむシーンが子ども心には興奮した記憶がありますが...さすがに50歳間近の現代に生きる私としてはムラムラはしませんでした(笑)

小松左京も応募したハヤカワSFコンテスト1~3回までは東宝とタイアップしていたようですし、映画化できるSF作品欲しかったんでしょうね...。

そんなこんなで本作「映画化」前提に書かれたんじゃないかと思いますが、(東宝は1966年には映画化権取得していたようです)そのまま映画化するにはロケ代とかかかりそうで部隊を日本及び地球上に絞ってスケール小さくなったようです。
原作上白人美女のマリア=マリア原田=由美かおるですからねぇ。

SFとしては小松作品のテーゼともいえそうな「超越的意思」が関係しているのですが...。
なんとも泥試合なエスパー達と、地球の悪人達とのギャップが味わい深いです。
そういう意味で読むとそれなりな作品な気もしますが....「超越的意思」も紋切型かつ安直な気はしました。
なんでもかんでも「超越的意思」を出せば高級(っぽい)SFになるのか?は疑問です。

なおこのハヤカワ版誤字がとても多い。(昭和46年8月初版、昭和48年8月6刷)
一例挙げるとP157「うまずく」→「うずまく」、P213「グワッの」→「グワッと」?、P274「東ドツイ」→「東ドイツ」P300「こんどに」→「こんどは」P395「きみで」→「きみは」探せばもっとあるかもしれませんが...誤字見つけるたびにうれしくなっていました。
当時のハヤカワS-Fマガジン含め誤字がひどかったらしいですが、これは現代ではまずありえないレベルですね...、文庫版でまず出たものでもないのにスゴイ。

その他誤字ではないですがP160「「慶安太平記」の丸橋忠也の心境だ」という表現がありましたが...今の読者講談なんか聞いていないでしょうしまずわからないでしょうね...。
時代の変化ですね、現在48歳の私でも小学生時代「講談」の本など読むのが趣味だったのでなんとかというところなので...。

そんなこんな時代は感じましたが...。
2018年現在読む価値があるのかは疑問ですかねぇ。

↓丸橋忠也...大岡越前か江戸を斬るにも出ていたようなですが...若い人はわかるかなぁ、わっかんねぇだろうなぁ。よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
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こちらニッポン… 小松左京著 ハルキ文庫

2018-04-22 | 日本SF
2018年初めて読む本が本書となりました。

これでいいのか...ともちらっ思ったのですが、まぁなんとなく...。
最近微妙に小松左京批判していた感じなので、とりあえず作品読んでみようというところでのチョイスです。

本作が小松左京の代表作とも思いませんが....2-3年前たまたまブックオフで見かけ購入していたものが本棚にあったので手に取りました。

小松左京作品、けっこうハルキ文庫で復刊されているのですが、本作は現在のところ絶版のようです。
本作「朝日新聞」夕刊に 1976年4月19日 - 1977年1月22日連載され、1977年に発刊されたもの。

なおこのハルキ文庫版では解説が瀬名秀明氏でこれが結構楽しめます。
私同様小松左京に微妙に批判的なところがツボにはまりました。

抜粋しますと
「素人ならではのわかりやすさ」「ラストの唐突なオチも一般性を維持するための配慮」「もともと小松は謎の収拾よりもそこから発生する行動のほうに興味を向ける作家だが、後年のSF作品ではそのバランスの悪さが表面に浮かび上がりがち-略」
同感です(笑)

瀬名氏は上記文章のあとまだ存命の小松左京へ「まだまだこんなものじゃないでしょう、作品書いてね」というようなことを書いていますが...小松左京あまりゆかいじゃなかったんじゃないですかねぇ....、

内容紹介(裏表紙記載)
“異変”は突然の出来事だった。新聞記者・福井浩介はある朝、普段とはまったく違う光景を目にする―いや、「世界」はそのままなのだが、そこからは「人間」の姿が一切消えてしまっていたのだ!福井の他にも何人かの“消え残り”が確認され、この異様な事態の究明に乗り出すのだが…。人類消失という極限の状況下、人はいかに行動し、文明はいかに機能するのかを描く異色SF長篇。


本作、まったく未読のつもりで途中まで読んでいたのですが、途中新興宗教の教祖的女性が「三種の神器」云々といっているところに見覚えがあったので、小学生頃図書館で借りるかするかで少なくともこの辺までは読んだんだと思います。
記憶ってあいまいですね...。

作品の感想ですが。

シミュレーション小説としてはよくできているとは思いますした。
突然「日本及び世界中から相当数の人間が消えたらどうなるか?」という設定は魅力的ではあります。
著者の電力やら各種インフラへの様々かつ該博な知識に裏付けされた作中のいろいろ事件楽しくは読めましたが...なにかこう小説的な意味で「軽い」感じはしました。

いわゆる「SF小説」ではなく、堺屋太一が書くようなシミュレーション小説という感じで文学的な「葛藤」がないというか...。

前述の通り電力機構やら地震やらなにやらの豊富な知識は盛り込まれているので新聞小説としてそういった情報を得て、仮説としてドラマを置いてみて「考える」というのにはとてもよい作品なんだと思うのですが、「文学」はある程度まで「人間」を通常では思いもよらない形で切り取りなにかしら人間及び人間となにかとの間の意外性を発露させる部分があって欲しい気がします。
(うまく言えていませんが....)

多くの人が分業で動かさないと回らない近代社会と個人、皇居に忍び込んで三種の神器を持ち去り日本をまとめようとする団体との葛藤など掘り下げればドラマが生まれそうなテーマも書かれていますがさわりだけ書いているだけで深く書き込んでいません。

この辺の堪え性のなさがいかにも小松左京の長編小説という感じですね...。
(また批判してしまった)

ネット上でもあまり評判のよくない強引なラスト、これまで書いてきた事象の起きた原因をこれで説明するのはちょっと反則なんじゃないでしょうか.....。
なんちゃってメタフィクションじゃねぇ...正直ずっこけました。

これだったら事象の起きた謎は謎のままにして残された人間たちが「新文明を築いていくんだ!」というラストの方がよほどよかったような...。

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2017年読書振り返り

2018-04-14 | 本リスト
辺境5320年」で2017年読んだ分の本は感想上げ終えたので年次恒例の振り返りをいたします。

昨年(2017年)はマンガを除き感想を書いた本ベースで35冊の本を読みました。
(大作「ブラックアウト/オールクリア」でも1冊、、「小説 君の名は。」でも1冊のカウントです。)

2013年61冊2014年65冊にはおよびませんが、2015年35冊2016年23冊の減少傾向には歯止めがかかった気がします。

15年、16年と異動があり仕事がいまいち落ち着かなかったのですが...昨年は少し慣れたので読書しようという心の余裕がでてきた気がします。

昨年は「ダールグレン」「ブラック・アウト/オール・クリア」「ブルー・マーズ」の3大作を読むのに各2ケ月かかったので残り半年で32作品読んだと思えばまぁそれなりのペースかと。

その他マンガでは中学生(当時)の息子が読んでいた「進撃の巨人」が酔っぱらって家に帰ったときリビングに置いてあり、ちら読みしたらハマってしまい1-23巻一気読みしてしまったのが記憶に残っています。

「進撃の巨人」は「感想書こう」と思っていたのですが書けずに終わりました...。
最近のマンガはかなり構成がしっかりしている感じがありますが、中でもこの作品の世界観の構築はすばらしい。

どこかでごまかしてつじつま合わせているような気もしないではないのですが....、作中さまざまな謎を提示し一応は破綻なく回収しています。
ひと昔前(ふた昔?)の松本零士や石森章太郎のマンガのように謎投げっぱなしで回収なしというようなところがないのに感心です。

現代日本には本作含め多くのSF(もしくはSFチックな)マンガがあふれているのにSF小説のマーケットはそれほど活況に見えないのは残念です...。

ちらっと床屋で見かけただけの「テラフォーマーズ」などは思いっきりSFですよねぇ...。
ゴキブリがあそこまで進化するとは思えませんがなにやら「2001年宇宙の旅」的な超越者を想定しているようですし、SFですよねぇ。

昨年読んだ本の分析に戻りますが35作品中ここ数年重点分野としている海外SFが16作品と半分弱とまぁいいペースでした。
上述もしましたが「ダールグレン」等大作を読めたのが収穫ですね。

気になっていたロビンスンの火星三部作も読了できましたし、ウィリスのオックスフォード大学史学部ものも読了できたのには満足感があります。

あとは邦訳・出版されているSFは全部読もうと思っている「アシモフ作品」も昨年に短編集3冊、長編1冊読めたのも収穫でした。
アシモフは今年中に完読できそうな感じになってきました。

あとはふっと興味をもった「覆面座談会事件」がらみで日本SF第一世代作家の作品を結構読みました。(9冊)

あまり評価していなかった光瀬龍作品、短編読んでみて「素晴らしい」と思えたのが昨年の収穫です。

あとは筒井康隆の文学的才能の高さもあらためて思い知りました。
処女長編「48億の妄想」にしてあの完成度ただものではない....。

ただ....筒井作品を「好き」とか「どうしても読みたい」か?と言われると「どうかなぁ?」というのが正直な気持ちではあります。
(ディレイニーも同様....)
高級菓子よりも駄菓子が好きなタイプなんだろうということは自覚しております。

「覆面座談会事件」の調査(?)には金に糸目をつけず(といっても数千円ですが)当時のSFマガジンを数冊入手しました。
該当部分だけではなくその他の掲載されていた国内外の短編など味わい深いので読んでみたいなぁとも思うのですが...いつになるやら。

SFマガジンバックナンバーはレアものでない限りアマゾンで割と楽に買えるので癖になりそうで怖い...。

「ブラックアウト/オールクリア」関連でウィリス作品やら「オリエント急行の殺人」やら「大宇宙の少年」やらを読んだのと、「君の名は。」関連で「小説 言の葉の庭」を読み、その流れで「額田女王」を読んだのも昨年の読書関連のトピックスです。

ということで恒例(?)の昨年のベストですが....。

面白かったのは文句なく「ブラックアウト/オールクリア」です。

最後の方はページ送るのがもどかしいほどの入れ込みになりました。
ストーリーテーラーとしてのウィリスの才能を思い知らされました。

が....感想にも書いたのですが、根本的に「歴史」に意味性倫理性を入れて来ているところ、善悪を決めて戦争を完全肯定しているところはどうも「????」感がありました。

印象深かったのは「ダールグレン」で、読んでいてまったく(ほとんど?)面白くなはいんですが思い返してみると鮮烈な印象が残っているのは確かなので、これはこれで作品の持つ力なのかと。
前半のひたすら引っ越しの方はストーリーもまぁそれなりに面白かったかなぁ...。

ダイヤモンド・エイジ」もニール・スティーブンスンの並々ならない才能を感じましたが、終盤息切れしたような...。
前半までのテンションで書ききられていたら間違いなく今年ナンバーワンだったかと。

星新一 1001話つくった人」は再読なのでインパクト低めですが、読み返してみてやはり力作だとは思いました。

「額田女王」もよかったし鬼才ブラウンの「未来世界から来た男」もよかったのですが....。

無理無理ベスト3つけてみると

1位「ダイヤモンド・エイジ」
2位「ブラックアウト/オールクリア」
3位「消滅の光輪
というところです。

あくまで私の主観なので「面白さ」「好きさ」度合で選んでいます。

「消滅の光輪」は小学生時代にみたあの分厚い本を「ついに読んだ」という感慨もありの加点です。

3位候補で悩んだのは他に「額田女王」、アシモフの「変化の風」。

「額田女王」は久々の歴史小説で新鮮だったのもあるのかもしれませんが、大化の改新から壬申の乱、その間の白村江の戦いという激動の時代をあたかも同時代かのように描き出す手腕にしびれました....。

「変化の風」はまったく期待していなかったのに「よかった」感がありでの思いです。

今年ですが、邦訳・出版されているアシモフSF作品読破は達成できそう。

今日現在であとは「コンプリート・ロボット」の他作品集未収録作品と「永遠の終わり」の再読を残すのみとなっています。

邦訳されていて、作品集に未収録の短編もSFマガジンのバックナンバーとか丹念に探せばあるんでしょうが.....まぁそこまではいいかなぁという感じです。(いまのところ)

あとは'12年ローカス誌オールタイムベストを読んでいくのを地道に進めていこうと思っています。

日本のSFも読もうかなぁ....ですがそんなに読めないかなぁという感じ。

あとはまぁ今年も気の向くままで読んで行こうかなぁです。

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