しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

人類の足跡10万年全史 スティーヴン・オッペンハイマー著 仲村明子訳 草思社

2016-07-03 | ノンフィクション
スタータイド・ライジングの中で「人類を知性化したのは誰か」というような話がでていました。

トンデモ古代史好きにとっては、世界最古(とされる)メソポタミア文明を起こしたとされ、先行遺跡がなくどこから来たかわからない(とされる)シュメール人を「知性化したのでは?」となるのでその辺ネットで調べていました。

ネット上では「シュメール人宇宙人説」などと魅力的な説がいろいろ展開されていましたが、一番妥当と思われた説は文明勃興期はちょうど氷河期で下がった海面が上がる時期でもあり、海近くで生まれた文明の痕跡が海の下になってしまったのでシュメール人の先行遺跡が見つからないというもの。(日本でいう縄文海進あたり?)

氷河期の一番陸地化が進んだ時期はペルシャ湾などほとんど陸地だったようです。

陸地が海になるのは徐々にではなく氷河湖の決壊などによってある程度一気に海面が上昇することによるそうですからノアの洪水など、チグリス・ユーフラテス由来の神話はこの海進期の記憶が起源という説もあるようです、ロマンですねえ….。
今の教科書では新石器時代の始まりが1万年前辺りとされているようですが海底考古学が進むとこの辺の年代も覆っていくかもしれませんね。

そんなこんな人類の起源が気になるのと、もともとこの手の話好きなこともあり図書館でその辺の本を探していたところ本書をみつけて借り出ししました。

この辺の本は新しさが命だったりするので借りることにしています。

といっても本書訳書出版が2007年8月、原著が2004年7月出版とそれほど新しいものではありません。

内容紹介(表紙折り返し記載)
現生人類はアフリカで生まれた。一度は絶滅しかかったわれわれの祖先は、やがてアフリカを旅立つ。だがその旅立ちはたった一度しか成功しなかったという。なぜか?そしてアジアへ、オーストラリアへ、ヨーロッパへ、アメリカへ。人類は驚くべき速度で世界各地へ拡がっていった。気候の激変、火山の大噴火、海水面の大変動、さまざまな危機を乗り越えて―一体いかにして、どの道を通って、われわれは今ここにいるのか?その足跡はいかなる形でわれわれに受け継がれているのか?遺伝子に刻まれた人類の壮大な歴史を読み解き、化石記録と気候学からその足どりを追う!人類史の常識を覆す画期的な書。


基本的に分子生物学と考古学的(人類学的・遺跡検証)言語学など様々な学問を総合して出アフリカ後の人類の足跡をたどっています。

ネアンデルタール人と原生人類の混血説についてはミトコンドリアDNA解析の立場から「なかった」と一刀両断していますが、その後の遺伝子学の進歩から「ある程度混血はあったのでは」というのが現在の有力説のようです。
その辺が日進月歩の分野の本としては難しいところですね….。
(本書の末尾でネアンデルタール人との混血についてゼロではなかったかもしれないが主流とはなりきれなかったのは確かだろうとの見解は出しています)

私的にはネアンデルタールとの混血説ロマンがあり(あるような気がする?)好きではあります。
今西錦司などは「人類は常に混血可能な1種しかいない説」を唱えていましたね。

基本的には現在主流のミトコンドリアイブ説から話を展開していますが、出アフリカは教科書的にはアラビア半島北部からとなっていますが、本書では氷河期に海面が低くなったときに紅海-現在のペルシャ湾を渡ってから海岸沿いにインド西部で勢力を増しオーストラリアやヨーロッパへ異移動していった説を唱えています。
(オーストラリア到着時期を主流説より早めに設定しているようです)

考古学的証拠的には当時の海岸線が多くは海底になっているので提示が厳しいとしていますが遺伝子学的な根拠で説明しており、まぁ説得力はありました。

素人なのでなにが正しいのか評価はできませんが….、まぁロマンで楽しめましたー。

アメリカ進出なども氷河期の影響は受けており人類の進化に気候の影響大きかったんだろうなぁということもあらためて感じられました。

海底考古学の進歩期待したいところです。

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ヒゲのウヰスキー誕生す 川又一英著 新潮文庫

2015-04-11 | ノンフィクション
「マッサン」終わってしまいましたが…。
(本書を読んだのは放映中の2月中旬)
朝の連ドラ好きなので「マッサン」も見ていたので買ってしまいました。
「マッサン」のモデル、ニッカの創業者・竹鶴政孝の伝記です。

ブックオフで買いましたが「マッサン」に合わせて再刊されたようです。(2014年7月発行)

内容紹介(裏表紙記載)
いつの日か、この日本で本物のウイスキーを造る――。大正7年、ひとりの日本人青年が単身スコットランドに渡った。竹鶴政孝、24歳。異国の地で、ウイスキー造りを学ぶ彼は、やがて生涯の伴侶となる女性リタと出会う。周囲の反対を押し切って結婚した二人。竹鶴は度重なる苦難にも負けず夢を追い、リタは夫を支え続けた。“日本のウイスキーの父”の情熱と夫婦の絆を描く。増補新装版。


前に読んだサントリー創業者の鳥居信次郎氏をモデルにした「美酒一代」を「文学的でない」的にけなしましたが、本作の方がさらに文学的でなく「ライターが書きました」的な内容です。

本書の著者もいろいろ人物伝書いている方のようですが、やはり杉森久英氏の方が作家として上な気がします。

杉森久英氏が書いた「竹鶴政孝」も読んでみたかったです。
波瀾万丈度では竹鶴氏の鳥井氏より上だった気がします。
(「美酒一代」では役割が矮小化され紹介されていますが….。)

いろいろ見方はあるんでしょうが造り酒屋を継ぐことを期待されながらも、摂津酒造に入社し英国に単身ウィスキー造りのために渡ってしまう。
(この辺は杉森氏の他作である「天皇の料理番」に通じるところかありますね)

「社長の婿に」という期待も裏切りスコットランド人の奥さんを連れて帰ってきて、摂津酒造でウィスキーを造らないとみるや鳥居商店に転職、気に入らないと自分で会社起こしてウィスキーを造ってしまう。

相当なバイタリティ...というか結構ひどい人のような気もします。
でも事業を起こそうとすれば出資者がつくわけですから魅力のある人ではあったんでしょうねぇ。

内容的にはスコットランドで竹鶴が学ぶ辺りのところが一番面白かったです。
スコッチウィスキーの歴史は意外と浅いんですね。
特にグレンウィスキーとのブレンドは20世紀に近くなってからのようで、竹鶴氏が学びに行ったときにはある意味最新知識だったのでしょう。

戦後もかなりウィスキーの質にこだわる竹鶴氏ですが、と氏とリタの食通ぶりも「美味しんぼ」的でなかなか興味深かったです。
そういえば昔「美味しんぼ」で竹鶴氏が紹介され山岡士郎がニッカウィスキー飲んでいましたね。

今「マッサン」効果でニッカウィスキー売れているようですがウィスキーが飲みたくなる1冊ではありました。
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アンのゆりかご 村岡花子の生涯 村岡恵理著 新潮文庫

2014-05-26 | ノンフィクション

朝の連ドラ「花子とアン」にはまりだし。
気になってドラマの「原案」である本書を買ってしまいました。
珍しく新品(笑)

花子とアンにつられて...」でも書きましたが、割と乙女な(気持ち悪い?)私は新潮文庫の村岡花子訳「赤毛のアン」シリーズを愛読していたので楽しく読めました。

村岡花子氏 赤毛のアンの解説で知っていただけなので、なんとなく「上品そうな人だなぁ」という印象以外どんな人かまったく知りませんでした。

内容(裏表紙記載)
戦争へと向かう不穏な時勢に、翻訳家・村岡花子は、カナダ人宣教師から友情の証として一冊の本を贈られる。後年「赤毛のアン」のタイトルで世代を超えて愛されることになる名作と花子の運命的な出会いであった。多くの人に明日への希望がわく物語を届けたい―――。その想いを胸に、空襲のときは風呂敷に原書と原稿を包んで逃げた。情熱に満ちた生涯を孫娘が描く、心温まる評伝。

村岡花子氏の孫にあたる村岡恵理氏が書いているということで「鋭く突っ込む」という感じではなく、親族が書いた評伝特有の愛にあふれた評伝となっています。

同じ評伝でも最相葉月の描いた「星新一」などはもっと突っ込んでドロドロした面を出していますが、星新一ほどに確固とした作品世界が出来上がっているわけではなく、一応児童小説に分類されている「赤毛のアン」の翻訳者の評伝ですのでそれでいいのではないかなぁと思います。

花子の親、兄弟や結婚のいきさつなどを突っ込んだらもっとドロドロしたものも出てきそうですがそこまでやられるとちょっと...な感じですしねぇ。
実際の「花子」の家は甲府(いられなくなった)ではなく大森に出てきているのですが、朝の連ドラでは甲府に残ったまま、貧しいながらも大家族でまぁ普通に農家を営んでいるように描かれていますがその辺も朝からドロドロしたくないという意図があったのかもしれませんね。
実家の件を除けば朝の連ドラはこの本の設定つかって作られているとは思いました。

ドラマでも感じましたが明治期の「東洋英和」の英語教育すごいですね。
当時のエリートは徹底的に教育されるし。
また優秀な人はいろんな人が助けてくれるというのも明治期に特有なところですね。
一方で貧富差やら華族のお家の事情などはなかなか大変そう。
また大正から昭和にかけての女性文壇、女性の地位向上運動などあまり読む機会もなかったので新鮮でした。

ネットで見ると「文章が素人っぽい」等批判もあるようですし、「鋭い」視点はないかとは思いますが明治末貧しい家から出て知識階級に属することになって大正、昭和(戦前、戦後)を生きた「村岡花子」氏の人生はなかなか魅力的で楽しく読めました。

「花子とアン」の脚本の中園ミホ氏の「村岡花子氏はアンにかなり自分と似たものを感じていたのではないか」という認識も「確かにそうかもしれない」と思わせる内容ですね。

すっと読めて面白かったです。


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エンデュアランス号漂流 アルフレッド・ランシング 山本光伸訳 新潮文庫

2013-07-05 | ノンフィクション
本書は10年位前に上司から貰ったもので「リーダーシップの本」としてビジネス書的に話題になっていたのは知ってたりしていました。
「読めば面白いんだろうなぁ」とは思っていたんですがなんだか手がつかず今まで読んでしませんでした。

無人島に生きる16人」を読んだら解説で椎名誠氏が本書のことを紹介していて「これも何かの縁だろうなぁ」ということで読みだしました。
力作で読み終わるのに1週間かかりました。

なおこの本は写真家の星野道夫氏が強く進めて邦訳・出版が実現したとのことです。

内容(裏表紙記載)
1914年12月、英国人探検家ジャクルトンは、アムンゼンらによる南極点到達に続いて、南極大陸横断に挑戦した。しかし、船は途中で沈没。彼らは氷の海に取り残されてしまう。寒さ、食料不足、疲労そして病気・・・・・・絶え間なく押し寄せる、さまざまな危機。救援も期待できない状況で、史上最悪の漂流は17ケ月に及んだ。そして遂に、乗組員28名は奇跡的な生還を果たす----。その旅の全貌

読みだしてすぐ「今の気分はノンィクションじゃなくフィクションだなぁ...」とちょっと後悔しましたが今年は読みだした本はとにかく最後まで読もうと決めているので読み切りました。

内容は裏表紙記載のとおりで、南極圏で遭難している話なんですがなんだかすごすぎてイメージがうまく湧かない。
全編「すげぇなぁ」という感想。
とにかく生き延びるということへの執念があれば人間って強いんだなぁということは感じました。
ペンギンやらアザラシを殺して食いまくりますが、28人でもこれだけ食いまくるんだから、人がある程度集まったら野生動物などひとたまりもなくなりそうだなぁというような感想を持ちました。

1部から5部まではわりと淡々と展開するのですが、最後、6人が助けを求めに行くあたり(第6部、第7部)からラストは一気にクライマックスが来る感じで息詰まる迫力でした。

「感動??」という感じで読んでいたのですが、人間社会との関わりがやっと出てきたところであらためて「ジーン」ときました。
やっぱり感動する作品な気がする。

「シャクルトン」はリーダーとして立派なんでしょうが、「リーダーシップ」の本的な読み方はちょっと邪道なんじゃないかと思いました。

ひたすら自然の驚異とそれに立ち向かう人間の弱さと意外な強さを味わう作品じゃないかと感じました。

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無人島に生きる十六人 須川邦彦著 新潮文庫

2013-06-27 | ノンフィクション
毛色変えようシリーズ第二弾。
「行かずに死ねるか!」と一緒に大森のブックオフで買いました。
250円。

ある雑誌の書評欄で本書が紹介されていて興味を持っていたため購入しました。

内容(裏表紙記載)
大嵐で船が難破し、
僕らは無人島に流れついた! 明治31年、帆船・龍睡丸は太平洋上で座礁し、脱出した16人を乗せたボートは、珊瑚礁のちっちゃな島に漂着した。飲み水や火の確保、見張り櫓や海亀牧場作り、海鳥やあざらしとの交流など、助け合い、日々工夫する日本男児たちは、再び祖国の土を踏むことができるのだろうか? 名作『十五少年漂流記』に勝る、感動の冒険実話。

本書を読み出して最初に驚いたのは、解説が椎名誠氏であること。
昨日読了の「行かずに死ねるか!」と同じ。
趣味が合うのでしょうか?(笑)
解説を読むと本書は椎名氏が再発見して新潮文庫での発行となったようです。
「旅」とか「冒険」「写真」と椎名氏と私は親和性ありそうですが作品を読んだこともないし、読もうと思ったこともなかった。
別に特に嫌いといわけでもないんですが....なんでだろう?

この本はもともとは昭和23年に子供向け海洋冒険譚として発行されたもののようです。
とても読みやすく通勤行き帰り、昼休み、帰って少し正味4時間くらいで読んでしまいました。

南の島の冒険譚として楽しく読めました。

どこまで実話なのかが???ですが、帆船でハワイまで行ったり、その船に小笠原諸島が日本の領土になった時に住んでいた帰化米国人がいたりと当時の日本はかなり国際的だったんだなぁと感じました。
堂々としている船長、船員さんもスゴイ、明治の男・海の男ののたくましさを感じました。
昔の日本人はたくましかったんでしょうね...。
顧みてチョット自分が恥ずかしくなったり増します。

「感動」という感じではないですが「感心」と「スゲェたくましさ」を感じました。
漂流譚ですがなんだか島に行きたくなります。
お薦めです。

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