しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

華氏451度  レイ・ブラッドベリ著 宇野 利泰訳 ハヤカワ文庫

2013-03-31 | 海外SF
これも「火星年代記」とならびブラッドベリの代表作です。
ローカス誌のオールタイムベスト100では10位と火星年代記の17位より評価が上。
日本では火星年代記の方が人気のようですが、(06年SFマガジンのベストでは火星年代記が4位、華氏451度は圏外)アメリカでの評価は高いようですね。

本作、小学生の時図書館で借りて読んだような記憶があるのですが、まったく覚えていませんでした。
手元にある本の奥付を見ると昭和55年第5刷ですが、この頃買ったものではなく30代くらいの頃古本屋で買ったものだと思います。

内容(裏表紙記載)
その世紀の、その世界が禁じた本を発見次第焼くのがモンターグの任務だった。その世界は、高速道路をスロー・スピードで走るのも、徒歩運動をすることも、すべて禁じていた。人びとは耳に<海の貝>と名づけた超小型トランジスター・ラジオをはめこみ、居間の四囲の壁にはテレビを設置して、毎日うつつを抜かしていたのである。だがそんな時モンターグは、ふとしたことから恐るべき秘密を持ってしまったのだった・・・・・・。
未来を詩の心で謳うSFの抒情詩人ブラッドベリが、その持つ感受性と才能の全てをうちこんで結晶させて不朽の名作!

題名の華氏451度は紙が自然発火する温度であり、焚書を題材にした作品というのは有名ですね。
いわゆるSF的道具立ては殆どなく、アクション的な盛り上がる展開もないので本作ももがきんちょには読み通すのがつらい作品な気がします。
私は本当に読んだのだろうか???

全体的に火星年代記より硬質な感じで、世界観が似ている「1984年」と比較されているようです。

ただ1984年よりは甘いというかロマンチックさが残っていて印象はかなり違いますし、出来は1984年の方がはるかに上と感じました。
火星年代記同様なんだか青臭さというか青年っぽさが私には感じられました。

意図的なのか、構成がうまくいかなかったのか後段に出てくる話と、前段の話のつじつまが合わないのか、はしょったのか?という部分があり気になりました。
アシモフだとこういうことはまずない。

そんなこんな気になって私にはあまり名作とは感じられませんでした。
最後の方の逃走場面などはなかなか良かったですし、小説としての出来というか体裁としては「華氏451度」の方が上と感じましたが、詩情は「火星年代記」の方がと感じましたので私的には「火星年代記」の方が好きかなぁ。
まぁいずれにしても私はブラッドベリと合わないんだろうなーと感じた読後感でした。

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火星年代記 レイ・ブラッドベリ著 小笠原 豊樹訳 ハヤカワ文庫

2013-03-27 | 海外SF
これも昨年来のSF読み直しの気運にのり読んでみました。
アシモフは自身の自伝的文章を載せたアシモフ初期短編集でもその他でも殆どブラッドベリには触れていません。
ただ活動開始時期も重なっていますし、アシモフには書けない(だろう)作風ですので本当はかなり意識していたのではないでしょうか(単なる推測です)

ネットでブラッドベリ関係いろいろ調べていましたが、アシモフと違い記事が少ない。
60年代以降作品が少なくなっていたこともあるのでしようが...。
でも昨年(2012年)まで存命だったんですね、知らなかった。
晩年(2007年)にはSF作家としては初めてピューリッツァー賞を受賞している。

こと小説について「器用」で才能豊かなアシモフが得られなかったものをいろいろ得ている作家ですね。

ただし、少なくとも日本では生き残っている作品はアシモフより多そうだし、萩尾望都の影響もあり名も売れているでしょうね。
(アシモはありますが、ホンダはアシモフとの関連を否定している....)
そう考えるとなんだか作家の評価って時代の波に洗われるので難しいですね

そんなこんなで少しアシモフ的SFに飽きてきたため毛色の違うものをということで手に取りました。

本書は小学5、6年か中学生の頃購入。
奥付見ると昭和54年12月15日九刷、私が9歳の時。
そんなころ買ったつもりはないので古本屋で購入したものだと思います。
今回引っ越しするのに伴い久々にみつけました。
さすがに古びている!

「火星年代記」は昔から、SFオールタイムベスト的なものがあると必ず上位に出てくる作品で、がきんちょの頃いっぱしのSFファンを気取っていたため「読まねば」と購入したのですが、「がきんち」ょには面白みがわからず今まで30年程度未読で来ました。
「SFファン」と人前で言う時には「火星年代記」くらいは「読んでいるよ」という顔をしていましたが、これで胸を張れます(笑)。


内容(裏表紙記載)
火星へ、はじめは探検隊がついた。火星人は探検隊員を、彼らなりのもてなし方でもてなした。だから第一次探検隊も、そのつぎもまたそのつぎも、隊員は一人も還らなかった・・・・・。それでも人類は火星へ火星へと寄せ波のように押しよせた。やがて、火星に地球人の村ができ町ができた。が、徐々に廃墟と化していく村や町から、しだいに、火星人たちは姿を消していった・・・・・・。
精神を欠いた物質文明の発達に厳しい批判の目をむける、ポエジイとモラルの作家が、26篇のオムニバス短篇で謳いあげたSF文学史上に輝く永遠の記念塔!

さすが「名作」「がきんちょ」の頃と違いおもしろく読了できました。

ブラッドベリの詩情たっぷりな展開、堪能しました。
まぁアシモフには無理な作品群ですね。
アシモフなら火星人の成り立ちについて考証せざるを得ないでしょうし、そうするとこの「ふわっ」とした印象の火星人の描写は無理でしょうね。
ロボットが人殺ししていたりもするし....。

ただし、もっと期待して読んだのですが私には「不朽の名作」とは思えませんでした。
1950年の作品ですからねぇ...時代の波に洗われている感じ。

ブラッドベリが「火星年代記」を書いた頃にはこのような作品はブラッドベリしか書きえなかったんでしょうが、いろんな人がブラッドベリに刺激を受けて同様の作品を書いているような気がします。
そんなこんな色々読んでいるので刺激が薄く感じるのかもしれません。
ラストも昔は刺激的だったのかもしれませんが、今読むとありがちといえばありがち...。
時代は残酷ですね。
それでも残る作品は「着想」とか「筋立て」以外の何かがあるような気がするので何かが足りないような気がします。
たとえばこの作品にも出てくる「ポー」などは色々な人が模倣していると思いますがオリジナルの味わい深さは残っている。(語るほど読んでいませんが)
「1984」などもそうですね。

私的にはこの作品はSFの名作として過大評価されている気がします。
(情緒的感じでいい小説だとは思いますが。)
もう2~30年したら消えてしまうかもしれません。

あとは私の読んだ年齢もあるかと思います、20代で読めば結構感動したかもしれません。

すれっからしの40親父でなので素直に感動できませんでした...。

wikipediaで見たら1997年に本作にブラッドベリが手を入れて新版が出ている模様。

年代を1999年スタート→2030年へ(以降31年づつ繰り下げ)
作品の一部入れ替え。
新版もハヤカワから出ているようですが....どうかなぁ。

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木星買います アイザック・アシモフ著 山高 昭訳 ハヤカワ文庫

2013-03-22 | 海外SF
昨年末からのアシモフ作品読み直しの流れに乗りブックオフで見つけ105円で購入。

この作品集も、アシモフが1950年代に執筆して他の短編集に収録されていなかった作品を集めアシモフの短文も入れて上げたもの。
編集者に「アシモフの作品に駄作はない!」とおだてられて応じたようですが、1975年段階ではそうでも、2013年現在ではきびしい作品がかなり含まれています。
米ソ冷戦構造とか社会情勢が変わっていますしね。
変わってもできのいい作品は十分読むに堪えますが、今一つのものはちょっと....。
この辺の作品を残さないでいい作品だけ残した方が現在の評価ももっと高かったような気がします。

内容(裏表紙記載)
銀河のかなたから地球を訪れた、人類よりはるかに高度な異星人は奇妙奇天烈な取引を申し出た-太陽系最大の惑星である木星を「買いたい」というのだ。はたして異星人の真意は?-表題作ほか、光の彫刻家として名高い貴婦人が、なぜロボット技師を殺したかを描く「光の韻律」、雨を極度に嫌う奇妙な隣人の話「雨、雨、向こうへ行け」、小説を書く猿とSF作家の対決を描き出す「猿の指」などヴァラエティゆたかな珠玉の24短編を収録。さらに、「作者一流のユーモアとエスプリに満ちた語り口で作品の舞台裏を披露する楽しいエッセーもまじえて、巨匠アシモフ博覧会の開催!

「ダーウィンの玉突き場」
生物の進化について複数の人間が語るというもの。
それぞれの考え方はそれなりに面白いですが、「核」への啓蒙が明らか過ぎるラストです。
狩人の日
ちょいと変わったタイムマシンもの+生物の進化というテーマ。
着想は面白いですが、これも最終戦争に対する啓蒙が明らか過ぎるラスト。
(本人も書いていますが、あまりの明らかな教訓的結末は興ざめです)

「シャー・ギード・G」
未来だか過去だかわからない設定のアトランティスもの。
遊び心があって、余裕をもって書いている感じでなかなか楽しめました。

「バトン、バトン」
アシモフ得意の(この手の短編を最近何度も読んだ気がする...)マッドサイエンティストかつ若干ミステリーがかった作品。
本人いわく「ユーモア」を描きたかったとのこと。
力が入り過ぎるとだめな感じがします、今一つかなぁ...。
「猿の指」
SF作家と編集者をめぐるドタバタをユーモラスにという感じですが、パンチが今一つかぁ。

「エヴェレスト」
エヴェレストが初登頂される前に書かれたお話。
アイディアだけで書いたなーという感じ。
ある事情から「エヴェレストは決して登頂されないだろう」と書いて売った2ケ月後にはテンジン・ヒラリーが初登頂を果たしています。
本人もよく講演で引き合いに出している作品とのこと。

「休止」
これも「核」への恐怖が行き過ぎている作品。
展開も安直といえば安直
現代でも「核」はもちろん恐怖なんですが、麻痺しているんでしょうね。
70年代くらいまでは米ソ冷戦という単純な構造だったので「核」に目がいったんでしょうが、現代は群雄割拠ですから人間ドラマ的な方に主題が移っている気がします。

「望郷」
これも「核」もの。
いろいろ心配だったんでしょうね。

「それぞれが開拓者」
ある惑星に不時着した宇宙飛行士がであったものは...。
アイディアは面白いと思いますが、前段の伏線があまり生きていない感じ。
ちょっと雑か?

「空白!」
タイムマシンもののショートショート、ちょっと安直な感じ。

「蜜蜂は気にかけない」
アイディアも面白いですし、なかなかフンタジー。
短くまとまっていていい作品と感じました。

「ばか者ども」
ショートショート、初期短編集で出てきた銀河連盟ものの設定か?
アシモフ本人も言っているようにこれも「核」危機感もの。

「木星買います」
タイトル作品なので期待をして読んだのですが...。
肩すかしにあった気分です。

「父の彫像」
タイムマシンものの変形、マッドサイエンティストものもちょっと入っているか。
アシモフ、なかなかストレートにタイムマシンもの書きませんね。
着想面白いなと思いました。

「雨、雨、向こうへ行け」
SFというかファンタジーという感じ。
ブラッドベリが書いたらもっと詩情が出るんでしょうが...。
アシモフはこの手の者苦手な気がします。

「創建者」
アシモフがSFから遠ざかっていた時期にお題を与えられて書いた作品とのこと。
ちょっと無理があるような感じを受けました。
「地獄への流刑」
久々にキャンベル向けに書いた作品。
オチありきですが、キャンベルが掲載誌の紹介文でばらしてしまったとのこと。
知ってしまったら興ざめですね、でもまぁその程度の作品ということ。
「問題の鍵」
マルティバックもの。
ロボットものに近い味わいのショートショート、軽い仕上がり。
「適切な研究課題」
ショートショート、ミステリー的要素もあるか?
まぁライトな作品ですね。

「2430年」
1984的管理社会を描いたショートショート。
アシモフらしい科学的な根拠に基づいた数字が妙に生々しくて不気味です。

「最大の資産」
2430年が出版社に不評で、同じ「2430年」のお題で少し明るく書き直したもの。
アメリカンな味わいですが、まぁいい作品だと思いました。

「好敵手」
宇宙旅行もの。
軽く楽しめる作品、スマートにまとまっています。

「チオモリン、星へ行く」
チオモリンもの。
広瀬正の短編に同じような展開があったような....。
これも軽く楽しめます。

「光の韻律」
ロボットもの。
USロボット社やトラヴィス技師が出てきます。
「われはロボット」の世界観を引き継いだ作品、ミステリ仕立てです。
本人いわく2時間半で仕上げたとのこと。
そうは思えない出来ではありますが、オチは途中から予想がつきました。
(21世紀の読者はいろんなものを読んでスレています。)

この作品集も絶版ですが、これを復刊する意義は.....まぁないでしょうねぇ。

それより「鋼鉄都市」「神々自身」を復刊して欲しい。
ハインラインの長編などはまだ結構残っているのにハヤカワ文庫のアシモフラインナップかなり細っていてさびしい。


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もうひとつのMONSTER ヴェルナー・ヴェーヴァー 浦沢 直樹著 長崎 尚志訳 ビッグコミック 

2013-03-06 | 日本小説
漫画のMONSTER最終巻にこの本の宣伝があり読了後ついつい買ってしまいました。

普通の本屋さんにはないだろうなぁと思いamazonから購入。

成り立ちからしてそれほど売れなさそうな種類の本のような気がしましたが、奥付を見るとなんと22版!
私と同じようなミーハーがいっぱいいるんですねぇ。

内容は、MONSTERの一連の事件を事実と見立てて、他の事件との関連性に着目したドイツのジャーナリストが事件を追ううちに....というもので一応ドイツ人ジャーナリストが書いたノンフィクションというスタイル

単純なノベライズでないところがミソですが、MONSERと重なる(というか説明している)ところが多く漫画を読んだ直後だと結構まだるっこしい点は多々あります。

チェコ(スロバキア)とドイツの歴史の説明、ヨハンの母やボナパルトの父親の話などは興味深かったですが、もうひとりのモンスターは消化不良というところでしょうか。

まぁ漫画の方も消化不良なんですが、漫画ならいいけど小説ならもう少しなにやらしてもらってもいいような...。

MONSTERの余韻に浸るにはいいですが単体ではいまひとつかなぁという感想。

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