しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

クムビ ゲンナージー・ゴール著 飯田規和訳 世界SF全集24 早川書房

2018-12-30 | 海外SF
神様はつらい」を読むのために借りた「世界SF全集24」でしたが、せっかく借りたので収録作、他2篇も読んでおこうということで読みました。

1963年刊行の作品、著者のゲンナージー・ゴールは日本ではほぼ無名(多分)ですが、1907年生まれということですから本作書いた段階で55歳とベテラン作家。
戦前から非SF作品を発表していたようです。
第二次大戦中は有名なレニングラード攻防戦に義勇軍として参加。
戦後に科学者たちが主人公として登場する作品を書き出し関心がSFに向かったとのこと。(解説より)

私と同じく「神様はつらい」目当てでこの本を借りた人のネット上の感想見るとこの「クムビ」の評判が高かったです。

訳者の飯田規和氏は旧訳版の「ソラリス」を訳した方で訳は収録3作中一番の出来と思いましたし、それなりにうまくまとまっている作品とは感じましたが、私的にはもう1作の「自己との闘い」の方が好みでした。

内容紹介(これまた独断です)
共産主義が普及しそれなりに平和で幸せな地球。主人公、ヴォルフガング・ゲーテの父は時間研究所の所長として、遠く離れた未知のウアザ惑星からくる信号解読を行っていた、ウアザ惑星ではどうやら「無生物」の概念がないらしい。長じて時間研究所につとめたゲーテは、ウアザの「無生物の概念がない」という考え方に刺激され時間研究所で研究されている記憶・脳に関する研究、人口人格「クムビ」、死者の脳を人工的な再現、過去の完全な記憶を持ち決して忘れることのない人物クムビ(代償として人間的な感情が薄い)の調査に関わっていた。そんななか謎であった地球人よりも相当に数万年以上進歩している文明をもつ地球人そっくりの要望をもつウアザ人が直接コンタクトしてきた。
ウアザ人に「無生物」の概念がないというのは信号を誤解したものであるらしいかった。
資本主義を克服し共産主義が勝利し生物学・医学が勝利したウアザでは老化を克服し500歳以上生きても「青年」であるウアザ人の知識を、地球人は取り入れて新たな段階に...。


本作はあまり有名ではなく情報入りにくいかと思いましたので思いっきりネタばれで最後まで内容紹介いたしました。

全体的に文章は詩的で、主人公(少年⇒青年)ヴォルフガング・ゲーテの成長とどことなく詩的な感想などは、ブラッドベリ調(私がそんなにブラッドベリを知っているわけではないですが....一般的表現として)で美しいです。(訳文がいいのかもしれませんが)

ただ「中編」の長さで、「無生物の概念がない」や「人口人格」「死者の脳の人工的復元」「絶対記憶者」、長寿化した「ウアザ人」など盛り込みすぎでそれぞれのテーマの書き込みが深まっていないように感じました。

特に「人口人格」「クムビ」については主人公が同期してクムビの意識を体験する場面があり、かなり思わせぶりなのですがその後なにも語られずに終わります....。

死者の「ヴォロージャ」の人格を再現した「存在」と主人公の会話なども独立して読むと面白いのですが全体的なつながりが「???」でした。

異星人の体制にまで及ぶ共産主義礼賛は当時の体制としてはしょうがないとしても、長寿を達成したウアザ人が全くの「善意」で地球人にものを教えるというのは、現代の目から見るとご都合主義的には見えます。
(余談ですが寿命の克服、人間改造テーマ出てくると「最後にして最初の人類」が頭に浮かびました、今後この辺のテーマ出てくる度に浮かびそう)

1960年代という時代を考えると、いろいろなアイディアが盛り込まれていて、ゲーテ君の成長と恋愛成就含め「物語」としてそれなりに楽しめますが...。

現代的意味ではそれほど読む価値ないかなぁというのが感想です。
(もちろん本書を読む機会のある方は読んでみて損はないとは思いますよ~)

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