しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

終わりなき戦い ジョー・ホールドマン著 風見潤訳 ハヤカワ文庫

2013-10-31 | 海外SF
宇宙の戦士」「エンダーのゲーム」と並び、戦争SFの名作と名高い作品です。
‘12ローカス誌 オールタイムベスト13位、ヒューゴー、ネピュラ賞他受賞。
1974年発刊。
「宇宙の戦士」読了後に気になっていたところ川崎のブックオフで見かけ500円で購入。

内容(裏表紙記載)
画期的な新航法“コラプサー・ジャンプ”の発見により、人類の版図はいっきょに拡大した。だがその過程で、正体不明の異星人“トーラン”と遭遇、全面戦争に突入する! 過酷な訓練を受け、殺人機械と化した兵士たちが、特殊スーツに身を固め辺境星域へと送り込まれるが、戦況は果てしなく泥沼化していく・・・・・・俊英が壮絶なる星間戦争を迫真の筆致で描き、ヒューゴー、ネビュラ、ローカス賞を受賞した傑作戦争SF

とりあえずの感想、ちょっと淡白かなぁ。

初章「マンデラ二等兵」での訓練と最初の闘いの場面にはかなり力を入れて書いている感じで読み応えがありましたが、それ以降はディストピア小説なのか戦争小説なのかよくわからなくなる...。
恋愛小説でもあるような。

ただどの要素も書き込みが足りない感じでどうにも納得感が得られませんでした。
発しているメッセージはともかくとして、小説としては断然「宇宙の戦士」の方が面白いと思いました。
評価の高い作品なので期待し過ぎていたのがいけなかったのかもしれませんが…。

ベトナム戦争に従軍した著者の経験を生かした処女長編のようですので、熟練より「鮮度」で味わう作品なんでしょうがそれにしても淡白すぎる気がしました。
解説やら評価をいろいろ見ると「戦い」よりも、本人が宇宙を移動する影響で1100年に渡る戦いに参戦した主人公と時間経過による社会・文化の変化が読みどころのようです。

主観時間で7年程度しか経過していない主人公の1000年以上の時間経過の経験は確かに悲愴ですが、私にはどうも感情移入できませんでした。

ベトナム戦争を体験したアメリカ社会では行間に流れる何かが評価されるような作品なのかもしれません..。

あと過剰な性風俗に関する描写も解説読むと執筆当時の時代背景が影響しているようですが、今読むとあまり...。

「戦争小説」としては、実経験7年のマンデラ二等兵がいつの間にかマンデラ少佐となり一軍を指揮する苦悩などなかなか面白かったので、戦争SFに徹した方が読みやすかった気がしますが、まぁそうならなかったのがこの作品の味なのでしょう。

ということで、悪口ばかり出て来ましたが期待して読んだから「???」なのであって、気楽に読めばそれなりに面白い作品だと思います。
「さら~」と読めましたし。

ホールドマン、本作と同じ世界観の「終わりなき平和」でもヒューゴー・ネピュラダブルクラウンに輝いている作家ですし力量のある人なのでしょうけれど、まぁ私と(読む時期も)合わなかったんでしょうねぇ。

ということで感想も淡白に....。

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母なる夜 カート・ヴォネガット・ジュニア著 飛田茂雄訳 ハヤカワ文庫

2013-10-24 | 海外小説
前も書きましたがヴォネガット作品にはまって、SFではない本書を手に取りました。

本作、今年の「ハヤカワ文庫の100冊」に選ばれているようで帯がついて新装版が平積みされている本屋もありましたが、別の本屋で旧版での入手です。
(この本屋ガラパゴス的な文庫の在庫が置いてある穴場で、ちょっと嬉しくなる。)

本作「タイタンの妖女」の後、1961年に刊行されています。
訳本としてはこのハヤカワ版の他、池澤夏樹氏訳の白水版が存在するようです。

内容(裏表紙記載)
第二次大戦中、ヒトラーの擁護者として対米宣伝に携わったハワード・W・キャンベル・ジュニア―――はたして彼は本当に母国アメリカの裏切り者だったのか? 戦後15年を経て彼の脳裡に去来するものは、生真面目な父、アルコール依存症の母、そして元美人女優の妻ヘルガへの思いだった・・・・・・卓抜なユーモアとシニカルなアイロニーに満ちたまなざしのもとに、時代にもてあそばれた男の内面を自伝のスタイルで描いた感動の名作。

上記が内容紹介ですが果たして「感動」の名作なのだろうか?....。
「名作」だとは思いましたが。

本作は、SFっけのない現代小説でいかにもヴォネガット的な語り口で書かれています。
中盤若干もたつき感がありますが、意外な展開が続き、はらはらどきどき面白く読めました。
「面白さ」という点では次作の「猫のゆりかご」の方が上な気がしますが、SF的仕掛けのないストレートな展開でわかりやすい作品になっていると思います。
ひとことで感想をいうと....「割り切れない」という感じでしょうか。

ヴォネガットの作品はこれで4冊目ですが、基本スタンスは同じな気がしました。
人生の「目的」とはなにかということと、「意志」で環境もしくは運命を変えることが可能なのかというのが基本テーマでしょうか。
主人公の男性は割り切れない状況で、どうにもならずどんどん悪い方向に向かい最後までどうにも割り切れない状況で終わりを迎える。
という同じような作品なのですが、このトーンが気になり読み続けてしまう...。

登場する男性は割り切れない状況に陥りますが、一方で作中女性の方は割とスッパリ状況を決めて飛び込んでいったり、自己完結(死んだり)していくというのも共通点なような気もしました。
そういう意味では女性に優しい作家なんでしょうかねぇ。

さて、本作の主人公キャンベルは状況に流されるまま、本人が思ってもいないことを書いたり言ったりしてナチスへ協力します。
本気で「やりたい」ことではないのですが、優秀なだけにとても「うまく」。
自分でも「くだらないことをやっている」ことを認識していて、「僕が悪いんじゃなく状況が悪いんだ」と考えている。
その一方、なんだか流されてアメリカのスパイとしても働いている。
(こちらもなにか目的とか意志があるわけでない)

主人公の状況なんだかよくわかる....。
中年サラリーマンたる私は多かれ少なかれこんな感しじゃないでしょうか?
「こういう大きな事業を立ち上げたいんだ」という目的をはっきり持っているわけでなく、「なにがなんでも偉くなってやる」というような意志もない。
そうはいいながらもそれなりに真面目に仕事していたりする。

「目的」を組織に丸投げしている人間が、徹底的に裏目な状況に陥ってなにもなくなったら...どうなるか?
キャンベルは愛する妻も戦中に失うわけですが、愛する家族さえもなくなってその時自分はなにを目的に生きるのか?....重いですね。

印象に残った場面、

キャンベルが「僕の頭の歯車は、ナチスの狂信者などと違い欠けていたりするわけでなく本当は何かをわかって上でしかたなくやっている」と独白している場面。

でもキャンベルがやったり言ったりしたことは狂信者と変わらないことを、かなりうまくやっている...。
「歯車」がどこかで欠けていなければ信念「目的」など持てないのか?
「自分の歯車が正常」などというのは妄想で、いいわけなのか...。
どうなんでしょうねぇ。

あとキャンベルが、「何をやってもいい」といわれて放り出されて「自分がなにをやりたいのか?」「どこに行きたいのか?」わからなくなり立ち尽くしてしまう場面。
これもなんだかわかるなぁ....私だったら「とりあえず飲む」かなぁ(笑)

作中クライマックスで、主人公の妻の妹「レシ」は最後に「猫のゆりかご」のモナとほぼ同様の行動をする場面。
「猫のゆりかご」ではその後主人公はボコノン教に救われるわけですが「何かを信じる」意志のないキャンベルは立ち尽くすだけ...。

最後は自分で自分の状況を決めてしまおうということになるのですが、どうにも割り切れないラストな気がします。
「“罪”の反対は“罰”?」などという人間失格の一節が浮かびました。
(そういう意味では割り切れているのかもしれない)

本作ヴォネガット版「罪と罰」なのかもしれないなぁなどと思いました。

自分の「歯車が正常」と思っていて、なんだか「やりたくないことをやっている」と感じている人にお勧めです。
日本のサラリーマンは殆ど?(笑)

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日本ミステリーベスト100(週刊文春版)のことなど

2013-10-22 | 本リスト
どうも私は誰かが「まとめて」順位をつけたものを眺めるのが好きなようです。
ということで標題も眺めてみたのでご紹介まで。

「ミステリー」はその性質上「謎解き」をメインテーマとする点でSFや一般小説より様式を縛られたジャンルだと思っています。
その分はまると様式美的な美しさにあふれたすばらしい作品になりますが「謎解き」ありきで小説としては「ぐちぐちゃ」もしくは「小説」としては出来が良くても「謎解き」がぐちゃぐちゃで「ミステリーとしてはどうも...」という作品も出てきやすいイメージがあります。
なお、私の頭はそれほど論理的でないのでどちらかというとロジックメインの作品は苦手です。

ストーリーで読ませる小説は常にある程度謎解きの要素があるような気もしますけれども...。

ということでミステリは好きではありますが「ファン」と言い切るには「違和感があるなぁ」という人の戯言です。

この「ベスト」の元ネタは週刊文春2013年1月号で発表されたもの。
「東西ミステリーベスト」で検索するとwikipediaで出て来ます。
wikipediaによると。
「推理作家や推理小説の愛好者ら約500名がアンケートに回答し、結果は『週刊文春』1985年8月29日号および9月5日号で発表された。1986年12月には文藝春秋編『東西ミステリーベスト100』として文春文庫より刊行された。
2012年、週刊文春2013年1月4日臨時増刊号として、リニューアル版が27年ぶりに刊行された。」

というもの。
なおこの2012年版も今年11月に文春文庫で「東西ミステリーベスト100」として発刊されるようです。
創元の「虚無への供物」の帯に「ミステリベスト 2位」との帯がついていたりしたので、セールス的には結構影響力あるんでしょうね。

ということでリスト(日本の作品)
既読は21作品、青で塗りました。

21作品、それなりに読んでいる(古いものがほとんどですが...)でしょうか?
割合的には国内SF長編の50作品中14作品よりは若干少ないですね。
作家別にみると、3作品以上ランクインしているのが
・5作品 横溝正史
・4作品 泡坂妻夫
・4作品 島田荘司
・4作品 宮部みゆき
・4作品 江戸川乱歩
・4作品 京極夏彦
・4作品 綾辻行人
・4作品 山田風太郎
・3作品 松本清張
・3作品 高木彬光
・3作品 鮎川哲也
の各氏。

横溝正史はリスト5作品全部読んでいる。
この5作品しか読んでいないのでまさにピンポイント。
「獄門島」「本陣殺人事件」以外は角川映画の影響です...。
横溝正史は非常に論理的な謎解きをする作家で、かつストーリーも破綻がない。
日本の作家はどちらかに流れる傾向がある中、稀有な作家だと思います。
(と坂口安吾もいっていた)
ただ、明晰すぎて「感動」とか何度も「読み返す」という気にならないのが難点な気が...。
一読後相当の期間読んでいないので読み返してみようかなぁ。

島田荘司、泡坂妻夫、綾辻行人、鮎川哲也はここに出ている作品以外読んだことがない...。いわゆる「本格」な人達で、「本格推理小説」が苦手な私にはどうも敷居が...まぁそのうち。

宮部みゆきは割と好きで何作か読んでいるのですが、最近のものを読んでいないのでランクインしている作品はすべて読んでいない...残念。
多作家ですしねぇ。

江戸川乱歩は、おどろおどろしい「雰因気を楽しむ」にはいいのですが純粋に推理小説としてみると現代的にはきつい感じがします。

京極夏彦は1作しか読んでいません。
面白かったのですが、それほど何作も読もうという気にならなかった...。
なんだか健康的すぎるような印象があります。
もっと何かこう屈折したものが欲しいような気がします。

山田風太郎の4作品ランクイン、「意外」(ミステリという意味で)ですが、最近再評価されている作家なんでしょうね。
私の世代だと、どうも「お色気忍法帳」の人というイメージが強くて...ミステリー作家のイメージがない。
「警視庁草紙」は実家にあった(未読)ので今度持って帰って来ようかなぁ。

松本清張はどうも受け付けない...。
昔(中学時代だ、30年前)「或る小倉日記伝」を読んでいいなぁと思い「点と線」を読んで???でした。
なんだか厳密すぎる文章にどうも遊びを感じられず、基本「謎解き」であるミステリーだとゴツゴツしたイメージを受けたような気が...。
他の作品を今読めば違うのかもしれません。

高木彬光は一時期かなりはまって読みましたのでランクイン作品は全て読んでいます。(その他も結構)
デビュー作「刺青殺人事件」を坂口安吾が絶賛していて読み始めました。
余談ですが、なお私のミステリ読書体験にはかなり坂口安吾が影響しています...。

安吾氏、前段の松本清張の「或る小倉日記伝」を評して(確か芥川賞選考委員かなにかだったらしい)「探偵小説を書ける文章だ」と評しています。
自身も「不連続殺人事件」(ランク入りしている)「復員殺人事件」「安吾捕物帳」とミステリー書いてますし好きだったんでしょうね。

さて、高木彬光、ちょっと「運命論的」かつ「教訓的」なところが鼻につく所もあるのですが、基本読ませる作家だと思います。
(その辺も坂口安吾はすでに懸念していた)
SFで言えばスコット・カードのような感じでしょうか?

西村京太郎、和久峻三など結構好きで読んでいたのですがまったく名前がありませんね。
あとは赤川次郎も入っていないし...。
高橋克彦氏など乱歩賞作家が少ないような気がします。
マニア受けしないんでしょうかねぇ。

日本SF長編ベストでも書きましたが、この手のベストをやるとスタンダードな作品が上位に来る傾向がありますね。
・1位 獄門島
・2位 虚無への供物
・4位 ドグラマグラ
・6位 点と線
この辺。
ただしSFと違って、3位に「占星術殺人事件」島田庄司、5位「火車」宮部みゆきと新しめなものも上位に入っているのがモダンなところ。
この2作、機会があれば是非読んでみたいところです。
(1985年のランキングでは、1位 獄門島、2位 虚無への供物、3位 点と線、4位 不連続殺人事件、5位 黒死館殺人事件、6位 ドグラマグラとガチガチにスタンダードな作品しか入っていなかった!)

「虚無への供物」も読み返したいなぁと思ってはいるのですがなかなか手がつきません。
(この作品は三島由紀夫が激賞したことで有名ですね)

「私的」に読んだ作品のベストを付けるかというと...「ミステリー」を評価できる自信がありません。
小説としては、先日の「私的日本小説番付」に挙げた「ドグラマグラ」「空飛ぶ馬」が上位に来る気がしますが、ミステリーというか「推理小説」としては「獄門島」の方が上というのもわかる気がします。
本格では有栖川有栖なども「謎解き小説」として結構好きなのですが、何回も読み返したくなる小説としては評価できない...。

なかなか難しい...。

まぁ簡単ですがこんなところ感じました。

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月は無慈悲な夜の女王 ロバート・A・ハインライン著 矢野徹訳 ハヤカワ文庫

2013-10-17 | 海外SF
猫のゆりかご」の後は、またヴォネガットの作品を読もうかとも考えたのですが、今年の読書重点課題「海外SF長編」を優先しガチガチに「SF小説」であろう本書を読み始めました。

‘12年ローカス誌オールタイムベスト12位、’06年SFマガジン26位と巨匠ハインラインの代表作として評価の高い作品です。
1966年発刊、ヒューゴー賞受賞作品。

先月東京駅八重洲地下街の古本屋R.S.Booksで見かけて700円で購入。
(このお店品ぞろえ少ないですが、なかなかいい感じの品ぞろえでした。)

本作の存在は昔から知っていましたがこのように

分厚く、敬遠していました。
ハインラインの後期の作品はどれも量がすごいですよね....。

内容(裏表紙記載)
2076年7月4日、圧政に苦しむ月世界植民地は、地球政府に対し独立を宣言した!流刑地として、また資源豊かな植民地として、月は地球から一方的に搾取されつづけてきた。革命の先頭に立ったのはコンピューター技術者マニーと自意識を持つ巨大コンピュータのマイク。だが、一隻の宇宙船も、一発のミサイルも持たぬ月世界人が強大な地球に立ち向かうためには・・・・・・ヒューゴー賞受賞に輝くハインライン渾身の傑作SF巨編。

感想、自意識を持ったコンピューターと主人公の連携やら、チームを組んでのミッション達成などはいろいろなSFで使われていて仕掛けとしては陳腐化しているなぁということ。
最近読んだ中では、コンピューターとの関連では「死者の代弁者」、チームを組んでのミッション遂行型ストーリーとしては「プロテウスオペレーション」が浮かびました。
まぁそれだけこの作品が偉大で模倣されているということでしょうが...現代では魅力がスポイルされているのは否めません。

その他、かなり長い割に伏線を使いきれていない感じがしました。
例えば登場人物では、「ヘイゼル」など「夏への扉」のリッキーばりの少女キャラで活躍するかと思ったのですが...。
あと不良少年「スリム」も意味ありげに登場させてますがどうも使いきれていなかった気がします。
(二人はラストで月的に結ばれている感じですので、本当はロマンスを書きたかったのかもしれませんね...)
他にも同様に伏線を回収しきれていない部分があるように感じました。

あとは...「いかにもアメリカ!」という感じの「自己責任」思想と、ハリウッド映画ばりのスペクタルな情景。
わびさびとは無縁な展開でいかにも...アメリカで人気があるのがわかる気がします。

ということであまりいい印象を持てず「読み通すのつらいなぁ」と感じながら読んでいたのですが最後のクライマックスの緊迫感と爽やかで、なんとも情感あふれるラストとでなにやら全て許せる気になってしまいました。
「マイク」に会いたい...。(笑)
まぁさすが巨匠というところでしょうか?

宇宙の戦士」でも感じましたが、ハインラインの作品に出てくる主人公は「のらくろ」型というか「坊ちゃん」型というか、なんだかとても愛嬌があって前向きで憎めない...。
魅力的です。

この作品、ほぼこの主人公のキャラでもっていた気がします。
フレドリック・ブラウンの「宇宙の一匹狼」や「天の光はすべて星」の主人公もこの型だったなぁなどとも思ったりしました。
アメリカ人に愛されるキャラなのかもしれませんね。

まぁいろいろ書きましたが、ちょっと時代を感じますがまぁ面白いお話と思いますし「SF」の歴史を感じるにはいい作品だと思います。
何より勢いのある展開、文章はハインランならではでしょうね。

最後余談ですが、訳者の矢野徹のアイディアなんだとも思いますが、タイトルの「月は無慈悲な夜の女王」絶妙ですね。
原題"The Moon is a Harsh Mistress”、直訳すると「月はいやな女だ」になりそうな気がしますがこれじゃ味わいないですよね(笑)

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猫のゆりかご カート・ヴォネガット・ジュニア著 伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫

2013-10-11 | 海外SF
「スローターハウス5」は「つまらない」という感想でしたが...。
この作家の出すトーンが私の最近の気分にははまっていて、他の作品も読みたくなり職場近くの本屋で新品を購入。

これも「SF」というには「?」な作品の気がしますが‘12年ローカス社オールタイムベスト45位にランキングされています。
1963年出版で、「タイタンの妖女」が1959年出版、その後長編としては「母なる夜」を挟んで出版された作品です。
本作の後「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」を挟んで「スローターハウス5」が1969年に出版されています。

内容(裏表紙記載)
わたしの名はジョーナ。「世界が終末をむかえた日」の執筆準備にとりかかったのは、キリスト教徒だったころのこと。いま、わたしはプエルト・リコ沖のサン・ロレンゾ島にいて、禁断のボコノン教を奉じている。ボコノン教に入信したそもそものきっかけこそ、ほかならぬ未完の大作「世界が終末をむかえた日」なのだった・・・・・。シニカルなユーモアに満ちた文章で定評のある著者が奇妙奇天烈な世界の終末を描いたSF長編。

解説で、主人公「ジョーナ」の名前が旧約聖書の預言者「ヨナ」にちなんでいると書いてあり、「ヨナ書」をまたネットでちらっと調べてみましたがなんとも割り切れない話ですねぇ、この作品との関連もありそうで、なさそうで...旧約聖書奥深いです。
解説ではヨナ書と「白鯨」の関連が書いてあり、作中出てくるクジラの形の山の上に銛の形の岩が飛び出ているのを例として上げています。

さて、読後の感想....。
「おもしろい」(笑)

細かく章立てしていますが、章ごとに次が気になるように仕掛けられています。
この辺村上春樹的です。
村上春樹氏がどこかで「意図的に次が気になるように書いている」と書いていましたが、その辺はこの作品のパクリなんじゃなかなどと思ったりしました。
ノンポリ的かつ巻き込まれながらも踏み込んでいってしまう主人公一人称で話が進むのも村上春樹風です。
内容的にはとんでもないことを書いていて面白くなりそうもないのですが、「面白くしようとすりゃ簡単なんだよ」とヴォネガットが舌を出しているような気がしました。

一応ボコノン教を通じた宗教とか、冷戦を背景とした政治、科学の在り方といったものがテーマなんでしょうが、徹底的にあられもなくあっけらかんと書いているので、読んでいる方もあっけに取られてしまい感想がうまくまとまりません...。
とりあえず非常に絵画的作品で印象に残るシーンの多い作品と感じました。
いろんな状況が目に浮かんでくきます、絵的に印象に残っている場面は、
・ハニカー博士があやとりで「猫のゆりかご」を作り息子ニュートに見せている場面
・主人公がハニカー夫人の墓石の形を見てあっけに取られている場面。
・ボコノン教徒が足裏(ソウル)をくっつけあうボコマルをしている所
・最後の砦が壊れる場面
・大使夫妻が泰然として死んでいくところ。
・アイスナインで凍りついた世界
・アイスナイン結晶を舐めるモナ。
とかとか。
マンガにしたら面白いような気がします。
表紙を和田誠氏が書いていますがこの作品、挿絵を和田誠氏の絵でつければぴったりはまる雰因気ですね。
他、印象に残っている場面としては
セクシーで主人公の理想の女性として描かれていた、モナの最後の変容ぶり。
「愛」とは...ということをなんだか考えました。

誰が大統領になっても社会構造がかわらなければどうすることもできないところ。
ボコノン教的虚無感ですね、確かに世の中そうかもしれないなぁという気もしてきます。

ラストは世界が破滅的被害を受けている割にはかなり明るいラストで読後感もなにやらさわやかで、「おもしろさ」でさくさく読めてしまいますが、それだけではない「なにか」が心の中にわさわさと残る作品です。

間を置いてまた読まないと感想がまとまらなさそうです。

SF度はかなり薄いですけれども。

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