しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

国内SF長編オールタイムベスト考

2013-08-21 | 本リスト
海外ベストについては前に書きましたが、日本SF長編ベストについて06年SFマガジンのランクを基に考えてみました。
とりあえず基になるリスト。
既読のものを青色に塗ってみました。

52作品中14作品、1/4強、意外と読んでいない...。
まぁ日本のSFは中学生くらい、1985年くらいまでしか読んでいなかったので新しいものは殆ど読んでいません。

海外長編にならい作家別ランクイン作品数
1位 6作品 神林 長平
2位 5作品 小松 左京
3位 3作品 筒井 康隆
 〃 3作品 半村 良
 〃 3作品 山田 正紀
神林長平、山田 正紀を除くと、SF第一世代が強い。

漫画でいうと手塚治虫、石森章太郎、藤子不二雄あたりががんばっているイメージでしょうか。
前述の通り30年位日本SFをまともに読んでいないので、神林長平も山田正紀も読んでいません。
いずれ読んでみたいところです。

というあまり読んでいない私がこのリストをざっと見てまず思ったこと....。

1位に光瀬龍「百億の昼と千億の夜」2位に小松左京「果てしなき流れの果てに」が入っていますが....。
この2作が1、2位というのがどうも納得できない。

2作とも既読ですが、どちらもその当時の日本SFにありがちな無理やり話を大きくしていた作品な印象があります。
(どちらかといえば「百億の昼と千億の夜」の方が上な気もしますが....。)
この当時の日本のSF長編は大体後半とっちらかってくるんですよねぇ。
日本人が長編苦手ということもありそうですけれど。

他「果てしなき流れの果てに」はアシモフの「永遠の終わり」にインスピレーションを受けていたのではないかと感じた記憶があります。
小松左京の初期長編は海外SFの影響をかなり受けている気がする....。
当時のレベルでは傑作だったんでしょうが、現在のレベルで評価してそこまで高く評価されるべき作品かどうか???。
今読んだらずっこけそうな予感がします。

ということでこの2作がオールタイムで1、2位というのはどうにも...。

前述のとおり最近のSF作品を殆ど読んでいないわけですが、このリストで多くの作品をランクインさせている神林長平氏などの方がレベルの上なんじゃないかなぁという気がする。(未読ですのであくまで多分)

というか超えていなければ「このジャンル駄目だろう」という話でもあるような...。
先人への尊敬の念は別としてどうにも異和感があるランキングです。

ちなみに私の既読作品で個人的に順位をつけると、
1位 世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
まぁ村上春樹の代表作といってもいいでしょうしネ。
2位 ドグラマグラ
これも、日本の名作100とか企画をしたら入りそうな気がする。

上二作は果たしてSFなのか?という話にもなりそうですが...。

3位 マイナス・ゼロ 
大好きな作品です、主観的にはこれが1位かなぁ。
世界中で好きなSF二作選べと言われれば「夏への扉」とこれだなぁ。
SFマガジン以外のこの手の企画では1位になっていたりもする名作です。
最後まで破綻なく丁寧にまとまっています。

4位 第四間氷期 
よく覚えていませんが面白かった思い出がちらり。
これもSFなのか???ですが...安部公房好きだったなぁ。

5位 日本沈没 
偶然東日本大震災の前の日に読み返していて、すごい怖かった...。
小松左京ではこれがベストな気がします。
後半ぐたぐたというのは共通点ですが...飽きちゃうのかなぁ。

6位 永遠の森 博物館惑星 
文庫発売時ふと目につき手に取り読みました。(調べたら2004年ですね)
宇宙船ビーグル号を思い出しましたが...最近の作家らしくスマート。
良作だと思います。

7位 百億の昼と千億の夜
萩尾望都のマンガの方が上なような気がしますが...。
小説に拘らないなら「スターレッド」が上位に来てもいい気がする...。
光瀬龍だと「征東都督府」の方がより無茶苦茶で好きだったような記憶があります。
でもこの系統だと矢野徹の「折紙宇宙船の伝説」の方が好きかなぁ。

8位 半村良(産霊山秘録、石の血脈)
この人はエンターテインメントに徹しているのでそこそこ面白かった記憶はあります。が、「名作」というとなんだか違う感じがします。

9位 小松左京(果てしなき流れの果てに、復活の日、継ぐのは誰か、日本アパッチ族)
日本沈没は日本化した作品ですが、この辺は海外SFの翻案という感じがしてならない。
・果てしなき流れの果てに→永遠の終わり
・復活の日→渚にて
・継ぐのは誰か、日本アパッチ族→スラン、人間以上等ミュータントもの。
あくまで個人的感想かつあまり覚えていないのでいい加減です...。

ブックオフで「復活の日」をぱらりと読んだら面白そうではあったので今読むと感想違ってくるのかもしれませんが。

位外 BRAIN VALLEY
この作品がここに入っているのは....。
 
ここまで書いて気付いたのですが、20年ほど前にけっこう日本SFを読んでいた私からすると「普通これが入るだろう」という作品が抜けているので反発を感じているのかもしりません。

ちょっと思いつくだけでも
筒井康隆は後期の作品が入っていますが、「家族八景」とか、時を超えてポピュラーな「時をかける少女」(多分このリストの全作品より有名な気がする)など初期作品。
半村良なら「闇の中」シリーズの方が良かったような。

小松左京は....浮かばない(笑)、代表作大体入っているし。
なんでこの人だけいっぱい入っているのか???。

リストアップされていない作家では平井和正「死霊狩り」「ウルフガイ」あたり豊田有恒だと「モンゴルの残光」。(なんで入っていないんだろう...)
あと星新一、短編作家の位置づけなんでしょうが、日本SFへの貢献度を考えれば「夢魔の標的」か「声の網」などを挙げてもいいような...。
どうも釈然としない....。
日本の作品は日本人だけに思い入れが深いためかでいろいろ考えてしまいます。

いまはSF海外長編で手一杯ですが、時間ができたら山田正紀「神狩り」、神林長平「戦闘妖精・雪嵐 <改>」辺り是非読んでみたいです。
両方未読の作家なので楽しみだ。

あとは眉村卓「消滅の光輪」筒井康隆の「虚構船団」椎名誠「アドバード」なども気になります。
読みたい本はまだまだいっぱいあるのでしばらく(一生?)時間はつぶせそうだ。
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ボッコちゃん 星新一著 新潮文庫

2013-08-20 | 日本SF
海外SF長編ばかり読んでいたらなんだかお腹いっぱいになってきたため、お茶漬け感覚(失礼かしら?)で星新一のショート・ショートを手に取りました。
代表的作品集(と思う)「ボッコちゃん」が大森のブックオフで105円で売っていたため購入。

昭和46年文庫初版 平成5年1月で60刷

すごいロングセラーですね。

私も小学生の時初読で何回読んだかわからない本です。
真鍋博氏の表紙絵・挿絵がいい....

内容(裏表紙記載)
スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな風刺にあふれ、光り輝く小宇宙群! 日本SFのパイオニア星新一のショートショート集。表題作品をはじめ「おーいでてこい」「殺し屋ですわよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「狙われた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編

この本と「ようこそ地球さん」の2冊が星氏の最初期のショート・ショート作品集ということになっているかと思います。

世間ではなぜか「ボッコちゃん」の方を代表的作品集に挙げているようですが私は「ようこそ地球さん」の方が上だと思っていました。

2007年に「ようこそ地球さん」は読み返しているので記憶はそこそこ確かだと思うのですが、今回「ボッコちゃん」を読み返してもやはり「ようこそ地球さん」の方が上だなぁとは感じました。

まぁ星氏のショート・ショート集はどれも出来のばらつきが少ないので1冊挙げろというのは難しいのかもしれませんね。
「ボッコちゃん」がひどく落ちるというわけではありません。

ただし「ようこそ地球さん」でも感じましたが今読むと作品のばらつきは結構あるように感じました。
オチだけでもたせている作品などは「ちょっときついか?」と感じました。

まぁ私が「ボッコちゃん」何回目かの読者であり、過去かなりの数の星作品を読んでいるので大体パターンが読めているというのもあるかもしれんません....。
(大体素直に読まないでオチを推測して読んでいる...)

50編と大変ですが....一応作品ごと評価してみました。
(多いので簡単に)

「悪魔」
ボートで会った悪魔とのお話。
×
ほぼ最初でオチが読めました安直かな。

「ボッコちゃん」
酒場の女性ロボットのお話。
×
有名ですが....、私は安直な作品な気がします。
もうひとひねり欲しい。

「おーい でてこい」
神社で見つかった穴の作品

超有名作品でほぼ覚えていますが独特の味わいがあります。
再読しても新たな発見がありました、名作です。

「殺し屋ですのよ」
女性殺し屋のお話。
×
オチでもっている作品。

「来訪者」
宇宙から来た客は???

エスカレートしていく過程が見事。

「変な薬」
カゼになる薬のお話。

うーん微妙...。

「月の光」
老人と少女のお話。
×
情景描写効果を狙っているんでしょうがちょっと受け付けなかった。

「包囲」
駅のホームで押された男のお話

ミステリー、途中からオチが見えてしまった。
ブラウン風?

「ツキ計画」
宇宙開発のための「ツキ」

オチは見えますが発想が面白い。

「暑さ」
ある日交番に男が捕まえてくれと...。

これもオチは見えますが発想と不気味さがいい。

「約束」
子どもと宇宙人が交わした約束は?

オチは見えるが発想が面白い。

「猫と鼠」
25日にお金を受け取る男の運命は?

まぁミステリーなんだろうなぁ。
星作品にありがちな感じですがまぁありかと。

「不眠症」
どうしても眠れない男のお話。

オチが安直ですがまぁ発想面白いです。

「生活維持省」
幸福な社会を実現させている生活維持省のお仕事は?

力が入り過ぎている感じはしますがまぁよいのでは。
ブラッドベリ風?

「悲しむべきこと」
サンタクロースが訪れて金策を...。

う~ん。

「年賀の客」
お金を用立てた資産家はもともと...。
×
ちょっと力が入り過ぎて軽さがないかなぁ。

「ねらわれた星」
宇宙人が地球人を殺害するためにとった方法は果たして?

ちょっと安直すぎかなぁ、短い!

「冬の蝶」
電気生活は便利だが....。

これもちょっと力入れ過ぎな気がしました、ペットが猿というのも不自然な気がした。

「デラックスな金庫」
デラックスな金庫を持つ男のねらいは?

星作品らしい展開、ちょっと安直かなぁ。

「鏡」
鏡から出てきた悪魔を夫婦は....。
○~◎
出てくる夫婦の不気味さがいい。

「誘拐」
博士の息子を誘拐した犯人は...。

星作品らしい軽さと惨酷さはよく出ている。

「親善キッス」
宇宙人とキスをして喜ぶ地球人使節。

オチは見えるんですが、星作品らしい展開です。

「マネー・エイジ」
お金が大事な世の中

いい...ような気がする。

「雄大な計画」
ライバル会社のスパイをすることになった若者は...。

オチは見えますが軽妙な感じがいい。

「人類愛」
人類愛に燃える宇宙レスキュー。

ありがち...かな?

「ゆきとどいた生活」
なかなか起きない男が会社に行きますが...。

悪くない気もしますがちょっと安直かなぁ。
未来予想図的なものとしては○なんでしょう。

「闇の眼」
ある力をもつ男の子のお話。

これも力が入り過ぎていますが...まぁSFしています。

「気前のいい家」
泥棒に入られても気前のいい家、どうして?

星作品らしい展開、オチに頼り過ぎか?

「追い越し」
新車を運転するプレイボールが見たもの。
×
重いわりに安直なオチな気がする。

「妖精」
女性の前に現れた妖精の能力はライバルの...。

これまた星作品らしい展開、不思議な味わい。

「波状攻撃」
金繰りに困った男の前に現れて進めるものは。

オチは読めますが軽妙な展開がスマート。

「ある研究」
研究に熱中する男に妻は「そんなものより毛皮を」と...。

オチありきな話な気が...。
私は読めてしまいどうも乗れなかった。

「プレゼント」
核爆弾を使えるようになった地球人に宇宙人がある贈り物を...。

まぁありかとも。

「肩の上の秘書」
その時代の人間の肩にはロボットインコが...。

皮肉な展開、結末がいい。

「被害」
泥棒が金庫を開けて...。

安直なオチかなぁ。

「なぞめいた女」
記憶喪失の女は実は...。
×
安直かなぁ。

「キツツキ計画」
犯罪目的で鍛えたキツツキが最初に...。
×
安直なオチ。

「診断」
妄想を持った青年が入院していて...。
×
オチのピントがずれている気がする。

「意気投合」
二千光年超えてきた宇宙船が到着し住民は大歓迎。

まぁこれもありかな。

「程度の問題」
任務を抱えて侵入したスパイエヌ氏。

寓話ですね。

「愛用の時計」
あるとき愛用の時計の時刻が狂い...。

まぁ星作品ですね。

「特許の品」
宇宙から来た設計図は特許の品だったが..。

星作品読み慣れているとオチは見える。

「おみやげ」
太古の地球に置いた宇宙人のおみやげは...。

これもオチは見える。

「欲望の城」
通勤バスで会った男は夢を語り....。

不気味な感じは買いかと。

「盗んだ書類」
エフ博士が発明した薬の書類を盗み出した泥棒は。

ありがち。

「よごれている本」
古本屋で売っていたよごれている本には...。
×
もう一工夫欲しい。

「白い記憶」
病院に運ばれてきた急患の男女は記憶喪失で...。

まぁ皮肉な感じが面白い。

「冬きたりなば」
ある惑星に売り込んだ品物の代金回収は..。
×
SFにはありがちなオチ

「なぞの青年」
いたるところで善行を行うなぞの青年の正体は...。

ありかと。

「最後の地球人」
世界の人口は減少をはじめ。

最後をもう少し工夫すれば◎かなぁ。

50編評価を書くのは疲れますが...星氏のショート・ショートいい...ですよ。

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きまぐれフレンドシップPart2 星新一著 集英社文庫

2013-08-08 | 評論エッセイ等
星新一、小中学生の頃かなり読んでいました。
その辺は「きまぐれ星のメモ」の項で書きました。

最近SFを読みだして改めて気になりだしてついついブックオフでも「星新一」コーナーを物色してしまいます。
ということで本書、秋葉原のブックオフで105円で売られていたものを購入。

part1は持っていた気がして実家に有ると思うのですが、part2は持ってなかったような気がします。

奥付見ると昭和61(1986)年1月初版。
私が中三~高1くらいのときに世に出ていたわけですが、この辺で星新一から離れていったんだろうなぁ。

内容(裏表紙記載)
阿部公房、畑正憲、北杜夫、手塚治虫、西丸震哉、谷沢永一・・・・・・江戸川乱歩に見い出され、作家の道を歩みショートショートの第一人者として活躍する著者が、敬愛する人たちとの交遊やその作品との出合いを綴る好エッセイ。星ファン必読の書。

ブックオフで手に取った時、目次で何やらなつかしい名前を見ていたらなつかしくなりどうにも欲しくなりました。
内容は著者が過去に書いた解説や書評などを集めたもの。

読んでまず感じたことは「うまい」。(まぁ当たり前ですが)

最近このブログで書評めいたものを書いているためか、うまさがとてもよくわかる気がしました。

基本、内容をネタバレしない程度かつ魅力的に紹介し星氏なりの見方を紹介、その後さらりと人物紹介という流れですが、絶妙です。
内容紹介読んでいるとなんだかとてもその本が読みたくなるけれどもネタバレしない絶妙な引用。
広瀬正の項など完璧!!といいたくなる出来。

スタージョンの「一角獣・多角獣」、北杜夫の「楡家のひとびと」山本有三の「米百俵」川端康成「掌の小説」などはすぐにでも読みたくなってしまいました。

他、かんべむさし氏、田中光二氏など最近見かけない気がしますがどうしているのだろうなどとも思いました。
(ネットで調べたら健在のようです。両方作品を読んだことはないんですが昔気になっていた)

本書1980年前後の書物や作家をレビューするには非常にいい本な気がします。
Part1も読みたい!!(実家にあるはずなんですが...)

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エンダーの子どもたち上・下 オースン・スコット・カード著 田中一江訳 ハヤカワ文庫

2013-08-05 | 海外SF
エンダーシリーズ4作目、正編の完結編でもあります。
オールタイムベストでは....ランキングに入っていない。

ネット上の評価もあまりよくなかいですが、「ゼノサイド」読了後どうにも欲しくなり、本書も他のカード作品同様絶版中のためamazonで探して購入しました。

上下とも100円以下+送料250円/冊です。

内容(裏表紙記載)
上:
スターウェイズ議会に対して叛旗をひるがえした植民惑星ズジタニアを殲滅し、同時にデスコラーダ・ウィルスが銀河に蔓延することを防ぐべく、議会は粛清艦隊を派遣した。艦隊の到着まであと数週間となり、ルジタニアに住む三種類の知的生命体-人間、現住種族ペケイニーノ、窩巣女王ひきいるバガーたちは、それぞれの形で生き延びる道を探ろうとするが・・・・・・「エンダーのゲーム」にはじまる壮大なシリーズ、待望の最新長編
下:
惑星パスでハン家の召使いをつとめていたシー・ワンムと、エンダーが<外側>のアイウアから生みだしたピーターのふたりはスターウェイズ議会に働きかけて粛清艦隊を阻止しようとする。さらにはアンシブルの停止により抹殺されようとしているジェインはもちろん、エンダーの子どもたちもそれぞれ問題に立ち向かおうとするが・・・・・・ヒューゴー賞とネピュラ賞二年連続受賞に輝いた、カードの壮大なシリーズ、待望の完結編。

読了後のとりあえずの感想。
「カード、ちょっと疲れちゃっあったかぁ...」なんだかとても淡泊に感じました。
この程度なら昭和の二線級日本SF長編と同程度か?などと失礼なことも感じました。

思い出したのが筒井康隆の七瀬シリーズ最終作「エディプスの恋人」、「家族八景」は面白かったんだけれど...超時空とか超存在的なものに逃げ、いや流れて解決してしまっているところが似ているかなぁ。

カードがあとがきで大江健三郎や遠藤周作の「深い河」に影響を受け「純文学」を試行していると書いていますが、なんだか高級そうな概念を出して登場人物にいろいろ語らせれば純文学になるのでしょうか...。
(勢いでブックオフで「深い河」かってしまったがいつ読むことやら)

SF的な仕掛けを丁寧に説明するという点が弱く雑な感じがしました。
正直エンターテインメントとしての出来はいまいちですが、さすがカード一応読ませはします。

舞台の一つに日本人が移住した惑星「神風」なるものも出てきて、都市は名古屋...。
ヤマト魂を語る哲学者が「オボロ・ヒカリ」、「あいまいな光」の意味だそうです、ノーベル賞効果でしょうか?

出てくる実業家がツツミ・ヤスジロウ...、その財閥の総帥がツツミ・ヨシアキ=セイジだそうです。
(先祖があちこちにゴルフ場を創って財産貯めたそうです...)

日本人には受け入れにくくなる要因かもしれませんね。
フィクションと思って気にしなければまぁいいんですが...まぁちょっと気になります。

ポリネシアの聖人も出てきたりしますが、「カード」の考える「東洋風」は「感じる」とか「直感」で物事が進んでいくのか、展開の説明やら動機づけやらが不親切に感じました。

というようなこともありながら、三千年の永きに渡った「エンダー」の存在は終わりを迎え、ある存在がそれを受け継ぎます。
無精生殖というか..無卵生殖というか...ねぇ...。

まぁとにかくすべてを円く収めて大団円になりまのでこのシリーズを読み出して肌にあった人はここまでたどり着くんでしょうね。
いまひとつシャッキリしませんがまぁ...。

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ゼノサイド上・下 オースン・スコット・カード 田中一江訳 ハヤカワ文庫

2013-08-01 | 海外SF
エンダーシリーズ第三作、'12年ローカス誌オールタイムベスト100位

「死者の代弁者」が面白かったので入手しました。
上巻はアマゾンの中古で91円+送料250円で下巻は川崎のブックオフで105円で入手。

内容(裏表紙記載)
上:
エンダー・ウィッギンが死者の代弁者として植民惑星のルジタニアにやってきてから、三十年が過ぎた。原住種族ピギーに殺された異類学者のために代弁をしたあと、エンダーは現地の女性と結婚し、そのままルジタニアにとどまっていたのだ。だが、人類に致命的な病気をもたらすデスコラーダ・ウィルスの蔓延を恐れるスターウェイズ議会が、ウィルスを惑星ごと殲滅しようと粛清艦隊を派遣。その到着が目前に迫っていた・・・・・・!

下:
ルジタニア粛清艦隊はどこに消えたのか? 中国系の植民星パスで神の声を聞く者として人々の尊敬を集めているハン・フェイツーはひとり娘ハン・チンジャオに専門家でさえ解明できない謎を解くように命じた。だが、それは親子の運命を変える恐るべき難問だった・・・・・・ヒューゴー賞とネピュラ賞を2年連続受賞した傑作「エンダーのゲーム」「死者の代弁者」のカードが、壮大なスケールと前代未聞のアイディアで描く長編SF!

「死者の代弁者」がかなり良かったので期待と、一方で「あそこまでは良くないろう」という不安もありながら読み始めました。
最初1/4くらいまで東洋風(中国風??)の宗教的描写にすごい違和感を感じて引き気味でしたが...。
慣れてきたらその辺も気にならなくなりかなり面白く読めました。
前作同様「神」やら「神々」の話が頻繁に出てくるのでその辺が気になる人は厳しい作品かもしれません。
ネット上の評価も割れているようですね。

所詮小説、それもSFですので登場人物の宗教観や倫理観もフィクションの道具立てと割り切って読めば気にならないと思うのですが、ここまで「神」「神」いわれると気になるでしょうね。

「死者の代弁者」と比較すると、ルジタニアとパスの2つの惑星にまたがる話となっており、エンダーも妻を持ち、義理の子供たちも大人になってそれぞれの意志で動き出しているためかなり関係性がか複雑になっています。

この複雑な関係性をうまくさばいていて、デスコラーダウィルスを巡る謎解きを軸にスリリングに展開していきます。
最後あたりはちょっとずるいかなぁとも思いますが「うまい」とうならされるました。

作者の力量充実ぶりが感じられ小説としてのうまさでは確実に前作より上ですね。
ただ私は「死者の代弁者」の方が未熟ではあっても「力」と「勢い」を感じる分好きかなぁ。

でもこれはこれでかなり楽しめる作品だと思います。

その他感じたこと。
スーパースターであるエンダーの妻や子供たちの家族関に縛られる姿。
なんだか妻子持ちサラリーマン的悲哀(?)を感じました。
「あなた仕事と家族どっちが大事なの?」という状況ですね。
妻子持ちサラリーマンにとって永遠のテーマかもしれません。

エンダーの場合、仕事=人類運命と多くの人命、と二つ(ともう1種の生命体)の種族の絶滅だったりするんですが、妻のノヴィーニャは容赦ありません。
「いいひと」エンダーはどちらも満足させ、ルジタニアの人々やら窩巣女王・ぺケニーノ・ジェインの期待も全部聞いてなんとかうまく納めようと努力します。
ピーターのように人に嫌われようが、多少犠牲が出ようが構わずやってしまうというメンタルはエンダーにはない。
軍隊で使われる兵隊としては最高のメンタルです、なんだか身につまされる。

そういう見方でみれば、「エンダーのゲーム」は優秀な若手独身サラリーマンがおだてられて働かせる話、「死者の代弁者」はフリーのコンサルタントが依頼主に肩入れしすぎて巻き込まれている話とも見えそうですね。
「死者の代弁者」のエンダーは比較的フリーな立場だったので読んでいて爽快感があるのかもしれません。

あと惑星パスでの神の子の苦行ですが、東洋宗教思想には「現罪」の観念はないような気がする。
小乗的概念では自分の解脱のために「苦行」をするような気がしますし、大乗的概念では日常のことをきちんと行うことが「行」という感じじゃないでしょうか?
宗教知識はあまりないので漠然とした感じですが、その辺に違和感を感じたような気がする。

ここまで来たらエンダーシリーズ正編完結編「エンダーの子どもたち」は読まないとなぁという気になっています。

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