しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ドゥームズデイ・ブック上下 コニー・ウィリス著 大森望訳 ハヤカワ文庫

2014-02-27 | 海外SF

この本は昨年購入していたのですが、500ページ越えで上・下巻となかなかな分量と、ウィリスの作品を読んだことがないためなかなか手が伸びませんでした。

コニー・ウィリスの名前は昨年に海外SFの名作をいろいろ調べ始めるまではまったく聞いたことがありませんでしたが、ヒューゴー・ネピュラ・ローカス賞取まくりの「すごい」作家のようで現代の「SFの巨匠(女王)」ともいえる作家のようですね。

この作品も1992年の発刊で、最近読んだ中ではかなり新しめの作品で、読めば「まぁ間違いなくそこそこおもしろいんだろうなぁ」とも思ってもいたので思い切って手に取りました。
本書‘12年ローカス誌オールタイムベスト37位。

しかしこのハヤカワ文庫の表紙はどうにもいただけないですね。
40代男がカバーなしで人前で読んだら人格を疑われそうな気がする、ハヤカワさんもう少し考えていただければ…。

内容(裏表紙記載)
上巻
歴史研究者の長年の夢がついに実現した。過去への時間旅行が可能となり、研究者は専門とする時代を直接観察することができるようになったのだ。 オックスフォード大学史学部の女子学生キヴリンは実習の一環として前人未踏の14世紀に送られた。だが彼女は中世に到着すると同時に病に倒れてしまった・・・・・・はたして彼女は未来に無事に帰還できるのか?ヒューゴー賞・ネピュラ賞・ローカス賞を受賞した、タイムトラベルSF
下巻
21世紀のオックスフォードから14世紀へと時をさかのぼっていった女子学生キヴリン。だが、彼女が無事に目的地にたどりついたかどうかを確認する前に、時間遡行を担当した技術者が正体不明のウィルスに感染し人事不省の重体に陥ってしまった。彼女の非公式の指導教授ジェイムズ・ダンワージーは、キヴリンのために、新たな技術者を探そうと東奔西走するが!?英語圏SFの三大タイトルを独占したコニー・ウィルスの感動作。

とりあえずの感想「すごい作品」でした。
月並みな感想ですが、とにかく「すごかった...」読み終わった直後には眼からは涙が滲み、しばし呆然としていました。
「世の中にこんな作品があったんだ」と心から思えました。
読了後ネット(インターネットね)で本作の感想をいろいろ見ていましたが、あらすじを書いているのをちょっと読んだだけで胸がジーンとしてしまった...。
「感情」を湧き立てるためになんともうまく書かれている作品なんでしょうが…未読の方には是非一読を薦めたい本です。
物語の「うまさ」が目立つというのは欠点なのかもしれませんが、ここまでうまいと気になりません。

ただし...、前半部分(上巻)はストーリーがまったくといっていいくらい進まないのでかなりいらいらします。
(私も読み進めるのがつらくて途中中断して「悪の華」を読んだりしてしまった…。)
そこを我慢して読んでいくと終盤なんとも「すごい」という読書体験が味わえると思います。

なんでこんなにすごく感じたのか?
私なりに考えてみました。
以下かなりネタバレが入ります。

直接的には、中世でのクライマックスでバタバタみんな死んでいくところにぐっと来たんだとは思います。
とにかく容赦なく皆死んでしまった....。
その辺はホラー映画並みです、ここまで感情移入できるように書いたキャラを無機的に殺していく感覚はなんだか異質なものを感じました。
西洋人だからなのかウィリスが異質な作家なのか...。

ただまぁ当たり前ですがただぶっ殺すだけで「ぐっと」来るものではありません。
ということで考えたのが。

1.ストーリーづくりの巧みさと丁寧さ
じれったくなるほど「これでもか」と伏線を張って、それをすべて回収しながらクライマックスに持っていきます。
とてもよく考えて物語を作っているんだろうなぁと感じますし、とてもうまい。
「巧みさ」という点ではウィリスがメジャーリーガーだとすると、アシモフなど高校生くらいのレベルなんじゃないかという感じ。
(高校生でもアシモフくらいの天才だとメジャーリーグ顔負けの投球をすることもあるわけですが)
「インフルエンザウィルスの出所」やギブリンの飛ばされた時代などのメイントリック的なところは読んでいてうっすら想像はつくのですが、丁寧に書かれているので読んでいて安直感がありません。
随所に小ネタで「なるほどね」という点も出てきて思わず「ニヤリ」とさせられるのも憎い(ラストの鐘の音など)
ストーリー的には1点、ローシュ神父を「どうするか」というのは「作者も最後まで迷ったのかもなぁ」ということを感じました。
ローシュ神父=コリンにしてもいけたんじゃないかと思いましたが...結局そうしないで「バサッと」切り捨てていて、作品的にはこれでよかったんでしょうね。

2.キャラクターの立たせ方のうまさ。
「ストーリー」もうまいのですが、登場人物のキャラクターがとても立っています。
特に脇役のキャラの立たせ方がとてもうまい。
ある意味主人公格のギブリン、ダンワージーの2人が一番「まとも」でキャラ立ちしていない。
21世紀の登場人物はかなり誇張した人格になってますが、これはこれで類型としていがちなキャラを描いていてとてもおもしろい。
思いっきり自己保身キャラのギルクリストやどうにも迷惑なおばちゃんキャラのミセス.ギャドソンなど「自分では気づいていなくてもこういう行動取る人世の中にいそう」というある意味リアリティがある人物群です。
「惡の華」でいえば「クソムシ」キャラなんでししょうが何とも生き生き書かれています。

一方中世の方の登場人物はそれほどとがってはおらず、いかにも「物語的」な感じの人物群です。

特に5歳の少女アグネスは私的にも5歳の娘があるだけにとても感情移入してしまったのですが….。
アグネス含め見事に全滅させられてしまった。
(アグネスが死んだ場面では泣きました…)

この2つの時代を対比させることで、作中の21世紀の「クソムシ」な登場人物もなんだか許せるようになってしまう。
普通に生きて明日を迎えられること、多少でも知った人が生きていることということがどんなにすばらしいことか...。

やっぱりうまいなー。

3.人間に対するスタンス、「やさしさ」と「冷たさ」。
解説では独自の「モラリスティツク」と書いていますが、この作者、人間に対する「こんなものだ」という諦めと、「こんなものだけどとにかく前向きに」という「許し」が交差しながら頭に渦巻いているのではないかなぁなどと感じました。
明らかに何かしら独自のモラルを持っていそうなのですがものすごくドライに書いている。
ウィリスに比べればル.グィンなどかなりウェットに感じます。
(いい悪いは別ですが)

自分の身におこる(追剥、強姦、殺人など)かもしれないろいろなことは想定して中世に赴いたギブリンですが、自分ではなく自分を助けてくれた人々、自分を慕ってくれる愛らしい少女などなど全ての人間が苦しみながら死んでいき、自分は何もできないという状況は想定していなかったわけです。
(タイムパラドックスは起こらないという前提も無力感を増幅する...。)

ギブリンは「自分だけ苦しめばいいんだろ」という若者特有の認識の甘さと傲慢さ徹底的に思い知らされるわけですが...ラストは暗さだけでなく希望と救いがある形になっている。

抽象的な意味での「文学作品」とはいえないかと思いますがかなりぐっとくる作品でした。
でもぐっと来すぎてこの人に作品をしばらく読む気がしないのとちょっと虚脱状態ですが...。

なにやら作りすぎな感もある作品ではありますが名作です。

ペスト怖い...という方も、大長編好きな方も。
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惡の華1-10巻 押見修造著 少年マガジンコミックス(KINDLE版)

2014-02-23 | 漫画
本は場所を取ります。
時代は「電子書籍」かなぁなどとふと思い、SFがどれくらいkindle化されているかを見たりしていました。

品切れ・絶版の多いSFの世界なので電子化すればよさそうなのに驚くほど少ない...。
ハヤカワも創元も基本現在紙でも出版されている売れ筋の作品(「夏への扉)やらなにやら」をKindle化している感じで、紙で入手できないからこそ手に入れたい絶版本(「都市」とか)はKindle化されていない。
なんとかならないものでしょうか….。

というようなことをやっていて、昨年初め頃にタブレット端末Nexus7を入手したときに勢いで1-3巻をKindle版で購入した本書を読み返しました。

キャッチーな表紙で、ちょっとおおっぴらに読めない作品なので(笑)電子版が良く似合う作品な気がします。
(40代妻子持ち男性としては家に持ち込むのもはばかれる…。)
  

講談社=マガジンは昔から(「翔んだカップル」とか安達哲氏の「キラキラ」「さくらの唄」等)どろどろして倒錯した恋愛漫画を掲載してけっこう好きでしたので本作もその系列かなぁと思い「変態」ちっくな内容が話題になっていたので入手しました。

内容は
本好き中二男子の春日くんは、あこがれていた同級生の優等生美少女佐伯さんの
体育着をひょんなことから盗んでしまう。それを目撃していた仲村さんに数々の変態的行動を強要され….。
という内容。
高校編は中学で最後におおごとになってしまって、別の町に引っ越して高校二年になった春日くんのお話です。

ということで昨年に1,2巻と読んだのですが、割とステレオタイプな変態描写に思えて「合わないなー」となり3巻の途中で読むのが止まっていた状態でした。

今回と3巻の残りを読み、やはりそれほど感心はしなかったのですが「折角なので4巻も買ってみるか」と買ってみて読んだら.....。

はまってしまいました。

翌日5巻から最新10巻まで一気に買って読んでしまいました....。
電子書籍はクリック1つで簡単に買えてしまうのではまると「ヤバい」ですね。

4巻辺りからなぜ読みやすくなったのか...?

3巻までと違い4巻以降は「謎」の存在であった仲村さんの人間らしさが徐々にでてきます。
まったくの「謎」の存在が不安だったのが、ある程度「ものさし」が出来て理解可能になって読みやすくなったのかなぁと思います。
作品としてはある意味堕落しているのかもしれませんが、私のような凡人にとっては読みやすくなってよかったです。

また4巻以降、佐伯さんの壊れぶりも見所かと思いますが、この人は1-3巻ですでに壊れだしていましたので予想の範疇といえば範疇。
主人公春日くんはよくも悪くもあまり変わっていないような気がする。
基本他人依存型のキャラクターとして描かれていて「人次第」という感じでししょうか?

6-7巻(中学編)では仲村さんが壊れていく….。
ここでも春日くんはそれほど変わっていないのがなんだか不気味。

7巻途中から高校編が始まるわけですが、とても楽しく読めました。
中学編では「変態」がキーワードになっていて、かえって自由に描けていなかったような気がしますが高校編では「思春期の青年」の心理を「ちょっと変」をスパイスにしてよく描きだしているように感じました。
(これもある意味堕落なのかもしれませんが...)

基本読書好き少年・少女の恋愛という文学少年の妄想的なベタなテーマですが「中学編」でのひねくれ具合が味付けになっていて楽しめました。

高校編で春日くんが常磐さんに紹介した本のリストなどもなかなかよかった。
「「惡の華」みたいのはダメよー」と言われていましたので自主規制したようですが
中井英夫「虚無への供物」、筒井康隆「虚人たち」沼正三「家畜人ヤプー」等々を進めている。
「家畜人ヤプー」は女の子に最初に薦める本としてはどうかとも思いますが…。
「あーそっち系ねー」という常磐さんの反応は本大好き少年であった「私」にも本好き少年であった多くに人々にもなにやらうれしくなってしまいまう一言ですね。
(ちなみに春日くんの本棚、常磐さんへのPR本リスト、常磐さんの本棚とても気になりいろいろ調べてしまいました。澁澤龍彦氏などは読んだことがないので読んでみたくなりました。)
「常磐さん」本好きちょっと暗めな男子にとっては「理想」というか「妄想」で出て来そうなタイプです。
まぁ現実には絶対いないタイプな気がしますが....。

本好き男は本好き女子に憧れますが、本好き女子は本好き男子と話はしても恋愛対象とは別と割り切るような気がする。
(実感です)

そんなこんな「高校編」なかなか楽しい。
10巻最後で仲村さんが再登場して物凄く先が気になりました。
引っ張り方がすごくうまい。
引っ張り方は巻を追うごとにうまくなっています、あと絵も。

今後がすごく気になります。

プチ変態な方も、本好き女子との恋愛に憧れるあなたも。
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テレビドラマ:戦力外捜査官

2014-02-20 | テレビ
あまりテレビは観ない(チャンネル権がないともいう...)のですが今クールではこの「戦力外捜査官」にとてもはまっています。

今録画してあった2/8放送の第五回を観終わってあまりに面白くて感極まって、先週放送の第六回をななめ見しながらこれを書いています。

ちなみに第六回...ほぼ壊れかかっているような気がしますが....無茶苦茶面白い。
いかにも展開に困って適当に作った感じなのですがすごく面白い。
いきなりの「家政婦のミタヤマです。」で吹き出した。

このテンションのままで最後まで話を続けることができるのか心配になってきてますがとにかく面白い。
感極まって衝動でこの文を書いています。

典型的なパロディかつメタフィクションというかメタドラマなんですが脚本がすごいんだろうなー。
誰が書いているんだろう?
このブログいつもはかなり(というほどでもないですが)調べて書いているんですが今回は何も調べていないのでこのドラマに人気があるのかとかなどなどまったく知らないで書いています。
番組HPすら見ていないので登場人物名すら怪しいですがせっかくなんで一切調べず書いてみます。

キャラクターはすべて類型的もしくはパロディ的人格、ストーリーも謎解きも陳腐。
役者は...主演の武井咲(でしたっけ?)はいい、もう一人の設楽刑事役のなんだかダンスのグループの人もいい(ネットがないとこんなことしかわからない...)ですが一番いいのは関根勉ですね。(これは調べないでも間違いない)

このドラマを最初に見たとき、あまりに関根勉が演じているっぽい役すぎて、誰かが関根勉のへたな物まねをしているのかと思ったくらいだったので役というよりは本人そのもの。
というか下手なモノマネをしている関根勉のモノマネをしている関根勉という感じ。
(「う~ん陽子、カレーをくれー」という感じ,こういう古い話もネットで調べなくても出てくる、若い人には、「わかるかなぁ、わからないだうなー」)
ちなみに伊吹吾郎とYOU(自信ない)の主人公の両親キャラもかなり好きです。
なんというか狂気の世界と紙一重な感じ....。

ということで陳腐な材料を独創的に並べ替えることでいかにスバラシイものができるかという見本のようなドラマ。
かなりテンションが高いです。

と書いていたら番組が終わって「明日ママがいない」の番宣をやりはじめた。
このドラマの後にこれというのはある意味とてもシュールな状況だと感じました。

いまどきドラマごときで何か一定のメッセージを真剣にうったえられると思っているドラマと、フィクション=ドラマというものを徹底的にバカにしているドラマの対比....すごい。
私には戦力外捜査官もしくは作中の関根勉の方がストレートにメッセージが伝わります。
もっともこっちは「ストレート」なだけで受け取るメッセージは観る人によってばらばらでしょうけれどもね。

久々テンションの高いすごいドラマ(「明日ママはいない」など目ではない問題作だと思う)だと思うのですが...はたして人気あるのだろうか?、前回から予告編もなくなってくるほど切羽つまっているようなので無事フィニッシュを迎えられるか心配です。

第六話もミタヤマさんの妄想というか暴走はやりすぎ感もあり、壊れ気味でしたが、後期の「マカロニほうれん荘」のようにクラッシュしないことを祈念しています。

もしこの雑文見られた方がいればぜひご覧くださいお薦めです。
来週あたり大崩壊していそうな予感もありますが...。

ネットで調べないとなにもわからないとは情けないという方も、武井咲(でいいのか?)かわいいという方も。
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タウ・ゼロ ポール・アンダーソン著 浅倉久志訳 創元推理文庫

2014-02-13 | 海外SF
ダブル・スター」がどうも「…」な気分だったので、SFらしいSF、そう「ハードSF」が読みたいと思い手に取りました。
と言いながらも私の中でのアンダーソンは、「タイムパトロール」「天翔ける十字軍」のイメージでどうも「ハードSF」なイメージがなかったのですが…。

本作‘12年ローカス誌オールタイムベスト94位、1970年発刊。
一般的にはポール・アンダーソンの最高傑作とされているようですが、残念ながらヒューゴー賞もネピュラ賞も「リングワールド」にさらわれています…残念。

昨年12月頃地元の古本屋で購入。

内容(裏表紙記載)
50人の男女を乗せ、32光年彼方のおとめ座ベータ星第三惑星をめざして飛びたった恒星船。 だが不測の事態が発生する。 生まれたばかりの小星雲と衝突し、その衝撃でバサード・エンジンの減速システムが破壊されたのだ! 亜光速の船を止めることもできず、彼らはもはや大宇宙を果てしなく飛び続けるしかないのだろうか・・・・・・? 現代SF史上に一時代を画したハードSFの金字塔登場!

とりあえずの感想「いやーSFだぁ、堪能した!」
なんだか久々にハードSFを読んだような気がしました。
なんとも壮大なスケールとどんどん上がっていくスピード感で理屈抜きに楽しめる作品だと思います。
もっともハードSFなので理屈はありますが…。
私はハードSFの科学理論と本格推理小説のトリック解説部分は流して読むようにしているので気になりません(笑)

光速移動時のウラシマ効果をある意味究極まで利用した作品で、最初は普通に「進むのかなぁ」という話が最終的には壮大なスケールとなります。
細かい点では難もあるような気がしますが私的には「リングワールド」より上な気がしました。
何で受賞できなかったんだろう?

また「ダブル・スター」が「ゼンダ城の虜」のSF版だとすると、この作品はいわゆる漂流もののSF版といえそうです。
小説ではないですが頭に浮かんだのは「エンデュアランス号漂流」。
主人公の「あきらめないリーダー像」と「絶望的状況」が頭のなかで重なりました。
もしかしたら参考にしているかもしれませんね。

最後の方の絶望的状況(宇宙的規模で絶望的だ!)で主人公レイモントの発した言葉。
「私はいやだ」
がとてもかっこよかったです。
「いやだっていったってあんた….」という全宇宙的に危機的状況なわけですがそこから何とか無事落着までに持って行ってしまうのはすばらしいと思いました。

私的にネガティブ評価だったのは、「フリーセックス」的描写と、ヒロインのリンドグレンがしばしば「セックス」で物事を解決してしまっているところ。

あとレイモントがしばしば「暴力」で物事を解決しているところ。
ちょっと気になりました。

解説でフリーセックス的なところは「当時のニューウェーブへの対抗意識ではないか」というようなことを書いていますが流行を追うと後から違和感出ますよね

でも「暴力」の方は非常事態だからある程度しょうがないのか…。
主人公は軍人ですしね。
究極的に暴力を工程するという意味では「宇宙の戦士」と似た考え方ともいえそうです。
(ハインラインほど声高には主張していませんが)
でも「天翔ける十字軍」もある意味暴力的な作品だったような記憶もうっすらあり、この辺はアンダーソンの思想的なものもあるかもしれませんね。

といようなことは若干気になりましたが、それを補って余りある手に汗握る展開で「どうなっちゃうんだろう?」とハラハラしながら一気に最後まで持っていかれます。

難しいことを考えずSFに浸るには最高です。


暴力はキライという方も、ウラシマ効果好きな方も。
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ダブル・スター ロバート・A・ハインライン著 森下弓子訳 創元推理文庫

2014-02-04 | 海外SF
14年に入ってから3冊昔読んだ本を読んだので4冊目は初読の作品にしました。
といっても古い作品ですが…..。
本書1956年発刊、巨匠ハインラインに初のヒューゴー賞をもたらした作品です。
‘12年ローカス社オールタイムベスト68位

昨年最後に読んだハインラインの「異星の客」が、私的にどうにも…だったので、「夏への扉」の前年に発刊されている本作なら「楽しめるかなぁ」という気持ちもあ手に取りました。

昨年末実家近くのの平塚駅前のブックオフで購入400円。

内容(裏表紙記載)
そもそも一杯の酒につられて素性の知れない男の話なんかに耳を傾けたのが間違いだった。失業俳優ロレンゾが引き受けた仕事は、行方不明中の偉大なる政治家の替え玉役。 やっつけ仕事のはずだったのに、いつのまにやら太陽系帝国の運命まで担うはめになろうとは。
プライド高き三文役者の一世一代の大芝居、八面六臂の大活躍! 巨匠に初のヒューゴー賞をもたらした歴史に残る傑作。

とりあえずの感想「単純な内容かつ説教臭い…」
ストーリーは内容紹介のとおりで極めて単純です。
これといったSF的アイディアもない…。
地球人、それも白人主導の太陽系「帝」国というのがある意味「斬新」(笑)
アメリカ人はその中で独自の尊敬される地位を築いているそうです…いやはやなんとも。

失業俳優ロレンゾの成長(?)ぶりと単純かつ王道的ストーリーなので深く考えずに読めばそこそこ楽しめるお話だと思います。
ストーリーはwikipediaでも解説でも「ゼンダ城の虜」のSF版というのが定説のようです。
貴種入れ替わり譚ですね、例:「桃太郎侍」など。
(ちなみにwikipediaのハインラインンの項の記載はとても悪意的な気がします…)

ロレンゾが替え玉になりきるディテールは丁寧に書かれていますが、ストーリーそのものにはもう少しひねりがあってもかなぁ…とも感じました。
そんなに複雑なものを書こうともしいていないのでしょうが、「政治」についてはかなり説教臭いくだりもあるので、その辺気になる人には気になるでしょうね….。
(「ハインライン節」異星の客で散々読んでいたので鼻についてしまった….)

また閣僚名簿に平気で口を出す立憲君主が「すばらしい」とか、三文役者より美女を手中におさめた大物政治家の方が「幸せ」ということを疑問なく受け入れる子供っぽさ、もしくは流せる大人な感性が必要になるかとも思います。

私は中途半端にこだわる性質なのでどうも気になってしまいました。

月は無慈悲な夜の女王」の結末では主人公は権力の座につかなかったし、確か「桃太郎侍」も役割が終わったら去って行った。
結末をどう受け取るかで印象が変わってきそうな気もします。

発狂した宇宙」では編集者より出版社社長の方が幸せというラストでしたが、こっちは展開もパロディだし、ドペルより正常進化で許せる気がするし(笑)受け取り方が変わってきます。

そんなこんな残念ながら「名作」とは思いませんでしたが、暇つぶし位なつもりで読むならそれなりに楽しめる作品だとは思います。

随分けなしましたがあくまで私的感想です。
どうも私はハインラインと合わないようです….。

政治は男のロマンだ!という方も、気楽な役者稼業好きな方も。
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