しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

バラヤー内乱 L.M.ビジョルド著 小木曽絢子著 創元推理文庫

2015-05-25 | 海外SF
名誉のかけら」に続き、コーデリアが主人公の本作を手に取りました。

‘12年ローカス誌オールタイムベスト70位。
1991年発刊と「名誉のかけら」の5年後の出版ですが、作品上の時系列は「名誉のかけらの」ラスト直後からもスタートです。

解説を見るとアメリカでは「コーデリアの名誉」なるタイトルで「名誉のかけら」と本書合本で出版されたりしているようです。

内容(裏表紙記載)
幼年皇帝の摂政として惑星国家の統治を委ねられた、退役提督アラール。だが、その前途には暗雲が忍び寄り、反旗は一夜にして翻された。首都は制圧され、この辺境の星は未曾有の窮地に立たされる。アラールの妻コーデリアは五歳の皇帝を預かり、辺境の山中へ逃れるが…。シリーズ主人公となるマイルズの誕生前夜の激動を描き、ヒューゴー賞・ローカス賞を制したシリーズ中の白眉。


めでたく摂政夫人となり、子宝も授かったコーデリアの幸せぶりを描く前段部分は若干退屈でしたが...。
アラール暗殺のための毒ガスをコーデリアが吸ってしまったあたりから徐々にテンポが上がり面白くなってきます。
毒ガスの解毒剤の副作用で障害を負ってしまった胎児のマイルズを「生かすか殺すか」で険悪な口論をしていたアラールとその父ピョートルが、反乱が明らかになるとやけに素早く対策を取り出す姿などは紋切型ではありますがなかなかかっこよかったです。

逃避行やマイルズ救出作戦で見せるコーデリアのマイルズばりの活躍は理屈抜きに楽しめます。
というようにコーデリアの「格好よさ」が目立つ作品ではありますが、マイルズの祖父であるピョートルもなかなか興味深い人物として書かれており、ピョートルの活躍を描いた作品も読んでみたいあなぁと思いました。(現時点では書かれていないようです)
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名誉のかけら L.M.ビジョルド著 小木曽絢子訳 創元推理文庫

2015-05-15 | 海外SF
戦士志願」「ヴォル・ゲーム」同様<ヴォルコシガン・サガ>シリーズの作品です。
上記2作で「いまいち」と感想書いていましたが、なにやら気になるシリーズでありブックオフで見かけて入手していました。

「名誉のかけら」はビジョルドの処女作であり<ヴォルコシガン・サガ>シリーズでは一番出版が古い作品になります。
といっても「戦士志願」と同年の1986年出版で実際には本書と「戦士志願」「遺伝子の使命」はほぼ同じ時期にかかれた作品のようです。

時代設定はシリーズメイン主人公であるマイルズの父母が出会ったところ。
マイルズの母親コーデリア・ネイスミスが主人公です。

シリーズの他の作品読むにも古いところから読んだ方がいいだろうということで手にとりました。
‘12年ローカス誌オールタイムベストでは269位にランクイン。

内容紹介(裏表紙記載)
ベータ星の女性艦長コーデリアは新発見の星を上陸探査中、見知らぬ敵に襲われる。彼女を捕えた男はヴォルコシガンと名乗った。辺境の星バラヤー軍の艦長だ。なんと彼は部下の造反にあって、一人とり残されたのだという。捕虜の身ながら、彼女は持ち前の機転で彼の指揮権奪還に協力することに……。マイルズの母コーデリアの若き日の活躍!


<ヴォルコシガン・サガ>シリーズは「戦士志願」から読むのが一般的(少なくとも日本では)とされているようですが、今回本作を読んでみて「こっちから読んだ方が入りやすいんじゃないかなぁ」ということを考えました。

本作読むと「戦士志願」で謎めいていたボサリ軍曹の過去やらバラヤー社会の位置づけ仕組みなどががよくわかるので入りやすいと思います。
(逆もある意味興味深いんでしょうけれどもね)

私的には「戦士志願」「ヴォル・ゲーム」より本作の方が好きかつ楽しく読めました。

上記2作がかなり変則的なスペースオペラなのに対して、本作は割とオーソドックスなスペースオペラの枠組みのストーリーを微妙に崩している感じで読みやすかったです。
主人公のコーデリアも副主人公のアラール・ヴォルコシガンも魅力的で二人のラブストーリーもなかなか楽しめます。
(それだけに若干月並みな感じもあるんですが…)

コーデリアはマイルズ的に勢いで突飛な行動を取るキャラクターに設定されていますが、同じようなことをしても「女性」が取るとなんとなく違和感ないですね。
女性=感性的という偏見があるのかもしれませんが…。

男性の象徴たるアラール・ヴォルコシガンなどはいろいろなしがらみでがんじがらめにされています。
まぁ一般的に女性の方が自由な行動は取りやすかったりはしますよね。

そう考えると男性でありながら「マイノリティ」的立場にあることでしがらみなく動けるマイルズは特異なキャラなんでしょうねぇ。

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飲めば都 北村薫著 新潮文庫

2015-05-03 | 日本小説
新しい太陽の書」シリーズ5作を読んでお腹いっぱいだったこともあり「軽いものを」ということで本書を手に取りました。

北村薫の作品は円紫師匠とわたしシリーズ(の初期、最近新作出たようですが…)やスキップ、ターンあたりの作品を90年代前半にオンタイムで読んでいて大好きでした。

ただ最近の氏の作品は正直「いまひとつかなぁ」とも感じていて、本作主人公の「出版社勤務の若い女性」という設定が「円紫師匠シリーズ」的ということもあり前から気になっていながらも買うに至っていませんでしたが….。
今年の始めブックオフで108円のものを見つけ入手しました。
2011年新潮社から描き下ろしで発刊。

容紹介(裏表紙記載)
人生の大切なことは、本とお酒に教わった――日々読み、日々飲み、本創りのために、好奇心を力に突き進む女性文芸編集者・小酒井都。新入社員時代の仕事の失敗、先輩編集者たちとの微妙なおつきあい、小説と作家への深い愛情……。本を創って酒を飲む、タガを外して人と会う、そんな都の恋の行く先は? 本好き、酒好き女子必読、酔っぱらい体験もリアルな、ワーキングガール小説。


主人公、小酒井都のお酒にまつわるちょっとした謎やらなにやらを描いた連作短編という感じの構成です。
冒頭の新入社員時代の話が強烈で期待感を抱いたのですが...。
段々大人しくちぅちゃくまとまってしまったような…。
成長といえば成長なんですけどねー。
ラスト、結婚で終わるのもかなり安直ですし相手の職業やらキャラクターやらもいかにも北村薫的でひねりがない気がしました。

よくも悪くも北村薫らしい「善意」の世界が繰り広げられますが、登場人物全般紋切型です....。

作者になじみの出版界の事情とターン辺りで調べたであろう版画の知識やらを組み合わせて「安直に仕上げた?」という印象も...。

中盤の先輩女性編集者と後輩男性社員のエピソードを描いた「指輪物語」に初期の北村薫らしいテンションの高さをちらっと感じましたがそれ以外はまぁ軽く読むにはいいかなぁという程度の感想でした。

内容紹介も「そんな都の恋の行く先は?」「ワーキング・ガール小説」ですから安直としか思えないですよね....。

ただここまで安直な素材と展開でも円熟の直木賞作家 北村薫の作品ですから「面白い」ことは面白いので読んで損はないとは思います。(フォローになっていますかねぇ)
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