しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

五次元世界のぼうけん マデレイン・レングル著 渡辺茂男訳 あかね書房

2019-01-02 | 海外SF
SFかつ古めの作品に戻り「五次元世界のぼうけん」読みました。
’12年ローカス誌オールタイムベスト長編62位、1962年刊
女流作家 マデレイン・レングルの代表作となります。

1963年にアメリカで一番優れた児童文学に送られるニューベリー賞を受賞しています。

これまた入手困難(amazonで取り扱いなし)なため図書館で借りました。
市立図書館にもなかったため県立図書館にリクエストしての借り出しとなりました。

国際児童文学全集の第9巻として1969年にあかね書房から発刊されています。

この全集小学校の図書室にあった記憶があります。
この赤い装丁懐かしい…。

全集 第11巻の「運河と風車とスケートと」は小学校のとき読んでなんだかとても記憶に残っているのでもう一度読みたいのですが....。
これまたamazonだと高額(8,000円位)です。

こちらも県立図書館にはあるようなのでいつかは借りて読みたいです。

本作は読んだ記憶はなかったのですが、読んでいる途中「読んだかな?」と思う部分があったのでもしかしたら小学生時代読んだことがあるのかもしれません。

本作の原題は" A Wrinkle in Time" 、「惑星カマゾツ(時間と空間の冒険 1)」の題でサンリオ文庫から出ていますがこちらはamazonで8万円オーバーかつ図書館でもみあたらないので読むのが困難です…。

副題に「時間と空間の冒険1」とあるように続編があるようですが「五次元世界のぼうけん」では続編につながるエピソードやら登場人物が一部省略されているという話もあるようで「惑星カマズツ」気になっています。
(サンリオでは続編も翻訳版出ています)

アメリカでは人気の児童小説のようで、本作2018年3月にディズニーで映画化公開されています。
日本での公開は未定なようですが2019年は日本で公開され人気を博し新訳出ることを祈っていますが..。
難しいかなぁ...。

「児童向け作品」なので「読んでみるかなぁ」と原書をkindle版で入手して数ページは読んだのですが…私の英語力では続きませんでした…。
まぁそのうち(笑)

内容紹介(A Wrinkle in Time (Madeleine L'Engle's Time Quintet) (英語) ペーパーバック – 2007/5/1の内容紹介記載)
Meg Murry and her friends become involved with unearthly strangers and a search for Meg's father, who has disappeared while engaged in secret work for the government, in a re-release of the classic story. A Newbery Medal Book. Simultaneous. 500,000 first printing.
下記訳(私の訳なのでいい加減)
メグ・ミューリと彼女の友人たちは、奇妙な人たちと出会い、政府の秘密の仕事に従事している間に姿を消したメグの父親を探す旅にでかけて...。
古典的な名作の再刊行。ニューベリー賞受賞、再刊初版50万部。


上記では内容よくわからいでしょうから補足です。

マーガレット(メグ)・ミューリは学校では問題ばかり起こしていて、メガネをかけ容姿もさえない中学生(12才くらい?)。
人の考えていることを読む能力をもち知能も高い小さいチャールズという弟がいます。

有名な物理学者の父、美しい化学者を母に持ちますが父は失踪中。

町の人や校長先生までも失踪理由についてなにやらスキャンダラスなことがあったのではないかと噂をしていますが、メグは信じていません。
それがメグが荒れる理由にもなっています。

父は政府関係の極秘の仕事をしていて行方不明になっていました。
そんな中ミューリ家に謎の女性ワトシット夫人(Whatsit=なんとかいうもの)が訪れ謎めいた「五次元運動」なる言葉が出てきます。

その後スポーツができイケメンのメグと同じ学校の先輩カルビンも実は霊感が強いということがわかり仲間に加わります。
メグ・チャールズ・カルビンの3人組とワトシット夫人とその仲間のフー(Who)夫人
ウィッチ(Which)夫人と五次元運動を利用したワープで宇宙の彼方に旅立ちます。

宇宙では闇の力と過去から闘い続けており、地球にもその力が迫っていることを教えられます。
その力が父親を連れ去ったことを知った人は父親が捕らえられている惑星カマゾッツに向かいます。

3人は「それ」と呼ばれる存在が支配した管理社会の惑星に捕らえられている父親を救おうとしますが自分の能力を過信した弟は「それ」の罠にかかって心を操られてしまいます。

弟を敵から取り戻し地球を含む宇宙を救う使命は特殊な能力は何も持たないメグの双肩に委ねられることになり...。

最後にメグが使う、「それ」が持っていない武器とは?

あらすじ書いているとすごく楽しそうですが…。
眉村卓のジュブナイル(「天才はつくられる」とか「ねらわれた学園」とか)ものとほぼ変わらない展開で、話も眉村卓の方がおもしろいです。

なんでこの作品が米国でそんなに人気があるのかわかりませんが…。

1960年代前半にアメリカの小学生、中学生の読む女子向けSF作品がほとんどなく、その辺の文学少女にうけたのではないかと推測しました。
(オタクSF男子に「スラン」が受けたのと同様ー世間では迫害されているけれど本当はすごく、かわい子ちゃんと最終的にはめでたく結ばれる…。ちなみに「スラン」はとても好きな作品です。)

成績も振るわず、人付き合いの苦手かつ容姿もイケていない少女がイケメンの先輩と不思議な旅に出て宇宙の危機を救う。
ベタベタではありますが…(最後の武器も思いっきりベタベタです…。)欠点は多いものの小説を読んでいる自分が「何ものかでありたい」願望が充足されたのではないでしょうか。
Wikipediaで作者の経歴見たらメグの学校での姿は作者の経験が反映されているようです。)

ただベタベタなだけでなく次元の説明やらワープ理論の説明でもっともらしく加工しSF仕立てにしたところも文学少女たちにウケたんでしょうか…。

コンピューター的な「管理社会」に対する「自由」というのもアメリカかつ冷戦時代的です。

メガネを取ったメグを見たカルビンが「きみはまるで、夢のように美しい目をしている」といってメグが顔を赤らめる場面があります。
この場面を読んで「もしかして読んだかな?」と思ったのですが、メガネを取ったエイドリアンを見るロッキー・バルボアを思い出しました。
アメリカ人こんな場面好きなんですかねぇ。

小学生が読めばそれなりに楽しめるかとは思いますが大枚はたいて買ってまで読む価値はないかと思います。
またこの作品を小学校の図書館で読んで思い出深い方にもお薦めですが…

読みたい方は図書館か原書がよいかと。

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永遠の0(ゼロ) 百田尚樹著 講談社文庫 

2019-01-01 | 日本小説
たまには今どきの作品(かつSFでないもも)を読もうかなぁということで本書を手に取りました。

といっても本書2006年刊行ですからそれほど新しくはないんですけれどもね...。

もっとも著者の処女作となる本作ですが、”当初原稿を持ち込んだ多くの出版社には認められず、縁あって2006年にサブカルチャー系の太田出版から書き下ろしで発表された”(wikipediaより)ようで最初は認められなかったようです。
2009年に講談社で文庫化されてから話題になって売れ出したようですのでまぁ一般的には2010年代の作品とも言えますかねぇ。

岡田准一主演の映画が2013年で世の中では話題になっていたようですからまぁ…私の読む本としては新しい部類に入るかと。

今どきの話題になって売れる小説は「面白いんだろうなぁ」という認識は持っていて、本作も気になってはいました。

会社の友人に数年前「おもしろかった!」とも進められてもいましたし…。
ただ「みんなが読む小説を同じタイミングで読みたくない」という天邪鬼な面もあったりして読むのがこのタイミングとなりました。

本は今
年ブックオフで108円で購入しました。(まぁ入手も安くなりますし)

本作の著者百田尚樹氏、2012年以降最近までいわゆる「右より」な発言で物議を醸しています。

「作品」と「作家」は関係ないとはいえ本作のように、太平洋戦争を題材にしたセンシティブな作品だと一定のイメージがつくのは否めない気がします。(なお私の政治スタンスは…ノンポリです(笑))

そんなこともちょっと時間を置いて読むと客観的に作品を見られる(もしくは偏見?)ということかなぁと思ったりしています。

内容紹介(裏表紙記載)
「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、1つの謎が浮かんでくるーー。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。


とりあえずの感想、よく売れたのがよくわかりました。
構成がとてもうまく先が気になりどんどん読み進めてしまい最後は涙もウルウルしました。
(歳とともに涙腺ゆるくなっています。)

今どきの小説はやはり面白いですね。

ただ…これが20年、30年持ちこたえられるかどうかは時代経ないとわからないですが。

本作ほどの作品だと現代の空気感を反映していわゆる「受ける」書き方を十分研究して書かれていると思います。

良くも悪くもそれが「今」読むとアドヴァンテージにはなってはいるかと思いますがそのアドヴァンテージが抜け落ちてからも価値が残るかどうかがいわゆる時代を超えた名作かどうかの分かれ目と思います。

まぁなかなかそんな作品はないのも事実なんですけどねぇ。
(読む人の年代にもよりますし)

本作は前述のとおり、孫がゼロ戦乗組員であった祖父の足跡を関係者のインタビューでつないでいくという構成で、最初は「とんでもなく情けない人」という印象の祖父の真実の姿が明らかになっていくところなどなんともうまい!!

インタビューそれぞれが独立した話になっているので連作短編っぽくなっていて「感動」させるには一番向く構成ですね。
(SFでいえば「火星年代記」「都市」などなど)

まぁ逆にいえばいかにも「感動させてやろう」というのがあざといとも言えるんですが...。

また登場人物も割とわかりやすい人が多く単純明快(最後の方に出てくるやくざの大物など特に)で類型的過ぎるかなぁとは感じましたが…。
いわゆる「文学」な作品ではなく「面白さ」重視かと思うのでこれはこれでいいんでしょうね。

著者は本作が処女作なわけですが放送作家経験が生きていたんでしょうか、とても達者です。
そう考えると場面場面「映像的」な表現のような気もします。

太平洋戦争の各局面、航空隊の実態などもかなり取材、調査した感もあり戦後70年経った2006年に出された本書は太平洋戦争の実態(の一部)を広く知らせるという意味でも意義深いものかと思います。
(私は結構太平洋戦争もの好きでその手のもの昔よく読んでいました。山本七平だったりしたので若干偏っていますが)

ただ主人公(現代の方)の姉の婚約者の新聞記者(左系想定と思われる)の造形はいかがなものかなぁ...とは思いました。

この著者の作品は本作しか読んでいないので著者に対する評価はなんともいえませんが、本作とてもおもしろかったです。

とくに「おじさん」泣かせと感じました。
お薦めです。

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