しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

SFはこれを読め! 谷岡一郎著 ちくまプリマー新書

2013-11-29 | 本リスト
小説にちょっと「疲れた感」もあり本書を読みました。

去年末くらいに「SFを読もう」と思い始めた時、ネットでいろいろ検索していたら本書も引っかかってきたので存在は知っていました。
ただ「買うまでにはいたらないなー」と思っていたら地元の図書館で見つけたので借りました。

谷岡先生とそれほどSFを読んでいないひろ子さん、SFマニアの辰郎君三人でのテーマ別に「SF談義」という形式で進みます。
2008年4月発刊。

内容紹介(裏表紙記載)
SFは、科学を通じた現代社会への賛歌である。
テーマ別のオススメ本を通じて、
社会とは何か、生命とはなにか、人はどう生きるべきかなどについて考えてみよう。

ちょっと片寄りはあると思いますが「SFを読みたくなる」本だと思います。

私的には「月は無慈悲な夜の帝王」の評価があまりに高いので??、なのと、「キリンヤガ」「戦士志願」梶尾真治の作品が読みたくなりました。

あと「日本の短編」を挙げるところで無理やり星新一の「ボッコちゃん」から出しているところは「どうかなぁ」...と感じました。
挙げられている「おーいでてこい」は「ようこそ地球さん」収載なのに間違えているし...。
リスペクト(いやな言葉ですがこの場合ピッタリくる気がする)するならもっとちゃんと読んで欲しい...。
「星新一」、「ボッコちゃん」だけ読んでわかったようになる作家ではないと思います。

以下にこれからの読書の参考に章立てと、挙げられていた作品記載しました。

第1章
異文化コンタクト/エイリアン-宇宙人は人間と似ているか

アーサー・C・クラーク「(地球)幼年期の終わり」
梶尾真治「地球はプレインヨーグルト」
further readings
アーサー・C・クラーク「宇宙のランデヴー」
ロバート・A・ハインライン「異星の客」
スタニスワフ・レム「ソラリスの陽のもとに」
マイク・レズニック「第二の接触」
フレデリック・ポール「ゲイト・ウェイ」

第2章
ロボット-人間とは死ぬことと見つけたり

アイザック・アシモフ「われはロボット」
アイザック・アシモフ「バイセンテニアル・マン」(「聖者の行進」より)
further readings
アイザック・アシモフ「鋼鉄都市」、「ロボットと帝国」
手塚治虫「火の鳥-復活・羽衣編」

第3章
タイムトラベル-日本が誇る時間物の最高傑作

広瀬正「マイナス・ゼロ」
梶尾真治「美亜へ贈る真珠」(「美亜へ贈る真珠」より)
further readings
ロバート・A・ハインライン「夏への扉」
ポールアンダーソン「百万年の船(1・2・3)」
小松左京「果てしなき流れの果てに」

第4章
文明/社会風刺-ユートピアとはどんな世界か

マイク・レズニック「キリンヤガ」
カレル・チャペック「山椒魚戦争」
further readings
グレッグ・イーガン「しあわせの理由」
山本弘「アイの物語」
レイ・ブラッドベリ「華氏451度」
ジョージ・オーウェル「1984年」
ロバート・J・ソウヤー「さよならダイノサウルス」

第5章
医学/脳科学-愛さえあれば××の差なんて

ダニエル・キイス「アウジャーノンに花束を」
テッド・チャン「理解」(「あなたの人生の物語」より)
further readings
アイザック・アシモフ「ミクロの決死圏」
グレッグ・ベア「ブラッド・ミュージック」
ロバート・J・ソウヤー「ターミナル・エクスペリメント」

第6章
愛と犠牲-リーダーのジレンマ

ジェイムス・ティプトリー・Jr.「たったひとつの冴えたやり方」
トム・ゴドウィン「冷たい方程式」(「冷たい方程式」より)
further readings
ロイス・マクスター・ビジョルド「戦士志願」
萩尾望都「11人いる!」
ジュール・ベルヌ「十五少年漂流記」
ウィリアム・ゴールディング「蠅の王」

第7章
戦闘/活劇-リーダーの成長と決断

オースン・スコット・カード「エンダーのゲーム」
ロイス・マクスター・ビジョルド「無限の境界」(「無限の境界」より)
further readings
アレクセイ・パンシン「成長の儀式」
ジョー・ホールドマン「終わりなき戦い」
田中芳樹「銀河英雄伝説」

第8章
人工知能-パソコンが自我を持つ日

ロバート・A・ハインライン「月は無慈悲な夜の女王」
フィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
further readings
グレッグ・イーガン「ディアスポラ」
オースン・スコット・カード「ゼノサイド」

第9章
タイム・スリップとパラレルワールド

半村良「戦国自衛隊」
フレドリック・ブラウン「発狂した宇宙」
further readings
広瀬正「エロス」
西澤保彦「七回死んだ男」
キース・ロバーツ「パヴァーヌ」
クリストファー・プリースト「双生児」

第10章
テクノロジーの進歩/ハードSF-ブラックホールと中性子星

ロバート・L・フォワード「竜の卵」
ラリィ・ニーヴン「リングワールド」
further readings
ロバート・L・フォワード「スターフェイク」
ラリィ・ニーヴン「中性子星」
アーサー・C・クラーク「楽園の泉」
ポール・アンダーソン「タウ・ゼロ」
スティーヴン・バクスター「天の筏」
小松左京「さよならジュピター」
石原藤夫「「宇宙船オロモルフ号の冒険」

第11章
センス・オブ・ワンダー-究極のホラ話

J・P・ホーガン「星を継ぐもの」
ダン・シモンズ「ハイペリオン」
further readings
アイザック・アシモフ「ファウンデーション(シリーズ)」(
フランク・ハーバート「デューン(シリーズ)」
ジュール・ベルヌ「地底探検」
ジョージ・R・R・マーティン「タフの方舟(1・2)

座談会1-短編の楽しみ
○ベスト短編リスト
*水色既読、青色遠い昔既読。


日本の短編-奇妙な味付けリスト-
草上仁「ゆっくりと南へ
中井紀夫「山の上の交響楽」
星新一「生活維持省」「キツツキ計画」「お~いでてこい」「月の光」(「ボッコちゃん」より)
かんべむさし「決戦日本シリーズ」「ポトラッチ戦史」
筒井康隆「ヨッパ谷の降下」
梶尾真治「玲子の箱宇宙」

座談会2-オール・タイム・ベストSF
○オールタイムベストリスト
*水色既読、青色遠い昔既読。


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それから 夏目漱石著 新潮文庫

2013-11-27 | 日本小説

「明暗」に続いて読んでみようと、武蔵小山のブックオフで105円で購入。

本書も実家にあるはずなんですがが...、まぁ105円ですし。
漱石は読もうと思えば、Kindleでも青空文庫でも無料で読めるのですがやっぱり紙の方が気分が出ます。

「それから」は高校生の頃「三四郎」を読んでそれなりに面白く、「続きを読もう」と読みだしたのですが....。
高校生の私には手が出ずそのままになっていました。
宿願果たせました。

内容(裏表紙記載)
長岡代助は三十にもなって定職も持たず、父からの援助で毎日をぶらぶらと暮らしている。 実生活に根を持たない思索家の代助は、かつて愛しながらも義侠心から友人平岡に譲った平岡の妻三千代との再会により、妙な運命に巻き込まれていく・・・・・・。破局を予想しながらもそれにむかわなければいられない愛を通して明治知識人の悲劇を描く、「三四郎」に続く三部作の第二作。

読み始めての感想、「つまらない」
主人公代助は何をするわけでもなくぶらぶらしていて、まったく魅力がない。
「こいつ、いったいどうするんだろう?」と思いながら読みました。

芝居小屋でのお見合いとか、「芸者と当節の女性が同じだ」というセリフなどが、「明暗」でも出てくる場面で「続いていくんだなぁ」と興味深かったくらいで、どうも…。

ただ終盤に代助が三千代を奪おうと決心したあたりから、俄然テンポが変わって代助ととりまく環境の壊れ具合は「すげぇ」と思いながら読みました。
終盤の布石としての前段であれば、つまらなさも許せるような気がしました。

代助の住む主観世界の「風船」の中で展開してた前段と、その「風船」を中から破ってしまい現実世界に翻弄される代助という感じでしょうか。

前段の部分は「代助の主観」世界ですから、書かれた人物やら関係性などが、客観的に事実かどうか、終盤ではかなり疑わしく感じました。
三千代の代助に対する感情やら言葉も本当かどうかはわからない。
三千代が平岡を振り向かせるために、代助を利用しただけかもしれない。
もしかしたら平岡と三千代で共謀した美人局かもしれない...。

自分の主観世界の内側だけで生きてきた代助は外の世界に触れた瞬間何もわからず、すべてが壊れていく。
ラストは「ノルウェイの森」をちょっと連想しました。
そう思うと類似性があるような気もします。

代助ほど極端ではないでしょうが、「自分の主観世界」で生きているというのは誰にでもあてはまることかもしれませんね。
私も「自分の職場」から「辞めてやる」といってやめたら同じようなことになるかもしれない...怖い。

男女の三角関係という点やらなにやらは「明暗」へつながっている作品な気がしました。
「それから」の書き直しが「明暗」かもしれませんね。

前段の「つまらなさ」に耐えられればすごい小説だとは思いました。

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幼年期の終わり アーサー・C・クラーク著 福島正実訳 ハヤカワ文庫

2013-11-22 | 海外SF
前にも書きましたが(「都市と星」「宇宙のランデブー」)クラークはあまり得意な作家ではありません。
本作も中学生の頃に創元の「地球幼年期の終わり」を読んで、あまり感心しなかった記憶があります。
最初の方(第一部)は面白かった記憶があるのですが、後段で当時の私はついていけなくなった...。

本作、松岡正剛氏の千夜千冊で紹介されており「先読みして読んだが完敗であった」「その他のクラークの作品はあまり感心しない」というようなことが書かれていました。
(念のため、上記「原文」のままではなく私の受け取ったイメージで書いています)
そんなのを読み、クラークに「あまり感心していない」私も本作が気になっていました。

実家に「地球幼年期の終わり」がまだあるはずで、創元の沼沢 洽治訳の方が評価は高いようなのでそのうち実家から持ってきて読み直そうと思っていたのですが、鶴見のブックオフで見かけて購入してしまいました。

‘12年ローカス社オールタイムベスト14位、’06年SFマガジンベスト2位。 1953年の発刊です。
内容(裏表紙記載)
人類が宇宙に進出したその日、巨大宇宙船団が地球の空を覆った。 やがて人々の頭の中に一つの言葉がこだまする。―――人類はもはや孤独ではない。 それから50年、人類より遥かに高度の知能と技術を有するエイリアンは、その姿を現すことなく、平和裡に地球管理を行っていた。 彼らの真の目的は?そして人類の未来は? 宇宙知性との遭遇によって新たな道を歩みだす人類の姿を、巨匠が詩情豊かに描き上げたSF史上屈指の名作

読後の感想「名作だ...」
読後しばらく呆然としてしまいました。
この1作でクラークのイメージがひっくり返りました。

本作でのクラークは、「理系」な部分が抑えられ、「文系」というか抒情的な部分が強く出ています。
最初の東西冷戦的描写は今となっては古いですが、それを除けば最後まで物語世界の中に耽溺できました。

前述の松岡氏に影響され「この先どうなるのか?」ということを考えながら読んだのですが「この伏線がこんな風に料理されるのかー」と感心することしきりでした。

もっとも最初のエイリアンの「姿」は昔読んだのを覚えていたので意外感はありませんでした...。
その後の展開は殆ど記憶になかったので当時の私には理解不能だったんんだろうなぁ。

子供に対する思いは子供を持ってみなければわかりませんし、「最後の人間」になった人の気持ち、産婆役となった立場のものの感慨などはある程度人生経験を積まないと本当にはわからないような気もします。

本は読む時期が大事ですね。

第二部以降あまりに内容を覚えていないので「第二部以降読まなかったのかな?」
と思い出したところの第三部途中で本筋とほとんど関係のない所で「プラトンはソクラテスをゆがめた」云々と書いているところをなぜか覚えていたので読んだろうな~。(人間の記憶も不思議だ)

第一部の途中から「これはすごいかもしれない」と思いだし。
第二部、第三部、最後にこれまでの伏線を全て使っての畳み込むようなラストは圧巻でした。
奇跡のような名作だと思います。

純粋かつトラディショナルな「SF」としては歴史に残る名作でしょうね。
(「1984年」などは、純然たるSFではない気がする)

他のクラーク作品は.....。

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明暗 夏目漱石著 新潮文庫

2013-11-20 | 日本小説
先日「私的日本小説番付」で「吾輩は猫である」を東の正横綱にして、「坊ちゃん」「こころ」を番付上位に入れました。
別に「夏目漱石」の名前で入れたわけではなく自分なりの正直な評価ではあるのですが、他にあまり漱石を読んでいないのが気になりました。

上記三作以外だと読んだのは「草枕」「二百十日」「三四郎」「彼岸過迄」「硝子戸の中」くらい。(内容殆ど覚えていませんが...)
有名作である「それから」「門」本書「明暗」などは過去にチャレンジしましたが読み始めては挫折していました...。

本書は大学生最後か会社入りたて頃に新品で購入しました。

その頃「吾輩は猫である」を読み返して「これはすごい!」と感動し、夏目漱石の未完の最終作にして「猫」とならんで評価の高い本書を読んでみようと買ったのですが前述のとおりで...20年ほどそのままになっていました。
(「猫」を評価する人は「明暗」を受け付けず、逆の人は逆なパターンが多いことはその後知りましたが...)
本作は大正6年(1916年)に朝日新聞に連載され、漱石の死により未完で終わっています。
もうすぐ100年経つんですね。

内容(裏表紙記載)
「明暗」は漱石の絶筆であり、五十年の人間的体験と十年の作家的修練の果てに達した悟り、人生解決の霊的秘境がこれである。明治の知識階級の業病である立身出世主義の具現者津田とお延夫婦の不安定な家庭生活を中心にして、漱石の生涯のテーマであるエゴイズムとそこからの脱却の問題を追求した本書は、真の近代小説の名に値する数少ない日本の代表的小説のひとつである。

読後の感想、「すごい(ねちっこい)小説」ですね。
本作が未完で終わっているのは日本のみならず世界レベルで惜しいことかもしれません。
ただ本作、若者には無理だとは思いました。
味わうには最低でも結婚している30代以降の人じゃないとな気がします。
最近SF慣れしていた私にも読み出しつらかった....。
(楽しい小説ではない)
内容ですが、裏表紙記載の「悟り」とか「人生解決の霊的秘境」というような表現は本作を評するのにとても不似合だと思います。
「近代小説」云々はよくわかりませんが、本作「悟り」といった枯れた表現ではなく日本には珍しい粘着質な作品だと思います。
ドストエフスキー的とでもいうのでしょうか、なんとも粘っこい人物・心理描写が繰り広げられています。
わずか10日間ほどの出来事を600ページ弱(新潮文庫の細かい字版で)に渡って展開していきます。
なんだか読んでいると時間軸がずれてくる。(解説でも書いていた)
作中でもドストエフスキーのことが語られていますし、漱石が影響を受けているという説もあるようですね。(これも解説にあった)
マネとしてもドストエフスキー的小説をここまでのレベルで描ける作家はそうはいないでしょうから、「さすが漱石!」というところ。

ただ私的にはやはり「猫」「坊ちゃん」「こころ」の方が好きですね。
そちらの方がストレートに漱石のメッセージが描かれているような気がします。

対して「明暗」は技巧の極みというか、もの凄く作りこんだ小説になっています。
ストーリー的には「昼メロ」的な痴話げんかやら親子兄弟の葛藤を、心理的に別の面から捉えて処理しているのが本書の魅力ですね。
(ネットでいろいろ見ていたら「渡鬼的」という人もいました、「わかるなー」という感じ)
作品世界の設定から離れて客観的に状況をみるとなんということのない話が続いていくのですが、解説のことばを借りると「切迫感」を持って展開していく。

書き方によっては「気弱な夫」と「愛情深くちょっと強気な妻」の新婚生活をほのぼのと描いているというような状況にもなりそうなのですが、夫妻の心理の負の部分を思いっきり強調してなんとも「やりきれない」世界にしています。
そういう意味では「カフカ」的でもありますね。

重要登場人物である小林と主人公津田、小林と津田の妻お延の会話などもなんとも奇妙かつ不協和音が奏でられて「切迫感」を感じるように描かれていますが、別の見方をすればそんなに大した話でもないような気もする。

人間の心理には負の部分、正の部分などなどいろいろあるはずですが、そのある部分を抜き出してデフォルメしてドラマを仕上げる手腕が際立っています。
「猫」でもそんな傾向はあったと思うのですが、漱石の作家的技巧の進歩なのでしょうかとても「巧く」暗いトーンで描き出されています。

最後の温泉宿に津田が向かってからの展開がどう進んでいったのか....。
非常に気になります。
返す返す「未完」残念です。

ネットで検索したらこの後の展開は、定説めいたものがあるようで、その辺の研究の成果も取り入れた「続明暗」水村美苗著というような作品も出ているようです。
(これもそのうち読みたい)

でも漱石自身で書かれた結末を見たかったなー。
改めて非常に残念です。

あと最後に、登場人物全員が全て何か「欠けた」デフォルメされた人物なのですが、私が一番好感を持てたのは津田の妹お秀。
お延に「キリスト教徒?」などといわれていましたが、ストレートに思いを吐き出している人物な気がしました。

まぁ結婚して「100%幸せ」というような人でなければ、読んでみると迫ってくるものがある作品だと思います。(除く若者)
「100%幸せ」と言い切れる人がいたらそれはそれで怖い存在ですけれどもね。

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すばらしい新世界 ハックスリー著 松村達雄訳 講談社文庫 

2013-11-18 | 海外SF
本作、1932年発刊、‘12年ローカス社オールタイムベスト29位
オールタイムベスト100では3番目に古い作品です。

オーウェルの「1984年」と並ぶ代表的ディストピア小説です。

本作の存在は小学生のとき星新一のエッセイなどでたびたび紹介(ハックスレー的などという表現)されていて知っていました。
この本を入手したのは多分小学校6年生くらいのとき、地元の古本屋で50円で購入。
(価格は書いてあった)

奥付見ると、昭和49年11月15日の初版、

買ったのが昭和56年位。

多分私の未読本のなかでも一番長いくらいに積んでいた本です。
「SF」の古典として「必読書」っぽい感じがあり買ったのですが...。
当時の私では歯がたちませんでした。

内容(裏表紙記載)
人工授精やフリーセックスによる家庭の否定、条件反射的教育で巧妙に管理される階級社会――かつてバラ色の陶酔に包まれ、とどまることを知らぬ機械文明の発達が行きついた“すばらしい新世界”!人間が自らの尊厳を見失うその恐るべき逆ユートピアの姿を、諧謔と皮肉の文体で描いた文明論的SF小説。

読んでみて第一に思ったこと。
「うーん、これは小、中学生の私には無理」(笑)
人にもよるのでしょうが、私だったら会社に入って2、3年の25-6歳が読む適齢期だったような気がしました。
「1984年」は今年読んでかなりツボにはまりましたが、本作は「青春」な感じが43オヤジには今一つ入っていけないものがありました。
社会や異性に認められないコンプレックスとか「純粋」な恋愛感情などなどは比較的若い人の方が共感しやすいのではないでしょうか。

とはいえさすが歴史に残る代表的ディストピア小説。
いろいろ考えさせられる部分がありましたし、相当力を入れて書かれているのはよくわかりました。

ハックスレー家は生物学者を多く輩出している家系のようで、遺伝学的な描写や、生物学的描写は1930年代とは思えないですね。
生物学的にユートピアを創出していく発想はとてもユニークと思いました。

人間を発生レベルと潜在意識レベルで完全に制御して、テクノロジーの進歩で物質的(精神的にも薬で)満たされているとすれば、ある意味そこに住む人にとっては本当に「すばらしい」世界といえるのかもしれません。
主観的に幸せであればいいのか?どうかという問題ですね。
そのような社会のなかでアウトサイダーが活躍する物語です。

この社会実現性が「?」な気がしたのは、一部の権力者は「自我」を残しているわけで彼らが権力欲のようなものを克服できるか?と、このような社会のテクノロジーが退歩していかないかどうか?というところでしょうか。
まぁ一応アウトサイダーを包み込む仕組みも残しているわけですが...。

1984年の方が社会単位での権力欲とかいったものは深く突っ込んでいた気がします。

他、作中野蛮人サヴェッジが総統ムスタファ・モンドと政治やら社会について議論しますが、野蛮人のことばの発想は「シェークスピア」のみ...。
それだけで議論になるのか???ちょっと奇異な感じを受けました。
ジャレド・ダイヤモンドが「銃・病原菌・鉄」の中で文明人よりも未開人の方が平均的な「知性」は「高い」というのを思い出したりしましたが...。
でもちょっと無理があるような気はしました。

あと最後場面での野蛮人を追う「マスコミ」の激しさは今でも実現しているような気がしました。
野次馬根性はある意味人間の普遍的本能かもしれませんね。

細かく言えば突っ込みどころもあるとは思いますが、いろいろ考えさせられ、ディストピア小説としてよくできている作品だと思います。
中、高生にはお薦めしませんが....。

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