しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

宇宙の小石 アイザック・アシモフ著 高橋豊訳 ハヤカワ文庫

2015-12-31 | 海外SF
宇宙気流」を読み始めたところで、Amazonで古本で本書を購入。(これまた絶版のため)

暗黒星雲のかなたに」「宇宙気流」と読了済みのため本書を読めばトランターもの制覇となります。
出版年は1950年と三作で一番古いものの舞台となる設定年代は「宇宙気流」の後となり一番後になります。

トランターを中心とする「銀河帝国」的なものが形成されて、地球はその辺境で総督が置かれて統治されている状態です。
「宇宙気流」同様、地球が人類の故郷であることは忘れ去られており、放射能に包まれた野蛮な惑星ということになっています。

もともと中編として描かれてボツになった作品を編集の仕事もしていたフレデリック・ポールが仲介しダブルディ社に紹介し長編化された作品です。
ファウンデーションは中編をつなぎ合わせたものですし、そういう意味ではアシモフのSF第一長編ともいえる作品です。
アシモフいわく「第二次世界大戦前は雑誌の稿料中心であったSFが、長編が単行本として売れ印税が入るようになって続ける気になった」きっかけとなった作品だそうです。
アシモフ初期作品集のどこかにそんなようなことが書いてありました、)

本書は小中学生時代に読んだ記憶があるのですが実家で探しても出てきませんでした…。
絶対読んだはずなんですが、自信がなくなってきました。
人の記憶はいい加減ですねぇ。

内容紹介(裏表紙記載)
のどかな郊外の歩道を歩いていた仕立屋シュワルツは、急にめまいに襲われた。次の瞬間、彼は数万年の時を越え、銀河紀元827年の未来にいたのである! その時代全銀河はトランターを中心とする銀河帝国に支配され、人類発祥の地である地球は、辺境惑星に浮かぶ放射能まみれの小石にすぎなかった・・・・・・遥かな未来にタイムスリップし、恐るべき陰謀に巻きこまれた男の驚異の冒険を、巨匠がミステリタッチで描いた不朽の名作


内容紹介を読むとタイムトラベル的要素もあり巨匠アシモフの作品ですから期待もするのですが…。
「宇宙気流」同様、名作というよりも軽く読む娯楽作というイメージの作品です。

せっかくタイムスリップをしたシュワルツがもっと活躍してくれれば面白くなりそうなのですが思ったほど活躍しません。
シュワルツはシナプシファイアーなる知力増強手術を受けて異能を発揮するようになるのですが、話的にはそのような細工なしで活躍した方が面白かったような…。
でも当時のSF読者受けしてそこそこの部数を売るためにはそんなようなSFギミックを入れざるを得なかったのかもしれませんね。

放射能を帯びた惑星「地球人」と銀河帝国人との差別とか偏見がメインテーマかと思いますが「宇宙気流」同様直接的過ぎて深くは響きません。
銀河帝国のエリート考古学者アーヴァーダンとヒロイン役の地球人天才物理学者の娘ポーラが絵に描いたようなハリウッド的人物像(インディ・ジョーンズと現地人美女)でその出会いとちょいとしたすれ違い、結末のハッピーエンドもハリウッド的です…。
映画化でも狙っていたんでしょうか?
「発狂した宇宙」でさえ映画化されているんですから50~60年代ならこの作品で十分映画化されてもよさそうですが…。

そんなこんなで気楽に楽しむにはいい作品ではありました。
ミステリ的要素もありますが、まぁ現代の読者からすえば読めてしまう謎ではあると思います。

本作小中学生時代に読んだときにはえらく感心した記憶があるのですが、大人(オヤジ)になると価値観変わってきますね。


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宇宙気流 アイザック・アシモフ著 平井イサク訳 ハヤカワ文庫

2015-12-26 | 海外SF
SFに戻りとりあえず初心にかえりアシモフからということで本書を手に取りました。

本自体は「暗黒星雲のかなたに」読了後、Amazonで古本を購入(絶版のため)。

中学生頃「読んだかなぁ…?」とも思っていたのですが未読でした。

本書は1952年刊。
「暗黒星雲のかなたに」1951年刊「宇宙の小石」1950年刊と併せアシモフ未来史の中では銀河帝国前史を描く“トランターもの”として分類されている作品です。
本書の刊行は年代的には3冊の4なかで一番後ですが時代的には「暗黒星雲のかなたへ」の後で「宇宙の小石」の前でトランターが銀河の支配権を握りつつある時代が背景です。。
地球はすでに人類のふるさとの星であることを忘れられています。

内容紹介(裏表紙記載)
高価な特殊繊維カートを産出する人類宇宙唯一の惑星フロリナ。この驚異の繊維を入手すれば、無尽蔵の富を所有することになる。だが、そのフロリナが消滅する!?
驚くべき通信を残して消息を絶った空間分析家の謎の失踪は、カート貿易を死守せんとするサーク人と、それに対抗して暗躍するトランター帝国との対立を激化させ、ついには全銀河を震撼させる大事件へと進展した! 巨匠が壮大無比のスケールで描く宇宙叙事詩


1952年といえば英米SFの黄金期、同年にシマックの「都市」翌年1953年には「幼年期の終わり」「分解された男」「人間以上」が発刊アシモフの「ファウンデーション」も単行本にまとめられてこの年に出ています。

それなりに期待して読んだのですが...娯楽色が強く「いわゆる」名作とは程遠い作品です。

「暗黒星雲のかなたに」より対象年齢は高いかもしれませんが、まぁ若い年代のSFファンをターゲットにした感じで「軽く楽しむミステリー風味をまぶしたSF」という位置づけの作品でしょうか。

奴隷制のような形で管理される白人であるフロリナ人とそれを搾取する有色人種のサーク人のとの間で人種差別問題、そこに介入する大国トランター帝国の姿から政治的要素も織り込んではいるのですが「大人向け」としては直接的で単純すぎるように感じました。
中高生向けならばこれでも結構考えるところはある感もありますが、40オヤジにはひびかないかなぁ。

基本アシモフはシリアスな問題をドロドロ描くのは苦手なんでしょうねぇ深刻になりきれないというか….。
「ドロドロな問題がわからない」という苦しみや純個人的な苦悩の方が読ませる感じがあります。
成功していると思われるファウンデーションやロボットものはそんな感じがあります。

「社会派」へ脱皮したかったんでしょうか?
10代から活躍する天才作家の宿命でしょうかねぇ...。

ミステリ的な部分もまぁ私でも1/3くらい読んだところで犯人の目星がついたのでまぁそれほど高度なものではない。
(これまた中学生時代の自分なら感心したような気もしますが…)

アシモフが手を抜いて書いてるのか、そもそもバラツキが多い作家なのかは「???」ですがこの辺の作品も含めて評価されているところが現代的にアシモフの評価は低くなっている一因かもしれませんね。

ただ難しいことを考えずに読む分には登場人物のキャラ立ちも明確で(だから深みもないわけですが)これまたアシモフの特徴か「悪人」もどこかコミカルで暗くならないので楽しく読めます。
結末もまぁハッピーエンドですしねぇ。

なお私のお気に入りは優しく聡明なお姉さんキャラのヴァローナと勝ち気なお嬢様キャラのサミアです。

なんとも類型的な女性像ではありますが魅力的でした。(笑)

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背教者ユリアヌス 上・中・下 辻邦生著 中公文庫

2015-12-26 | 日本小説
楡家の人びと」読後に読みたくなったのが本作、北杜夫の盟友辻邦生の代表作(といってもいいのでは)です。

「楡家の人びと」同様中学か高校(多分高校)時代に入手し途中まで読みかけていて長らく未読となっていた作品です。
当時の国語の先生が夏休みのお薦めの本として挙げていて手に取った記憶があります。

そのとき上巻の途中まで読んでいて面白かった記憶があるのですが…。
当時の私の読書力ではその後読む気力が出ず未読のまま30年近くたってしまいました。
今回読んだ本も当時入手したもの

3冊組のものを地元の古本屋で入手したものです。
引っ越し繰り返しながらも「読もう読もう」と思い持ち歩いていました。
奥付見ると昭和49年12月初版、昭和53年1月 6版のもの。
古い...。
1969年~1972年まで「海」に連載され初刊は1972年(昭和42年)です。

内容紹介(裏表紙).
上:ローマ皇帝の家門に生まれながら血をあらう争いに幽閉の日を送る若き日のユリアヌス。やがて訪れる怒涛の運命を前にその瞳は自負と不安にわななく。
毎日芸術賞にかがやく記念碑的大作

中:けがれなき青年の魂にひたむきな愛の手をのべる皇后エウセビア。真摯な学徒の生活も束の間、副帝に擁立されたユリアヌスは反乱のガリアの地へ赴く。
毎日芸術賞にかがやく記念碑的大作!

下:永遠のローマよ。日の神は今わが生を見棄てられた! ペルシャ兵の槍に斃れたユリアヌスは、皇帝旗に包まれてメソポタミアの砂漠へと消えてゆく。
毎日芸術賞にかがやく記念碑的大作!


読後のとりあえずの感想は「30年越しでやっと読めた」という満足感と「もっと素晴らしい作品かと思っていたのに期待外れだった」残念感が入り混じったものでした。
読むタイミングとしては大学生、20代くらいがベストだったのかなぁという感じ。

後半ユリアヌスがガリアに赴任してから作品に入り込めずきつかった…。
下巻は読み通すのが苦痛でさえありました。

かなり評価の高い作品なので私の読み方が悪いのかもしれませんが…。

上巻の途中までは読んだ記憶もうっすら残っており、当時も感じたのですが読みやすくかつとても面白い。
純文学というよりもギリシャ神話の神様らしきものも全編登場しますし…、超現実的な個所、運命的な暗示などが随所に登場しますし神話のパロディもしくはファンタジィ風の構成になっています。
いわくつきの「皇帝の甥」という身分のユリアヌスが本名で出歩いて友人と話をしていても誰も気づかないというようなご都合主義的展開もありますがファンタジイと思って読めば全然気になりませんでしたし、たくらみとして楽しめました。

ただ中巻後半辺り以降、ユリアヌスがガリヤに赴任し立場も運命も大きく転回してからは「哲人」かつ「読書家」ユリアヌスの理想を追い求める姿は変わらないわけですが…ご都合主義的なところは置くとしても展開が雑かつ平板になってしまったように感じました。
「理想」と「現実」の間で苦悩する姿、「悲劇」に向かって突き進んでいく姿やキリスト教徒との対立を通じた宗教と社会の矛盾などがもっと丁寧に書かれていればかなりの名作になっていたのではないでしょうか。

ユリアヌスが権力を握ってからの「青さ」的なところは私がもっと若ければ共感できたよのかもしれませんが40代オヤジとしては青年の苦悩は共感しにくいものがあったのかもしれません。
当時のローマ雰因気を伝える作品としては良い作品とは思いましたが残念ながら大傑作とは感じられませんでした。
ただ若い人にはお薦めかもしれません。

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きまぐれ学問所 星新一著 角川文庫

2015-12-20 | 評論エッセイ等
これまた6月ころ読んだ本です。
(本書抜かして12冊読了済みで記事に上げていません…手抜き記事でもなんとかあげていきたいと思っています。)
転勤直後で余裕がなく軽く読めるものをということで手に取りました。
本自体はブックオフで見かけて購入したもの。

平成元年刊行ですから星新一としてはショート・ショート卒業後の晩年のエッセイ集です。
独自の視点から切り口を見つけてかく氏のエッセイは評判も高く(多分)私も好きでしたが、切り口の鮮やかさは本書でも随所に見られて堪能できました。

内容紹介(裏表紙記載)
本を読むのは楽しい。乱読して、片端から忘れていくのも楽しいけれど、テーマ別に集中して読めば、もっと楽しい。頭の中でまとまって、会話のネタにも不自由しません。
世界各地に住む異民族たちと仲よくなったり、李白、老子と遊んだり。ここと思えばまたあちら。のんびりと春風に吹かれていると、突然鋭く切りつけられる。油断のならない、思わず吹きだす辛口エッセイの数々。
ホシ式学問術の成果、ご一緒にどうぞ。


内容紹介にもあるとおり星氏が興味を持ったテーマに関して集中的に読んだ本の紹介とそのテーマについての考察をまとめたものです。
野生時代に隔月で連載したものをまとめたものとのことです。

今ではかなりの情報がインターネット経由で調べられるわけですが、この本が出た平成元年(1989年)はインターネット前の時代。
教養、知識は本を集めて読むほかには得られない時代。

この本に取りあげられているジプシーやらフランクリン、李白のことなども今ならネットでいろいろ調べられそうですが、このエッセイ集を読むとやはり「本」の乱読で得られた知識の方が「深く考えられるのではないかなぁ」などと改めて思いました。

いわゆる「学問的」ではないでしょうが星氏の独自の考察も興味深い。
「正しい」かどうかは別として物まねでないオリジナルの考え方から考察する姿勢がとても星新一らしい...。
晩年だけに発想が若干は固くなっているような感じもうけましたがその辺は健在な感じで楽しめました。

そもそも「李白」や「フランクリン」をこういう視点で調べようという発想はこの人でないとなかなか出てこないのではないでしょうか。
あとは「ジプシー」についての考察がとても記憶に残っています。
好エッセイ集です。

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1950年のバックトス 北村薫著 新潮文庫

2015-12-19 | 日本小説
これまた5-6月に読んだものです。

「チャンピオンたちの朝食」を読んだ後もSFに戻る気もせず…。
なんとなく「軽く読めそうな本」ということでブックオフ108円棚で見つけて購入していた本書を手に取りました。

2007年8月刊の短編集です。

内容(裏表紙記載)
「野球って、こうやって、誰かと誰かを結び付けてくれるものなんだね」忘れがたい面影とともに、あのときの私がよみがえる…。大切に抱えていた想いが、時空を超えて解き放たれるとき―。男と女、友と友、親と子を、人と人をつなぐ人生の一瞬。秘めた想いは、今も胸を熱くする。過ぎて返らぬ思い出は、いつも私のうちに生きている。謎に満ちた心の軌跡をこまやかに辿る短編集。


北村薫の短編集というかショート・ショート集(大きい文字300ペーシに23編収録)という感じのもの。
野球小説かと思って手に取ると裏切られます。

ホラーというか怪談調のもの人情もの的な落語調、共通してちょいとミステリーが味付けにつかっている感じでよくも悪くも「北村調」なので安心して読めます。
作品の出来は若干ばらつきがありますが総じていうと「すごい」とは思いませんが「なかなかいい感じ」という感想でした。(エラそうな感想ですが…)
アイディアが凝縮されている短編・ショート・ショートという様式は北村薫にあっているのかもしれませんね。

各編紹介しようと思いましたが…力足りずでタイトルのみ。
 ○百物語
 ○万華鏡
 ○雁の便り
 ○包丁
 ○真夜中のダッフルコート
 ○昔町
 ○恐怖映画
 ○洒落小町
 ○凱旋
 ○眼
 ○秋
 ○手を冷やす
 ○かるかや
 ○雪が降って来ました
 ○百合子姫・怪奇毒吐き女
 ○ふっくらと
 ○大きなチョコレート
 ○石段・大きな木の下で
 ○アモンチラードの指輪
 ○小正月
 ○1950年のバックトス
 ○林檎の香
 ○ほたてステーキと鰻

2007年の巴投げ 桜庭一樹
解説 速水桃子

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