しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

神様はつらい ストルガッキー兄弟著 太田多耕訳 世界SF全集-24 早川書房

2018-12-29 | 海外SF
再びSFに戻り、読書の対象としている'12年ローカス誌オールタイムベスト長編、58位の作品です、1964年刊行。

本作この早川書房刊 の「世界SF全集24」に載っていることはわかっていたのですが...。
1970年刊行かつ他の刊より品薄なのか古本も高価(amazonで確認したら9000円台)と入手するのに躊躇する価格。
ということで今回は図書館のお世話になりました。

閉架ではありましたが地元の図書館にあったので借りるのは容易でした。

割と所有にこだわる方なのですが、コレクターではないので入手困難本は図書館でいいかなぁと今回改めて思いました。

眉村卓の司政官シリーズの集大成となる長編「引き潮のとき」1-4巻などもamazonで各巻5000-9000円とかなりの値段....。
アシモフ自伝全四冊なども同様、この辺は地元の図書館にあることを確認しているので図書館でいいかなぁなどと思っています。

でも「引き潮のとき」などは眉村卓の代表作といってもよい作品でしょうね是非復刊してもらいたいのですが....。
新刊で数千円/冊なら買ってもいいかなぁという気がしています。

「神様はつらい」も1989年(ペーター・フラインシュマン監督:邦題『惑星アルカナル』)と2013年(アレクセイ・ゲルマン監督:邦題『神々の黄昏』)と2度にわたって映画化されています。

内容が内容だけにマニアックな映画ではありますが、2013年の映画化に合わせて早川で新訳出して欲しかったなぁ....。

なおこの「世界SF全集24」には本作の他2作品収録されているのでそちらは別に感想書きます。

内容紹介(元ネタなにもないので私の独断)
数百年後の地球から」観察者として、地球でいえば「中世」の段階にある地球人とよく似た「人間」の暮らす惑星に「観察者」として派遣されたアントン=ドン・ルマータは派遣されている都市アルカナルで起きているる知識人排除やなんとも怪しげな独裁者の振る舞い、怪しげな宗教集団によるクーデターをなすすべもなく「観察」しているが....。


まず最初の感想ですが....訳が???。

翻訳小説読んでいて訳をけなすのは訳者に失礼なのはわかっているつもりですし、私に訳の良しあしがわかるとは思ってませんが...多分この訳はいまいちだと思います。

なんとも内容が理解しにくいかつ、気になる...。

この当時の早川の校正のいい加減さも併せて(「復活の日」でも書きましたが....)なんともかんともわかりにくい。

一例ですが
P419「料理女が適当な夫を授けてくれるように聖ミカに祈っていた。ただし 自主的で現役のある男の方が良いと。」

⇒「現役」=元気?、稼ぎがいい??、何かの単語を直訳したのでしょうか?

P421「独占企業体はヒトラーを支持していた。ドン.レェバを支持する者はだれもなく、」
⇒ヒトラーはこの惑星にはいないので「ヒトラーのことは独占企業体が指示していたが、それとはちがいドン・レェバ(アルカナルの独裁者)を支持するものは誰もなく...」といったようなことをいいたかったのかなぁ...と推察。

P426「ああ、私にできることといえばお城の門を重けて、勝利者を入れることだけ・・・・・・」
⇒「お城の門を重けて」、開けてだと思うのですが...これは誤植だかなんだか???

P427「 ぬすぎつね」⇒文脈から考えると多分「めすぎつね」誤植でしょうね。

P530「 20前年」⇒「20年前」かと。

P548「 たわし」⇒「わたし」かと...。
こんな訳・誤植のオンパレードで頭がおかしそうになりました....。


P548の「たわし」はエピローグの一番いい場面で幼馴染かつ主人公のもっとも愛する女性がいう言葉ですからなんとも....。

そこはともかく感想ですが...。

全編中世ヨーロッパ的な臭気と不潔さが漂い、なんともやりきれない品性下劣な惑星の土着民たち、その中で身体的にもかなり優れた能力がありながらもなんともできない主人公の焦燥感が伝わってくる作品です、なんともやりきれない....。

「SF」である必要があるのか?ということもありますが、いざとなればこの惑星中の人々を一人で大虐殺できる力をもちながら、「観察者」としての位置づけで「なにもできない」という状況をこれでもかと書かれることで考えさせられるところはありました。

訳のせいか(笑)、私の理解不足のためか作品が今一つ理解しきれませんでしたが、作者は本作に先立つ1962年に地球の青年が未知の惑星に行き封建制とも奴隷制社会ともつかぬ社会に遭遇し干渉しようとして失敗するという話「脱走への試み」、本作の後1969年にで独裁者の支配する惑星に不時着した主人公が立ち上がる話「収容所惑星」も書いているようですから相当こだわったテーマなんでしょうね。

ストルガッキー兄弟、共産党から相当睨まれていたという話もありますので、この辺「中世的」な世界を描いていますが...当時のソ連のこと、もしくは執筆当時の「現代」を描いていたのかもしれませんね。

「今(2018年)」も人間を大虐殺できる「核兵器」を持ってはいても、実際に「貧困」やら「ジェノサイド」「テロ」はなくならずで、某大国の指導者やら北朝鮮の権力者の振る舞い見ていると「神様はつらい」の世界と質的にはそんなに変わらないないような気もします....。

本編では主人公アントン=ドン・ルマータのいた地球は一応平和で幸せな世の中という設定でしたが...。

プロローグではなにやら意味深な設定(大きな戦争でもあったか????)でしたので、どんなに理不尽なことが起きていても武力でものを解決するのは「?」という前提もその辺を考慮してという設定だったのかもしれません。

冒頭ヘミングウェイの言葉として「このことをあなたに前もって行っておかなければならない。任務を遂行するうえで、権威を高めるために武器を手にすることがあるでしょうが、どんな事情があってもその武器に訴えてはなりません。いいですか、どんな事情があってもです。私のいうことがわかりましたね。」が紹介されていました。

腐敗した暴力がいいのか...大量兵器で皆殺しがいいのか...まぁどちらもよくないわけですが、「清く正しい」そんな世界など本当はどこにもない…ということで葛藤するしかないんでしょうかねぇ。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
同感 (今出川宏)
2019-01-05 03:26:01
同感です。
私も意味が分からないまま読了しました。
それでも「またストルガツキーのSFを読みたい」と思うので、
あはりストルガツキー兄弟には
何か魅力がありますねー。(^^)
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Re:同感 (しろくま)
2019-01-05 08:18:39
今出川宏様
コメントありがとうございます。
「同感」ですか…。(笑)
この訳というか校訂というかはちょっといただけないですよね。
記事には書き損ねましたが2013年に「神々のたそがれ」として映画化されています。(記事に追記するかもしれません)
マイナー目なロシア映画ですが…そのタイミングで新訳出して欲しいところでしたが、まぁ今の出版事情では難しいんでしょうねぇ。
ストルガッキー兄弟の作品は「ストーカー」と「世界終末10億年前」と本作しか読んでいませんが、確かに不思議な魅力のある作家ですね。
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Re:同感;追記 (しろくま)
2019-01-05 08:22:26
今出川宏様
記事に映画のこと追記しようかと思いましたがすでに書いてましたね…記憶が怪しいです(汗)
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Unknown (今出川宏)
2019-01-05 15:41:02
ホント、ホント。。 
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