しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ギリシャ棺の謎 エラリー・クイーン著 中村有希訳 創元推理文庫

2014-09-28 | 海外ミステリ
「本が好き」献本に応募して頂きました。

家の近所の本屋に本書が創元新訳で並んでいるのを見かけ「クィーンの国名シリーズ懐かしいなー」と気になっていたので今回頂けてありがたかったです。

普通なら多分買わなさそうだし、買ってもすぐには読まなさそう。

しばらく前から海外小説は「新訳」ばやりのようでクィーンの国名シリーズも角川文庫などから新訳出ているのを認識していたのですが、今回は「創元推理文庫」の新訳。

私の中での国名シリーズは昔から「創元推理文庫」のイメージで、私くらい以上の年代の多くの人にはそんなイメージが有るのではないかと思います。

そんな「スタンダード」な旧訳は1930年代という原書が書かれた時代を考えると「味わい深い」と評価する人も多かったようですが、新訳出るのも時代の流れでしょうねぇ。

私のクィーン体験は中学生頃(30年位前)にドルリー・レーンシリーズ(X,Y,Zの悲劇、最後の事件、クイーンでなくバーナビー・ロス作という話もありますが…)から入り、国名シリーズを何作か読んで挫折したというありがちなもの。
(解説の辻真先氏も同様なことを書いている)

国名シリーズは第一作にして作家エラリー・クィーンのデビュー作「ローマ帽子の謎」第二作の「フランス白粉の謎」を読み「ニッポン樫鳥の謎」を「ニッポン」に惹かれて創元推理文庫で読んで終わり。
(今回調べたら「ニッポン樫鳥の謎」は国名シリーズに入れるかどうか微妙なようですが)

「フランス白粉の謎」などは緻密な構成に感心した記憶はあるのですが、当時の私にはどうも面白みがわからなかったような記憶があります。

エラリー・クィーンよりもドルリー・レーンの方が「耳の不自由な名優」というわかりやすいキャラクター設定の名探偵ですし、どことなくオドロドロしいところが中学生にもわかりやすかったんでしょうね。
4作で1つの謎を仕込んで完結させるスタイルもかっこいいですし。

エラリー・クィーンの人気は日本では特別に高いようで、’12年週刊文春ミステリベストでも6作(100作中)クィーン作品がランクインしています。
(英米ではそれほど評価が高くないようですが…)

文春のベストでも「Yの悲劇」が2位、「Xの悲劇」が14位と比較的ドルリー・レーンものの人気が高いようです、やはり一般受けするんでしょうね。

レーンシリーズを除くと「ギリシャ棺の謎」はクィーン作品として一番上の23位にランクインしており国名シリーズの中でとても評判の高い作品かと思いますが未読でした。

発刊が1932年と「Xの悲劇」、国名シリーズで42位にランクインしている「エジプト十字架の謎」と同年です。
「Yの悲劇」も翌年の1933年に発刊と、ロスとクィーンが同一作家とは思えないほど次々傑作を書いていた油の乗り切った時期の作品ですね。

「ギリシャ棺の謎」は国名シリーズとしては4作目、ただし大学を卒業したばかりのエラリーの活躍を書いており時系列的には一番前という位置づけの作品です。

内容(裏表紙記載)
盲目のギリシャ人美術商ハルキスの葬儀が厳粛におこなわれた直後、遺言書をおさめた鋼の箱が屋敷の金庫から消えた。警察による捜索が難航する中、クイーン警視の息子エラリーが意外なありかを推理する。だが、捜査陣がそこで見つけたのは、身元不明の腐乱死体だった―“国名シリーズ”第四作は、若き名探偵が挑む“最初の難事件”にして、歴史に残る傑作である。

本書を読む前SFばかり読んでいたので、久々に思いっきり「本格」の本道である国名シリーズ…読み出し初めはなんだかクラクラしました。
(「誰の死体」はいわゆる「本格」志向ではない気がする。)

SFは「拡散」型で話が展開していいきますが、本格ミステリーは基本的に事実に向かい「収束」しようというベクトルがありますね。

ただ、さすが「名作」かつ訳がいいのか、しばらくすると昔国名シリーズを読んだ時感じた「もやもや感」なくすっと作品世界に入って行けました。
これまた解説にも同様のことが書いてありましたが、昔は子供すぎて良さがわからなかったんだろうなぁ。

登場人物各々もミステリーの登場人物として過不足なく魅力的に書かれており、二転三転する「意外な展開」と「奇妙」な謎の数々にすっかり引きこまれてしまいました。

変に「文学っぽくしよう」という色気がなく、ただひたすら「謎解き」を楽しむためにどういった人を出し、どういったプロットにしたらいいかということを純粋に考えて書いたんじゃないかなーと思います。
クィーン自身も「こうすれば読者をこう振り回せるだろう」というのをかなり楽しんで書いている気がしました。
本作でのサンプソン地方検事の立場が丁度読者の立ち位置にいる感じで「いいから速く謎解きしろよ」とか犯人が指摘されたときの「前から怪しいと思っていたんだ」というような場面はまさに読者=私と同じ感想。(笑)

とにかく純粋に謎解き物語なので、変に説教臭い感じもなく、時代の波にも流されず古びず楽しめる作品になっていると思います。
鑑識の能力の低さとか、タイプライターを同定するところなどはまぁこの頃のミステリー感はありますが、それはしょうがないですね。

作品にある種の「感動」とか「教訓」、「人物ドラマ」を求める人には物足りないかもしれませんがひたすら純粋なまでに「ミステリー」です。
ラストのヒロイン(的な女性)の意外な恋愛成就の場面なども「小説」として考えれば安直なような気もしますが「本格ミステリー」としてみるとなんだかほほえましいです。
女性の魅力もあくまで謎解き物語の「コマ」としてしか使っていない。

ミステリーとしての感想ですが「真犯人」かなり意外感のある人物でした。

この時代のミステリーの場合「一番意外な人物」が犯人だろうと思いながら読んでいたのですが…見事に騙されました。

ちょっと「ずるい」かなぁとも思いましたが、ストーリー展開がうまいんでしょうねぇ、最後の最後までノーマークの人間が真犯人でしたが「なるほど」と感じました。
「すぱっ」と切られたような騙され方でなにやら爽やかさすら感じました。

ただよく考えると推理の論理構成やらちょっと脆い感じもしました。
そういう意味では「論理性」よりも結論の「意外性重視」の作品ともいえるかもしれません。(読み直せば納得できるのかもしれませんが...。)

ここから先は思いっきりネタバレなので未読の方はご注意。

疑問点
○根本的な問題ですが、真犯人は遺言書が消えたことを知りうる立場にいたのに何故、死体を棺に隠したのか?
 騒ぎが起こっている状態であれば余計なことをしない方がいいような気がする。
 エラリーの遺言書推理の後、棺から死体が見つかるという設定は絵的には最高なんですが…。

○エラリーのまちがった最初の告発
 少なくともネクタイの色は目が見えている証拠にならないような気がしました。
 弟の色盲を兄が知って指示書を書いていたとすればその方が自然なような…。
 紅茶の方はまぁそういうこともあるかなーという所。
 エラリーの「若さ」を強調したかったのかもしれませんが...。

○「読者への挑戦状」直後の告発で、確かに怪しいなーと思っていた人物を告発したので「なるほど」と思いましたがその時ブレット女史の犯行可能性を「探偵だから」ということで簡単に否定しています。
この時点で一番怪しそうな気がするのにそんなに簡単に外していいんでしょうか?。
ウォーディス医師との関係もこの時点では謎のままでしたし。
(意図的に残しておいた感じですが…これはフェアなのか?)

○「真犯人は別にいる」としたとき、ノックス氏を「金時計に入っていた1000ドル紙幣を告白」していたから「無実」だというのは弱いような…。
 自分のタイプで脅迫状をわざわざ書くか?という方が除外理由としては強そうな気もします。 最初の告発で「狡猾な犯人」像を出していますし…。

ん…伏線だっのか?なるほど。(笑)

エラリーが作中で説明しなかった所も伏線が隠されていてよく読むとなにかがあるのかもしれませんね。(ブレッド女史の件なども)

もう一度読み返してみたくなってきました。

ストレートに読んでも二転三転する謎解き物語に夢中になれる作品ですが、一度全部読んでから見直しても楽しめる作品なのかもしれません。

そういう意味でも名作なんでしょうね。

↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村

スノウ・クラッシュ上・下 ニール・スティーヴンスン著 日暮雅通訳 ハヤカワ文庫

2014-09-24 | 海外SF
暗闇のスキャナー」の後には積読しているディックの長編でも読もうかなぁとも思ったのですが私の場合ディックの長編を続けて読む体力(?)がない気がして…。

同じSFでも方向性が違うであろう本書を手に取りました。

本自体は昨年ブックオフで見つけて購入済でした。


これまた絶版のようです。

‘12年ローカス誌オールタイムベスト18位、06年SFマガジンベストでは44位、'14年SFマガジンベストでは残念ながらランクインしていません。
またタイム誌1923-2005英語小説ベスト100にも選ばれており、英語圏ではSFの世界外からも高く評価されている作品のようですね。
1992年発刊。

内容(裏表紙記載)

30分以内に配達できなければ、死が待っている…マフィアが経営する高速ピザ配達フランチャイズの“配達人”ヒロ・プロタゴニストは、世界最高の剣士にして、腕ききのハッカー。仮想空間のメタヴァースでスノウ・クラッシュと呼ばれる新種のドラッグを試してみないかと誘われたことから、とんでもない事件にまきこまれていくが!?近未来のアメリカをスピーディに駆けるハッカーたちの活躍を描くネット世代のためのSF。

高速で走る車に勝手にケーブルをつないで、道路を縦横無尽にスケートボードで走りまわる15歳の少女、Y・T。危険きわまりないRadiKSの“特急便屋”をしていることは、もちろんママには内緒だ。ふとしたことからヒロと知り合ったY・Tは、現実と仮想空間のメタヴァースの両方でばらまかれたウイルス、スノウ・クラッシュをめぐる奇怪な陰謀にまきこまれるが…近未来をあざやかに描くポストサイバーパンクSF。

本作「ポストサイバーパンク」作品に位置づけられているそうですが、ポストサイバーパンクってなんでしょう?
「サイバーパンク」すらよくわからない私がいうのも何ですが、本作読んで感じたのはエンターテインメントの要素がかなり入っているように感じました。

シュメールの楔形文字をめぐる話などは半村良の伝奇小説を読んでいるかのよう。

内容紹介のとおり世界最高の剣士にしてハッカーの主人公ヒロ・プロタゴニストがピザ配達しているところから始まる話ですので、設定はかなりぶっ飛んだものです。

そこから説明なく場面がころころ変わるので最初はついていくのが大変ですが、序盤を乗り切ればちょっと変わった伝奇小説、ハードSF的展開になるので普通に面白く読める作品ではないかと思います。

「言語」にまつわる話でバベルの塔の話も出て来たり、ディレイニーの「バベルー17」を「下敷きにしているのかなー」ともちらりと感じたりしました。
その他「昔のSF参考にしているのかなぁ?」という感じた部分もありメタSF的な面もあるのかもしれません。
(終盤「原爆」の放射能で生まれたミュータントどうしの戦いあたりは昔の安手のSF風)

「面白い」だけに「ニューロマンサー」のように形而上的ななにやら「高尚なことが書かれているのかなぁ」という印象は受けませんでした。
その辺が「ポスト」サイバーパンクたるゆえんでしょうかねぇ。

なお一番つぼにはまったところはヒロインY.Tの母親が勤める、すっかり無力化しているアメリカ合衆国連邦府での勤務状況。

全く自由がなく管理されている上に非効率な状況は、今の日本の企業がこのまま進むとこうなりそうなマンガ的な状況で…面白くもあり怖くもありました。

「オフィスのトイレットペーパー管理方法」の変更通達文書が各自PCの電子掲示板に表示され、それを読む秒数をチェックされている場面など…なんだかそうなっても不思議じゃないような…。
読むのが速すぎると不真面目、遅すぎると理解能力不足かサボタージュ傾向だそうです。
ちなみに標準秒数ピッタリだとこれまた駄目らしい。(最高に反抗的)
標準秒数よりちょっと速いと有能だけでケアレスミスがありそう、ちょっと遅いと要領は悪いが真面目だそうです。

全編こんな感じのアイロニーたっぷりの話が出てきて、最後の方の海洋小説展開も凝っていて、うまく書かれた小説だとは思いましたが...。

あくまで個人的事情かとも思いますが、最近SFばかり読んでいてSF的「何でもアリ」展開に食傷気味になってきていて「あーこうきたのね」と冷めた目で見てしまい素直に楽しめませんでした…。
条件設定があまりに1992年的でちょっと陳腐に感じた面もあるかもしれません。

本作、もともとゲームのシナリオとして描かれた作品でもあるようで「真剣に読む」というよりは皮肉の効いた場面やらセリフと、メタSF的展開を楽しみながら読む作品なんでしょうね。

SFに冷静な評価ができなそうなのでしばらく離れようかなぁと思っています。

↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村

暗闇のスキャナー フィリップ・K・ディック著 山形浩生訳 創元推理文庫

2014-09-18 | 海外SF
デイックの人気作である本作、‘12年ローカス誌オールタイムベストで55位SFマガジン'06年ベストではランクインしていませんでしたが'14年では37位にランクインしており近年人気上昇中(?)のディック作品の中でも評価が高まっている作品のようです。

'14年SFマガジン10月で発表された「PKD総選挙」でも3位と人気が高い。

本書は自身の体験した神秘体験に基づく独自の「神学」にのめりこんだ晩年の問題作「ヴァリス」の直前に出版された作品として、そこに至るデイック作品の流れをつかむ上で重要という評価もあるようですね。
1977年の発刊です。

本作ハヤカワでも浅倉久志氏訳で「ダーク・スキャナー」として出版されているようですが、私は創元版のこちらの方を

ブックオフで見つけて購入したのでこちらで読みました。
創元版は現在絶版のようですね。

内容(裏表紙記載)
どこからともなく供給される麻薬、物質Dがアメリカ中に蔓延していた。覆面麻薬捜査官アークターは、捜査のため自らも物質Dを服用、捜査官仲間にも知らさずに中毒者のグループに潜入し、彼らと日々を共にしていた。だがある日、彼は上司から命じられる。盗視聴機を仕掛け、アークターという名のヤク中を―彼自身を監視せよと。彼はその命令に従うが…。ディック後期の傑作。

一応近未来を舞台としいますが、「SF」….というよりもとにかく「ドラッグ」な小説です。
SF的仕掛けとしては、着ると自分の正体がわからなくなるスーツと物質Dくらいす。
いわゆる「SF」的エンターテインメント作品を期待して読むとずっこけます。

自らもかなりドラッグにはまり込んでいたディックの実体験に基づいた自伝的側面もあるようでドラッグ中毒者の会話はとてもリアル(だと思う)です。
そして本作で中毒者を描写するディックの視線は終始あたたかい。

解説で訳者の山形浩生氏は本作をSF的「超越性」に逃げ込む安易さからも「ヴァリス」での宗教への逃げ込みもないディック一番の傑作と評価しています。

「ヴァリス」は未読なのでわかりませんが、ディックのSF作品には確かにSF特有の「安易さ」があるかとも思います。
でも私はそれも含めて「いい」と思うんですがねぇ…。
もっと安易に「超越的存在」に逃げちゃっているSF多いですし。

そんなにディック作品を読んでいるわけではないですがディックの場合「運命論」と「不可知論」の間くらいのところに佇んで結論が出せずにいい感じに仕上がっているような気がします。
人間ですから、「運命論」にも「不可知論」にも果ては「唯我論」にも(宗教にも?)すがりたくなる瞬間があるんじゃないでしょうか。
ディックのSF作品の場合、その中でとにかくもがく人々の姿の生々しさ(時には色っぽさ)が魅力と感じます。

本作で描かれる人物の殆どは「ドラッグ」に入り込んでいるか、入り込んでいない側で境界線上で悩んでいる状況の人はいない。
(主人公は悩みながらも「ドラッグ」側に落ち込んでしまうわけですが…。)

そんなどちらか側にか入り込んでいる無機質な登場人物の描写がメインですから、本作の場合はなんだか悩みの部分が薄く「自然主義」的な状況描写な仕上がりです。

それが「いい」もしくは「高級」な文学なんでしょうかねぇ?

私的にはディックは「SF」の方が好きです。

ということを踏まえながら本作の感想は…。

とにかくひたすらドラッグを摂取して壊れていく主人公やら周りの人物を描くという内容でなんとも書きにくい。

私自身ドラッグはやりませんが(当たり前か???)時々お酒に逃げているなぁと思う時はあります。
自分を壊すと知りながらも摂取し続ける気持ち、妙な連帯感はなんとなくわかる気もします。
世の中、自分で自分を律することができる「強い」人ばかりではないし、弱かったりついてなかったりする人がいるわけですよねぇ...。

そこにどう向き合うのか?
お酒はある程度可逆的ですが、ドラッグは確実に精神や体を蝕みます。
でもお酒もある意味確実に体に悪いけれども飲まなきゃやってられない自分もいる...。

作者自身あとがきで「この小説に教訓はない」といっており、作中では何の結論も出しておらず、実際正解はないのでしょう。

まぁ本作のようにありのままを「あたたかい視線で見つめる」こともありかもしれない。
(現実は冷たいわけですが)
というような感情がモヤモヤ~と湧いてくる作品で、なんだか印象が残って後からじわっとくるという種類の作品です。

ただ私には「ちょっとかなぁ」というのが正直な感想ですね。

最初に書きましたがディック作品の中でも人気が高い作品のようなので私の読み方が悪いのでしょうけれど…。

↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村

誰の死体? ドロシー・L・セイヤーズ著 浅羽莢子訳 創元推理文庫

2014-09-13 | 海外ミステリ
先日「犬は勘定に入れません」を読んだときに気になったドロシー・L・セイヤーズのピーター卿シリーズを読もうとシリーズ第一作である本書を職場近くの本屋で新品で購入。

本書は1923年発刊、ピーター卿シリーズ第一作でもありますが作家セイヤーズのデビュー作でもあります。

英米で評価の高いセイヤーズ&ピーター卿シリーズですが本作は英米のベストでもランクインはしておらずそれほど評価は高くないようです。
内容はともかくピーター卿が誕生した記念すべき作品という感じでしょうか。

内容(裏表紙記載)
実直な建築家が住むフラットの浴室に、ある朝見知らぬ男の死体が出現した。場所柄男は素っ裸で、身につけているものといえば、金縁の鼻眼鏡と金鎖のみ。いったいこれは誰の死体なのか? 卓抜した謎の魅力とウィットに富む会話、そして、この一作が初登場となる貴族探偵ピーター・ウィムジィ卿。クリスティと並ぶミステリの女王がモダンなセンスを駆使して贈る会心の長編第一作。

「クリスティと並ぶミステリの女王」の作品のつもりで読み出したのですが小説としてもミステリとしてもかなり出来が粗い感じを受けました。
(「悪い」わけでなく要素はいいのでもっと磨けば光るのになーという感じ)

本作を現代の「ミステリ大賞」的なものに応募したら「佳作にも残らないんじゃないかなぁ」などと失礼な感想も抱いてしまった。

「聖職」的な人の犯行、死体入れ替えトリックなど1923年時点では意外なものだったかもしれませんがスレた現代の読者の眼から見るとかなり厳しいものがあります。
トリックを犯人が実行するのもかなりの力技ですし....。
(というかこれ本当にできるのだろうか?)

小説的にも会話がぶつ切りで「ピーター卿」はなんだか面白そうな人ではあるのですが「よくわからない人」というのが受けた感想。
助手役のバンターのキャラなどはなかなか魅力的でしたが、ちょっと間抜けな警察官役のサグ警部などはあまりに類型的すぎて「いかがなものか?」という感じ。

ネットでの評価などを見るとこの第一作「誰の死体?」は評価が低いようで第二作「雲なす証言」から尻上がりに出来が上がってくるらしいです。
私のように期待して読むと外す人はかなり多いのかもしれません…。

ただ、探偵役のピーター卿の貴族で頭がよく金持ちだけど...第一次世界大戦に従軍し前線で戦いでトラウマたっぷりという設定は魅力的で、軽妙な会話も現代的であり魅力の片鱗は感じられました。

なんとなーくこうウマが合うという感じは受けたのでめげずに今後ピーター卿シリーズを読んでいこうとは思っています。

第二作「雲なす証言」-第五作のハリエット登場作「毒を食らわば」まで揃えてしまった…。
(ブックオフのお導きです…)

↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村

英米ミステリーベスト

2014-09-11 | 本リスト
最近ミステリーも(若干ですが…)読み出したので英米のミステリーベストをまとめてみました。(基本自分の買い物用リストです。)

‘12年週間文春海外ミステリーベスト100の時にも書きましたが、英米での評価と日本の評価の大きな違いはエラリー・クイーンの評価ですね。
週間文春のベストでは最多の6作品がランクインしているクイーンが英米では1作もランクインしていない…不思議なものですねぇ。

ということでリスト。
元ネタはwikipediaですのでどこまで信頼性あるかは???ですが…。

英国=1990年英国推理作家協会アンケート

米国=1995年アメリカ探偵作家協会アンケート

いつも同様既読を水色、所有を黄色に塗りつぶしましたが既読もかなり昔に読んだものばかりなので内容はほぼ覚えていません。

海外SFよりさらに海外ミステリの知識はないのでかなりいい加減ではありますがリストを見て思ったことなど。

英米共通で上位(ベスト10)にいる作品が、「時の娘」(英1位、米4位)「大いなる眠り」(英2位、米8位)「寒い国から帰ってきたスパイ」(英3位、米6位)「レベッカ」(英6位、米9位)「月長石」(英8位、米7位)「マルタの鷹」(英10位、米2位)の6作品。

米国1位の「シャーロック・ホームズ全作品」はどうカウントするかですが…。
まぁこれは別格としても、6作品同じものがベスト10入りというのはさすが英語文化圏ですね。
’12年週間文春のベスト10で見てみると、日英ともベスト10に入っているのが「アクロイド殺し」(日5位、英5位)、日米では「シャーロック・ホームズの冒険」(日3位、米1位?)のみ、やはり日本と英米では結構価値観が違うんでしょうね。

といってどう違うかは私ごときにはよくわかりません。
上記に出てくる作品も「寒い国から帰ってきたスパイ」「レベッカ」などは存在すら知らず、既読なのは「時の娘」「アクロイド殺し」「シャーロック・ホームズの冒険」だけです。

作家別で英米両方で3作以上ランクインしているのが、
ドロシー・L・セイヤーズ(英4作、米5作)、レイモンド・チャンドラー(英4作、米4作)、アガサ・クリスティ(英3作、米4作)、ダシール・ハメット(英4作、米3作)の4人
この4人は私も何とか知っていました。
ただしハメットとセイヤーズは最近知りましたが…。

特にセイヤーズは日本での無名ぶりと異なり英米では大した人気なんですね。
ハメット、チャンドラーのハードボイルド路線も人気のようです。

英米どちらかで3作以上ランクインしているのが
ピーター・ラヴゼイ(英3作、米1作)、ジョン・ル・カレ(英2作、米4作)ジョセフィン・ティ(英2作、米3作)グレアム・グリーン(英2作、米3作)

ティは昔「時の娘」を読んでいたので知っていましたが、他の3人は全然知らない。
グリーンは「第三の男」書いているんですね、映画は見ましたが本は知らなかった。

なお’12年週間文春ベストで3作以上ランクインしているのが、エラリー・クィーン6作(英、米0作)アガサ・クリスティ5作(英3作、米4作)アントニー・バークリー4作(英1作、米0作)コナン・ドイル3作、ジェイムズ・エルロイ3作(英、米0作)、ジョン・ディクスン・カー3作(英2作、米1作)
となっています。
私はバークリーとエルロイは全然知らない、ミステリーに土地勘ないのがわかります。

なおクリスティは英米日で人気、大したものです。

などと、ざっと見てみましたがミステリー奥深いなぁ。
ちらちら読んでいくつもりです。

↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村