しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ブログのアクセスなど

2018-01-27 | Weblog
唐突ですが、SF界の話題として1/23ル=グィンが亡くなられたようです。
謹んでご冥福をお祈りしたいと思いますが...。

それに関連してブログのことなど。

gooブログはたまに無料版では使えない「アクセス解析」が使える時期があります。
ちょうどこの時期にあたっていた、1/24にル=グィンの訃報がニュースとなっていました。

結果?なのか


1/24にこのブログの訪問者数の最高を更新していました。
(もともと大してアクセスあるわけではないのですが)

この日のアクセス見ると

やはりル=グィンの「闇の左手」が27PVとトップになっています。
なお「所有せざる人々」は6PVとこの日は8位でした。

私ごときのブログ記事にまで影響でるくらいル=グィン...偉大なんですね。
という話。

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48億の妄想 筒井康隆著 文春文庫Kindle版

2018-01-27 | 日本SF

これまた「覆面座談会事件」がらみでとなります。

旅のラゴス」とちがい本作は「覆面座談会」でも触れられている1965年発刊の筒井康隆の処女長編作品となります。

古い記事を見てみたら(「実家での本漁り」)本書持っていたようなのですが....。
読んだ記憶はないです、読んでもまったく記憶になかったので読んでなかったんだろうなぁ....。
当時(小学生~中学生)の私には手に余る内容だったんだと思います。

とりあえず手元になかったので入手しようとamazonで検索したら、紙の本は絶版かつ古本にプレミアついているようで...。
KINDLE版で入手しました。

筒井作品の古いものはkindle版でないと入手できないものが結構あります。
(勢いで「馬の首風雲録」を買ってしまいました~、いつ読むのやらですが)
筒井氏自身「断筆宣言」の後書籍の電子化を積極的に進めたようでその影響もあるのかもしれません。

タイトルの「48億」ですが1965年時点での世界人口と思われますが...。
なんとなく自分の頭では世界人口「60億」と思っていましたが調べてみたら推計で2011年現在70億人らしい(元ネタwikipedia )
2050年までに80億人を突破、21世紀末には「100億人を突破するのでは?」という状況のようです。
グリーン・マーズ」での地球人口の設定よりは少ないですが....。
「果たして地球はもつのだろうか?」と心配になってしまいます。

内容紹介(amazon商品紹介より)
テレビが絶対の時代、あらゆる人間が各所に設置されたテレビ・アイを意識してひたすら熱演。テレビに踊らされる人間、マスコミを痛烈に風刺した画期的長篇処女作


読後の感想、「筒井康隆って処女長編ですでにかなりの部分完成されていたんだなぁ...」というもの。
初期(に限らない?)の筒井作品にありがちなドタバタ的な部分もあるのですが、構成、伏線の回収、文章、どれをとっても完成度の高さに舌を巻きました。

SF作家第一世代レベル高いです....。
この「筒井康隆」を「軽薄」「時代と踊っている」でばっさり斬っちゃう人達って....。

あと今回KINDLE版で読んだということで「紙」の古い本を読んでいるときにどうしても感じる「古い本」という意識がなくなり、「同時代に書かれた本」のイメージで読めたのが新鮮な感覚でした。
いいか悪いかは別として電子書籍の特長ですね。

けして筒井作品をけなすつもりはないですが...メタSF的要素も筒井作品の一つの特長と思うので本作でも書きますが、全体としてオーウェルの「1984年」との類似を感じました。
二部構成にしているところちょっと意識しているのかもしれません。(1984年は3部構成ですが...)

監視カメラ(本作ではテレビ・アイですね)で人々のすべての行動が見張られているところ。
作中「現実」に目覚めた男女が惹かれあい(本作では片思いかもしれませんが...)ながらも、ラストで男女が再会し、交わらずに「別れる」ところが特にそんな感じですね。

ただ「1984年」と異なり、政治的権威者であるビッグ・ブラザー=B.B.が存在しないところが世界観の大きな違いです。
(作中ディレクター=D.D.プロヂューサー=P.Pとしているのも、B.B.を念頭に入れている?)
本作では政治的権威者でなく大衆の支持を集めたマスメディア=テレビが権威を持っているようになっていますが...。
実際に国と国との関係になると暴力装置を持つ「政治」にはかなわない部分も出てきます。

表面上暴力装置を持たない日本では政治家を自殺に追い込んでしまうことが可能なテレビですが、本作で出てくる暴力装置を持つ「韓国」とは力関係が違ってきます。
(日韓関係は昔も今も変わらないですね....)

その辺のギャップに最終的に主人公含む「棺桶丸」「怨霊丸」に乗り組んだ人間は翻弄されることになります。
「1984年」では主人公は「権力」「世界」についてB.B.から説明を受けることになるわけですが...。
本作ではなんの説明もなく、なし崩しかつ実力行使的、不条理にぶちのめされます。

一見「なにものか」であるようなテレビ業界人やタレントも虚構世界全体から見ればコマでしかなくなにごとかをわざわざ個別に説明するまでもなく使い捨てされるということですね。
そういう意味では「1984年」よりもクールですね。

本作メディア批判と読むべきか....権力批判と読むべきか....ですがどちらとも読める所がこの作品のうまさなのではないでしょうか。

現在中国では監視カメラ網が発達してそれを共産党やら中国政府やらが解析して統制しようとしているようです。(天網工程
「現実」は本作よりも「1984年」の方に近づいているようですが....。
「テレビ・アイ」の方が、まだ平和....でしょうかねぇ。

また「1984年」ではラスト、男女ともボロボロになるわけですが....。
本作でボロボロになるのは「男」だけ、女は強いです...(笑)

ラゴスとは異なり一度も結ばれず終わるわけで主人公の折口し可哀想です。

ちなみにテレビ業界の人、というのはボロボロにしやすいんでしょうかねぇ。
前に星新一の「妄想銀行」中の「長生き競争」もそんな感じでしたが、その辺は「火の鳥 生命編」(1980年)の展開もそんな感じでした...。
「しゃれた男」が落ちぶれるという意味では手塚治虫作品でいえは「ばるぼら」(1973.7-1974.5)もそんな感じですね。

書きやすいんでしょうかねぇ?

ストーリーの紹介は省きましたが、時代性を感じさせない文学的完成度の高い作品と感じました。
筒井康隆、「なぜSFにいったのか」と謎に感じる来栄えの処女作でした。

未読の方はお薦めです。

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旅のラゴス 筒井康隆著 新潮文庫

2018-01-20 | 日本SF
これまた「覆面座談会事件」がらみで日本SF作家第一世代の作品を読み返そうという流れで読みました。
もっとも本書は1986年刊行とずいぶん後になりますが...。

とりあえず手持ちだったのと最近人気がじわじわと上がってきているらしい(新潮社記事)ということもあり手に取りました。

もともとSFアドベンチャーに不定期連載されていたようです。

じわじわ人気が上がっている影響か'06年SFマガジンベストでは51位だった本書は'14年に31位にランクアップしています。
(SFマガジンベストの日本SF版記事まとめようと思いながらまとめられていません....。)

内容紹介(裏表紙記載)
北から南ヘ、そして南から北ヘ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隸の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間のー生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

読後の感想としては...。

「メタSF?」

往って還る物語、主人公がやたらもてまくりということでは「新しい太陽の書」との類似性を感じました。
「新しい太陽の書」4部作が1980年-1982年刊、邦訳が1986-1988年。
発刊タイミングからみると原書で読んでいれば「あり」ですね。
(同様なことを前に書いた記憶があったので探してみたら「脱走と追跡のサンバ」の感想でで「ユービック」との類似性を書いていました。これも「原書読んでる?」)
真相は「?」ですが、連作短編というところ、失われたテクノロジーの復興という意味では「黙示録3174年」との類似性も感じました。(こちらは間違いなく前)

この辺加味すると筒井康隆、意図的に「メタSFにしたのかなぁ・・・・」などとも勘ぐりたくなりましたが確証はありません。

まぁそもそも「知識」をまとめたものを求めて苦難を乗り越えて遠方に旅をするという面では「西遊記」的でもあるわけですが…。

1984年刊行の「虚航船団」で挑戦的な作風にひと段落つけ、力を抜いて書いているのか本書はとても読みやすい作品になっています。

前半に出てくる個性的かつ活力旺盛な脇役男性陣、全作通じて出てくる魅力的な女性陣とラゴスの関わりがしみじみと楽しめます。
ファンタジーになりそうな展開ですが、文明が失わられた理由やら、人々がこの星に住む人たちが「ちょっとした」超能力を持つ理由をきちんと理屈をつけて「SF」にしているところはさすがSFの大家である「筒井氏」...というか生真面目さなんでしょうねぇ。

主人公「ラゴス」は作中諸所の素敵な女性にもてまくるわけですがそれ以外は「知識欲」以外はこれといって野心はなく、様々な「状況」に対して巻き込まれる形で物事が進みます。

名門の家に生まれている「ラゴス」が、いろいろ俗っ気のある欲望もてばいろんなことができたのではないかと思いますが....。
常に一つ所に留まらず旅を続けるというところがこの物語に無常感のようなものをもたらしている理由でしょうね。

これといって欲もなく「草食系」だけど美女に言い寄られたい...。
というのは本書を読みそうな読者層とかなり重なりそうな気がするのでその辺も人気の原因なんでしょうかねぇ。

「連作短編」という形式もこんな風に「長期間」を描写するのにしているのかと思います。

火星年代記」「都市」「銀河帝国興亡史三部作」前述の「黙示録3174年」などがそうですね。

もっともこれらの作品は個人の年代経過ではないですが…。

本作のように短いページ数であたかも悠久のときが流れたかのような感じになるのは形式のおかげもあるかと思います。
その辺も構成の才能ですよねー。

内容各編ごとに見ると目的地へ至るまでの「集団転移」「解放された男」「顔」「壁抜け芸人」「たまご道」「銀行」「着地点」は単品で短編でも楽しめる内容になっています、ラゴスのもてまくりうらやましいですが....。

目的地「王国への道」へたどり着き、2人の少女と出会った段階で「長く逗留」してできちゃうんだろうなぁ…というのは読み筋でした。(笑)
その後の「赤い蝶」「顎」「奴隷商人」「氷の女王」は前段読んでなければ単品の短編としては成り立ちにくい作品ですが、「旅」も「人生」も黄昏に向かいつつあるラゴスの哀愁がとてもよく現されていました。

感想を書くのに本書をちらっと読み返しましたが驚くほど短いページで情感溢れる場面を描写しています。

「虚人たち」やらでメタフィクション・実験的作品を究めた筒井氏のひとつの到達点かと。

230ページに満たない分量で青春期のラゴスから老境に至ったラゴスの心境まで筆を抑えて書きながらなんともいえない感情を巻き起こす手腕は「さすが」としかいいようがありません。

派手さはないですが多くの人が楽しめる作品かと思います。
一読お薦めいたします。

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妄想銀行 星新一著 新潮文庫

2018-01-13 | 日本SF
星新一1001話をつくった人」を読んで無性に星新一のショート・ショートを読みたくなり手に取りました。
実家に行けば当時集めていたショート・ショート集すべてあるはずですが....。
今の手持ちは数冊しかないのでそのなかの一冊です。

本作品集の発刊は1967年6月ですから、ちょうど覆面座談会事件で「進化した星新一」と評されていたあたりでしょうか。
なお1968年に本作は星新一唯一の作品に対する賞、第21回日本推理作家協会賞を受賞しています。

当時のSF作家としては別格の星新一ですから本書も早川でなく新潮社から出版です。

今回読んだ文庫版の奥付を見ると1978年(昭和53年)3月初版です。

古本で買った感じがないので....当時小学校2、3年生の私が買ったのだろうか?
星新一作品を読み始めたのはもう少し後からのような気がしていたので....謎です。

初めて星新一作品を読んだのははっきりしていて当時毎日のように図書館に入り浸っていた私に図書館のお姉さんから「きまぐれロボット」を進められて読んでからです。
(初めて読んだ文庫本であった)
この図書館に入り浸ったのが小学3年以降だったような気がするので....「うーん」です。

内容紹介(裏表紙記載)
人間のさまざまな妄想を取り及う工フ博上の妄想銀行は連日大繁盛。しかし博士が、彼に思いを寄せる女から吸いとった妄想を自分の愛する女性に利用しようとしたのが誤ちのもとだった---奇想天外なユーモアのあふれるる表題作。ほかに、道で拾った凰変りな鍵に合う鍵穴を探すことに情然を傾ける男の物語「鍵」、人生修業に出て説教癖のついたロボツトの話「人間的」、などS·S32編。


本稿書くのにあらためて自分の「きまぐれロボット」の感想読み返しましたが、その時と感想的には重なります。
「ものすごくいい」とまでは思わない+当たり外れ大きいというところです。(笑)

あと今回気づいたところは冒頭部分の「雑」さというか端折り方。
小説の冒頭部分って結構大事かと思うのですが....。

名作とされる「鍵」の冒頭部分
”その男の人生はとくに恵まれたものとは呼べなかった。いままでずっとそうだったし、現在もまたそうだった。といって、食うや食わずというほど哀れでもなかった。”
「古風な愛」冒頭
”昭子は美しく若い女だった。若いといっても初夏の樹のようにはつらつとした感じではなかった。月の光で虹ができるものなら、それに似ているといえよう。どことなく上品で、そして清らかだった。”
「小さな世界」冒頭
”時。二十年後のある日。
場所。大実業家であり大金持ちであるアール氏の事務室。”

すべてがすべてこの調子ではないのですが....。
こんな説明口調でなく作品でそれとなくわからせるのが「日本文学」の機微な気がするのですが....。
そんな配慮はまったくない(笑)
日本の純文学にケンカを売っているのかの如くの書き出しです。

-各話紹介と感想-
保証
クーラーを分割で買った若者は...。

「クーラーぐらいで」というのがミソで非現実性を味わう作品かと。

大黒さま
目の前に現れた大黒様を前にあわてもので強引で変なものに目をつける傾向のある男は...。

短いショート・ショート、要は「パンドラの箱」なわけですが希望はない...でも希望などなくても悪いところがなければ「まぁいいか」ということでしょうかねぇ。
ワン・アイディアな作品なようですが男と大黒さまの会話、なかなか味わい深かったです。

あるスパイの物語
敵国に派遣されたスパイはつかまり厳しい取り調べを受けるが...。

まぁ職業を守るのは大変ですねというお話。

住宅問題
高層マンションに住むエヌ氏の部屋は無料だが広告が流れ....。

広告の行き過ぎた世の中、「スポンサーから一言」のパロディ?

信念
善人であることを拒否した男は...。

これと同じような話を星作品で見たような気が....(産業スパイの話)

半人前
自殺しそうになっていた自称半人前の男がそばにいると...。

逆説のおかしみを味わう作品なんでしょうが....。どうも...。

変な客
高級美術品の店に来た紳士が...。

「狼が来るぞ」のパロディですが、最後の犯人のなりゆきの意外感はいけます。
ミステリーといっていいんでしょうね。

美味の秘密
小さなレストランが出す料理はとても素晴らしく....。

なるほど....と感心しました。

陰謀団ミダス
就職に苦しむ若者は出来心である家に泥棒に入るが...。

この時代テレビ・マスコミとコマーシャリズムが発展しだしたんでしょうね。
時代は感じますが....今読むと古いか?

さまよう犬
毎日同じ犬の夢をみた女は...。

短いショート・ショート。「はぁ」という感じ

女神
道子はみにくいわけではなかったが美しくなりたく....。

ファンタジーな感じで楽しめました、オチも安直ですがこれもまたよしな気がします。

海のハープ
亜紀子は海岸でハープをみつけ

短いショート・ショート、きれいにまとめているお話、きれいすぎるか?

ねらった弱味
弱味を持つ人を見つける勘のある男はある青年に....。

ミステリーですね、ばかばかしい解決ですがそれなりに「?」楽しめました。


道ばたで鍵を拾った青年は...。

「名作」と名高い作品であらすじで読むととてもいいお話なんですが....。
話の肉付けはほとんどなくプロットを読んでいる感じでした。

繁栄への原理
地球からの探検隊がたどりついた惑星は繁栄していたが...。

宇宙開発華やかしき時代の皮肉ですが、スペース・シャトル計画が予算の関係で中断している現代社会ではシャレにならない....。

味ラジオ
食べ物飲み物の味がラジオに乗って届けられる時代に....。

「味気ない」の「味気」とはなにか?と考えさせられる作品。

新しい人生
長い療養生活が終わり退院した三郎は...、ロボットと思いこんでいた症状は直っていたが...。

ハッピーエンドでよかったですー。

古風な愛
美しく若い昭子は若い俳優と恋におち...。

キレイなお話。

遭難
遭難した宇宙船はとある星に着陸し、救助を待つが...。

ちょうどこの感想を書いている時に光瀬龍の「巡視船2205年」を読んだのですが....。
似てる?

金の力
洋三は5年前の強盗で入手した大金の隠し場所に向かい....。

「星新一」精神病院の話も好きですよねぇ...ですが安直に感じました。

黄金の惑星
黄金の惑星からのSOSを受電し向かった宇宙船は...。

くだらないといえばくだらないのですが、人間の本質をついている感じで感心しました。


敏感な動物

都市でのネズミの大量移動に気付いた青年は....。

サスペンスと見せながら喜劇で最後に悲劇、不条理さが素敵。

宇宙の英雄
ある星から助けを求める信号がきて、優秀な若者が助けに向かうが....。

スペースオペラのパロディですが....。
これまた不条理さが素敵。

魔法の大金
エヌ氏はあらわれた悪魔にお金を頼むが....。

短いショート・ショート、「なるほど!」


ホテルで休暇を楽しむ青年のところに深夜かかってきた電話の声は....。

考え過ぎでオチの切れもいまいちなような....。

人間的
人生修行に出たロボットは...。

単純なオチで結構好きです。

破滅
警察に包囲された麻薬犯の主犯はある薬を飲み...。

喜劇なような悲劇なような....シチュエーションが楽しめました。

博士と殿さま
タイムマシンを発明し殿さまのいる時代に訪れるが...。

ありがち...かなぁ?

小さな世界
大実業家アール氏が買う車は....。

セールスマンの売り込む車の機能が現代において実現しているもしくは実現しそうなのがびっくりでした。
・冷暖房・空気浄化装置・ボタンでステレオ・ボタンで角度の変えられる椅子・地図盤の上の目的地を押しての自動操縦・小型レーダーで四方を警戒し事故防止・電話・電話機のボタンを押して切り替えて遠くにいる友人と碁や将棋やチェス・カラーテレビ等々
オチはワンアイディアかなぁ...。

長生き競争
テレビ番組の企画で長生き競争をするが....。

筒井康隆の「48億の妄想」を連想しました。パロディ?

とんでもないやつ
石器時代人グウの前に現れた男のもつマンモスの肉や毛皮と交換するためににあるものを....。

ワン.アイディアですね。

妄想銀行
エフ博士は妄想を取り除いたり、与えたりする銀行業を営み....。

「妄想」を「銀行化する」というアイデイアは出そうで出ないような....

全体通してやはり「すごい」と思う作品はありませんでした「普通におもしろい」というべきか。
この50年経過しても「普通におもしろい」ところが星新一のすごさですね。
どれが一番かというと...難しい....。

シンプルな「大黒さま」、きれいなファンタジー「女神」、コミカルな「黄金の惑星」「宇宙の英雄」うまさの目立つ(このページ数で立派にSFサスペンスしている....)「敏感な動物」かなぁ。
多分読むタイミングでも違ってくるのではないかと思います。

「鍵」は「星新一1001話をつくった人」で名作として紹介されていて期待感高すぎていた分楽しめませんでした....。

ショート・ショート集は作品数多いので感想書くの疲れます....。
それが読まない理由だったりするのかも。(笑)

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星新一1001話をつくった人 上・下 最相葉月著 新潮文庫

2018-01-07 | 日本SF
これまた「覆面座談会事件」がらみで読んだのですが、本作は単行本(2007年)が出たとき話題になったこともあり単行本を買って読みました。

当時嫁が子ども(当時5歳)を連れて田舎(那須)に帰っていて、金曜日夜早く帰って準備して土曜日早朝から向かう予定が...。

会社帰りについ本書を買ってしまい読み始めてしまったら止まらず、ほぼ徹夜となり大変なことになった記憶があります。

星新一作品やらエッセイやらを小・中学生の時むさぼるように読んだ自分としてはとてもとても途中で止めることのできない内容でした。
単行本

本書は第34回大佛次郎賞、第29回講談社ノンフィクション賞、第28回日本SF大賞、第61回日本推理作家協会賞評論その他の部門、第39回星雲賞ノンフィクション部門を受賞しています。

著者の最相葉月氏は1998年に「絶対音感」がベストセラーになっていますが、本作が最高傑作といってもいいのではないでしょうか。
(他読んでいないのでいい加減ですが...。)

今回の読み直しに当たっては持ち歩きを考慮し文庫版を入手しました。
文庫本


内容紹介(裏表紙記載)
上巻
「ボツコちやん」「マイ国家」など数多くのシヨートシヨートを生み出し、今なお愛される星新一。森鴨外の血緑にあたり、大企業の御曹司として生まれた少年はいかなる人生を歩んだのか。星製薬社長となった空白の六年間と封印された負の遺産、昭和の借金王と呼ばれた父との関係、作家の片鱗をみせた青年時代、後の盟友たちとの出会い——知られざる小
説家以前の姿を浮かび上がらせる。

下巻
セキストラ」でのデビユー後、ドライでウイツトに富んだシヨートシヨートは多くの読者を獲得する。膨れ上がる人気のー方で、新しすぎる個性は文壇との間に確執を生んでいた。そして前人未到の作品数を生み出す中、星新一自身にも、マンネリ化ヘの恐怖が襲いかかることに。本人と親交のあった関係者134人ヘの取材と、膨大な遺品からたどる、明かされることのなかった小説家の生涯。


今回の読み直しも通勤だけでなく家に帰っても止まらずで一気読みしてしまいました。
(3-4年前にも風邪ひいて寝ている時ふっと途中から読んだら止まらなくなり徹夜しそうになって危なかったことがあります....)

「星新一」の魅力だけでなくこの作品の持つ魅力なんだと思います。

この作品の魅力は...。
とはいってもまずは「星新一」であることは間違いないでしょう。
「星新一」というポピュラーでありながらちょっと不思議な独特のポジションにある人というのがなんとも絶妙な選択です。

同じ日本SF作家御三家でも小松左京だと俗っぽくなりそうだし、筒井康隆だと文学論・作品論に終始することになりそうです。

星製薬の御曹司かつ作家として独特なポジションにいた「星新一」というのが良かったんでしょうねぇ。
今回この記事を書くのにAmazonの感想やらを見返しましたが、小中学生の頃夢中になって星作品を読んで、高校-大学と進むにつれて「卒業」し「忘れ」ていく人のなんと多いことか...。

「一般的」にはどうかしれませんが日本の子供のころからの「読書好き」な人間のかなりの割合に同様な人がいそうです。
(少なくと60-80年代生まれの人、70年生まれの私もそうです。)
「卒業」した人にとっては、昔お世話になった恩人を懐かしむ気持ちと、「忘れていた」そこはかとない罪悪感とがないまぜになった気分があるんじゃないかと思います。

今の小中学生に読まれているかは残念ながら自分の子供が2人とも字の本あまり読まないのでわかりませんが....。
いまでもかなり星作品が新潮文庫でラインアップされていることを考えると読まれているんでしょうねぇ。

ただ本作の魅力はそれだけでなく、星新一自身の著作でも描かれている星製薬の創業者・父である「星一」、当時のSFファンの間でも放言好きな「長老」、ショート・ショートの名人、面白い発想の人と感じさせるエッセイでイメージがついている「星新一」をていねいな取材を基に「出来うる限り」客観的に再構成していることにあるとも思います。

アメリカ帰りで「近代的経営」を掲げながらも後藤新平と関わり衆議院議員にもなったりと商売と政治を密接に関わらせて事業を伸ばし、社内ではワンマンで後継者を全く育てられなかった星一像というのは「星新一」の描くものとは全然別物ですし、当時の経営者としては当たり前だったかもしれない「隠し子」やらの存在もそれなりにショッキングでした。

また晩年の新一の文壇から評価されないあせり、文学賞に恵まれなかった憤慨、筒井康隆の文学賞受賞パーティーで口汚くののしる星新一像も従来のイメージとかけ離れたものだと思います。
この辺は島田雅彦とのエピソードやら弔辞で筒井康隆が「文壇が評価しなかった」ことをわざわざ触れていることからもまぁそんな面もあったんだろうねなぁとも思います。
”星さんの作品は多くの教科書に収録されていますが、単に子どもたちに夢をあたえたというだけではありませんでした。手塚治虫さんや藤子・F・不二雄さんに匹敵する、時にはそれ以上の、誰しもの青春時代の英雄でした。お伽噺が失われた時代、それにかわって人間の上位自我を形成する現代の民話を,日本ではたった一人,あなたが生み出し、そして書き続けたのでした。そうした作品群を,文学性の乏しいとして文壇は評価せず、文学全集にも入れませんでした。なんとなく、イソップやアンデルセンやグリムにノーベル文学賞をやらないみたいな話だなあ、と、ぼくは思ったものです。”
(収録されている「不滅の弔辞」は手に入れているのですが...感想は書いていません)
気になったので星新一の受賞歴調べてみたのですが....。
元ネタwikipedia
・1968年ショートショート集『妄想銀行』で第21回日本推理作家協会賞を受賞。
・1981年「マンボウ・マブゼ共和国」文華勲章が授与。
・1998年 第19回日本SF大賞特別賞受賞(死後)
これほどの「大作家」にしては異常に少ない。
「マンボウ・マブゼ共和国」文華勲章は受賞歴なのか....「?」です(笑)

SFファンが贈る「星雲賞」については”ただし、1983年の「ショートショート1001編を達成」を機に、翌1984年夏の日本SF大会で、日本SFファングループ連合会議議長の門倉純一の提案で「星雲賞特別賞」授賞。実際に授賞式まで行われたが、星の側が受賞を拒否。「幻の星雲賞」となった。”という事情はあり”後年、手塚治虫、矢野徹、米澤嘉博、野田昌宏、柴野拓美、小松左京らは死去した際に星雲賞特別賞を受賞したが、星の死去時は授賞されなかった。”
との事情があったようです。なかなか難しい....。(本書にもこの辺書かれていますが...)

ちなみに筒井康隆の受賞歴(これもwikipedia
・1970年 「霊長類南へ」で第1回星雲賞(長編部門)「フル・ネルソン」で同賞(短編部門)受賞。
・1971年「ビタミン」で第2回星雲賞(短編部門)受賞。
・1974年 「日本以外全部沈没」で第5回星雲賞(短編部門)受賞。
・1975年「おれの血は他人の血」で第6回星雲賞(長編部門)受賞。
・1976年「七瀬ふたたび」で第7回星雲賞(長編部門)「スタア」で同賞(映画演劇部門)受賞。
・1977年「メタモルフォセス群島」で第8回星雲賞(短編部門)受賞。
・1981年「虚人たち」で第9回泉鏡花文学賞受賞。
・1987年「夢の木坂分岐点」で第23回谷崎潤一郎賞受賞。
・1989年「ヨッパ谷への降下」で第16回川端康成文学賞受賞。
・1990年 ダイヤモンド・パーソナリティー賞受賞。
・1991年 日本文化デザイン賞受賞。
・1992年(平成4年)「朝のガスパール」で第12回日本SF大賞受賞。
・1997年 神戸市名誉市民勲章受章。
    フランス・芸術文化勲章シュバリエ章叙勲。
    フランス・パゾリーニ賞を受賞。
・1999年「わたしのグランパ」で第51回読売文学賞受賞。
・2002年「 紫綬褒章受章」
・2010年 第58回菊池寛賞受賞。
・2017年 毎日芸術賞受賞。

星新一とくらべて「・・・・」どうでしょう?嫌味の一つも言いたくなる気持ちもわからないではないです。

ちなみに小松左京(これもwikipedia
・1971年 「継ぐのは誰か?」により第2回星雲賞(長編部門)受賞。
・1973年 「結晶星団」により第4回星雲賞(短編部門)受賞。
・1974年 「日本沈没」により第27回日本推理作家協会賞・第5回星雲賞(長編部門)受賞。
・1976年 「ヴォミーサ」により第7回星雲賞(短編部門)受賞。
・1978年 「ゴルディアスの結び目」により第9回星雲賞(短編部門)受賞。
・1983年 「さよならジュピター」により第14回星雲賞(長編部門)受賞。
・1985年 「首都消失」により第6回日本SF大賞受賞。
・2007年 城西国際大学より、名誉博士号授与。
・2011年 第42回星雲賞特別賞受賞
・2011年第32回日本SF大賞特別功労賞受賞。
SFファンに愛されていたのがよくわかります。

「星新一」は果たして「???」ですが....。

本作ではその辺のところの記述「悲劇」サイドに寄り過ぎている感はありますが...、まぁ完璧な「真実」を文章に著すというのは不可能かと思いますのでこれはこれでありかと。

無難に「偉大な実業家の息子として生まれた人物が挫折を経て、有名作家に。その作品はいまも変わらず読み継がれています。」というように纏められるよりも全然よかったとは思います。

いろいろありながらも自らの作品の手直しに執念を燃やし続ける晩年の星新一の姿は胸に迫るものがあり(月並みな表現だ....)ちょっとくらいのイメージを変化する描写では、「読書」の喜び、「物の見方」の基本を教えてくれた偉大な「星新一」に対する自分の思いは変化しないことがわかります。

ただここに書かれている星新一像、実業家向きではないんだろうなぁとは思いました....。
「俗っぽさ」なさすぎです。

俗っぽさ(別に筒井康隆を非難しているわけではないです)があれば文学書向きの作品もしくは「作品集」くらいいつでもできたらしいし、根回しもできたような気がするのですが.....。

そこがまた読み継がれる所以なんでしょうね....。

ちなみに「覆面座談会事件」については記載はありますが...星新一がメインではないので一般的なものにとどまっています。(蛇足ですが....)


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