しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ねらわれた学園 眉村卓著 角川文庫

2014-08-28 | 日本SF
デューン/砂の惑星」が4巻とそれなりの分量だったこともあり、またまた箸休め的に手に取りました。

私くらいの年代(1970年生まれ)のSF好きにはありがちなパターンですが、小学-中学くらいで眉村卓のジュブナイルSFをよく読みました。
当時角川文庫から出ていたものはぜんぶ持っていたんじゃないかと思います。

もともと持っていたものはこちら。

眉村卓のジュブナイル作品の中でも、当時この作品が一番好きで何度となく読んだのでボロボロです。
奥付見ると昭和52年第6版、7歳では買っていないので...多分古本屋で買ったんだと思います。
(小学校高学年くらいから古本屋通いが趣味だった...)

他先日ブックオフ108円で売っていたのをみかけ、表紙に魅かれてついつい買ったのが

こちら。
薬師丸ひろ子、最近すっかり「お母さん」んキャラですが懐かしいですね…。
(この映画も見ていないんですが)

時をかける少女」同様、本作も映画化されて有名になった作品ですね。
ちょっと調べたら、本作も1981年公開、大林宣彦監督の薬師丸ひろ子主演版とは別に2012年にアニメ映画が製作されているようです。
どちらも機会があれば見てみたいものです。
(頭の中を「守ってあげたい」が流れる...)

またこの角川文庫版「ねらわれた学園」は豊田有恒氏による解説が付されていますがこれについて瀬名英明氏が日本SF作家クラブとの決別する辺りで話をしていて変に有名になっていたりします。(ちなみに大した内容ではない…と思う)

作品自体は1973年発刊です。

内容(表紙折り返し記載)
もし、人や物を自由に動かすことができたら―――誰しもが夢みる超能力。しかしそれが普通の人間に与えられていないことがどんなに幸福なことか意外に知られていない・・・・・・。
 ある日、おとなしかったはずの少女が突然、生徒会の会長選挙に立候補、鮮やかに当選してしまった。だが会長になった彼女は、魅惑の微笑と恐怖の超能力で学校を支配しはじめた。美しい顔に隠された彼女の真の正体は?
彼女の持つ謎の超能力とは?
 平和な学園に訪れた戦慄の日々を描くスリラーの世界! 他に複製人間の恐怖を描いた「0から来た敵」を併録。

「ねらわれた学園」は他の眉村卓のジュブナイル作品よりも若干厚めのイメージがあったのでなんとなくそれなりに「長い」作品のイメージがあったのですが、もう1編入っていたんですね。
まぁジュブナイルですので2時間くらいで読んでしまいました。

それぞれ感想など。
「ねらわれた学園」
悲観的な未来から来た未来人が超能力を使ったりして世の中を改造しようとして、それに中学生が立ち向かうという構図。
この手の話眉村氏のジュブナイル作品に多いパターンですね。(「なぞの転校生」とかあと「天才はつくられる」もか?)
冒頭大阪の中学校なのに関西弁でないのが気になったりしました。(笑)
とにかく登場人物が全員真面目に「正義」を語り、「社会」の問題をテーマにしているのが「社会派」眉村卓風でしょうか。

今(2014年)の日本と異なり1970年代の日本はまだまだ第二次世界大戦の反省的なものも生々しく感じられる時代だったかと思うので「独裁者」的な存在に従う社会への抵抗がストレートに正義として力強く語られています。

現代では当時よりも「正義」が多様化していることもあり、もうちょっと複線的な語られ方になってしまうような気もしますね。
若干右傾化している現代日本では未来人の主張も一定の「正しさ」があるという評価が出てくるかもしれません。
ともあれ本作「正義とは」というのを真っ向から論じています。

話は変わりますが、本作のヒロイン楠本和美の先読み力と軍師力というか母性というか、とにかく只者ではない。
薬師丸ひろ子、キャラがピッタリ合うかもしれない。(笑)
(映画では楠本和美でなく役名三田村由香)

楠本和美の正体は最後まで何も語られませんが、その辺の不思議感が残るのもこの作品の魅力ですね。

「0から来た敵」
友人の家に遊びに行って、気を失ってしまい家に帰ったら自分がいて….。
というお話。

「家に帰ったら自分の存在が親にも否定され帰るところがない。」というのは子供に取っては根源的恐怖かもしれませんね。

ということでジュブナイルSFにはありがちな展開ですが、この手の話で当時「怖さ」を感じた記憶を思い出しました。
今なら表現的に問題あるかと思うのですが、捕えられた人たちが「ばかにされてしまう」というのもなんだか怖い表現ですね。
「治るんじゃないか?」ということで終わっていますが、ヒロイン的な主人公のいとこも「ばか」にされてしまっていますし結構思い切っています。

とにかく2編とも懐かしかったです。

↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村

映画:ホドロフスキーのDUNE フランク・パヴィッチ監督

2014-08-24 | 映画

久々に映画館で映画を見ました。
(子供と見るしんちゃん等除く、それはそれで面白いんですが)

この映画、SFマガジン7月号で紹介されていたのを見て存在を知り、「デューン/砂の惑星」を2巻まで読んだあたりでまだ上映していることを知り、なんだかとても「観なきゃいけない」感じになり行ってしまいました。
(今日-8/24-現在は上映していないと思います)

内容は伝説的カルト映画で有名な(私は知りませんでした)メキシコの映画監督ホドロフスキー氏が1975年に「DUNE」の映画化にチャレンジし、製作開始1歩手前までいきながらもスポンサーサイドからストップがかかり断念するまでのエピソードと、その後代に及ぼした影響を描いた作品。

内容ご興味あれば予告編です。


この手のマニア向け映画はこれまで観に行ったことはなかったのですが...。
上映が平日の夜ということもあったのか、観客がいわゆる「まとも」というか「普通」の人は殆どいず、かなり癖のありそうな人ばかりでビビりました。
年齢層も学生っぽい人から年配の人まで結構幅広かった…。(子供はいませんでしたが)

内容は、世界最高の超大作(上映時間12時間!)完成を目指し、ホドロフスキーいわく「魂の戦士」を集めていき、完成を目指すが、ハリウッドサイドが難色を示し撮影できなかった顛末をホドロフスキー他関係者の証言を中心にまとめたもの。

ホドロフスキーの「DUNE」は
音楽はピンク・フロイドに頼み、オファーの時に彼らがマクドナルドのハンバーガーを聞きながら聞いるのを「ビックマック食べながら、最高の映画の話を聞くんじゃねぇ!」とホドッロフスキーが一喝して承諾させ。

ダリに皇帝役の出演交渉をして、映画の中で「本物のキリンを出して燃やせ」他無茶な条件を丸のみしOKさせ。
オーソン・ウェルズに「ハルコンネン男爵」、ミック・ジャガーにその甥フェイド・ラウサ役をオファーし一発OKさせる。
主人公ポウル訳には自分の息子と決めて2年間毎日6時間の格闘技の稽古をさせる等々…。

とにかく無茶なすごい話を2013年現在84歳のホドロフスキーが延々と語る。

このホドロフスキーが老齢になってもなんともすごい。
物凄いバイタリティがあり終始笑顔でひどいことをさらりと平気でいう。
眼にも力があり人を惹きつける何かがある人な気がしました。

原作と映画の関係について、原作に忠実に撮るのではなく自分なりに解釈して変更を加えていくことを「原作をレイプするんだー、レイプ、レイプ」と嬉しそうに語るホドロフスキーがとても印象に残りました。

本人いわく「原作ほとんど読んでない」そうですが、ダリとのやり取りの場面で原作に書いてあるなやり取りをさりげなくなぞっているのを紹介していたりしましたし、実は相当ちゃんと読んで本人いわくの「レイプ」な解釈での変更を仕組んでいたのかなーとは思いました。

また最後あたりでホドロフスキー氏が1985年に完成したデイヴィッド・リンチ監督の映画「DUNE」を見たエピソードが出て来ますが…。

物凄い嬉しそうな顔で駄目出ししていのが印象に残りました。(笑)

完成したリンチ監督販でも敵役フェイドは「スティング」、ミュージシャン起用はホドロフスキーの影響があったのでしょうか?
(ミック・ジャガーの方がインパクトは大きかったでしょうが)

ともかくこの人、ひどい人なんでしょうけど、好きです...。
世の中いろんな人がいますねぇ。

本作観てから、「デューン/砂の惑星」3、4巻を読んだのでなんだか作品がオドロオドロしく感じられた気がします。
(いいんだか悪いんだかですが…)

観ることができて良かった作品でした。

↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村

デューン/砂の惑星1~4 フランク・ハーバート著 矢野徹訳 ハヤカワ文庫

2014-08-21 | 海外SF
‘12年ローカス誌長編オールタイムベスト堂々の1位の作品です。
1965年発刊、1966年に第一回のネピュラ賞を長編部門で受賞、同年のヒューゴー賞も受賞している問答無用(?)の名作。

昨年末に実家から持ってきて「読もう、読もう」と思いながらも「4冊は量が多いなぁ」と思い、なかなか手に取れていませんでしたがやっと読む気になりました。

本自体は、高校生か大学生くらいのときに古本屋で見かけ4冊揃いで買っていたもの。

表紙に映画の写真を使っています。
デイヴィッド・リンチ監督の映画が1984年に公開されたあたりで出た版ですね。
これも見ていません。(あまり評判はよくないようです)
奥付見ると昭和60年=1985年版でした。

とにかく本作も20年以上積読していたものです…。

デューンシリーズはこの後も「砂漠の救世主」「砂丘の子供たち」と続いていくようで、そこまで読まないと真価はわからないのかもしれませんが、現在全部絶版。
とりあえず手持ちの「砂の惑星」からということで読んでみました。

ちなみにamazonで見たらプレミアついていて中古で「砂の惑星」1巻が中古で1,200円からになっていました、さすが名作!

内容(扉記載)
1巻
アラキス・・・・・・砂丘・・・・・・砂の惑星。ポウルの夢に一面乾ききった世界が広がる。そこがかれがこれからの一生を過ごす所なのだ。アラキスは苛酷な星ではあったが同時に唯一の老人病特効薬メランジの宝庫でもあり、皇帝の勅命を受けたアトレイデ公爵にとって、そこを仇敵ハルコンネン家にかわって支配することはこの上ない名誉と富を意味した。一人息子ポウルにより豊かな未来を継がせるためハルコンネンの復讐の罠を、皇帝の恐るべき奸計を、充分承知しながら公爵はあえて砂の惑星に乗りこんでいく・・・・・・ヒューゴー、ネピュラ両賞受賞に輝く傑作巨編、堂々開幕!
2巻
悲劇は、アトレイデ公爵家がアラキスに着いてはじめて催した晩餐会の後に起こった。酒宴が終わって自室に戻りかけたレト公爵は、廊下に倒れている人間に気づく。抱き起してみるとそれは背中にナイフを刺されたフレーメンの家政婦メイブズ―――はっとする間もなく麻痺銃を射たれたレトのかすむ目に、悲しげな表情を浮かべながら近づいてくる裏切者ユエの姿が映った・・・・・・。やがてハルコンネン家の総攻撃からかろうじて母と共に砂漠に逃れたポウルは、一瞬、父の死を知った。いつのまにか、かれの心は時間と空間の彼方に果てしなく拡がっていく能力を身につけていたのだ!
3巻
アトレイデ家滅亡の時からくも逃れた砂漠でポウルは母に言った。「フレーメンの中に身を隠そう。かれらがぼくたちを助けてくれる」父の副官アイダホと、惑星生態学者カインズの死を賭した献身によって追ってを振りきった二人は、ハリコンネンから、皇帝から、そしてギルドの監視からさえも自由な広大な奥地をめざし、ひたすら砂の上を歩み続けた。宇宙船ほどもある巨大な砂虫の恐怖、絶え間なくかれらを苦しめる“熱”と“乾燥”―――だが、この想像を絶する苛酷な環境こそが、超人類たるポウルの予見した栄光の未来へのもっとも大きな切り札となったのである!
4巻
復讐の時は来た。フレーメンの一員となりきり、その超能力の故に、無数の時空の流れを自在に動くことのできるもの、“ムアドディブ”として砂漠の民の宗教的畏敬の的となったポウルはやがてフレーメン全部隊を組織統率、様々な生態学的手段を講じて砂漠の緑化をはかると同時に、またアトレイデ大公家当主として、敢然と帝国の陰謀に挑戦する。すなわち皇帝とハルコンネンがアラキスの情勢を危惧しサルダウカーの圧倒的軍勢をもって再び砂の惑星に攻めよせてくるや、フレーメンは総力を上げてこれを迎えうったのだ!
壮大なスケールの傑作SF巨編第一部完結!

さて感想、とても楽しく読了できましたが....。
「オールタイムベストで1位」という期待感で読んだほどの読了感は得られませんでした。

SFマガジンの投票でもランクインしてなかったですし、アメリカでは人気があるのでしょうが日本人受けしない内容なんでしょうかねぇ。

ざっくりいえば貴種漂流譚で「公爵」の息子が苦難を重ねて、能力を身に着ける。
その「公爵」に現地人は恐れ入って忠誠を誓い、ちりぢりバラバラになっていた豪傑的、騎士的部下がはせ参じて、悪だくみをしているわかりやすい敵役の男爵と皇帝をやっつける。
なんとも単純かつ古典的な英雄譚ともいえます。

もっとも本作の場合はそこにドラッグも絡んでくるわけですが...。
また巻末に独自の用語辞典までついてくる凝った世界観も労作だとは思いますが...。

私的には、ローカス誌オールタイムベストで3位のアシモフの「ファウンデーション」の方が同じく「皇帝」が出てきても圧倒的に上と感じました。
(こちらはギボンのローマ帝国興亡史を下敷きにしている。)

機械文明というかコンピューターを否定した設定で「魔法」的なものが出てくるSFというよりもファンタジーっぽいところが合わなかったのかもしれません。

展開として1、2巻で登場人物の紹介をかなり詳しくしていましたが丁寧な展開で「これは」と期待しえいたのですが、2巻終盤のアドレイデ家崩壊から、3、4巻でのポウルの放浪、終盤の皇帝との対決などはかなり展開が速く端折られて急いで展開しているような感じを受けました。

私的には人物紹介的要素が多いものの前半部の方が楽しめました。

そんなこんなピンとこなかったというのが正直な感想です。
まぁ「問答無用」の名作(?)ですし、私の「読書力がない」というのが原因かとも思ったりはしております。

といいいながらも独特のオドロオドロした感じや講談のようなテンポの良さで読み出すと先が気になり一気に読んでしまったのも事実です。
面白い作品ではあります。

解説によると「砂漠の救世主」以降まで読むと「哲学的」世界観になっていくそうですのでそこまで読まないと判断してはいけないのかもしれませんね。
なお毎巻に私の大好きな訳者:矢野徹氏の解説がついているのもうれしい所でした。
(私的には本作より、氏の「カムイの剣」や「連邦宇宙軍シリーズ」の方が好きだ...)

↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村

はだかの太陽 アイザック・アシモフ著 冬川 亘訳 ハヤカワ文庫

2014-08-15 | 海外SF
アインシュタイン交点」とある意味対極にあるかなぁ、ということで「わかりやすい」アシモフ作品が読みたくなり本書を手に取りました。
本書は昨年末に実家から持ってきた本の1冊。

奥付見ると昭和59年、私が中学2年の時の発刊です。
そのちょっと前に「鋼鉄都市」を読んで「面白い!!」と思っていた頃、丁度ハヤカワから新刊で出た本書を買った記憶があります。

当時は謎解きというか解決部分にミステリーとして読むと納得いかないところがあり、なんとなく「鋼鉄都市ほどではないなー」と感じていた記憶があります。
‘12年ローカス誌オールタイムベスト274位。1957年発刊

内容(裏表紙記載)
すべてがロボットによって管理される惑星ソラリア―――だがそこで、有史以来初の殺人事件が発生した。密室状況下で人間が殺され、しかもその場にはロボットしかいなかったのだ。ソラリアの要請で、急遽地球から派遣されたイライジャ・ベイリ刑事はロボットのダニール・オリヴァーとともに操作に着手するが、ソラリア社会の因習の壁にはばまれ、袋小路につきあたってしまう。はたして<ロボット三原則>がふみにじられ、ロボットによる殺人が可能になったのだろうか? 「鋼鉄都市」の名コンビが再び登場し、完全殺人の謎を鮮やかに解明する、ファン待望のSFミステリ!

本作でアシモフのイライジャ・ベイリ、ダニール・オリヴァーものは全てこのブログに記事化できたことになります。
感無量....だったりします。

さて感想ですが、昨年「鋼鉄都市」を読んだときは「こんなもんだったかなぁ?」という感想で、あまり期待しないで読んだのが良かったのか(笑)本作はかなり面白かったです。

展開が気になりどんどんページをめくっていく…物語を楽しむ感覚は「文学的」ではないのかもしれませんが快感でした。

イライジャ・ベイリものでは「夜明けのロボット」(1983年刊)の出来が一番いいかなぁと思っていましたが、本作の方がアシモフも若いためか「勢い」があって楽しめる作品になっていると思います。

道具立ても「鋼鉄都市」では三原則とロボット刑事の位置づけ的なものが強調されていましたが、本作ではその辺は所与のものとなっており特殊な環境にある「ソラリア」と「地球」における「人間心理」に焦点が当たっています。
「心理」に関心を持ち続けたアシモフらしい展開ですね。

最近ではその「心理」の掘り下げが「浅い」というような意見もあるようですが、ストレートかつ明確な分強い表現ですし、そのため逆にその背後にある「なにか」を色々と考えられるようになっている気がします。
私は「アシモフやっぱり好きだ」というのを再認識しました。

また本作では初期アシモフでは絶対視されていたロボット三原則にもちょっとした疑義が入り始めています。

ミステリーとしてもベイリのコロンボ的な泥臭い探偵ぶりが楽しめますが、解決場面で意図的に言及しなかった事実と、犯人を追いつめてしまうところがミステリーとしては若干のいただけない感じを昔同様持ちました。

ただ昔読んだ時よりも年を取った分「それもありかなぁ」という気分で「SF」としては「いいんじゃないか」と思えました。
アシモフ、ミステリーも好きなようですがやっぱり本質的にはSF作家なんでしょうね。

とにかく楽しく読める作品だと思うのでお勧めです。
(が、これも絶版で入手困難ですが...)

↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村

串刺し教授 筒井康隆著 新潮文庫

2014-08-11 | 日本SF
時をかける少女」を読んだ時にいろいろ調べていたら、本書に映画「時をかける少女」のパロディである「シナリオ 時をかける少女」が収載されていることを知りブックオフで探していて今年6月にやっと見つけて購入。

今現在は絶版のようです。

アインシュタイン交点」でちょっと頭が疲れていたので箸休め的なつもりで手に取りました。

内容(裏表紙記載)
崖から転落して鉄柵の先端に串刺しにされた大学教授を目撃したガソリン・スタンドのサーヴィスマンが最初にしたことは? 写真週刊誌時代の未来を予見した作品として「東海道戦争」などと並ぶ表題作。やくざが女学生の言葉で会話し、女学生が中年紳士の言葉で会話し、中年紳士が主婦の言葉で・・・・・・会話する「言葉と<ずれ>」。人間がきつねをだます奇怪至極の「きつねのお浜」など全17編。

一言で言えば筒井康隆が「虚人たち」や「虚航船団」を書いていた頃のメタフィクション「実験」的な作品群という感じです。
それなりに頭は疲れました。

収録されている作品が1979年-1984年発表で、「虚人たち」が1981年、「虚航船団」が1984年発刊ですから時期的に丁度重なっています。
(掲載誌にも「純文学系」がけっこう多い)
筒井氏の頭の中がメタフィクションに占領されていた時期なんでしょうねぇ。

表題作の「串刺し教授」なども普通に書けばいいような気がするのですが…メタフィクション的に書いています。
実験的作品群を破綻なく描く才能はすごいとは思いましたが….。
正直読んで面白いかというと「う~ん」でした。

他の作品もかなり実験的な作品が多く、形式を楽しむにはいいとは思いますが…。

ただしお目当ての「シナリオ 時をかける少女」は個人的にはかなりツボにはまりました。
知世ちゃん最後は大変なことに....。(笑)
これを読めただけで本書読めたかいがありました。

以下各編簡単に紹介と感想など。

○旦那さま留守 1979年2月 新潮現代文学
 お手伝いロボットたちが主人夫婦のマネをして楽しんで…。

 ロボットと主人夫婦のそれぞれ性描写の露骨さがなんともおかしい作品でした。
 
○日本古代SF考1981年12月小説新潮
 未来からSF作家の集まる文壇スナックを俯瞰したらというお話。

 筒井氏の得意(?)分野であるSF作家内輪ネタ、自虐的です。
 当時の雰因気を楽しむにはいいんでしょうけれどもねぇ。

○通過儀礼1982年1月15日読売新聞
 成人式で晴れ着を着ると云々。
 
 晴れ着と性が云々、純文学的表現のパロディ?、私には理解できなかったです。

○句点と読点1982年12月26日週刊小説
 「、」と「。」のとても短いお話。

 言葉遊びとしては面白いです。
 
○東京幻視1982年11月新潮
 東京に憧れを抱いていた地主の息子は、子供の頃東京に行けず、終戦後に行くと…。

 素直に受け取れば「東京」という存在の変化と成長による人間の感覚の変化を情感交え描いているんでしょうが....。
 裏読みすると「純文学風に書いてみました」というようにも取れるような…。
 
○言葉と<ずれ>1983年2月小説現代
 内容紹介で紹介されていたお話。

 実験としてはおもしろいと思いますが「だからどうした?」という気もしました。 

○きつねのお浜1983年4月小説新潮
 ざっくりいえばきつねがかわいそうな話、もしくは酷い和尚のお話。
(要約するのは難しい….)

 落語的世界を描きたかったんでしょうかねぇ?
 でもこのいいかげんな感じは初期の筒井作品っぽくて好きです。
 
○点景論1983年6月海
 尾行される男と、尾行する男のお話。

 「虚人たち」同様一人称で語る「尾行される男」は登場人物であることを自覚しています。
 「虚人たち」に向けた実験的作品でしょうか?、観覧車でのパニック感は面白かったです。
 
○追い討ちされた日1983年6月中央公論
 江戸の町を官軍から逃げている旗本が現代の東京に来てしまうというお話。

 なにがどうというより、こういう場面を描きたかっただけ?というように感じました。

○シナリオ・時をかける少女1983年6月SFアドベンチャー
 原田知世主演の「時をかける少女」のパロディ。

 いかにも筒井作品っぽくない映画に対しての照れ隠しなのかどうかわかりませんが、思いっきりちゃかしています。
 原作者じゃなければ許されないだろうなーという作品。

○退場させられた男1984年4月別冊文藝春秋
 退場させられた「主人公」は次は目茶苦茶をやる小説家を演ずることに。

 「目茶苦茶って難しいのよね」というセリフは作者本人にあてた言葉でしょうか?
 メタフィクション練習作という感じの作品。

○春1984年4月海
 お経のような作品。
 声に出して読んでみるとリズムがあるのかもしれないですね。
 実験的作品…でしょうか?

○妻四態1984年4月小説現代
 普通の人と思って結婚した妻は実は...。

 ぶっ飛んだ「妻」と、日常的感慨をもつ「夫」とのギャップを楽しむ作品。
 
○風1984年5月小説現代
 老夫婦の家の扉を叩くように吹き付ける風は….。

 人情もの?を目指しているんでしょうか?

○座右の駅1984年5月小説現代
 作家の机の右には線路があり電車が走ってきて、観光に来た小さい人間たちが…。

 メタフィクション実験作という感じでしょうか?
 
○遥かなるサテライト郡1984年7月小説新潮
 月、タイタン等さまざまな衛星の飲み屋でいろいろな女性とつきあっていた主人公は最後は地球で過ごすしかなくなり…。

 いかにもSF短編然とした作品。
 
○串刺し教授1984年1月新潮
 転落して串刺しになった教授の目撃者の写真を掲載した雑誌の編集者は…。

 上記の主題・設定で素直に話が展開されるわけではなく、メタフィクション的(?)に時間や場所が捻じ曲げられて話が展開されます。
 そういう意味では実験的短編でしょうか。

↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村