しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

遺伝子の使命 L.M.ビジョルド著 小木曽絢子訳 創元推理文庫

2018-05-13 | 海外SF
'12年ローカス誌オールタイムベスト63位の「ゲーム・プレイヤー」を読んだので次の65位(「都市と星」が同位63位なため64位はなし)の「メモリー」を読もうとも思ったのですが....。

「メモリー」はヴォルコシガン・サガのシリーズ作品のため、順番飛ばすのもなんだなぁということで、本書を手に取りました。
本自体は昨年ブックオフで入手済み(現在絶版です)


ヴォルコシガン・サガはこれまでマイルズ初登場作(()内は'12年ローカス誌オールタイムベスト順位)の「戦士志願」(149位)、年代順でその次にあたる「ヴォル・ゲーム」(81位)、マイルズ出生前のマイルズの父母の活躍を描いた「名誉のかけら」(269位) 「バラヤー内乱」(70位)と読んできました。

出版年(1987年)からも年代からも「自由軌道」も読まなきゃなーとも思ったのですが、こちらは時代設定がマイルズ誕生の200年前とかなり離れるのでとりあえず今回は省きました。

マイルズが登場しない外伝的作品ではありますが出版年が1986年と古く時代設定「ヴォル・ゲーム」と「無限の境界」の間にあたっているため今回は本書を読むことにしました。

この後ヴォルコシガン・サガシリーズは「無限の境界」⇒「親愛なるクローン」⇒「ミラー・ダンス」⇒「天空の遺産」⇒「メモリー」と読んでいくつもりです。(18年4月現在「ミラー・ダンス」まで読了)

「天空の遺産」は時代設定は本書と同年代なのですが出版年が1995年と「ミラー・ダンス」より後になるので後回しにしました。
(この辺、時代設定・出版年はwikiedia参照

内容紹介(裏表紙記載)
惑星アトスでは男性だけが人工子宮で生殖を続けてきたが、それを支える卵子培養基が疲弊していた。急遽新しい培養基が輸入されるが、途中で偽物にすりかえられていた。この一大事に一人の青年医師が宇宙に派遣される。銀河の要衡たる巨大宇宙ステーションに到着した彼は、初めて女性に出会った―彼女は美貌の傭兵中佐エリ・クイン。すべての背後には惑星間抗争に関わる秘密が!

外伝として読みましたが....。
正直出来は「今一つかなぁ」と感じました。
「人工子宮」「男だけの惑星世界」のアイディアとネイスミス提督の腹心かつ恋人である美貌の戦士エリ・クィンを組み合わせてみたら「面白いかなぁ」ということで組み合わせてみたら今一つであったという感じ

良くも悪くもアシモフの「宇宙気流」とか「宇宙の小石」のような1940-50年代の古き良きSF風に感じました。
事件に巻き込まれる異世界もしくは異常な状況で能力が試される男性という意味で本作の主人公、惑星アトスの医師イーサンは上記2作とかぶっている気がします。

人類が地球から銀河系に拡がって、いろいろな勢力圏を形成しているという前提もアシモフ未来史でいえば「暗黒星雲のかなたへ」あたりの時代がそんな感じでしたし通じるものがあります。

男だけの世界の「惑星 アトス」の設定、それなりに楽しいのですが...活かしきれていなかったかなぁという気もしましたし、培養基をめぐる謎もなんだか上滑りなきもしましたが...。

あくまで「楽しく」、アクションやら宇宙ステーションでの食物工場やらのSF的設定を楽しむにはいい作品であはりました~。
またヴォルコシガン・サガ シリーズの世界観、とくに遺伝子操作やら地球から開拓者が惑星に広がっていったというようなことを理解するには読んで良かったです。

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ゴールド-黄金- アイザック・アシモフ著 嶋田洋一・他訳 ハヤカワ文庫

2018-05-05 | 海外SF
私の読書の目標のひとつである「アシモフの邦訳・出版されたSF作品全部読もう」の一環です。

本書1995年に刊行、アシモフの死後(1992年4月没死因は1983年の心臓手術の際に受けた輸血によるAIDSによるものとのことなので最後は相当体調悪かったんでしょうね)に纏められた「最後の」短編集です。

本自体は2~3年前ブックオフで見かけて入手していました。

見つけたときは「レアものか?」とも思ったのですが、ブックオフに行くとよく見かけるのでそれなりに売れたんでしょうね。

奥付見ると本書のハヤカワ文庫版発刊が2001年ですから当時の私(31歳)はSFにほとんど興味なかったので目に入らなかったんだろうなぁ...。

晩年に書かれたSF短編15篇+生前SF雑誌(主にアシモフズ誌)やアンソロジーなどに掲載されたSF小説関連のエッセイを多数収録という構成です。

本書でアシモフの邦訳・出版されている短編集はほぼ制覇です。
(長編は「ミクロの決死圏2」と既読ですが最近読んでいない(=感想を書いていない)「永遠の終わり」を読めば完読)
あとはロボットもの短編を集めた「コンプリートロボット」のみで、同書の他短編集未収録作品は5作のみなのでこれを読めば「短編集として出版」されたものは一応制覇です。
(あと邦訳されたもので雑誌に掲載されただけ、アンソロジーのみ収載の作品をどうするかです...)

終わりが見えてきたのでなにやら感慨深いです。
SF全部読んでもアシモフの多彩な著作活動からすれば一部でしかないのですが...。

内容紹介(裏表紙記載)
映像化不可能と思える内容の原作を、コンピュータを使っていかに立体映像化するか・・・・・・難問を与えられた演出家ウィラードの苦闘を描き、ヒューゴー賞を受賞した表題作、作家志望のロボットの奮闘をブラックなユーモアに包んで描きあげた名作「キャル」などのSF短篇に加え、巨匠みずから読者にSF小説作法を伝授する「SF作家になるためのヒント」ほか、エッセイの数々をあわせて収録した、アシモフ最後のSF作品集。


解説(評論家 高橋良平氏)にもありましたが、短編はよくも悪くも初期と晩年で変わらない....。
ただ晩年の作品の方が若いころ(第二次大戦前・戦中・戦後直後)に書かれたものより明らかに「功成り名を上げた作家アシモフ」としての余裕のようなものは感じられます。

また本書には作家アシモフ自身をモデルにしたような登場人物が数作ありますがそのような作品も「大SF作家アシモフ」でなければ一般化されない作品でしょうね。

でもまぁ「そのような存在」アシモフも含めて作品としてしまう「ミスターSF」ぶりがアシモフの魅力なんでしょう。
そういう意味でもエッセイ含めとても楽しめました。

-各編紹介と感想-
第一部 最後の物語 (The Final Stories)
・キャル Cal 1990
 ロボットのキャルは作家になりたく、作家である主人はキャルを改造しどんどん進歩しやがて...。

 解説に自宅で過ごした最後の週に「なりたい・・・・・なりたい・・・・・」「わたしは---アイザック・アシモフになりたい!」といっていたり、体調を崩してから「身体をハーネスで固定してタイプライターの上に突っ伏し、鼻を二つのキーのあいだに突っ込んで死ぬというのが未来の夢」といっていたというアシモフの「作家」に対する執念が垣間見える作品です。
 作家としての執念は三原則をも超える...キャルに託したものは(陳腐ですが)著者自身なんでしょうね。
 作家としての執念を感じる作品ですが、キャルの主人の「作家」も著者の一面の分身なんでしょうからその辺のユーモア感覚もアシモフらしいです。
 なお作中作の「完璧に正式」はジョージとアザゼルシリーズの番外編となります。
 これはこれで楽しめます。

・左から右 Left to Right 1987.1
 ショート・ショートです、そこを通せばなにかが置き換わる装置の実験のため自ら装置を通るが...。

 大量の反物質を得られれば恒星間旅行が可能になるという大仰さと、得られたもののアンバランスを楽しむ作品です。
 タイトルからL⇒Rかと思いきやなところもニヤリとさせられます。

・フラストレーション Frustration 1991
 これもショート・ショート、コンピューターのプログラマーに外務大臣が訪れ「正義のわが国に完璧な勝利を」もたらそうとするため最小限の戦争を起こそうとするが...。

 「ひとりよがりな正義感」そうですね...アシモフのような客観的でありたいタイプは「戦争」についてはそこに原因があると思うでしょうね...。
 実は私もそういうノンポリなタイプです。
 実際にいろいろ譲れない場面は「あるんだろうなー」とは思いますが....難しいですね。

・幻覚 Hallucination 1985.2
 サム・チョイスはエネルギー惑星に派遣され重大なプロジェクトに関わることになるが....ドームの外でみたものは....。

 少年が主人公という意味ではジュブナイルです。
 自分の信念を信じて異星の人類とは異質な集団知性を救う活躍を単純に楽しむこともできますが、その「信念」がコンピューターのチョイスに寄っているという怪しさ。
 ラストの「信仰は山をも動かす」にも表れていますが...判断は読者にゆだねられているんでしょかね。

・不安定性 The Instability 1989.1
 ショート・ショート、ユニバースのごく小さな部分を静止状態にして2,750万年後の太陽系の位置にある赤色矮星を観測に行った二人が帰ってみると....。

 まぁ...安直と言えば安直ですが...。科学知識の啓蒙にはいいのかもと。

・アレクサンダー神王 Alexander the God 初出本書
 アレクサンダー・ホプキンスはコンピューターメモリに興味を持ちブケパロスと名付けたコンピューターを通じ世界を所有しようとするが...。

 コンピューターを使っての世界征服がそう簡単にいくとも思えないのですが...。まぁ寓話としてはありかとも。

・谷のなか In the Canyon 1990.7
 火星のヴァレス・マリネリスに住むことになった女性の友人への手紙。

 本作の意味づけがいまいち理解できなかったのですが...。
 初出が「オムニ」なのでなにか火星特集かなにかあってそれに関連しての話でしょうか?

・さよなら、地球 Good-bye to Earth 1989.1
 21世紀後半の宇宙セトルメント(ステーション)に住む若者から地球人への手紙。

 「ネメシス」の世界観、ファウンデーションとアシモフ未来史の前史としての宇宙ステーションと地球の位置関係についての一考察いうところでしょうか。

・たたかいの歌 Battle-Hymn 初出本書
 ショート・ショート、火星でのハイパースペース実験を通そうと、投票を有利に働かせるためにある歌を活用することを思いつき。

 前提は結構まじめなんですが...アシモフお得意のの駄ジャレオチです。
 実際の政治もこんなに単純ならいいんですけどねぇ。

・フェグフートと法廷 Feghoot and the Courts 1986
 ショート・ショート、惑星ロックマニアには大型ウォンバットそっくりの知的存在が居住し、アメリカ式の法制度を採用していた。フェグフートは地球連合よりその成果を研究するため派遣されるが...。

 これまた駄ジャレオチです。
 大型ウォンバットそっくりの生物が真剣にこんな議論していると思うとなんだかかわいらしいです。
 これまた実際の法廷も「こんなもんだ」ということでしょうか?

・許しがたい過失 Fault-Intolerant 1990.5
 アメリカでもっとも多作な作家「わたし」アブラム・イワノフはタイプをやめワープロを導入し悪戦苦闘したワープロ体験日記を書くが...。

 あきらかに自分(=アシモフ)を主人公とした作品。
 ありがちといえばありがちですが、ワープロの進歩に戸惑うアシモフがかわいらしいです。

・おとうと Kid Brother 1990.12
 息子チャーリーの友達としてロボット”キッド”を購入した家族の父親の刑事への陳述は...。

 ロボットものです。
 母親の「愛」とはこんなものなんでしょうかねぇ?怖い話です。

・宇宙の愛国者-現代の寓話 The Nations in Space 初出本書
 地球のグラドヴィアとサローニンの両国は数世紀にわたり敵対関係にあった。
 2080年現在地球は宇宙の太陽発電ステーションからのエネルギーに依存していたがあるときその制御をしているサローニン人のミスをグラドヴィア人がみつけ...。

 まぁそういうことなんでしょうが...。
 「フラストレーション」同様、実際にはここまで単純に理想主義的なことにはならないような...。

・チッパーの微笑 The Smile of the Chipper 1988.10
 チッパーと呼ばれるマイクロチップを神経系に付加し、10年間は素晴らしい能力を発揮しビジネスシーンの花形となっていた人々は今は規制されていた。ある世界的企業の会長がチッパーを採用しようとしたとき二人で競わせた話を語り...。

 「EXPO’87」の「産業将校」的設定ですが、内容は軽いコメディとなります。
 パーツが同じでも料理の仕方でずいぶん変わるなぁという感想。

・ゴールド―黄金 Gold 1991.9
 ウィラードはコンピュ・ドラマの監督(指揮者)、渾身の演出をしたリア王で人気を博していた。
 ある日SF作家のグレゴリー・レイバリアンから映像化困難な著作のコンピュドラマ化を依頼され...。
 ヒューゴー賞受賞。

 これまたSF作家はアシモフがモデル。
 作中、コンピュドラマ化される作品は「神々自身」の第二部、「創作」に正面から取り組んだ作品。
 創作は「ゴールド」より尊い...、ありがちといえばありがちではありますが出来はいいとは思いました。
 が、ヒューゴー賞を取れたのは本作の裏に「アシモフ」の名前があったからだとは思います...ただそれも含めて作品であるのは事実なんでしょうけども。

冒頭にも書きましたが....どれも良くも悪くも「アシモフらしい」短編です。
収載作品の中でどれが良かったかというと、禁じ手とは思いながらも、「アシモフ自身」をモデルとした「キャル」「許しがたい過失」「ゴールド-黄金」でしょうかねぇ。
晩年ならではの作品ですし。

アシモフが存命中に発刊されていれば恒例のアシモフ本人による作品紹介も読めたかと思うと残念です....。

第二部・第三部はエッセイです。
タイトルと印象に残った内容のみ書いておきます。

第二部 サイエンス・フィクションについて (On Science Fiction)
・最長の航海 The Longest Voyage
・世界の創造 Inventing the Universe
・空飛ぶ円盤とSF Flying Saucers and Science Fiction
・侵略 Invasion
・SFの吹き矢 The Science Fiction Blowgun
・ロボット年代記 The Robot Chronicles

 アシモフ自身のロボットもので重要な作品を列挙しています。
 一番好きな作品は「最後の質問」(「停滞空間」収載、「バイセンテニアル・マン」(「聖者の行進」収載)は3番目とのこと。
 なお2番目はロボットものでない「停滞空間」。
・来るべき黄金時代 Golden Age Ahead
・人類だけの銀河 The All-Human Galaxy

 キャンベルとの暗闘との結果ファウンデーションでの「人類だけの銀河」が生まれたことを語っています。
・心理歴史学 Psychohistory
・SFにおけるシリーズもの Science Fiction Series

 様々なシリーズものを語っています。ファンタジーでの最大の成功はトルーキンの「指輪物語」
・生存者 Survivors
・どこにもない!
・アウトサイダー、インサイダー
・SFのアンソロジー Science Fiction Anthologies
・SFの影響力 The Influence of Science Fiction
・女性とSF Women and Science Fiction
・宗教とSF Religion and Science Fiction
・時間旅行 Time-Travel

 "まっとうなSF作家は科学的に不可能なことを作品から排除すべきだ。"としながらも、"どうしても使いたくなってしまう装置”として「時間旅行」を上げています。
 そんなこともあるのかアシモフ、時間旅行ものは少ないですが何本か書いてます。
 名作 長編「永遠の終わり」、短編「停滞空間」もそうですね...。

第三部 SF小説作法 (On Writing Science Fiction)
・プロットについて Plotting
・隠喩 Metaphor
・アイディア Ideas
 アイディア出しの過程について自作「ネメシス」を基に解説。
・サスペンス Suspense

 善と悪の争いをめぐる危機の繰り返しの好例としてトルーキンの「指輪物語」を上げています。
 アシモフはこの時点で「指輪物語」を5回は読んでいるとのこと。
 「銀河帝国興亡史」は....。
・続きもの Serials
・この分野の名称 The Name of Our Field
・SF作家になるためのヒント Hints
・若者大歓迎 Writing for Young People

 アシモフのスタンス。
 「文章そのものは明快で、知的な子供たちなら支障なく読めるようにしたい」
 確かにそういう作家ですね。
・名前 Names
・オリジナリティとは Originality
・書評 Book Reviews
・作家の苦労 What Writers Go Through
・書きなおし Revisions
・皮肉 Irony
・盗作 Plagiarism

 "「記憶の隙間」(「変化の風」収載)を書いたときキイスの「アルジャーノンに花束を」からできるだけ離れるように全力を尽くした"と書いてます。
 なるほどです。
・象徴主義 Symbolism
 「指輪物語」が出てきます。
・予言 Prediction
・ベストセラー Best-Seller

 「ファウンデーションの彼方へ」が自身初のベストセラーになったことについて。
 (クラークの「2010年」に順位で抜かれたのを悔しがっているのがかわいい...)
・偽名 Pseudonyms
・会話 Dialog


「指輪物語」への言及が多いのが気になりました。
ファンタジー・SF系を読んでいるのに「指輪物語」を未読なのがとても気になりました....。
大学生のころ古本で全巻購入して読み始めたことはあるのですが...。
1冊目の途中で挫折しました。
「読まなきゃなぁ」とは思っているのですが...気合が必要そうなのでいつになることやら。

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ゲーム・プレイヤー イアン・M・バンクス著 浅倉久志訳 角川文庫

2018-05-02 | 海外SF
'12年ローカス誌オールタイムベストに戻りで本書を手に取りました。

本書は'12年ローカス誌オールタイムベスト63位、1988年発刊の作品です。
著者のイアン・M・バンクスは英国(スコットランド)出身、ミドルネーム「M」のつかないイアン・バンクス名義で主流文学作家としても作品を発表している作家とのことです。

日本では一般的人気が出なかったのか主流文学(ホラー調?)何作か翻訳がだされていますがいずれも絶版となっております。

「M」名義のSFの方も本作とフィアサム・エンジン(1994年)のみの邦訳(邦訳は著者名の「M」省いている...)でこれまた現在全部絶版となっています。

'12年ローカス誌オールタイムベストでは本作以外にバンクス作品として56位に"Use of Weapons”、84位に"Consider Phlebas”(前記2作本作と同じ<カルチャー>シリーズ)、ベスト100外ですが240位に”Excession”、同240位「フィアサム・エンジン」とランクインしており英米では人気な作家のようです。

そんなこんなもあるのか本書もとうの昔の絶版となっていますがamazonで古本プレミアがついて取引されています。
私は昨年3,000円台でamazonで入手したのですが、今ちらっとみたら10,000円ついていた...
すごい!!売っちゃおうかなぁ。

中身とほとんど関係のない松本零士のハーロックっぽい絵の表紙も一部では有名なようです。
ただこの絵のせいで売れ なかったのかもしれません...。

私もローカス誌オールタイムベストに沿って「読もう」と思わなければまぁほぼ絶対買わなかったし読まなかった作品でしょうねぇ....。

本作は<カルチャー>と呼ばれる、1万数千年先の遠未来に人類の生存圏が銀河系に広まり人類といくつかのエイリアン種族、自律型AIとがお互いの独立性を尊重しながら共存しあう宇宙文明圏を舞台にしている作品の2作目となります。

同シリーズ他作品が翻訳されていないのでわかりませんが...巻末の大森望氏の解説によると、作品それぞれ独立しているので個々で読んでも問題はないようです。

内容紹介(裏表紙記載)
高度な文明を持つ<カルチャー>---人類は病気になることも死ぬこともなく、ただひたすらゲームに興じている。グルゲーは<カルチャー>の軌道ステーションの一つで暮らしている「ゲームの達人」であり、あらゆるゲームに精通していた。ある日彼のものに、究極のゲーム≪アザド≫に挑戦してみないかという誘いが来る。悩んだ末ついに参加する決心をsたグルゲー。しかしこのゲームには一つの宇宙文明圏をも左右する大きな意味があったのだ・・・・・・。
天才的ストーリー・テラーによるスペースオペラの傑作。


読後の感想、全体的な流れはかなり単純かつシンプルなスペースオペラで、「ゲーム」を価値観の主体とする文明を築き、性差別やら階級差別のかなり露骨なアザド帝国と、現代の(一昔前の?)アメリカとも思える「価値観」を押し付ける「カルチャー」もしくはAIの「マインド」との軋轢が新鮮といえば新鮮ではありましたが...。

主人公グルゲーは「ゲームの達人」なわけですが、第一部でドローン(AI)のモフリン=スケルの仕掛けた単純な罠にあっけなくはまります。

なんともなさけなく、この辺読んでいてページがなかなか進みませんでした。
第二部以降アザド帝国へ旅立ち、とまどいながらもゲームに勝ち抜き、ゲームの天才として余裕しゃくしゃくだった皇帝の終盤での壊れ具合、ドローンフレール=イムサホーの狂言回し・道化師としてのタレント性はそれなりに楽しめました。
ただゲームの場面も読者側にはルールのよくわからないゲームでの対戦なので今一つ入り込めませんでした...。

アザド帝国の対戦者のキャラクターがそれなりに立っていたので基本そこ依存でしたね。

物質的に満たされ何の苦労もない中で「ゲーム」を「退屈だー」といいながらやっていたグルゲーと、帝国全体の運命自身のすべてをかけた帝国きっての天才ゲームプレイヤーかつ皇帝・ニコサールの戦いで、結局グルゲーが勝つというのが「社会の進歩」「民主主義」の勝利ということなのかもしれませんが...それもなんだかとても先進国目線で、頭ではわかるのですがなんだか切ないような....。

そのグルゲーもドローンに対すると全く子ども扱い、というのも本作のメッセージではあるのでしょうね。

その辺まで深読みして、対AIでは無力ながら「ゲーム」に熱中できる「人間」を描いていると見れば別の読み方もできるのかもしれませんが...。
その辺私には理解しきれなかったかなぁ。

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