しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

実家での本漁り(海外SF)

2013-12-30 | 海外SF
感想も3冊ほど溜まっているのですが....。(年内に書くのは無理だなぁ)

年末なので久々実家に帰りました。(2年ぶりくらい)
いろいろ「実家にあるはず」の本を漁ってみました。

めぼしいSF関係のものご紹介。
とりあえず海外SF

○アシモフ

もっとあると思っていたのですが
4冊しかありませんでした。

「聖者の行進」「火星人の方法」「はだかの大陽」「永遠の終わり」

少なくとも「宇宙の小石」はあると思っていたのですが....。
上記の4冊も今や絶版なので嬉しかったのですが、これしかないとなると他のアシモフ作品を集めるのは大変そうです。
けっこうプレミア出てるし。
「夜来たる」などamazonで調べたら最低中古価格1700円。

まぁ何を持っているかはっきりして良かったですが。

○フレドリック・ブラウン
長編SF4冊。

「発狂した宇宙」「火星人ゴーホーム」「天の光はすべて星」「73光年の妖怪」
これも「宇宙の一匹狼」があったはずなのですがなかった。
「天の光はすべて星」以外は絶版なはずなのでまぁ良しですが。

「発狂した宇宙」は昔かなり好きで何回も読んだ作品なので読むのが楽しみです。
(怖くもありますが)
他SFではないですがエド・ハンターシリーズなどミステリも一応持ってきました。
(いつ読むのか?)

○シマックの「都市」

これも好きで繰り返し読んだ作品です、有って良かった。

○「デューン砂の惑星」

12年ローカス社オールタイムベスト1位。
やっと手元に♪
映画をやっていたころに入手したものです。

○スタニスワフ・レム

買ってはいましたが読んでいませんでした。
まぁそのうち。

○「スラン」

これも気になっていた。
ベタですが名作ですよねぇ。

○「自動洗脳装置」

エリック・F・ラッセルも好きでした。
この本買ったのも忘れていました...。

○J.P.ホーガン

この二冊は面白かった記憶が...。
ホーガンは初期の方が面白かった気がします。

○天翔ける十字軍

豊田有恒訳というので入手した本。

豊田有恒と筒井康隆(初期)の作品は結構ありました。
好きだったんだなぁ...。
記憶があいまいですが。

なんだか有ると思っていた作品がなかったので1箱くらいどこかに行っている感じなのですが。
まぁ実家にあるのはこれだけだったという前提でSF読書を進めていきたいと思います。

年末に実家に帰り思い出に浸っている方も!大掃除でゆっくり読書できない方も。
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高い城の男 フィリップ・K・ディック著 浅倉久志訳 ハヤカワ文庫

2013-12-20 | 海外SF

ユービック」を読んでディックが気になり、本棚に眠っていた本書が目につき手に取りました。

12年ローカス誌オールタイムベスト22位、1962年発刊。
ローカス誌のランキングではディック作品での最上位となっていますし、ディック唯一のヒューゴー賞受賞作品です。

手持ちのもの昭和59年7月発行の初版です。
私が中三のとき購入ですね。

帯を見ると。(珍しく残っていた)

その頃ちょうど新訳が出たんですね。
ディック唯一のヒューゴー賞受賞作品ですしSFというカテゴリーで見ると、帯にもあるとおりディックの最高傑作といえるかもしれませんね。

本書、当時から有名作でしたがこの新訳版が出るまで入手困難な作品でした。
そのため本屋で見つけたときとてもうれしかった記憶があります。
(前にも書きましたが、間違って同じハヤカワから出ている「高い砦」を買ったりしていた...。)

もっとも当時の私はこの作品の「第二次世界大戦で日本とドイツが勝った世界」という設定に興味をもっていただけでディックが何者かは全然知りませんでした。

歴史ものに興味を持っていた時期で、SFだと「モンゴルの残光」やら「タイム・パトロール」とか「闇よ落ちるなかれ」など、ミステリだと「時の娘」や高木彬光の「成吉思汗の秘密」などを読んで喜んでた記憶があります。

対して本作は今回読んで思いましたが、「歴史」「改変」テーマが主題ではない感じです。
(ディック作品らしい?)

内容(裏表紙記載)
アメリカ美術工芸品商会を経営するロバート・チルダンは、通商代表部の田上信輔に平身低頭しながら商品を説明していた。 すべては1947年、第二次世界大戦が枢軸国側の勝利に終わった時から変わったのだ。 ここサンフランシスコはアメリカ太平洋岸連邦の一都市として日本の勢力下にある。 戦後15年、世界はいまだに日本とドイツの二大国家に支配されていたのだった!―――第二次世界大戦の勝敗が逆転した世界を舞台に現実と虚構との間の微妙なバランスを、緻密な構成と迫真の筆致で見事に描きあげ、1963年度ヒューゴー賞最優秀長編賞を受賞した、鬼才ディックの最高傑作、遂に登場!

というわけで、昔1回は読んだはずなのですが、見事に内容を覚えていませんでした。
感想すら記憶にないので、中学の時の私はまぁ表面だけを流して読んでいたのでしょうね。

本作をパラレルワールド的なエンターテインメント小説(「プロテウスオペレーション」とか)と捉えるとなんとも「食い足りない」という感想になるかと思います。

歴史が改変されていること自体の状況設定は現実感がなく、その辺突っ込むならいくらでも突っ込めそうです。(日本人やら、ドイツ支配下の地域状況とか)
まぁでもそこはディック、現実感のない世界での人間を追いかけるのが得意なんでしょうね。

ただ「現実感のなさ」ぶりは「ユービック」の方が上で、未整理で冗長な感じも受けました。
主人公もはっきりしない群像型のお話でもありますし。

解説には「ディックの作品としては心理描写など丁寧に書き込んでじっくり仕上げている」という評価もあるようで好みの問題かもしれません。

あと作中頻繁に出てくる、「易経」というか「易」と「道(タオ)」を説く日本人像などは鼻につく人もいるかとと思いますが、気にしなければまぁ流せると思います。(私は)

というと悪口をいっているようですが、場面場面とても印象深い作品ではありました。

「ユービック」同様、感想が書きづらいですが、本作の軸の一本は人間の「成長」「尊厳」じゃないかなぁなどと感じました。

本作の主要登場人物、美術商のチルダン、通商代表部 田上、職人のフランク、その元妻ジュリアナ、スパイのバイネスは作中でそれぞれ事件に巻き込まれ、それに立ち向かう中で自分の立ち位置の再確認と自身の「尊厳」の再確認を迫られます。

結果として自己を確立していく。(成長...ともいえるような)

タイトルの「高い城の男」は、「第二次世界大戦で連合国側が勝った」設定の小説を書いた男で、主要登場人物は皆その小説を読みなんらかの影響を受けるのですが最後まで登場しません。
その小説によりドイツ政府に睨まれ、襲撃を恐れていて「高い城」と呼ばれる完全防備の家に住んでいるという噂の思わせぶりな男ということで、期待感たっぷりに登場するのですが...。

ネタバレになると思いますが、.。

登場した「高い城の男」は「高い城」に住んでおらず、ホームパーティを平気で開催しているる思いっきり普通の人として描かれています。

著作も実は「易」で占ったものをそのまま書いただけというのも明らかになり...。

苦難を超え「尊厳」を確立した登場人物と、「現実とはなにか?」というのがぐらりとしている状況がなんとも....。

味わい深いです。

なお解説でディックも本作を書くのに一部「易」を立てて先を決めたと言っているとの商会がありました、う~ん。

他、「ユービック」でディックの書く女性が魅力的と書きましたが本作でもその才能は発揮されています。
ということでちょっと紹介。

主要登場人物であるジュリアナについて
元夫フランクの回想シーン
「彼が結婚した最高の美人。真黒な眉と髪の毛。微量に混じったスペイン系の血が純粋な色彩として、唇にまでいきわたっている。ゴムのような、音のしない歩き方。」
「黒い髪と白い肌、憂いを含んだ激しいまなざし・・・・・・ちょっときつめのグレーのセーターを着てあらわな胸にかかった銀のネックレス、それが息づかいに合わせて上下に動く・・・・・・。」

美術商チルダンが梶浦夫人と会っての印象。
「このほっそりとした体。日本女性のスタイルはまったくすばらしい。ぶよぶよした贅肉ってやつがない。ブラジャーもガードルもいらない」
「浅黒くきめの細かい肌、黒い髪、黒い瞳。これに比べたらわれわれ白人は生焼けだ」

いやいや人種関係なくすばらしい筆力です。(笑)

「日本人女性って魅力的だよなぁ」などと改めて感心してしまいました。


どんな状況でも成長するぞ!というあなた、やっぱり日本女性が...というあなた。
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一角獣・多角獣 シオドア・スタージョン著 小笠原豊樹訳 早川書房 異色作家短編集3

2013-12-16 | 海外SF
「スポンサーから一言」を読んで、「SF短編面白いなぁ」との思いが出て本書を手に取りました。

本書の作品のうちの何篇かが星新一の「きまぐれ星のメモ」に紹介されていたのと、ヴォネガットの創作人物であるSF作家「キルゴア・トラウト」(「ロースウォーターサンあなたに神のお恵みを」が初出)のモデルがスタージョンである(トラウト=ます、スタージョン=チョウザメ)というような話も知り、なんだかとても欲しくなり3~4ケ月前にamazonで購入しました。(新品です!)


本書、早川の異色作家短編集の一冊として刊行されていますが、2005年に再刊されるまでは「幻の本」ということになっていて高値で取引されていたようです。

異色作家短編集のシリーズ、星新一訳のフレドリック・ブラウンの「さぁ気違いになりなさい」などもあり他も気になりますね。

スタージョンの作品は長編2作「人間以上」「夢見る宝石」を読んでいますが、短編は初めてです。
上記二作の評価もかなり高いのですが、「短編」の方がいいという評価もあるようですね。
「きまぐれ星のメモ」を初めて読んだのは小学生頃なので思えばかなり長い間存在を知りながら読んでいなかったんですねぇ....。

内容紹介(早川書房HPより
獣が微笑み、人外が嗤う ページを開けば 異形博物館の開館時間
伝説の珍獣をめぐる皮肉な物語「一角獣の泉」や、代表作「めぐりあい」など、異色中の異色作家、スタージョンの傑作10篇を収録。著者の魅力を集約した最高の短篇集、読者の熱望に応えここに復活

全体的感想、スタージョン的とでもいえばいいんでしょうか?なんだか不思議で印象に残る作品群です。
スタージョン=チョウザメにちなんで「キャビアの味」などと評する人もいるようですがわかるような気がします。

各編簡単に内容紹介と感想など。

○一角獣の泉
二人の少女と一人の男と一角獣の話。

陳腐で少女趣味な作品ともいえると思いますが、最初の部分がなんとも怖いお話です。
出来はいまいちと思いますが、味わい深い作品。

○熊人形
熊人形とともに少年が見ていたものは....。

「気まぐれ星のメモ」でテディ・ベアのとことで紹介されていた作品ですね。
夢とも現実ともつかず、時間や登場人物の関係性もなんとも微妙な感じでシャッフルされている、怖い作品です。
なんとも割り切れない読後感を抱く作品です。

○ビアンカの手
ビアンカの手に魅せられた男の運命は...。

この作品も「気まぐれ星のメモ」で紹介されていました。
「怖い」と思うほど共感できませんでしたが、なんとも不思議な味わいの作品ですね。
「よくこんなこと考え付くなー」と思います。

○孤独の円盤
円盤の声を聞いた女性に訪れたのは....。

アイディアも展開も陳腐といえば陳腐なんですが、なんだか霧の中に佇むようね状景が浮かび自分もそのなかにいるような気分になってしまう。
そういう作品です。

○めぐりあい
理想の女性とめぐりあった男性の想いはどこに??

これも「夢オチ」的な展開で、男性の最初の回想部分やらも陳腐といえば陳腐なのですがなんだか不思議な読後感でした。

○ふわふわちゃん
ネコのふふわちゃんは女主人とそこに来ている男に対し...。

「ネコ」という種族はもしかしたらこういう存在なのかなぁと思わせる作品
女性もそれに近いんだろうなぁ(男目線ですが...。)

○反対側のセックス
シャムの双子の殺害死体を検分していた男と女性新聞記者は....。

この作品中もっともSFっぽい作品ですね。
「不思議」度は一番少ない作品でした。
普通に面白かった。

○死ね、名演奏家、死ね
???楽団で口上を務める???は団長の???を殺害し...。

「サスペンス」という感じでしょうか?
主人公の気持ちがなんとなくわかるかなーという所。
丁寧に心理描写されていて、スタージョン巧いなぁと思わせる作品です。

○監房ともだち
新入り囚人は実は...。

怪談風なお話。
これも陳腐といえば陳腐な気もするのですが、不思議な読後感があります。

○考え方
他人とは違った考え方をする男の復讐とは?

「考え方」の問題とヴードゥーの魔術を組み合わせたところがアイディアといえばアイディアですが、陳腐といえば陳腐。
結末、初読で理解できませんでしたがよく考えたらわかりました。
そういう意味では考えオチ的な作品です。
イスを人に投げつけるのではなく、人をイスに投げつける...ですね。


全体的に「アイディアが陳腐」と書いた作品が多いですが、読んでいるときにはどこかで読んだような感じがして「傑作」とは思えないのですがが...。
なんだか不思議な感じではあり、読後とても印象に残りました。

短編集を読んだ後に各編の感想を書くときにタイトルだけで内容を思い出せない作品が必ず何作か出てきます。
でも本書の収録作品は全て覚えていました。
読んでからもう3週間くらい経っているのですが、まだ鮮やかに情景が浮かびます。

なんだか不思議です。

そんなわけでどの作品がとくに良かったかのを特定するのは難しいですが、好きなのは「熊人形」と「名演奏家死ね!」でしょうか。
「熊人形」はひたすら理不尽、「名演奏家死ね!」は割と形至下での人間の情念を書いているますが、どこかでつながっているような気がします。
人間の意識にはなにか不思議なものが存在していて「時々噴出するんだろうなぁ」というような気分になりました。

スタージョンの短編集は河出文庫で出ているものを2冊入手しているのでそのうち読みたいなぁと思っていますが、次々読む感じではなくどこかでまたじっくり読みたいですね。


異色なあなた!何やら情念が渦巻いているのを感じるあなたも!
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ユービック フィリップ・K・ディック著 浅倉久志訳 ハヤカワ文庫

2013-12-12 | 海外SF
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」以来のディック作品です。

本作‘12年ローカス社長編オールタイムベスト44位、’06年SFマガジン海外長編13位とSFとしての評価も高いですが、タイム社の英語小説ベスト100(1923-2005年)にも選出され「文学作品」としても評価されている作品です。

「文学的」ということでディックの評価はSFファンダム以外でもかなり高いようですね。

ブックオフで春先に購入(川崎だったような...)450円。

内容(裏表紙記載)
1992年、予知能力者狩りをおこなうべく、ジョー・チップら反予知能力者が月面に結集した。 だが予知能力者側の爆弾で、メンバーの半数が失われる。 これを契機に、恐るべき時間退行現象が地球にもたらされた。 あらゆるものが退化していく世界で、それを矯正する特効薬は唯一ユービックのみ。その存在をチップに教えたのは死の瞬間を引き延ばされている半死者エラだった・・・・・・鬼才ディックがサスペンスフルに描いた傑作長編。

とりあえず上記の内容紹介についてですが、ひどい...(ような気がする)。
内容をまったく正確に伝えていないうえにオチに近い情報を明かしている。
どこをどうすればこんな内容紹介になるんだろう?とても不思議です。

書き直すとすれば…難しいのでやめておきます。
内容紹介ですらなにやらピントがずれてしまうこの現実感の希薄さ、本作の特質を表しているかもしれません。(笑)

まずは読後の感想「とてもよくできている作品」

「空想未来社会の中で、ハイパー現実的な事件が起き、現実が崩れていくような不思議なことが起きつづけ主人公が悪戦苦闘する。」というパターンは「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」と同様です。
「アンドロイド...」は1968年発刊ですが本作は1969年発刊。
一年しか違いませんが、本作の方が話がまとまっていて、「謎」が気になりながらの展開で、物語の世界に引きずり込まれていきます。
オチもきれいに決まっている。

時代がどんなに退行してもお金を要求し続けるマンションのドアなど小ネタも効いていて飽きずに読み進められます。

ただあまりに「うまくまとまりすぎているかなぁ?」という気もして、「さらっ」と呼んでしまい読後感もさらっとした感じです。
私的には「アンドロイド...」のぐちゃぐちゃな展開の方が好きかなぁ。

かなり緻密な構成で、よく読めばいろいろなメッセージが読み取れるのでしょうが私程度の読書力では「面白い小説」という程度の読後感になってしまいました。

一応、深刻なテーマをひねり出せば「生きているとは?」「死んでいるとは?」「現実とは?」の境界線は云々になるんでしょうが...、その辺あまり真剣に考える気には「私は」なれませんでした。

印象に一番残った場面は終盤で主人公がやっとのことで階段を上るのをアンチ(?)エスパー美少女 パットが眺めている場面とその直後のパットの運命。
なにやら諸行無常です。

場面場面を楽しむ小説なのかもしれませんね。

上記否定的な見解のようですが、ディックの作品世界は評価が高いだけあってなんだか気になるものがありますね。
なんだかひっかかる作風です。

他の作品も読みたいなーとは思わされました。

他、感想としては
ディック、女性を魅力的に描写するのとてもがうまいですね。
「アンドロイド...」でもアンドロイド女性がかなり魅力的に描かれていましたが、本作でも魅力的に書いています。
アンチエスパー、パットの登場場面「十七より上にはとても見えない。ほっそりとした体つき、銅色の肌、大きな黒い瞳。驚いたすごい美人だ、と彼は思った」
ウェンディの登場場面「ウェンディ・ライトが、ほかの人間とおなじように、血と体内器官の中から生まれたとは、とても思えなかった。」
ありきたりなような、でないような、なんともうまい気がします。
才能ですね。

あとパットの「過去改変能力」、読んでいるときはなんだかわかりにくい能力な気がしましたが、ブログの過去記事の誤字脱字など直していたら「あ~こういうことか」と納得できました。
過去の書き換えは太古の昔から人間の得意技なのかもしれません。

ぱっと入っていきにくい話ですがいろいろ示唆に富む作品と言えるかもしれませんね。


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スポンサーから一言 フレドリック・ブラウン著 中村保男訳 創元推理文庫

2013-12-09 | 海外SF
漱石の後は、SFに戻ろうとフィリップ・K・ディックの「ユービック」を読みだしたのですが、途中で出張先に上着ごと忘れてきてしまいました。(戻ってはきた)

しかたがないので出張先のブックオフで450円で買った本書を手に取りました。
短編集なので途中で止められるというのも読みだした動機です。

前にも書きましたがブラウンのSF短編集は中学生の頃一通り読んだので実家に帰ればあるはずなのですが、ブックオフで見かけるとついつい買ってしまいます。

昔の版の方が表紙は凝っているんですが...まぁ贅沢はいえないですね。

この稿書きながらネットでいろいろ調べていたら、ディックはかなりブラウンを評価していたようですね(元ネタwiipedia)奇遇です。

内容(裏表紙記載)
SFショートショートを書かせては右に出る者のない、当代一の鬼才ブラウンの傑作集。彼が一言呪文を唱えるや、悪魔は地獄の門を開いて読者にウィンクし、宇宙船は未来の空を航行しはじめる。 この現代の魔術師の導きで、あなたも200万光年の彼方からやってきた宇宙人と冒険旅行を、そして悪魔と一緒に地獄のランデブーを!

1958年の発刊です。

とりあえずの感想「おもしろい」
一気に読んでしましました。

やはりブラウンは才人ですねぇ、古びない。
(すげぇ!とも思わないのですが)

暫くSF短編から遠のいていましたが、堪能できました。
「職人芸」というのか、とにかく楽しめます。
全編読んでいるはずなのですがショート・ショート以外は全然覚えていませんでした,,,.


各編簡単に紹介と感想など

○「ヴードゥーの魔術」
ショート・ショート、離婚話をしている妻は魔術を使い夫を…。

途中でオチが想像できちょっと興ざめではありました

○「歩哨」
ショート・ショート、外宇宙人の敵は実は...。

これもまぁありがちなオチです。

○「最初のタイムマシン」
ショート・ショート、最初のタイムマシンの完成を三人の友人が見つめていたが...。

広瀬正の「タイムマシンの作り方」で紹介されていて何回も読んでいて新鮮味はなかったです。
後に出てくる「実験」と同様、タイムパラドックスものの古典的ショート・ショートですね。
とてもスマートな作品だとは思いました。

○「あたりまえ」
ショート・ショート、幾何の苦手な学生が悪魔を呼び出したが...。

「まぁそういうこともあるよねぇ」という気はしましたがそれほど感心はしませんでした。

○「実験」
ショート・ショート、タイムマシン第一号での実験はどうなる?

上記「最初のタイムマシン」とほぼ同感想ですが、こちらの方が豪快なオチです。
「最初のタイムマシン」と併せて読むのがいいような気がします。

○「血」
ショート・ショート、タイムマシンに乗った吸血鬼族が遠い未来の地球では...。

まぁお遊びですね、

○「至福千年紀(ミレニアム)」
ショート・ショート、冥府でサタンの前に出た小男の願い事は...。

「だからどうしたの?」という感じではあります。

○「効きすぎ」
ショート・ショート、人狼ならぬ人鹿のウィルキンソンは動物園で...。

面白いとは思えませんでしたが、ブラウンらしいシャレた作品だとは思いました。

○「立ち入るな」
ちょっと長いショート・ショート、火星の環境に適応された人間の子どもたちは...。

前記の「歩哨」とテーマ的に似ているような気がします。
こういう視点の転換、ブラウンは結構好きなんでしょうね。

○「武器」
ちょっと長いショート・ショート、究極兵器開発者の息子に男が手渡したものは...。

啓蒙的すぎて少し重い気がします。

○「選ばれた男」
長いこと酔い続けていた男が重要な役割を果たすことに...。

酔っ払いものもブラウン結構好きなんでしょうね、「宇宙をぼくの手の上に」収載の「狂った星座」に出てくる博士もいい感じで酔っぱらっていましたし...。
酔っ払いもの×視点の転換 というパターン。
軽くてしゃれた仕上がりだと思いました。

○「ドーム」
三十年間ドームに入り続けた男が見たものは...。

これも視点の転換ですが、状況のひどさ具合がツボにはまりました。
軽妙でいい作品だと思いました。

○「鏡の間」
突然見知らぬ場所に出てきた男は実は...。

ある意味タイムマシンものなのですが「こう使うんだー」ととても感心しました。
ブラウンが「鬼才」と呼ばれるのもわかるような気のするアイディアのぶっ飛び具合です。

○「地獄の蜜月旅行」
突然全世界で男の子が生まれなくなり、原因調査のために月に男女を派遣...。

アシモフが書きそうなアイディアをハインライン的主人公が演じている感じですね。
発刊年からするとわざとまねて、パロディ化しているのかもしれませんね。
ブラウンはこの二人の両方の特質+軽やかさ+諧謔性を持っているような気がします。
冷戦時代を背景にしているのでメッセージは陳腐ですし、アイディアもまぁありがちですが主人公の性格設定と、場面の転換具合が絶妙です。
「うまいなー」と思いました。

○「最後の火星人」
「火星から来た」と言う男が酒場に現れ新聞記者が話を聞きに行き...。

ブラウンにはありがちなアイディアな気がしました。
「かくて神々は笑いき」と「鼠」も同系統かなぁ。
悪くはないのですがひねりが足りない気がしました。

○「鼠」
葉巻型宇宙船の中から出て来たのは鼠そっくりな動物の死体、実は...。

「最後の火星人」と同様ブラウンにありがちといえばありがちな気が。
長編「73光年の妖怪」につながるアイディアのようにも感じました。
もうちょっと長く書くと不気味な感じが良く出たかもしれません。

○「闘技場」
異星人との戦いのさなか気が付くと青いドームに一人...。

SFの名作として名高い作品です。
名短編の例としてよく紹介されているので私ごとき浅いSFファンでも残念ながら新鮮味を感じられませんでした...。
この作品の設定を使っていろいろ作品が書かれていたりするらしいです。
アイディアはともかく、徹底的にクールな描写が印象に残りました。

○「かくて神々は笑いき」
小惑星牽引船でのほら話は...。

ハイペリオン」の司教の話はこの作品が元ネタなんじゃないでしょうか。
SFホラーという感じですが、最初「コメディかな?」という感じですので、何とも不気味な感じを受けます。
前述の「最後の火星人」よりもかなり出来は上ですね。

○「スポンサーから一言」
全世界での1954年6月9日 午後8時半にラジオから一斉に流れ出した言葉は「戦え!」...。

ラジオと冷戦時代の状況が時代に合わなくなっているとは思いました。
またテーマ性が出過ぎていて浅くも感じました。

○「翼のざわめき」
迷信を信じない男はある賭けをするが。

幻想小説仕立てブラウンが「幻想小説も書けるんだぜ」という感じで書いたような印象を受けました。
「すごい」とは思いませんでしたが「うまい」の一言が出ました。

○「想像」
「詩」です。

最初の方のショート・ショートは正直「???」な気もしましたが、どの作品もなんだか「うまいなー」と感じさせます。

今回「鏡の間」「かくて神々は笑いき」の二編にとても感心しましたが、「ドーム」以降の作品はどれもなかなかの出来です。

SF短編の楽しさを感じられる作品集だと思います。

↓SF短編好きのあなた、一言いいたいあなたも。
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