「本が好き」献本で頂いた本です。
著者のタニス・リー女史は不勉強でまったく知りませんでしたが「ダーク・ファンタジーの女王」としてファンタジーの世界では有名な作家のようですね。
ファンタジーには疎いのですが興味はあったので「読んでみたいなー」ということで応募して頂戴しました。
本作はパリをモデルにした実在しない都「パラディス」を舞台にした「パラディスの秘録シリーズ4部作」の第3作目、1991年発刊。(作者は英国人です)
第1作「幻獣の書」第2作「堕ちたる者の書」は浅羽莢子氏訳で角川ホラー文庫から出ていたようですが現在絶版の模様です。
創元からは本書に続き、第4作「狂った者の書」も出版されています。
前述の通りタニス・リー初読の私は第1作、第2作をもちろん読んでいませんが本書とは直接つながっている話ではないようで、その辺は問題なく読めました。
内容(裏表紙記載)
パラディスは生者の、半生者の、蘇生者の、死なざる者の都であると同時に、死者の都でもあるのです。婚礼の新床で花嫁が夫の手で殺された。夫が死ぬまで隠し通したその理由とは。(「鼬の花嫁」)周囲の人間が次々と衰弱し死に至るという、不吉な噂が囁かれる女性の正体は。(「美しき淑女」)退廃と背徳の都パラディスに眠る死者の物語8編を収録。闇の女王タニス・リーの傑作短編集。
内容紹介を見ると死者やらなにやらが大暴れしそうな感じですが...。
「実在しない都」を設定しなくても成り立ちそうな抑えめの話です。
とりあえずの読了後の感想「ダーク・ファンタジーの女王」かつ帯にも「闇の女王」と書いてある作者ですので、もっとオドロオドドロしい作品を想像(期待?)していたのですが…。
「それほどではないかなー」という感想で「心の闇」的なものから「妖しげ」な世界へ動いていく途中を垣間見る感じで「見るのも怖い」というダーク感ではなかったですね。
また、短編だからかもじれませんが、割と1アイディアで書いているような…。
この著者の他の作品を読んでいないのでかなり無責任ですが長編向きの作家なのかもしれませんね。
あと感性が「女性的」と感じ、その辺で今一つ作品に入って行けない部分もありました。
例えば男性の性欲やら性描写の描き方には違和感を感じました。
割と直接的表現が多かったように感じましたが、男は主観的にはもうちょっとロマンチックだったりします。(女性から見るとこんな感じなのかもしれませんが….。)
男が女性向けレディス・コミックを読んだような違和感ですね。
でも逆にいえば本書の作品では女性が主人公の作品の方が男性には理解しえない「女」の世界を垣間見るようで興味深くもありました。
ということで各編感想など。
1.鼬の花嫁
内容は裏表紙で紹介。
最後に明らかにされた「事実」はある意味ユーモラスで、作中でもそんな暗示もあり、それほど怖く感じられず、どうも「???」感がありました。
冒頭枕で出て来た鼬の話の方が不気味でした。
婚礼初夜で妻を殺してしまうのでなく、この状況で「あえて」長く暮らしていた方が男性心理的には納得感のある不気味さのような…。
2.悪夢の物語
復讐を意志づけられ育ったジャンは復讐のため植民地の島に渡るが…。
悪夢のような独特な雰因気を楽しめましたが...。
若干の「だからどうした?」感を受けました。
3.美しき淑女
裏表紙で紹介。
「淑女」のキャラ設定が絶妙ですね、この作品の主人公の男性の最後の行動もわかる気がしました。
オチ(謎解き?)も「なるほどねー」で楽しめました。
まとまりのいい作品ですね。
4.モルカラの部屋
旅人が訪れた古い屋敷で、壮絶な死を遂げたモルカラの部屋にまつわる話を聞いて...。
「妖しげな」ことがありそうで「ない」というお話。
「怪しげ」な話が3話続きこの後4話続くわけですが、本作は中休み的位置づけになるのでしょうか?
「妖しげ」なことは誰にでも起こるわけではないが「死は誰にでも訪れる」というようなことを言っていたりします。
情念に正直に生きた女性「モルカラ」には怪しげな死が訪れるが、中途半端に生きているものにも(は?)普通の死が(しか?)訪れるということ???。
5.大理石の網目
パーティで奇術師に「恋された女性」は月夜の晩に....。
ヒロインの微妙にぱっとしない感と奇術師のぱっとしない感の描き方が絶妙でした。
この作者、「ぱっとしない」女性のさりげない「個性」を描くのがとてもうまいですね。
最初にヒロインの運命を明らかにしている構成もとてもうまく、月の光が「大理石の網目」だという描写も詩的かつ絵画的でいいですね。
6.世界の内にて失われ
「奇書」に書かれた不思議な世界にとり憑かれた男がついに辿りついた世界で…。
ドイルの「失われた世界」のオマージュ的作品とも言われているようです。
本書中殆ど「男」しか出てこない唯一の作品。
画的には「きれい」に見えてくるものがあるのですが、物語的には唐突感があるように感じました。
なにか「とんでもないもの」「くだらないもの」にマニアックにとり憑かれるのは、男の性かなぁとは感じたりしました。
7.硝子の短剣
超然とした芸術家と美好男子(イケメン)と美人女優の物語。
男なんてどうでもいいという女性と、男を手玉に取る女性、善意ながらも「男」的マッチョさが出てしまう3人の人間模様が楽しめました。
特に主人公の女性の心理描写はすばらしく楽しめました。
8.月は仮面
小間使いで生計を立てながらひそやかな楽しみを得ていた女性が、骨董屋で買った仮面をつけたら...。
「やりきれない」女性的心理があいまいで、明確に理解できないのですがそれがまたいいですねぇ。
とても「ファンタジー」な作品と感じました。
個人的には「硝子の短剣」「月は仮面」「大理石の網目」の3作が女性の不思議さのようなものが垣間見え楽しめました。
なお私の中での1番は「硝子の短剣」です。
ちょっと入っていけない作品もありましたが機会があればこの作者の長編も読んでみたいものです。
↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村
著者のタニス・リー女史は不勉強でまったく知りませんでしたが「ダーク・ファンタジーの女王」としてファンタジーの世界では有名な作家のようですね。
ファンタジーには疎いのですが興味はあったので「読んでみたいなー」ということで応募して頂戴しました。
本作はパリをモデルにした実在しない都「パラディス」を舞台にした「パラディスの秘録シリーズ4部作」の第3作目、1991年発刊。(作者は英国人です)
第1作「幻獣の書」第2作「堕ちたる者の書」は浅羽莢子氏訳で角川ホラー文庫から出ていたようですが現在絶版の模様です。
創元からは本書に続き、第4作「狂った者の書」も出版されています。
前述の通りタニス・リー初読の私は第1作、第2作をもちろん読んでいませんが本書とは直接つながっている話ではないようで、その辺は問題なく読めました。
内容(裏表紙記載)
パラディスは生者の、半生者の、蘇生者の、死なざる者の都であると同時に、死者の都でもあるのです。婚礼の新床で花嫁が夫の手で殺された。夫が死ぬまで隠し通したその理由とは。(「鼬の花嫁」)周囲の人間が次々と衰弱し死に至るという、不吉な噂が囁かれる女性の正体は。(「美しき淑女」)退廃と背徳の都パラディスに眠る死者の物語8編を収録。闇の女王タニス・リーの傑作短編集。
内容紹介を見ると死者やらなにやらが大暴れしそうな感じですが...。
「実在しない都」を設定しなくても成り立ちそうな抑えめの話です。
とりあえずの読了後の感想「ダーク・ファンタジーの女王」かつ帯にも「闇の女王」と書いてある作者ですので、もっとオドロオドドロしい作品を想像(期待?)していたのですが…。
「それほどではないかなー」という感想で「心の闇」的なものから「妖しげ」な世界へ動いていく途中を垣間見る感じで「見るのも怖い」というダーク感ではなかったですね。
また、短編だからかもじれませんが、割と1アイディアで書いているような…。
この著者の他の作品を読んでいないのでかなり無責任ですが長編向きの作家なのかもしれませんね。
あと感性が「女性的」と感じ、その辺で今一つ作品に入って行けない部分もありました。
例えば男性の性欲やら性描写の描き方には違和感を感じました。
割と直接的表現が多かったように感じましたが、男は主観的にはもうちょっとロマンチックだったりします。(女性から見るとこんな感じなのかもしれませんが….。)
男が女性向けレディス・コミックを読んだような違和感ですね。
でも逆にいえば本書の作品では女性が主人公の作品の方が男性には理解しえない「女」の世界を垣間見るようで興味深くもありました。
ということで各編感想など。
1.鼬の花嫁
内容は裏表紙で紹介。
最後に明らかにされた「事実」はある意味ユーモラスで、作中でもそんな暗示もあり、それほど怖く感じられず、どうも「???」感がありました。
冒頭枕で出て来た鼬の話の方が不気味でした。
婚礼初夜で妻を殺してしまうのでなく、この状況で「あえて」長く暮らしていた方が男性心理的には納得感のある不気味さのような…。
2.悪夢の物語
復讐を意志づけられ育ったジャンは復讐のため植民地の島に渡るが…。
悪夢のような独特な雰因気を楽しめましたが...。
若干の「だからどうした?」感を受けました。
3.美しき淑女
裏表紙で紹介。
「淑女」のキャラ設定が絶妙ですね、この作品の主人公の男性の最後の行動もわかる気がしました。
オチ(謎解き?)も「なるほどねー」で楽しめました。
まとまりのいい作品ですね。
4.モルカラの部屋
旅人が訪れた古い屋敷で、壮絶な死を遂げたモルカラの部屋にまつわる話を聞いて...。
「妖しげな」ことがありそうで「ない」というお話。
「怪しげ」な話が3話続きこの後4話続くわけですが、本作は中休み的位置づけになるのでしょうか?
「妖しげ」なことは誰にでも起こるわけではないが「死は誰にでも訪れる」というようなことを言っていたりします。
情念に正直に生きた女性「モルカラ」には怪しげな死が訪れるが、中途半端に生きているものにも(は?)普通の死が(しか?)訪れるということ???。
5.大理石の網目
パーティで奇術師に「恋された女性」は月夜の晩に....。
ヒロインの微妙にぱっとしない感と奇術師のぱっとしない感の描き方が絶妙でした。
この作者、「ぱっとしない」女性のさりげない「個性」を描くのがとてもうまいですね。
最初にヒロインの運命を明らかにしている構成もとてもうまく、月の光が「大理石の網目」だという描写も詩的かつ絵画的でいいですね。
6.世界の内にて失われ
「奇書」に書かれた不思議な世界にとり憑かれた男がついに辿りついた世界で…。
ドイルの「失われた世界」のオマージュ的作品とも言われているようです。
本書中殆ど「男」しか出てこない唯一の作品。
画的には「きれい」に見えてくるものがあるのですが、物語的には唐突感があるように感じました。
なにか「とんでもないもの」「くだらないもの」にマニアックにとり憑かれるのは、男の性かなぁとは感じたりしました。
7.硝子の短剣
超然とした芸術家と美好男子(イケメン)と美人女優の物語。
男なんてどうでもいいという女性と、男を手玉に取る女性、善意ながらも「男」的マッチョさが出てしまう3人の人間模様が楽しめました。
特に主人公の女性の心理描写はすばらしく楽しめました。
8.月は仮面
小間使いで生計を立てながらひそやかな楽しみを得ていた女性が、骨董屋で買った仮面をつけたら...。
「やりきれない」女性的心理があいまいで、明確に理解できないのですがそれがまたいいですねぇ。
とても「ファンタジー」な作品と感じました。
個人的には「硝子の短剣」「月は仮面」「大理石の網目」の3作が女性の不思議さのようなものが垣間見え楽しめました。
なお私の中での1番は「硝子の短剣」です。
ちょっと入っていけない作品もありましたが機会があればこの作者の長編も読んでみたいものです。
↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村