しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

中継ステーション クリフォード・D・シマック著 船戸牧子訳 ハヤカワ文庫

2014-05-30 | 海外SF

コンタクト」の元ネタのひとつかなぁとして「天の光はすべて星」以外に浮かんだのが本作。
読んだことはかったのですが「銀河系の星々を結ぶ」ネットワークという発想が参考になっているかなぁなどと考えたりしました。

購入したのは「都市」を読んだ後、シマック作品が読みたくなりamazonで中古を入手しました。

本作は、つい最近までシマック作品では唯一ハヤカワ文庫現役ラインアップに入っていたようですが今は絶版なようです。
なんだか寂しいですね。

’12年ローカス誌長編オールタイムベスト47位’06年SFマガジン海外長編ベスト32位にランキングされている名作。
1963年に発刊されヒューゴー賞受賞作です。

内容(裏表紙記載)
ウィスコンシン州の人里離れた山奥に、一軒の家がある。 なんの変哲もない農家にしかみえぬその家が、実は銀河系の星々を結ぶ中継ステーションであることを知る者はだれ一人いなかった。特殊な液体の中に浮かぶ水棲生物、体中から螢光を発する発光生物、そうした様々な異星人たちが、家の中に据えつけられた物質転送機を通じて、星から星への旅を続けていく・・・・・・。しかし、のどかにたたずむその家にも、怖るべき破局が忍び寄っていた。 経済の混乱、国際情勢の悪化にともない、世界は第三次世界大戦勃発の危機におびえていたのだ! 巨匠が詩情ゆたかに描くヒューゴー賞受賞の名作

とりあえずの感想「滋味溢れる作品」。

とにかく静かに、静かに、地味~に話は進みます。
「都市」が割とドラマティックかつドラスティックだったのに対して非常に「静か」
CIAも出てくるのですが、なんだかとてもいい人だったりします。
登場人物で根本的な意味で「悪意」を持つのは最後に出てくる、悪臭を放つ宇宙人くらいです、あとは集団としての第三次世界大戦に進みつつある「人類」かなぁ…。

ヒロインらしき女性も聾唖の女性、幻の女性と出て来ますが...「恋愛」に進むこともない。

「これでもか」という勢いで展開する「ジュラシック・パーク」とはある意味対極にある作品の気がします。

「つまらない」といえばつまらいんでしょうが….。
「銀河系の星々」と似つかわしくない場末の一軒家の旅宿の管理人的抒情がなんともかんともイイ(笑)
そのそれほど超人的でなく一人で静かに生きている主人公が終盤で地球人類の運命を一人で決なければならない状況になる…。
「オッ、オレ?」という感じが同じような凡人である私もとても共感できました。

解説にもありましたが最後に危機的状況を解決するのラストが安直という評価もあるようですが、作品全体を通して「銀河」「人間」といったものに静かに思いをいたらす作品かと思うのでこんな感じでいいのではないでしょうか。

「都市」の「すごい名作」感はなくものすごく地味な作品ですがなんだかクセになりそうな世界です。
またいつかどこかで「シマック作品読みたい」と思いました。

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アンのゆりかご 村岡花子の生涯 村岡恵理著 新潮文庫

2014-05-26 | ノンフィクション

朝の連ドラ「花子とアン」にはまりだし。
気になってドラマの「原案」である本書を買ってしまいました。
珍しく新品(笑)

花子とアンにつられて...」でも書きましたが、割と乙女な(気持ち悪い?)私は新潮文庫の村岡花子訳「赤毛のアン」シリーズを愛読していたので楽しく読めました。

村岡花子氏 赤毛のアンの解説で知っていただけなので、なんとなく「上品そうな人だなぁ」という印象以外どんな人かまったく知りませんでした。

内容(裏表紙記載)
戦争へと向かう不穏な時勢に、翻訳家・村岡花子は、カナダ人宣教師から友情の証として一冊の本を贈られる。後年「赤毛のアン」のタイトルで世代を超えて愛されることになる名作と花子の運命的な出会いであった。多くの人に明日への希望がわく物語を届けたい―――。その想いを胸に、空襲のときは風呂敷に原書と原稿を包んで逃げた。情熱に満ちた生涯を孫娘が描く、心温まる評伝。

村岡花子氏の孫にあたる村岡恵理氏が書いているということで「鋭く突っ込む」という感じではなく、親族が書いた評伝特有の愛にあふれた評伝となっています。

同じ評伝でも最相葉月の描いた「星新一」などはもっと突っ込んでドロドロした面を出していますが、星新一ほどに確固とした作品世界が出来上がっているわけではなく、一応児童小説に分類されている「赤毛のアン」の翻訳者の評伝ですのでそれでいいのではないかなぁと思います。

花子の親、兄弟や結婚のいきさつなどを突っ込んだらもっとドロドロしたものも出てきそうですがそこまでやられるとちょっと...な感じですしねぇ。
実際の「花子」の家は甲府(いられなくなった)ではなく大森に出てきているのですが、朝の連ドラでは甲府に残ったまま、貧しいながらも大家族でまぁ普通に農家を営んでいるように描かれていますがその辺も朝からドロドロしたくないという意図があったのかもしれませんね。
実家の件を除けば朝の連ドラはこの本の設定つかって作られているとは思いました。

ドラマでも感じましたが明治期の「東洋英和」の英語教育すごいですね。
当時のエリートは徹底的に教育されるし。
また優秀な人はいろんな人が助けてくれるというのも明治期に特有なところですね。
一方で貧富差やら華族のお家の事情などはなかなか大変そう。
また大正から昭和にかけての女性文壇、女性の地位向上運動などあまり読む機会もなかったので新鮮でした。

ネットで見ると「文章が素人っぽい」等批判もあるようですし、「鋭い」視点はないかとは思いますが明治末貧しい家から出て知識階級に属することになって大正、昭和(戦前、戦後)を生きた「村岡花子」氏の人生はなかなか魅力的で楽しく読めました。

「花子とアン」の脚本の中園ミホ氏の「村岡花子氏はアンにかなり自分と似たものを感じていたのではないか」という認識も「確かにそうかもしれない」と思わせる内容ですね。

すっと読めて面白かったです。


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脱走と追跡のサンバ 筒井康隆著 角川文庫

2014-05-21 | 日本SF
虚人たち」「虚航船団」と、筒井康隆をそれほど褒めていないわけですが…。
なんだか気になる作家であるのはヴォネガット同様で、ついつい手に取ってしまいました。
ストーリー等の関係性はかなり薄いですが「虚人たち」は本作の続編にあたるようですね。

‘06年SFマガジンオールタイムベスト国内長編43位、SFマガジン1970年10月号-1971年10月号連載。

筒井康隆作品としては初期に分類されるようですが、後のメタフィクション的作品につながるかなり実験的要素の強い作品であり、この作品を筒井氏の最高傑作と評する人もいるようです。
ただ現在は絶版で入手困難ですが....。

昨年ブックオフ(多分大森店)で105円で購入。

裏表紙も同じデザインとなっている

この装丁とともに本書の記憶は昔からありますが、読む気にはなりませんでした。

内容(表紙折り返し記載)
脱走してやるぞ!
どんなことがあっても、脱走してやる。このいやらしい世界から逃げ出してやる。こんなところにとじこめられていてたまるものか。
 まさに汚物の墓場の下水管を通り抜けマンホールからこっちの世界に入り込んだものの、いまやあっちの世界へ脱出だ! もう脱出するための行動しかのこされていないのだ。
 奇想天外な発想で現代をパロディ化し、現実と虚構の世界を渾然一体に描いた著者会心のSF長編小説。

とりあえずの感想、よくわかりませんが「面白い」という作品ではない。

中学生頃読んだらまずまちがいなく挫折しただろうなぁという内容です。

多元宇宙と内的宇宙が交差しながらドタバタしていくお話で、「虚人たち」と違いなんとかSFといえる作品ではある…かなぁ。

読んでいて現実がどんどん崩れていくところ、特に階段がなくなるところがディックの「ユービック」を思い出させたのですが....。
「ユービック」は1969年発刊で1年しか違わないので関係ないかなぁ?
筒井康隆なら原書で読んでいるかもしれませんが....。

本作60年代に流行ったニューウェーブSFのパロディという要素もあるようですので、当時のニューウェーブSFはこんな感じだったのかもしれませんね。
(「結晶世界」などニューウェーブの作品殆ど読んでいないのでわかりません)

「多元宇宙もの」と見せながら「内的宇宙」に話を持っていき、情報、時間や空間のあいまいさを抉り出して展開していく筆力と論理性は大したものだとは思いましたが….。
「虚人たち」同様、もう少しエンターテインメント性を持てなかったのかなぁ?
とは思いました。

例えば「おもしろさ」だけで比較すれば「ユービック」の方が確実に上でした。

そんなこんないいながらもなにやら心にひっかかるものはあり...、また筒井作品を手に取ってしまいそうな気はします。

うまく言葉にできませんが魅力はあるんだろうなー。


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花子とアンにつられて...。

2014-05-17 | 本の購入
仕事で甲府に行ったら、こんなのぼりが立っていた。

「花子とアン」私は見ていなかったんですが息子が見ていて気にはなっていました。

村岡花子氏、甲府出身だったんですねぇ。

つられてこんなものを買ってしまった(売っていた)

「生誕120年 永久保存版」につられてしまった...。
裏表紙に「赤毛のアン」初版の写真が載っていました。

イメージ違いますね(笑)

朝の連ドラの原案の、村岡恵理著「アンのゆりかご-村岡花子の生涯」(新潮文庫)と迷ったのですがこっちはどこでも買えるなぁと思ったのですが、内容ちらちら見たら「アンのゆりかご」を読んでからの方が楽しめそうでした...ちょっと後悔。

お恥ずかしいですが割と乙女な人でもあるので「赤毛のアン」は10回近く読み返しており、全巻読破したりしています。
三作目の「アンの愛情」までは本当に傑作だと思っております。
(それ以降も嫌いではないですが読み返すほどではなかった)

最初に読んだのは、高校3年~大学生くらいだったかなぁ。

小学生が、ちょっかい出していた女の子に石板で頭を殴られ恋に落ちる...。
女の子は成人して他の人と結婚する直前までその男を「友人」としか思えず愛していると気づかずにいたが...。

あだち充の漫画によくある展開ですね。(そういう意味では古びない展開)

思いっきりベタですが...こんな展開を読ませる感動作に仕上げる手腕は見事だと思います。

あだち充もそうですが(モンゴメリの影響を受けているのか?)登場人物はとてもモラリスティックで、弱者にとても優しい。
主人公とヒロインはなにかこう背筋がピンと伸びている感じない気がする。
(「読んでいる」というのがちょっと恥ずかしい感じ)

まぁそんなこんなとても大好きなのですが40オヤジとしては大声で言いにくい...。

この作品を最初に日本に紹介した村岡花子氏偉大ですね。


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天の光はすべて星 フレドリック・ブラウン著 田中融二訳 ハヤカワ文庫

2014-05-15 | 海外SF
コンタクト」で過去の「名作SFの要素を取り入れたのでは」というようなことを書きましたが真っ先に浮かんだのが本作なので久々読み返しました。
気になった要素は「2000年を迎える」ということと「女性政治家」が出てくること。
読んでみたら「コンタクト」で本作の要素を取り入れたかは「???」でしたが…。

本作はハヤカワ文庫で復刊だか新版だかわかりませんが「最新刊」として本屋に並んだ時に購入した記憶があります。

奥付見ると昭和57年5月ですので中学校1年生のときですね。
こんな栞が挟まっていた。

懐かしー。

まぁともかく雰因気が好きで何回も読み返した記憶があります。
一番印象に残っているのは主人公が2000年を迎えて感慨にふけっているところでした。
(なお本作ハヤカワ文庫のブラウン作品の中で現在唯一発売中)

SF黄金時代の1953年発刊。
発狂した宇宙」に続くブラウンの2作目のSF長編です。

内容(裏表紙記載)
1997年、人々の興味は宇宙から離れ、宇宙開発の信奉者はごく少数となっていた。そうしたある日、木星探査計画を公約にひっさげた女性上院議員候補が登場した。鬱々たる日々を送っていた、もと宇宙飛行士マックス・アンドルーズは狂喜した。火星、金星探検のあと、宇宙探検計画は頓挫したまま。もし宇宙開発がここで再開されればもう一度宇宙に出られるかもしれない。57歳のマックスにはこれが最後の機会だ!なんとしてでも、彼女を絶対当選させなければ・・・・・星にとり憑かれた一人の男の生き方を、奇才ブラウンが情感豊かに謳いあげた、SF史上に燦然と輝く記念碑的名作!

とりあえずの感想「思いっきりストレートな作品」

「発狂した宇宙」は思いっきり変化球な作品だったのでその反動かのようなストレートさです。
どれくらいストレートかというと、主人公は若いときに読んだ「発狂した宇宙」に触発されミシンをいじって宇宙旅行を実現させようとするくらい...。(笑)

というように随所にブラウンらしいひねりはありますが、主人公の星に憑かれた男の情念といったようなものをとにかくストレートに書いています。
「SF的アイディア」は目新しいものはないですし、派手なアクションがあるわけでもなくつまらないという人はつまらないかもしれません。
また内容紹介に書かれているような「記念碑的名作」とも思いませんが….。

やっぱり私はなんだかこの作品好きだなぁ。

中学生の時にはわかりませんでしたが40代オヤジになると主人公が挫折して「酒」に逃げてしまう気持ちというのは痛いほどわかる....。
人生ってそんなに派手なことはなくても、「思い」は実らなくても...「そういうこともあるよなー」としみじみ感じることができました。

この作品ブラウンの中では「シリアス」で「重い」という評価もあるようですが、私はそれなりのユーモアと軽さを感じたのですが....私だけかなぁ?

なお唯一途中でマックスが女性上院議員を「おまえ」と上から目線な二人称で読んでいるのが気になりました。
翻訳の問題なのか原書でもそんな表現なのか?

「星屑」な「男たち」をしんみり味わえる良作だと思います。


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