しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ヴォル・ゲーム L.Mビジョルド著 小木曽絢子訳 創元推理文庫

2015-03-28 | 海外SF
戦士志願」に続き<ヴォルコシガン・サガ>シリーズです。

本作もマイルズが主人公の作品。

シリーズ中、長編としては「戦士志願」に続く年代を舞台にしている作品であり「戦士志願」の最後で士官学校入学を果たしたマイルズが士官学校を卒業した直後からの話です。
(中編「喪の山」はこのちょっと前の時点の話のようです)
「戦士志願」の次に読むにはちょうどいいかなぁということで手に取りました。

本自体は近所の古本屋で昨年見かけて入手済み。

'12年ローカス誌オールタイムベスト81位。
1990年発刊、1991年のヒューゴー賞を受賞。
<ヴォルコシガン・サガ>シリースは翌’92年に「バラヤー内乱」’95年に「ミラー・ダンス」がヒューゴー賞を受賞しています。
アメリカでのこのシリーズの人気は相当なものなんでしょうねぇ。

内容紹介(裏表紙記載)
苦難のあげく士官学校を卒業し、初任務に胸高鳴らす新人少尉マイルズ。配属希望は、言わずもがな宇宙艦隊だ。だが初の任官先は、なんと人里離れた孤島の気象観測基地!問題児の彼にこの退屈きわまりない任務がこなせれば宇宙艦隊に配属してやる、というのだが、当然ここでもマイルズは騒動の中心人物となってしまい…ユーモアと冒険の傑作スペースオペラ。ヒューゴー賞受賞作


もともと中編用のアイディア二つを合わせたようで前半と後半で全然違う話をくっつけています。
前半は極地軍事基地もの、後半がドタバタスペースオペラという感じ。

前半の異世界の極地での極限状況を描く力、後半の(「戦士志願」同様の)ドタバタをなんとかしてまとめる力、それぞれ大したものだとは感じましたが….。

「戦士志願」同様、「面白い」のですがそんなに深く感動・感心するというタイプの作品ではありません。
前半の典型的「軍隊もの」後半の「貴族的」世界でのスペース・オペラ、両方ともいかにも(あくまで私の独断ですが)アメリカ人が好きそうな内容です。

私的には前半の方がマイルズの内面成長を描いたビルディングノベル的な要素も感じられて好きです。
後半は「皇帝」やら「貴族」やらが前面に出て浮ついている中、何人も死者が出るという展開がどうも感覚的に受け入れられない…。

なお本作、前半もですが後半は特に「戦士志願」を読んでいた方が確実に楽しめる作品だと思います。
読んでいないと後半のマイルズとデンダリィ傭兵艦隊との関係が全然わからないでしょうね。
「戦士志願」でだまくらかして創設したデンダリィ艦隊のメンバーとの後日談は結構楽しめました。
気まぐれと成り行きで設立されたデンダリィ傭兵艦隊のメンバーは苦労を重ねたようでなんだか可哀そうでしたが…。
後半の皇帝・グレゴールに振り回された、女性傭兵艦隊長の行動も可哀そう感もありました。

あとはマイルズに思いっきり壊されたスパイのウンガリ大尉もなかなか哀れでした。
自業自得とはいえ、前半に出てきた基地司令も可哀そうかなぁ….

深く考えるといろいろ可哀そうな人が出てくるので(笑)深く考えずに楽しむ作品かと思います。

と、いろいろけなしましたが、<ヴォリコシガン・サガ>けっこう気にっ入っておりすでに何冊かブックオフで購入していたりします。
いつ読むかは???ですが…。
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流星ワゴン 重松清著 講談社文庫

2015-03-16 | 日本小説
珍しく最近の日本の小説です。
テレビドラマのインパクトで読んでみたくなり新品で(これまた珍しく)購入。

最近打っているのにはテレビドラマを意識したカバーがついていますが。
一皮むくと

本来のカバーとなります。

テレビの方はとにかく「忠さん」というか香川照之のインパクトでもっている感もありますが…。
重松氏の作品では「とんび」もテレビドラマを見て面白くて「買おうかなぁ」とも思ったのですがなかなか手に取れずにいたため本作が初読です。

内容紹介(裏表紙記載)
死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして――自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか――?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。


とりあえずの感想、テレビの方が面白い。
話的に映像化した方が見せやすいストーリーなのかもしれませんね。

テレビではかなり話を膨らませていますが、小説の方はすっと読めてしまいます。
原作どおりでやるなら2時間ドラマで十分かなぁ。

描写はシンプルかつストレートなので「裏を読む」とか「行間を読む」などという作業はいらない感じ。

上の子(男・小六)がテレビドラマにはまっているので、私が読んだ後息子に読ませようと思ってもいたんですが….。
主人公「僕」と妻の性交渉の場面があからさますぎて読ませる気になりませんでした…。

他は内容的にこどもでもOKと思うのでこれは惜しいですね....。
主人公・一夫の妻が「性的欲求」だけで浮気というか、欲求不満解消行動をするというのも説得力が弱いかなぁなどとも感じました。

過去にさかのぼって「事態をやりなおす」というのはタイムスリップものにありがちな話ですが、本作の場合SF的な意味で直接的に過去への働きかけはできず、結局は関係者間の「心の持ちよう」という非SF的(ファンタジー的?)な解決になっています。

まぁすっと読めて楽しく、「かっこつけないでホンネで語ろうよ!」というシンプルなメッセージも「なるほどね」とは思いましたが….。
再読はしないだろうなぁ….。
(ブックオフに売っちゃおうという感じ)

解説で齋藤美奈子子氏が、心理学的に暴君的父親を持った子供は反動で「愛情豊か」ないわゆる「優しい」父親になる。
その「優しい」父親に対して子供は「情けない」という感情をもつようになる。
というようことが書いてあり、ここに一番思う所があったかもしれない…。
(私もそんなケがあるので)
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戦士志願 L.M.ビジョルド著 小木曽絢子訳 創元推理文庫

2015-03-08 | 海外SF
またSFに戻り、人気スペース・オペラシリーズである<ヴォルコシガン・サガ>の1冊である本書を手に取りました。

本書は時系列的にシリーズ最初期というわけでもなく出版時期は最初期ですが最初に出版された作品という訳でもないですが、シリーズの中核キャラクターであるマイルズの登場作ということで<ヴォルコシガン・サガ>シリーズで最初に読むのにお薦めとされている作品です。
(内容紹介読むと創元では一番最初に出版されたのかもしれません)

最近‘12年ローカス誌オールタイムベストSF長編100のリストを参考にしてSFを読んでいますが<ヴォルコシガン・サガ>シリーズでは65位=「メモリー」70位=「パラヤー内乱」81位=「ヴォル・ゲーム」がランクインしています。
それらを読む前に「読んどきゃなぁ」と思っていた作品でした。
(ヴォルコシガン・サガ シリーズは各書一応単独でも読める内容のようです。)

また本作「SFはこれを読め!」でも激賞されていたので気になっていました。
なお本作は‘12年ローカス誌オールタイムベストでは149位。
1986年発刊。

本自体は昨年ブックオフで手に入れていましたものです。

内容紹介(裏表紙記載)
貴族に生まれながら、生来の身体的ハンデのために士官学校への道を閉ざされた17歳のマイルズ。一度は絶望の淵に立たされた彼だったが、とあることから旧式の貨物船を入手、身分を偽り戦乱渦巻くタウ・ヴェルデ星系へと乗り出した。だがさすがの彼も予期していなかった、ぬきさしならぬ状況下で実戦を指揮することになろうとは!卓越したストーリーテリングの大型作家、堂々登場!


人気シリーズということでけっこう期待して読んだのですが…。
大活劇というわけでもなく感動の大作というわけでもなく…。
普通のユーモア・スペースオペラ+兵隊物語という感じでした。

宇宙船がワープ的に航行できる「ワームホール」なるものでつながって、地球人類が銀河系全体に散らばり植民惑星やら宇宙ステーションやらで諸陣営を形成している世界観はなかなか凝った設定で、展開もまぁ先が気になるはらはらはしたものなのであまり深く考えないで読む分にはまぁ楽しいのですが….。
「SF」に「楽しい」以外のものを求める人には物足りないかもしれません。

マイルズの出身地である「バラヤー」は銀河系の中でも割と後進的な軍事惑星という位置づけで「皇帝」やら「貴族」制度が残っている設定。
このマイルズがいろいろ「障害」がありながらも「貴族」という設定になっていて、困難を抱えながら軍隊で活躍するわけですが、この辺アメリカ人好みのお話なんでしょうねぇ。

かなり無茶に話がエスカレートしていき「このままだとどうなるかなぁ?」というところから、マイルズの無茶苦茶ながらも一生懸命かつ機知に富んだ活躍で(まぁ若干ご都合主義的ですが)な頑張りが功を奏すという展開はマイルズが出る場合のこのシリーズのお約束になっていくようです。

読んでいてスケールの違いはありますが「のらくろ」を思い出しました。
のらくろは孤児(孤犬?)なわけで、マイルズは「貴族」と立場の違いはありますが体に障害を持つということでペーソスを与えられていて、その辺「のらくろ」的になっています。

マイルズが割と軽い気持ちで勢いで動いた結果として何人もの死者が出てしまうという理不尽さも、のらくろ的なヒューマニズムの欠如感ありますね(山猿やら豚には厳しい…)マイルズなりに死者やら負傷者にはかなり動揺はしていますがだんだん鈍感になってくる。

とんでもない事態でとんでもない行動をしてしまうマイルズが、いろいろ悩み傷ついて小市民的な決断を重ねて成功するというベタな展開がまぁ魅力なんでしょうね。

さてエスカレートして複雑かつ深刻になった事態を最後の最後どう始末をつけるのか?

けっこう気にはなりましたが、かなりの力技と勢いで解決しています。
皇帝の親族でもあり首相の息子の貴族であるマイルズでなければムリ…。
でもまぁこのご都合主義もこのシリーズの魅力なんでしょう。

「すごい楽しいか?」と聞かれると「うーん」ですが気楽に楽しく読むSFとしてはレベルの高い作品とは感じました。
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城のなかの人 星新一著 角川文庫

2015-03-04 | 日本小説
SFのつづいた後は時代小説など読もうということで本書を手に取りました。
まぁ作者は星新一なのですが…。

殿さまの日」同様、時代小説短編集です。
新潮と角川で1冊ずつの出版というのも星氏らしい気遣いでしょうか?
こちらに収録されている作品の方が全体的に執筆年代は古いようです。

本書も小学生の時に文庫版で読んでおり、実家にはあるはずですが…。
今回はブックオフで入手したもの

を読みました。

内容紹介(裏表紙記載)
太閤秀吉の遺言に従って、豊臣秀頼は7歳を迎えた正月早々、大坂城に移された。世間と隔絶され、美と絢爛のうちに育った秀頼にとっては、大坂城の中だけが現実であり、安らぎに満ちた世界であった。ところが、徳川との対立が激化するにつれ、秀頼は城の外にある「悪徳」というものの存在に気づく。異常な人間関係の中での苦悩と滅びの人生を描いた表題作のほか、「正雪と弟子」「はんぱもの維新」など5編の時代小説を収録。

「殿さまの日」には若干辛目な感想書きましたが...。

本書の感想は...ビックリするほどの傑作ぞろいの作品集でした。
標題作の他全作品のレベルが高い。

昔読んだ時には「殿さまの日」の方がいかにも星新一のショート・ショートという感じでわかりやすいオチで好きだったような記憶もうっすらあり(「殿さまの日」の時は違うことをいってますが…まぁ記憶はいい加減です)本書がここまでスゴイものとは思っていませんでした。
読む歳が違うと見方も変わりますねぇ。

こっちに「殿さまの日」1作だけ引き抜いて入れていれば「時代小説史に残る大傑作作品集になっていたんじゃないかぁ」と思いました。
(本書、時代順に並んでいるので入れるとすれば「春風のあげく」の後くらいかなぁ。

なかでも感じ入ったのが「城のなかの人」
文体も他の星作品と違う固い感じです。

秀頼を父親の後を継いで星製薬の社長にされた自分と重ねわせているんじゃないかと思いますが、かなり重苦しく読み進めるのがつらかったです。
環境や秀頼の境遇からすると「しょうがない」といいたくなる状況ではありますが、一方で自分の身や豊臣家の崩壊は確実に自分のせいでしかない事態....。

そんな中での人間を見つめる視点の徹底的なクールさは「怖い」ながらも心に直接訴えかけてくるような切なさがありました。

その後の三作もかなりシニカルかつクールな視線で書かれていて楽しめはするのですが同時に怖くもある作品が続きます。

最後の「はんぱもの維新」は秀頼とは逆に有り余る才能がありながらも「旗印」になれなかった小栗上野介のお話。
一見ユーモラスにも書いてますが、主人公をかなり突き放して描いています...最後はあっさり首を斬られてしまいますしねぇ。

「もし小栗上野介が秀頼の立場だったら…」とも思いますが….。
「結局変わらなかっただろうねぇ」と思う人は運命論者(私はどちらかといえばこっち)「変わったかもしれない」と思う人はポジティブ思考なんでしょうか。
著者の視点は運命論に近いかと思いますが単純に割り切れていない感じがベースにあるような気がします。
その辺がまた魅力

全体的に「怖い作品」で、ショート・ショートではうまく隠されている星氏本来の怖さがかなり露出しています。
改めて星氏の天才性を感じました。

各編感想など
○城のなかの人
豊臣秀頼の生涯を秀頼の内面からの視点で描いた作品

感想は上に書きました。

○春風のあげく
ある藩で殿さまの側室に上がる前の女性と密通してしまった武士の物語。

一見ユーモラスですが裏にはしっかり「血」の問題、権力の持つ恐ろしさが透けて見えます。
必ずしも血族社会でなかった(養子縁組があたりまえ)江戸時代を裏手にとった意欲作と感じました。

○正雪と弟子
いんちき軍学で金儲けする小説とその弟子のお話。

「騙し騙され因果応報」などということが頭に浮かぶ、まぁ楽しい作品。

○すずしい夏
冷夏による飢饉に苦しむ藩の様子を描いた時代小説

ちょっとして失敗を描いたユーモラスに描いた作品にも見えますが、江戸時代の「藩」の徹底的に間な性質を描いています。
感情を入れていないところがまたコワイ。

○はんぱもの維新
幕府側の人間・小栗上野介を主人公にすえ、明治維新を描いた作品。

「小栗上野介は確かにこんなこといっていたのかもねぇ」などとも思わせる作品。
でも、どんなに頭がよくても時代は動かせなかったんですよねぇ….。
色々考えてしまう作品。
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