しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

自己との決闘 アリアードナ・グロモア著 草柳種雄訳 世界SF全集24 早川書房

2018-12-31 | 海外SF
神様はつらい」を読むために図書館で借りた「世界SF全集24」収録3編のうち最後に読んだ1編です。

本作の著者アチアードナ・グロモアも日本ではほぼ無名の方のようです。
当時の早川書房よく発掘しましたねぇ、余程ロシアSFに強い人がいたんでしょうかねぇ。

グロモアは女性SF作家、1916年生まれ第二次大戦中はゲシュタポに占領されたキエフで地下活動に参加、ゲシュタポに捕えられ死の収容所へ送られる途中で脱走という激しい経験の持ち主。
評論家としても活動、キエフでの地下活動をテーマにした作品などを発表していて、SFは本作は1963年の作品で著者としての三作目のSFとのこと。(解説より)

なお翻訳の出来は(私感ですが..)「クムビ」>「自己との決闘」>「神様はつらい」というところです。

ただ作品としての評価(これまた私感) 「神様はつらい」=「自己との決闘」>「クムビ」という感じです。

内容紹介(これまた私の独断)
舞台はフランスパリ、無職で辛い生活を送る元大学生アルベールと元船員のロジェ、敏腕新聞記者ライモンは天才神経生理学者アンリ・ロラン教授が自宅で極秘で行う研究に引き込まれることになる。ライモン・ロジェはロラン教授の美貌の妻ルイザにも惹かれていく。ロラン教授の実験は生物学的に人間の脳や各部分を成長させた「人間のようなもの」を各種研究や実用業務に使っていこうという研究であった。
検体それぞれはある分野ではすぐれた能力を持つが、機会と違い高度な人間的感情ももつが、それゆえにライバル研究者シャンフォルの半導体で電子的に作っロボットと比べて著しく安定感を欠いていた。
ロラン教授は助手セント・イブと奇跡的に生物学的に脳を発達させる手法を発見したのだが体系化することができず、セント・イブを実験の段階で死なせてしまった罪悪感もあり意識を明確にするが副作用の強いシアルー5を大量摂取し弱りきり、死が近づいていた。そんななかロラン教授の創造した「人間のようなもの」がとった行動は破局を招く。


「フランケンシュタインのようなもの」の生物学的 創造を現代(当時の)に置き換えて思考実験をした作品です。

その生物学的アプローチと物理学、電子的アプローチ=ロボット及び電子頭脳と比較する形になっています。
のちの半導体技術の発展など考えると、当時としてはなかなか斬新なアイディアだったのではないでしょうか?

ロラン教授の創造した「もの」たちの巻き起こす騒動やら苦悩やらがコメディタッチでもあり悲劇的でもありなんとも楽しめました。
かなり好きな作品です。

ロラン教授の美貌の妻ルイザをめぐるライモンとロジェの鞘当てなどは紋切型でこの辺めぐるラストの処理もありがちではあるのですが....。
ハッピーエンドに終わらないところが「クムビ」と違いクールです。

それにしても女性作家なのに「ルイザ」に対する扱いがなんとも厳しいような....。
著者は女性ながら「地下活動」をした人ですから、善良な「主婦」「淑女」的存在に厳しい面があったんでしょうかねぇ。

話の整理があまいとか場面が転換しすぎというような欠点はあるかとも思いましたが全体的にモダンな感じの良作かと思いました。

お薦めです。

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クムビ ゲンナージー・ゴール著 飯田規和訳 世界SF全集24 早川書房

2018-12-30 | 海外SF
神様はつらい」を読むのために借りた「世界SF全集24」でしたが、せっかく借りたので収録作、他2篇も読んでおこうということで読みました。

1963年刊行の作品、著者のゲンナージー・ゴールは日本ではほぼ無名(多分)ですが、1907年生まれということですから本作書いた段階で55歳とベテラン作家。
戦前から非SF作品を発表していたようです。
第二次大戦中は有名なレニングラード攻防戦に義勇軍として参加。
戦後に科学者たちが主人公として登場する作品を書き出し関心がSFに向かったとのこと。(解説より)

私と同じく「神様はつらい」目当てでこの本を借りた人のネット上の感想見るとこの「クムビ」の評判が高かったです。

訳者の飯田規和氏は旧訳版の「ソラリス」を訳した方で訳は収録3作中一番の出来と思いましたし、それなりにうまくまとまっている作品とは感じましたが、私的にはもう1作の「自己との闘い」の方が好みでした。

内容紹介(これまた独断です)
共産主義が普及しそれなりに平和で幸せな地球。主人公、ヴォルフガング・ゲーテの父は時間研究所の所長として、遠く離れた未知のウアザ惑星からくる信号解読を行っていた、ウアザ惑星ではどうやら「無生物」の概念がないらしい。長じて時間研究所につとめたゲーテは、ウアザの「無生物の概念がない」という考え方に刺激され時間研究所で研究されている記憶・脳に関する研究、人口人格「クムビ」、死者の脳を人工的な再現、過去の完全な記憶を持ち決して忘れることのない人物クムビ(代償として人間的な感情が薄い)の調査に関わっていた。そんななか謎であった地球人よりも相当に数万年以上進歩している文明をもつ地球人そっくりの要望をもつウアザ人が直接コンタクトしてきた。
ウアザ人に「無生物」の概念がないというのは信号を誤解したものであるらしいかった。
資本主義を克服し共産主義が勝利し生物学・医学が勝利したウアザでは老化を克服し500歳以上生きても「青年」であるウアザ人の知識を、地球人は取り入れて新たな段階に...。


本作はあまり有名ではなく情報入りにくいかと思いましたので思いっきりネタばれで最後まで内容紹介いたしました。

全体的に文章は詩的で、主人公(少年⇒青年)ヴォルフガング・ゲーテの成長とどことなく詩的な感想などは、ブラッドベリ調(私がそんなにブラッドベリを知っているわけではないですが....一般的表現として)で美しいです。(訳文がいいのかもしれませんが)

ただ「中編」の長さで、「無生物の概念がない」や「人口人格」「死者の脳の人工的復元」「絶対記憶者」、長寿化した「ウアザ人」など盛り込みすぎでそれぞれのテーマの書き込みが深まっていないように感じました。

特に「人口人格」「クムビ」については主人公が同期してクムビの意識を体験する場面があり、かなり思わせぶりなのですがその後なにも語られずに終わります....。

死者の「ヴォロージャ」の人格を再現した「存在」と主人公の会話なども独立して読むと面白いのですが全体的なつながりが「???」でした。

異星人の体制にまで及ぶ共産主義礼賛は当時の体制としてはしょうがないとしても、長寿を達成したウアザ人が全くの「善意」で地球人にものを教えるというのは、現代の目から見るとご都合主義的には見えます。
(余談ですが寿命の克服、人間改造テーマ出てくると「最後にして最初の人類」が頭に浮かびました、今後この辺のテーマ出てくる度に浮かびそう)

1960年代という時代を考えると、いろいろなアイディアが盛り込まれていて、ゲーテ君の成長と恋愛成就含め「物語」としてそれなりに楽しめますが...。

現代的意味ではそれほど読む価値ないかなぁというのが感想です。
(もちろん本書を読む機会のある方は読んでみて損はないとは思いますよ~)

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神様はつらい ストルガッキー兄弟著 太田多耕訳 世界SF全集-24 早川書房

2018-12-29 | 海外SF
再びSFに戻り、読書の対象としている'12年ローカス誌オールタイムベスト長編、58位の作品です、1964年刊行。

本作この早川書房刊 の「世界SF全集24」に載っていることはわかっていたのですが...。
1970年刊行かつ他の刊より品薄なのか古本も高価(amazonで確認したら9000円台)と入手するのに躊躇する価格。
ということで今回は図書館のお世話になりました。

閉架ではありましたが地元の図書館にあったので借りるのは容易でした。

割と所有にこだわる方なのですが、コレクターではないので入手困難本は図書館でいいかなぁと今回改めて思いました。

眉村卓の司政官シリーズの集大成となる長編「引き潮のとき」1-4巻などもamazonで各巻5000-9000円とかなりの値段....。
アシモフ自伝全四冊なども同様、この辺は地元の図書館にあることを確認しているので図書館でいいかなぁなどと思っています。

でも「引き潮のとき」などは眉村卓の代表作といってもよい作品でしょうね是非復刊してもらいたいのですが....。
新刊で数千円/冊なら買ってもいいかなぁという気がしています。

「神様はつらい」も1989年(ペーター・フラインシュマン監督:邦題『惑星アルカナル』)と2013年(アレクセイ・ゲルマン監督:邦題『神々の黄昏』)と2度にわたって映画化されています。

内容が内容だけにマニアックな映画ではありますが、2013年の映画化に合わせて早川で新訳出して欲しかったなぁ....。

なおこの「世界SF全集24」には本作の他2作品収録されているのでそちらは別に感想書きます。

内容紹介(元ネタなにもないので私の独断)
数百年後の地球から」観察者として、地球でいえば「中世」の段階にある地球人とよく似た「人間」の暮らす惑星に「観察者」として派遣されたアントン=ドン・ルマータは派遣されている都市アルカナルで起きているる知識人排除やなんとも怪しげな独裁者の振る舞い、怪しげな宗教集団によるクーデターをなすすべもなく「観察」しているが....。


まず最初の感想ですが....訳が???。

翻訳小説読んでいて訳をけなすのは訳者に失礼なのはわかっているつもりですし、私に訳の良しあしがわかるとは思ってませんが...多分この訳はいまいちだと思います。

なんとも内容が理解しにくいかつ、気になる...。

この当時の早川の校正のいい加減さも併せて(「復活の日」でも書きましたが....)なんともかんともわかりにくい。

一例ですが
P419「料理女が適当な夫を授けてくれるように聖ミカに祈っていた。ただし 自主的で現役のある男の方が良いと。」

⇒「現役」=元気?、稼ぎがいい??、何かの単語を直訳したのでしょうか?

P421「独占企業体はヒトラーを支持していた。ドン.レェバを支持する者はだれもなく、」
⇒ヒトラーはこの惑星にはいないので「ヒトラーのことは独占企業体が指示していたが、それとはちがいドン・レェバ(アルカナルの独裁者)を支持するものは誰もなく...」といったようなことをいいたかったのかなぁ...と推察。

P426「ああ、私にできることといえばお城の門を重けて、勝利者を入れることだけ・・・・・・」
⇒「お城の門を重けて」、開けてだと思うのですが...これは誤植だかなんだか???

P427「 ぬすぎつね」⇒文脈から考えると多分「めすぎつね」誤植でしょうね。

P530「 20前年」⇒「20年前」かと。

P548「 たわし」⇒「わたし」かと...。
こんな訳・誤植のオンパレードで頭がおかしそうになりました....。


P548の「たわし」はエピローグの一番いい場面で幼馴染かつ主人公のもっとも愛する女性がいう言葉ですからなんとも....。

そこはともかく感想ですが...。

全編中世ヨーロッパ的な臭気と不潔さが漂い、なんともやりきれない品性下劣な惑星の土着民たち、その中で身体的にもかなり優れた能力がありながらもなんともできない主人公の焦燥感が伝わってくる作品です、なんともやりきれない....。

「SF」である必要があるのか?ということもありますが、いざとなればこの惑星中の人々を一人で大虐殺できる力をもちながら、「観察者」としての位置づけで「なにもできない」という状況をこれでもかと書かれることで考えさせられるところはありました。

訳のせいか(笑)、私の理解不足のためか作品が今一つ理解しきれませんでしたが、作者は本作に先立つ1962年に地球の青年が未知の惑星に行き封建制とも奴隷制社会ともつかぬ社会に遭遇し干渉しようとして失敗するという話「脱走への試み」、本作の後1969年にで独裁者の支配する惑星に不時着した主人公が立ち上がる話「収容所惑星」も書いているようですから相当こだわったテーマなんでしょうね。

ストルガッキー兄弟、共産党から相当睨まれていたという話もありますので、この辺「中世的」な世界を描いていますが...当時のソ連のこと、もしくは執筆当時の「現代」を描いていたのかもしれませんね。

「今(2018年)」も人間を大虐殺できる「核兵器」を持ってはいても、実際に「貧困」やら「ジェノサイド」「テロ」はなくならずで、某大国の指導者やら北朝鮮の権力者の振る舞い見ていると「神様はつらい」の世界と質的にはそんなに変わらないないような気もします....。

本編では主人公アントン=ドン・ルマータのいた地球は一応平和で幸せな世の中という設定でしたが...。

プロローグではなにやら意味深な設定(大きな戦争でもあったか????)でしたので、どんなに理不尽なことが起きていても武力でものを解決するのは「?」という前提もその辺を考慮してという設定だったのかもしれません。

冒頭ヘミングウェイの言葉として「このことをあなたに前もって行っておかなければならない。任務を遂行するうえで、権威を高めるために武器を手にすることがあるでしょうが、どんな事情があってもその武器に訴えてはなりません。いいですか、どんな事情があってもです。私のいうことがわかりましたね。」が紹介されていました。

腐敗した暴力がいいのか...大量兵器で皆殺しがいいのか...まぁどちらもよくないわけですが、「清く正しい」そんな世界など本当はどこにもない…ということで葛藤するしかないんでしょうかねぇ。

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ゴッホ殺人事件 上・下  高橋克彦著 講談社文庫

2018-12-28 | 日本ミステリ

SFが続いたので目先を変えたくミステリーです。

といってもシックな作品ではないですが...。

浮世絵三部作(「写楽殺人事件」「北斎殺人事件」「広重殺人事件」)読んだあたりで気になってブックオフで108円棚で見かけて下巻を買ってからしばらくして上巻を買って揃えました。

現在は他の多くの高橋克彦作品と同様に紙版は絶版となっており、kinndle版だけとなっているようです、2002年刊行。

本来は美術史シリーズ三部作となる予定だったようで、次作となる予定の「ダ・ヴィンチ殺人事件」は2003年3月から講談社の雑誌IN★POCKETで連載されていたようですが…(解説に書いてあった)色々探して見ても現在完成した形で刊行はされていないようです。

高橋克彦、その頃から作品数激減している感じですが???です。

ということで浮世絵三部作の流れを次ぐ「美術史」がテーマの作品。

探偵役は浮世絵三部作でもお馴染みの塔馬双太郎となります。(登場は後半から)
内容紹介(裏表紙記載)
上巻:
貸金庫に母が遺した謎のリストは何を意味するのか。パリ在住の美術品修復家・加納由梨子は「ヴィンセント」の文字を手がかりに調査するうち、存在すら知られていない膨大なゴッホ作品のリストだと知る。さらにゴッホの死因についての衝撃的な新説にも辿り着く。だが同時に、由梨子の身に危険が忍び寄る。
下巻:
盗聴器を自宅に仕掛けられた元恋人・由梨子の身を案じ、塔馬双太郎はパリへ飛んだ。ゴッホ作品リストの周辺で次々と人が死んでいくなか、日本人画商からオルセーにゴッホの真贋鑑定の依頼が入る。塔馬は東京に戻り、数々の謎の真相に迫る。壮大な国際謀略サスペンスかつ、美術史を揺るがす傑作ミステリー。


読後のとりあえずの感想、読んでいてとても面白かったです。

さすがはベテラン作家かつ直木賞受賞作家「高橋克彦」先が気になる展開で読む人を飽きさせません。

が…動機といい人間関係といい全体的に「ベタ」な感じで新味は…ないかなぁ。

犯人や絵に関わるトリックも浮世絵三部作の使い回し感が濃かったです

類型的に登場する「モサド」やらナチスの残党刈りやら007シリーズではあるまいし21世紀の作品として道具立てとしてどうなんでしょう?

ただ信憑性やら裏付けはともかくゴッホの絵に関わる新説、ゴッホの絵が何故生前1枚も売れなかったかの考察、テオとの関係を書簡から推理するあたりは興味深かったです。

絵が売れなかったのは諸説あるようですが、ゴッホの死の直後テオも亡くなりその後まもなくゴッホの絵が評価されているところから見て本作の見解も「なくはないかなぁ」という感じにはなりました。
(結果から見ているので真実かどうかは???)

テオの仕送り額から推察するところなどは浮世絵三部作と同様過ぎて既読の場合引く面はありますが…。(絵の方の仕掛けもですが)

でもまぁ深く考えず時間をつぶすにはいい作品だと思いますし、ゴッホやその時代の美術界の雰囲気など感じるには良い作品かと思います。

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アシモフ短編集未収録SF短編-SFマガジン

2018-12-25 | 海外SF
本ブログで何回か書いていますがアシモフの邦訳されたSF作品は全部読もうと思っています。
一応アシモフ単著の長編は「永遠の終わり」でコンプリートのつもりです。

短編の方は短編集収録作品は「コンプリート・ロボット」収録の未読分を読んで完読したつもりです。

未収録で邦訳のある作品のうち「S-Fマガジン」掲載の作品は読了したのでまとめて紹介です。

他にも数点ありそうなのは認識していますが...まぁここまでやれば、「アシモフ作品」だけならまぁまぁマニアかと...。

該当の「S-Fマガジン」はあれやこれやで入手しました。

入手経緯ですが、

1970年1月号:覆面座談会事件の流れで購入済(アマゾンで古本)でした。

1982年2月号アマゾンやら色々探しましたがどうにもみつからずヤフオクで1年分12冊を2000円で購入、「引き潮のとき」の連載など中身は興味深いのですが...。
残り11冊を捨てるのも何なのでどうしようか思案中です..。

1988年1月号アマゾンで古本を購入。

1990年10月号:アシモフ短編収録作品とは知らず「400号記念号」ということで神保町の古本屋で見つけ購入して持っていました。

1995年12月号アマゾンで古本を購入。
アシモフ特集号、アシモフファンは必読でしょう。
伊藤典夫氏のアシモフ評も必読かと。
自ら訳した「未来探測」につき「最後まで訳して不覚にも妙に、感動してしまった。」伊藤氏ならではの感性です。


各編内容紹介と感想など
「ホームズ=ギンズブック装置」S-Fマガジン1970/ 1 No.129
 浅倉久志訳 原題:The Holmes-Ginsbook Device 初出If 1968/12

・21世紀の科学者が発明しノーベル賞を得たものは…。

・力を抜いたユーモア短編です。
21世紀現在(2018年)の現実はタバコはアイコス化が進み、本はマイクロフィルムとビューワーではなく、タブレット端末で見る形での電子化となってそれなりに普及していますが…。
紙巻タバコも紙の本もそう簡単にはなくならない気がしてましたが...結構電子書籍も電子タバコ(アイコス)など普及してきましたね。

ただ本は場所考えると電子書籍は圧倒的に便利で移行しようかなぁとは思うのですが、紙と電子はなんだか感じが違う気が私はしています。
(タバコもそうなのかもしれませんが吸わないのでわかりません)

「チオチモリンと宇宙時代」S-Fマガジン1982/ 2 No.283
 浅倉久志訳 原題Thiotimoline and the Space Age 初出Analog 1960/10)

・時間化学の第一人者が水に触れる前に時をさかのぼって溶解してしまうチオモリンの有用性に関する講演をします。

・架空の化学物質「チオモリン」を題材にした短編は3編書かれているらしいですが本作が最後に書かれたものとのこと。
他2編が論文形式なのと比べ「講演」という形をとっています。
内容は…楽しんで書いている「ほら噺」という感じです。
ハリケーンが戻ってくるくだりなど楽しめましたが...強引です(笑)

「夢みるロボット」S-Fマガジン1988/ 1 No.361
 小尾芙佐訳 原題Robot Dreams 初出IASFM 1986/12

・若手女性科学者リンダが手を加えたロボットは「夢を見る」という。話を聞いた蝋スーザン・キャルヴィンの決断は…。

スーザン・キャルヴィンものとしては最後に近い作品なのではないでしょうか。
晩年のアシモフはどこかでロボット3原則に疑問というか、憎しみに近いものを持っていたのかなぁと感じさせる作品です。

後期ファウンデーションものも3原則逸脱させてますしね。
本作でもその辺垣間見えるブラックな展開です。
後述の「未来探索」もそんな感じです。

「マイクの選択」S-Fマガジン1990/10 No.400

 小尾芙佐訳 原題Too Bad!  初出IASFM 1989/12
・主人の癌を治すためミクロ化されて体内に送りこまれたロボット マイクの選択は…。

ミクロの決死圏パロディ的な作品。
「夢みるロボット」「未来探索」と違いロボット三原則の第一原則を忠実に守るロボットの活躍です。
三原則を忠実に守る優秀なロボットにやらせれば「こうなる」という思考実験的なものですが、穿ってみれば三原則否定なのかもしれませんね。

「未来探測」S-Fマガジン1995/12 No.474
 伊藤典夫訳 原題Robot Visions  初出Robot Visions 1990

・200年後の未来に送り出されたロボットは平和で落ち着いたハッピー・エンディングとでも言うべき世界であったが…。

・前述の伊藤典夫氏いわく「ロジックの多少の破綻など、この時期のアシモフにはどうでもよい」といわしめていますが、突っ込みどころはありありですし、陳腐といえば陳腐なのですが....。
徹底した平等主義者・無神論者のアシモフとしての一つの理想像、かつ三原則からの「脱却」と答えを表す作品なのかもしれません。
人造人間=アンドロイドという形ではディックなどが三原則にとらわれず作品書いてますし、ロボットが兵器となるターミネーターのような作品もありますしね....。
その辺は後期ファンデーションでも描かれている気はします...。

なお本作品は1996年の星雲賞海外短編部門を受賞しています。

「S-Fマガジン」700号記念号に、1997年1月号に掲載された「SFインターセクション」第一回 大森望氏による伊藤典夫氏のインタビューが掲載されています。
(なお大森望氏は「未来探索」について「正直いってそれほどすぐれた短編とは思えないから、これは伊藤典夫氏の力だろう」といっています。伊藤氏が翻訳者として「アインシュタイン交点」で行き詰っていたを打開して活動再開した時期であった)

伊藤氏いわく「アシモフは1940年代の「ロビイ」から、自分をロボットに仮託して書いていたんじゃないか」
これまたなるほどです...。

未収録作品、正直無理して「読まなきゃ」というほどの作品ではありませんが…。
まぁ読めば読んだなりに感慨深くはあります。

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