しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

カムイの剣3-5 矢野徹著 角川文庫

2015-01-29 | 日本小説
記事を上げるのがずいぶん遅れましたがこれも昨年末読んだ本です。
(本はペース変わらず読んでいるのですが書くのが追いつかない…)

カムイの剣」に続いて続編ということで読みました。

オリジナルの「カムイの剣」は1970年に発刊された作品で角川文庫版で当初1冊でも発刊されましたが、のちに2冊に分冊され上下巻となり映画化に合わせて1984年-1985年に続編が発刊されるときに1,2巻となっています。
ということで続編は3-5巻ということになっています。
(なお映画は1985年公開。)
オリジナルの方は最近ハルキ文庫から1冊で発刊されたようですがこの続編は発行されなかったようです。
今となってはまず読む人のいない本でしょうねぇ…..。
(Amazonでちらっと覗いたら4巻だけすごいプレミアついていました)

私は社会人になったあたり(20年位前)に古本屋やらブックオフやらで3,4,5巻を入手していましたが未読でした。

帯がなかなか味わい深い


「ナウい」が「かっこいい」言葉として使われている時代に出た本なんですねぇ。

今回読むにあたり5巻の最後を確認したら「6巻につづく」となっている。
全巻そろえたつもりだったので「???」でしたが、調べてみると6巻は発刊されずで未完に終わっているようです。
安心したような残念なような….。

感想、各巻別に書こうかなぁとも思ったのですが3,4,5巻まとめて書いてしまいます。

内容(表紙折込記載)
3巻 明治開国編
天海一族に対し、父・母・お雪らの復讐を終え、キャプテン・キッドの財宝を手にした治郎が、明治維新、江戸開城に果たした役割は大きかった。
―――そして・・・・・・ジュリーと結婚・・・・・・束の間の幸福のひととき・・・・・・。しかし、幕末、維新の申し子、次郎には、否応なしに時代の嵐が襲いかかって来る。西欧列強の謀略に幕府隠密のすさまじい逆襲・・・・・・。カムイの剣を手に、再び次郎、旅立ちの時がやって来た!
 全世界的スケールで贈る、超エンターティメント小説PartⅢ


4巻 世界への道編
カムイ次郎のみつけたキャプテン・キッドの財宝をめぐり、陰謀やスパイ合戦をくりひろげる各国列強やギャング団たち。諸外国は、財宝を背景に明治政府がすすめる日本の富国強兵政策に脅威をいだいてのことであり、ならず者たちは財宝の横取りをねらってのことである。かくしてジロウに仕掛けられるワナの数々・・・・・・。ジロウ殺害計画、妻子誘拐計画・・・・・・小国日本とジロウは、歴史の荒波に揉まれてゆく。はたしてその運命は?
 全世界的スケールで贈る、波乱の大歴史冒険小説Part4

5巻 ロシア南進策編
イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、アメリカ、清国・・・・・・列強各国の圧力に抵抗しながら、必死に国家建設をすすめる明治政府。激しいスパイ活動が行われる中、ジロウは、日本が戦争への道を突っ走りはじめているのを肌で感じるようになるのだった。
 一方、この頃、盛り上がりはじめたロシア革命の気運と、日本における西郷隆盛の反乱の兆し。はたして日本国の運命は? そして、ジロウと妻子たちの行手に待つものは?
 全世界的スケールで贈る、波乱の大歴史冒険小説Part5。


オリジナルの「カムイの剣」から15年経って書かれているため著者の作風もかなり変化しています。
私の好きなぐっとくだけた矢野徹氏です。(笑)

オリジナルが小、中学生向けとすれば本作は高校生、大学生向けというところでしょうか。
特に3巻が思いっきりくだけていて好きですね~。
3巻でのカムイが世界情勢やらを悩んでいる時の妻にいった言葉「君の胸と同じくらい、手に余る問題だ...」(笑)
(確認いい加減なのでちょっと違うかもしれませんが)

3巻では戊辰戦争や五稜郭の戦いの模様がそれなりに丁寧に書かれていて「このペースでいって欲しいなぁ…」と思っていたのですが….。
4巻以降でカムイが岩倉具視らの欧米回覧に同行し、カムイを狙う欧米露の刺客と白人の陰謀論的なお話になってきます。

ストーリーよりも矢野氏の歴史論的な話に力が入っている感じで冒険小説としてはいかがなものか??と感じました。
もっと余裕を持って進めて欲しかったなぁ…。

歴史観的には司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」的な「ロシア脅威論」でそれに対抗するためには日本の富国強兵策が不可欠で、そのためには韓国・清国に日本が出ていくしかないというもの。
この前提で西南戦争、日清・日露戦争くらいまで書いてきたかったのでしょうが、今一つ的が絞れずにいるうちに未完で終わってしまったという感じでしょうかねぇ。

今回調べて初めて知ったのですが、司馬遼太郎氏と矢野徹氏は同年生まれで、学徒出陣で陸軍へ入った経験有と経歴に共通点あります、親交あったのでしょうか?

とりあえず読んでいてつまらなくはないですが….面白くもない(笑)
「いまこの本を読むことにどれだけ意味があるのだろうか???」などと思いながら読んでいました。

カムイがやたら重要人物として描かれているのですが忍術以外の面では基本金持ちの好青年という雰因気なのでカムイがそれに見合うだけの深みが感じられなかったのにも作品全体を通じて違和感を感じました…。

4巻最後あたりから「ラスプーチン」が「超能力者」出てきて、5巻ではカムイよりも登場場面が多くそれなりに魅力的に書かれていました。
(多分作者はカムイよりもラスプーチンに感情移入していたのではないでしょうか?)

書き続けていたら盛り上がったのかもしれませんが...続けてもとっちらかりそうなので未完で良かったような気もします…。

「長年の宿題を果たした」読書でしたが...あまりすっきり感のない読書でもありました。(笑)

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カムイの剣 矢野徹著 角川文庫

2015-01-08 | 日本小説
矢野徹コレクシション」で書きましたが、私の大好きな作家・矢野徹氏の作品が読みたくなり手に取りました。

本作も「黄土の奔流」同様、星新一が激賞している作品です。
(この本の解説文が「きまぐれフレンドシップPart1」に収録されている。)

角川でアニメ映画化されているので「翻訳家」でなく「作家」矢野徹としては一番の有名作かと思います。
私は映画は見たことがなく「絵」だけ見て「好みじゃないかなぁ」と思っていたのですが、今回ちょっと調べてみたらマニアにはけっこう人気があるようですねぇ。
見たくなりましたがDVD買うしか見る手段がないようです、うーん。

本書は1970年に立風書房から出版され1975年に角川文庫に収録されています。
私が持っているのも角川文庫版

さだかではありませんが小学5、6年頃に買ったと思います。
(古本で買ったので奥付見てもわからない…)

当時はスケールの大きい冒険物語に血湧き肉躍る思いで(たしか…)読み。
何回も読み返していました。
と書いて思い出しましたが、本作にはマーク・トゥエインが登場しています。
それをきっかけに「トム・ソーヤーの冒険」を読んだんだなぁ…懐かしい。

内容(表紙折込記載)
海賊の黄金時代、彼らの覇者として七つの海を暴れまくったキャプテン・キッド。彼が生涯をかけて世界各国に残した莫大な秘宝の謎は、今もって解明されていない―――。
 時は幕末、西洋文明の嵐が日本を襲わんとするとき、下北半島にアイヌ人の血を引く赤ん坊が流れ着いた。だが、この子の身につけていた剣こそがキャプテン・キッドの秘宝の謎を解く鍵であり、彼を波乱の渦の中へ落とし込むのだ・・・。
 幕末・維新の時代の子、忍者次郎左の半生を壮大なスケールで描くエンターティンメントの最高傑作。


かなり好きな作品だったので「読み返してがっかりしたらやだなぁ」とは思っていましたが….。
まぁ現代の標準から冷静に評価すると「ジュブナイルの冒険小説としてはなかなか」ぐらいが妥当な評価な気がします。
私がかなり内容を覚えていて先が全て読めてしまったというのもありますが…。

日本の冒険小説は1970年から45年間の間にかなりの進化を遂げているかと思いますのでしょうがないでしょうかねぇ。
お色気シーンなどもあるので今でもませた小学生や中学生辺りが読むと結構楽しめそうな気がします。
松前のお雪、けなげです….。

と、けなしているようですが懐かしさもあり、読み出したら止まらずに一気に読んでしまいました。
(夜更かししてしまった)
なにしろスケールの大きいロード・ストーリーなので読んでいて楽しい…。(先がわかっていても)

誰とそれが結局親子やら兄弟やらになっているのもかなりご都合主義的ですが、知らないで読んでいれば「へぇー」と思うかもしれません。
また急にマーク・トゥエインが出てくるのもかなり都合がいいのですが…。
本作では「人種差別」「階級差別」がメインテーマになっているので、矢野氏のマーク・トゥエインに対するリスペクトの意が出ているんでしょうね。

私の好きな後年の矢野氏のような茶目っ気と遊び心溢れる文章ではなく、かなり真面目に書いているのも私的にはいまひとつと感じられた要因かとも思いますが…とにかく「面白い小説を読みたい」ということであればなかなかお薦めであります。
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矢野徹コレクション

2015-01-07 | 本リスト
私は読書も好きですが、収集癖もあり一定の作者の作品を集めることがあります。

なかでもそこそこ自慢(?)なのは矢野徹氏の作品群。
(フレドリック・ブラウンのエド・ハンターシリーズを全部持っているのも自慢、あとアシモフのSF作品は全部集めようとしています….)

SF翻訳の世界では大家である矢野徹氏ですが「作家」としては「カムイの剣」ぐらいしか一般的には知られていないんじゃないでしょうか。
マイナーな作家だけに集めている人は「そんなにいないんじゃないか?」と思っています。
(だからどうしたという話ですが….)

とにかく矢野徹氏の著作が昔(小学生時代)から好きでなんとなく集め出してしまって現在にいたっています。
ふと気になり全体の中でどの程度集まったのかなぁと調べてみました。

青色が既読、黄色が所有していて未読です。

手持ち並べてみました♪

著作リストの元ネタはwikipediaなので漏れがあるかもしれません。
例によって青が既読、黄色が所有していて未読です。
未読のものは「何年未読なんだ!」というくらい未読のものも含まれています。
「442連隊戦闘団」などは小学生のとき入手したので30年以上…。

ということで全47冊中、31冊所有 66%所有。

文庫で出ていないものは入手しにくいので「しょうがないかなぁ」と思っているので、あと2冊で文庫はコンプリートです。

入手できていないのが「孤島ひとりぼっち」と「新世界遊撃隊」。
Amazonで調べたら「孤島ひとりぼっち」はプレミアついて2,000円近くする、「新世界遊撃隊」にいたっては引っかかってこもこない。
「孤島ひとりぼっち」大人買いするなら手が出ない金額でもないのですが…。
まぁブック・オフを気長に探そうと思っています。

全部読んでいない私が言うのも何ですが、氏の作品の中では1980年代以降の割とぶっちゃけではちきれている作品群が好きです。
1970年代の「地球0年」や「カムイの剣」はかなり真面目に脱線しないで書いていますが、
「裁くのは誰か?」や「皇帝陛下の戦場」あたりからは吹っ切れたのか、くだけた感じで書かれていて楽しめます。

中でもお薦めは「ネットワークソルジャー」から始まる「連邦宇宙軍シリーズ」
シリーズ3作目までは高橋敏也氏との共作なわけですが、4作目以降矢野徹氏単独となってもスケールの大きい話を矢野氏らしいはっちゃけ感のある展開で進めていきます。

10年位前に読んで記憶もそこそこ新しいので自信を持って言えますが、日本SF史上に残る大傑作だと思う…のですが物凄くマイナーですよねぇ。

「連邦宇宙軍シリーズ」「矢野徹」で検索したら、「宇宙の戦士」私がちょっと書いた記事が5番目に表示された…。
すごいマイナーだ(笑)

集めるだけでなく未読のものは読まなきゃとは思っているのですが、なかなか手が出ません...。
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五匹の赤い鰊 ドロシー・L・セイヤーズ 浅羽莢子訳 創元推理文庫

2015-01-02 | 海外ミステリ
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

本作含め4作は去年読んだものですが今年ボチボチ記事化していきます。

ピーター卿シリーズ第6作です、1931年発刊。
全10作あるピーター卿シリーズの長編もいよいよ後半戦に入ります。

前作「毒をくらわば」が347ページでしたが本作は483ページと分量も大幅に増えていますし本作から本格的にシリーズ後半戦ということなんでしょうね。
(本作以降は1-5作目までと異なり分厚くなります。)

前作でシリーズヒロインであるハリエット嬢が登場したのですが、本作では残念ながら登場しません。
本作はシリーズ中で一番のいわゆるパズルミステリーとされているらしく、シリーズ的には外伝的な話とされているようです。

なお残念ながら本作現在絶版のようです。
というわけで….でもないのですが(笑)本書もブックオフで購入。


内容紹介(裏表紙記載)
スコットランドの長閑な田舎町で嫌われ者の画家の死体が発見された。画業に夢中になって崖から転落したとおぼしき状況だったが、ピーター卿はこれが巧妙な擬装殺人であることを看破する。怪しげな六人の容疑者から貴族探偵が名指すのは誰? 大家の風格を帯び始めたミステリの女王が縦横無尽に紡ぎ出す本格探偵小説の醍醐味。後期の劈頭をなす、英国黄金時代の薫り豊かな第六弾!


題名が「赤い鰊」で釣り好きが集まる田舎町が舞台なのでてっきり魚の鰊がそのうち出てくるんだろうと思っていましたが…。
ミステリの世界では「赤い鰊」=「レッド・ヘリング」=「偽の手がかり」というのは常識のようです。
「詳しくない」のはしょうがないですねぇ…。
シリーズ一番のパズルミステリーということで、前作までの「謎解きは勢いでやっつけて、登場人物のキャラで勝負」という展開(?)と大きく違ってきます。
(本作以降の傾向は未読なのでわかりませんが…。)

そんなこんなで「ピーター卿シリーズ」としては「違和感を感じ苦手」という人もいるようです。
確かにまったく地理のわからないスコットランドの田舎町でのこみいった時刻表やアリバイトリックはかなりややこしく、私は途中から謎をちゃんと追いかけようという気がなくなりました….。

序盤でいきなり「読者への挑戦状」的な謎が出てきて最後の方まで明かされないので、これもなにやら気になってしまいます…..。

でもまぁ「わからなくてもいいや」と割り切って読みだしたら、殺害された嫌われ者の画家とその画家を殺害しそうな理由を持ちアリバイの怪しい画家が六人という突飛なシチュエーションと容疑者や地元の警察官の絶妙なキャラを結構楽しめました。

地元の警察官の捜査状況や入手した証拠・証言を細かく丁寧に書いているのがこれまでと違うところでその分ページ数も増えていますが基本的シチュエーションは前作までと同じです。
ページ数も増えていますがそれでも登場人物がキャラ立ちしており、冗長にならず読ませているところは「さすがセイヤーズ」という所でしょうかねぇ。

最後の方で警察長や警部やら巡査がそれぞれ自分の推理を展開した後、ピーター卿がそれをあっさりひっくり返し謎解きをする場面や殺人事件の捜査とは思えないノリノリでの事件再現場面などはピーター卿シリーズらしいとがった展開で楽しめました。
(謎解きの方は最初の「読者への挑戦状」の謎がキーだったりします、容疑者6人の所在が明らかになったところで犯人の検討はついたりしますが…。)

でもその他の部分はいわゆる「普通の謎解きミステリー」という感じが強く、というかこのシリーズならではのピーター卿の活躍(と苦悩)の部分は薄目でなにか物足りないような気もしてしまいました。

前述しましたが好みの分かれる作品のようですが、私の好みではないかなぁ。

でも普通に「1931年のミステリーを読む」と思えばこの時代の作品にしてはテンポもよく現代的な作品で楽しめるとは思います。
あと自転車好きにもいいかもしれない(笑)

次作以降は本作と毛色が違った展開のようなので期待して読みたいです。

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