ヴォルコシガン・サガの続きです。
年代順で「親愛なるクローン」に続く作品となります。
続くといっても「親愛なるクローン」から4年がたちマイルズは28歳となっています。
その4年間マイルズはデンダリィ傭兵艦隊提督としてキャリアと成果を重ね、副長であり美貌の恋人であるエリ・クィンとの仲も順調なようです。
もっともそのため、バラヤー帝国の中尉である本来の「マイルズ」とのギャップが広がっているわけですが...。
「親愛なるクローン」の感想でも書きましたがビジョルドはこの「提督」としてのマイルズの絶頂期を作品にはしていません。(現在のところ)
あまりコンプレックスのないマイルズを書いても面白くなかったんですかねぇ。
なお本書は1994年発刊、1995年のヒューゴー賞を受賞しています。
ビジョルド、1991年「ヴォル・ゲーム」1992年「バラヤー内乱」でもヒューゴー賞(長編部門)を受賞しており長編部門3度目の受賞となります。
(その後本シリーズ作品ではない「影の棲む城」で2004年ハインラインとならぶ最多の4回目のヒューゴー賞(長編部門)を受賞しています。)
作家としても世間の本シリーズへの評価も最高潮の時期の作品といえるのではないでしょうか。
本自体はブックオフで上下とも入手済みでした。
![](https://c2.staticflickr.com/2/1732/28693669738_c356f52441.jpg)
内容紹介(裏表紙記載)
上巻:
マイルズの留守に乗じて傭兵艦隊に潜入した、彼そっくりの偽物---クローンのマーク。特命任務と偽って快速艇とコマンド部隊を手に入れ、ジャクソン統一惑星へ侵攻した。だがマイルズならぬ身、攻略にしくじり、進退にきわまってしまう。急遽あとを追って戦地に赴いたマイルズだったが、マークたちの救出作戦敢行のさなか、あろうことか敵弾の直撃を受けて・・・・・・マイルズが死んだ!?
下巻:
蘇生への一縷の望みを託して低温保管器に収められたマイルズの遺体が行方不明に。一体どこへ消えたのか?
マイルズの訃報は故国バラヤーにも伝えられ、彼の皇位継承権はマークが引き継ぐこととなる。 だが皇位への忌避感から、マークは全力をあげて遺体の捜索にとりくみ・・・・・・気密保安庁に先んじて手掛かりを得た彼は、傭兵艦隊の面々を率いて出航する。マイルズの奪還はなるのか?
解説で訳者宛てに著者から届いたコメントが紹介されていて「この本は、いままで書いた長編のなかでは最高のもの、芸術的な一遍だと、わたしは思っています。ほかのどの長編よりも緊密で複雑な構成を持ち、それぞれの挿話が中心テーマのヴァリエーションとして、ほかのすべての挿話に反映しているのです。」と紹介されています。
前述もしましたが、前作「親愛なるクローン」から4年、デンダリィ艦隊提督としての絶頂期の4年を過ごしたマイルズのもとに「棘」として忍び込んだマークによってちょっとずつ歯車が狂っていきます。
それも本当に「絶頂」にあるマイルズであれば防ぎ得たであろう「状態」が副官エリとの関係性、マイルズのちょっとした慢心、これまたちょっとずつ老いたイリヤン、アラール・ヴォルコシガンといったところのズレで...。
序盤絶頂にあるマイルズがマークの行動で転げ落ちていくさま、中盤マークのなんとも情けない行動が丁寧に描かれています。
なんだかつらくて...読み進むのがつらく、読むのに時間がかかりました。
それを「芸術的」といえばいえるかもしれませんが...。
まぁ本質的には「純文学」的な人間意識の深層に迫る作品、というようりは「人の変化」と「意志」を描いているエンターテインメント作品だろうなぁとは感じました。
マイルズの低温保存死体の行方探しはミステリー調ですしね。
「肯定できる」自分を探しもがく人(マーク)と、「肯定できる」自分の状態を維持するために無理をする人(マイルズ)の葛藤が軸で、「老い」やら「変わりゆく関係性」をアラールなどで背景として描かれ多層的には表現していて渾身の力で「芸術的」にしたいのは伝わってきました。
また本作は遅れてきた「マーク」の「青年期」が中心で、主人公は「マーク」になっています。
解説にも書かれていましたが、マークの目から見たマイルズの危うさ、がむしゃらに動いてきたマイルズの初めての「挫折」を通じた、マイルズ自身の青年期の終わりの気配を感じる作品です。
ここまでシリーズ通して読んでいると時間の経過」とともに変化する登場人物たちの姿がとても楽しめる作品かと思いますが...。
本作がシリーズ初読の人には面白み伝わりにくい作品だとは思いました。
↓いつまでも若い!!!方も、もう年かねぇの方も下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
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年代順で「親愛なるクローン」に続く作品となります。
続くといっても「親愛なるクローン」から4年がたちマイルズは28歳となっています。
その4年間マイルズはデンダリィ傭兵艦隊提督としてキャリアと成果を重ね、副長であり美貌の恋人であるエリ・クィンとの仲も順調なようです。
もっともそのため、バラヤー帝国の中尉である本来の「マイルズ」とのギャップが広がっているわけですが...。
「親愛なるクローン」の感想でも書きましたがビジョルドはこの「提督」としてのマイルズの絶頂期を作品にはしていません。(現在のところ)
あまりコンプレックスのないマイルズを書いても面白くなかったんですかねぇ。
なお本書は1994年発刊、1995年のヒューゴー賞を受賞しています。
ビジョルド、1991年「ヴォル・ゲーム」1992年「バラヤー内乱」でもヒューゴー賞(長編部門)を受賞しており長編部門3度目の受賞となります。
(その後本シリーズ作品ではない「影の棲む城」で2004年ハインラインとならぶ最多の4回目のヒューゴー賞(長編部門)を受賞しています。)
作家としても世間の本シリーズへの評価も最高潮の時期の作品といえるのではないでしょうか。
本自体はブックオフで上下とも入手済みでした。
![](https://c2.staticflickr.com/2/1732/28693669738_c356f52441.jpg)
内容紹介(裏表紙記載)
上巻:
マイルズの留守に乗じて傭兵艦隊に潜入した、彼そっくりの偽物---クローンのマーク。特命任務と偽って快速艇とコマンド部隊を手に入れ、ジャクソン統一惑星へ侵攻した。だがマイルズならぬ身、攻略にしくじり、進退にきわまってしまう。急遽あとを追って戦地に赴いたマイルズだったが、マークたちの救出作戦敢行のさなか、あろうことか敵弾の直撃を受けて・・・・・・マイルズが死んだ!?
下巻:
蘇生への一縷の望みを託して低温保管器に収められたマイルズの遺体が行方不明に。一体どこへ消えたのか?
マイルズの訃報は故国バラヤーにも伝えられ、彼の皇位継承権はマークが引き継ぐこととなる。 だが皇位への忌避感から、マークは全力をあげて遺体の捜索にとりくみ・・・・・・気密保安庁に先んじて手掛かりを得た彼は、傭兵艦隊の面々を率いて出航する。マイルズの奪還はなるのか?
解説で訳者宛てに著者から届いたコメントが紹介されていて「この本は、いままで書いた長編のなかでは最高のもの、芸術的な一遍だと、わたしは思っています。ほかのどの長編よりも緊密で複雑な構成を持ち、それぞれの挿話が中心テーマのヴァリエーションとして、ほかのすべての挿話に反映しているのです。」と紹介されています。
前述もしましたが、前作「親愛なるクローン」から4年、デンダリィ艦隊提督としての絶頂期の4年を過ごしたマイルズのもとに「棘」として忍び込んだマークによってちょっとずつ歯車が狂っていきます。
それも本当に「絶頂」にあるマイルズであれば防ぎ得たであろう「状態」が副官エリとの関係性、マイルズのちょっとした慢心、これまたちょっとずつ老いたイリヤン、アラール・ヴォルコシガンといったところのズレで...。
序盤絶頂にあるマイルズがマークの行動で転げ落ちていくさま、中盤マークのなんとも情けない行動が丁寧に描かれています。
なんだかつらくて...読み進むのがつらく、読むのに時間がかかりました。
それを「芸術的」といえばいえるかもしれませんが...。
まぁ本質的には「純文学」的な人間意識の深層に迫る作品、というようりは「人の変化」と「意志」を描いているエンターテインメント作品だろうなぁとは感じました。
マイルズの低温保存死体の行方探しはミステリー調ですしね。
「肯定できる」自分を探しもがく人(マーク)と、「肯定できる」自分の状態を維持するために無理をする人(マイルズ)の葛藤が軸で、「老い」やら「変わりゆく関係性」をアラールなどで背景として描かれ多層的には表現していて渾身の力で「芸術的」にしたいのは伝わってきました。
また本作は遅れてきた「マーク」の「青年期」が中心で、主人公は「マーク」になっています。
解説にも書かれていましたが、マークの目から見たマイルズの危うさ、がむしゃらに動いてきたマイルズの初めての「挫折」を通じた、マイルズ自身の青年期の終わりの気配を感じる作品です。
ここまでシリーズ通して読んでいると時間の経過」とともに変化する登場人物たちの姿がとても楽しめる作品かと思いますが...。
本作がシリーズ初読の人には面白み伝わりにくい作品だとは思いました。
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コメント返信遅くなりもうし訳ございません。
言霊...。
なるほどです。