しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

百億の昼と千億の夜 光瀬龍著 角川文庫Kindle版

2018-02-12 | 日本SF
これまた「覆面座談会事件」の流れで手に取りました。

本作は'06年SFマガジン国内長編オールタイムベスト1位'14年同3位の日本SF界きっての定番作品です。
小中学生の頃に読んでおり社会人になってから萩尾望都にはまりマンガでも読み、その頃読み返した記憶もあります。

マンガの方は小学校低学年頃('77~78年)少年チャンピオンで連載されていたのはうっすら記憶にありますが、当時の私にはレベルが高くで読んではいませんでした。

当時のチャンピオンでは同じく光瀬龍による「ロン先生の虫眼鏡」も連載していたんですねぇ、こっちは読んでました。(懐かしい)
その他当時のチャンピオンは「ブラック・ジャック」やら「がきデカ」「マカロニほうれん荘」「ドカベン」など連載されていて全盛期でしたねー、これまた懐かしいです。

今回再読にあたっては手持ちのハヤカワ文庫 旧版ではなく。

48億の妄想」で実感したKINDLE版で読む時代性がなくなる感覚を味わおうとKIDLE版を入手し読みました。

安さにひかれ角川文庫版で読んだのですが....。

ハヤカワの新版は19993年にラスト部分加筆され「決定版」になっているんですね....。
知らなかったのでとても残念です。(今度どこかで立ち読みしよう...)

本書は「SFマガジン」に小松左京の「果てしなき流れの果に」の後をうけて1965年12月号から1966年8月号まで連載された作品です。

日本SFの記念碑的作品が当時相次ぎSFマガジンに連載されていたんですねぇ。
が...覆面座談会ではこの2作もあまり評価されていませんね....。

この2作、基本的には同じ世界観を描いている、というか同じ話を違う内容で書いたといような気がしています。
クラークの「幼年期の終わり」の影響絶対受けているのと、「超越」「宇宙を超える概念」的なものが主題になっています。

地球上での進化に超越的なものが関わるという概念は「2001年宇宙の旅
ともかぶっています。(映画公開1968年ですからほぼ同時代)クラーク的発想、当時のSF界ではやっていたんでしょうかねぇ。
前にもどこかで書いた気がしますが、そんな重い主題を小説でストレートに書くのはあまりスマートではない気が個人的にはしています。

そんなこともあり本作、何回か読んではいますが私の中での評価はずっと低かった作品でした。
(萩尾望都の漫画は名作と思っていました)

内容紹介(amazonより)
ギリシアの哲人プラトン、釈迦国の王子悉達多、ナザレの救世主イエス。彼らは世界の破滅を感知し、この世界を外から支配する超越者の存在を知る。幾千億の宇宙と人類の存亡をかけ、紀元前の過去から未来までの時空間の中で、彼らは巨大な力に戦いを挑んでいくが……宇宙の創世と終焉、神と人間、時の流れの非情さをテーマに、壮大なスケールで描く日本SF小説の金字塔。


今回の読み直しは、短編集「宇宙救助隊2180年」を読んで、私の中での光瀬龍の評価が従来よりかなりいい方に変わっていたこともあり新たな視点で読めてた気がします。

「果てしなき流れの果に」もかなり展開がとびとびな作品でしたが、本作も時代も場所もストーリーも非連続にどんどん切り替わります。
本作、ラストのある種の安直感が受け入れがたいものがあったのですが、長編として「ストーリーが成り立っていない感」もあり「名作」とは思えなかったのですが...。
今回読んでみて後段の辺は解消されました。

本作は連作短編として読むんだろうと思いました。

そういう眼で読むと各章なかなか味わい深く、楽しめました。
それぞれの背景のダイナミックさ仕掛けの巧みさ堪能できました。

[第五章 喪える都市]での、サイボーグ同士の戦闘シーンなど「ハイペリオン」のシュライクとの戦闘シーンのような鮮烈さでとても60年代の作品とは思えませんでした。

長編としての全体の完成度というより各章での世界観・イメージを楽しみ、全体としてのなにやら感慨めいたものを味わう作品と思いました。

ラストはもっとぼやかした方がいいんじゃないかなぁとは思いましたが…まぁそこが全ての作品ではないんでしょうね。
ということで納得できました。

「覆面座談会」でいえば「無常感」でしょうが、無常感というよりも「運命」と運命に抗う力との葛藤とある種のあきらめを描いている作品なような...。
ハヤカワ版で著者のあとがきをちらっとみたら興福寺の阿修羅像を見て、絶対勝てない帝釈天に戦いを挑む阿修羅王の姿を描きたかったというようなことが書かれていたのでまぁそういうことなのかもしれません。

それを「無常感」というのかもしれませんが....(笑)

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2014年SFマガジン国内長編オールタイム・ベストSF 考

2018-02-03 | 本リスト
ちょいと前に「記事あげます」と予告した国内長編オールタイムベスト2014年版のお話しです。
元ネタはSFマガジン700号掲載の国内長編オールタイムベストです。(現物はこちら参照ください-2014年SFマガジンオールタイムベスト-海外長編考

アンケートに基づくものですが、SFマガジンの読者ですから…多少偏っていそうな(笑)

それを基に2006年との比較、出版年、現在の出版状況など調べてみました。
出版年と出版状況はでき得る限り調べたつもりですが間違っていたらすいません。
なお「航空宇宙軍史」のみ最近「完全版」が出ている影響もありで出版年特定できませんでした。

水色既読、黄色所有で色付けしていますが見事に第一世代の作品しか読んでいない...。

数少ないそれ以外の既読作品「BRAIN VALLEY」「永遠の森 博物館惑星」もランク外になってしまってなんだか寂しいです。

とりあえず作家別作品数を見てみると
 6作品=神林長平(「戦闘妖精・雪風」を1つで数えれば5ですが)
 5作品=小松左京
 3作品=筒井康隆、半村良、伊藤計劃(共著「屍者の帝国」含む)
 2作品=光瀬龍、山田正紀、谷甲州、長谷敏司、飛浩隆
というところ。

'06年と上位作品数、作家はあまり変わっていません...。
「神林長平、小松左京強し」です。

2作品のところに入っている長谷敏司(2001年デビュー)が新顔というところでしょうかねぇ。

変わったところは最近人気らしい伊藤計劃が1位の「ハーモニー」はじめ3作ランクイン、山田正紀が「エイダ」がランク外となったことで3作品の人から外れたというところ。

神林長平、伊藤計劃、山田正紀は読んだことがないのでなんともいいようがありませんが、小松左京の5作品はちょっと多いんじゃないかなぁという気はしました。
果てしなき流れの果に」と「日本沈没」くらいでいいのではと…。
小松左京の場合は第一世代トリビュートバイアスがだいぶ入っていそうですが、第一世代の作家では豊田有恒、平井和正が入っていないので(2006年の時も同じこと書いていますが)小松左京作品5作品入れるよりも両氏の作品入ってもいいのでは?などと思いました。

豊田作品なら「モンゴルの残光」平井作品なら「ウルフガイ」シリーズか「幻魔大戦」というところでしょうか。

また第一世代では星新一作品「声の網」あたり入ってもな気もしました。
ネットワーク、AI先取り作品としてそれなりの評価うけてもいいような...。

ベスト10の顔ぶれでは相変わらず2位「果てしなき流れの果に」第3位「百億の昼と千億の夜」の王道2作品は強いですがその他はかなり変わっています。

2006年は半村良も第一世代に含めるとベスト10中が7作が第一世代、他第二世代の山田正紀作品2作ランクインですから10作中9作第一、第二世代作家でした。
それに対し2014年では第一世代作家が4作品と減って、第二世代の山田正紀作品がベスト10から外れ1979年デビューの第三世代にあたる神林長平「戦闘妖精雪嵐」が10位にいますが、あとは2007年デビューの伊藤計劃「ハーモニー」が1位、他1982年デビューの飛浩隆、1996年デビューの小川一水、2003年デビューの上田早夕里ともはや「世代」が意味をなさない作家が入ってきています。
(SF作家第四世代というのはあまりいわないらしい)

一応「読んでいる」というジャンルのオールタイムベスト10にまったく知らない作家が入っているのをみるのもおじさんとしてはなんだか寂しいですが....。

2006年から2014年の8年間でファン層がおじさん世代からかなり入れ替わったんでしょうかねぇ。

他「マイナス・ゼロ」が06年4位から13位とベスト10から外れているのが個人的にはさびしく...。
ここは定番として入ってもらいたいです。

また今回「虚航船団」が20位⇒14位と順位を上げてきています。
筒井SFの最高傑作ではあると思うのでこちらもベスト10に入れておいて欲しいなぁ(おじさんとしては)

筒井作品では他31位「旅のラゴス」41位「脱走と追跡のサンバ」がランクインしていますが、80年代くらいのこの手の企画だと筒井作品では「エディプスの恋人」が「上位に入っていたよなー」などということを懐かしく思い出しました...。

今回ランキングから外れた作品を見ると「グィンサーガ」「家畜人ヤプー」を除くと90年代-2000年代の作品です。
評価が定まったのか???

個人的には前述もしましたが「永遠の森 博物館惑星」がランク外にいったのがさびしいです。
文庫が出た頃(2004年)たまには新し目の日本SF読んでみようと手に取ったのが本書で「宇宙船ビーグル号」の影響をちょっと感じましたが面白かった記憶があります。

「BRAIN VALLEY」もその頃読んだ記憶がありますが....まぁいいかなぁとは思います。
(いわゆるSFではない気がする)
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」も外れていますが...。
まぁこれもSFではないという観方でしょうかねぇ。
(そういえば村上春樹を小松左京が「ろくでもない」といっていた文章を最近読みました...)

今回ランクインした作品の方は16作品中12作品が21世紀の作品(基本2006年以降)です。
この辺は次回このような企画があったとき残っているかどうかですね。
他4作品は1980年代後半から90年代の作品。

評価が固まってきているのか?流れか?
全然読んでいないのでなんともいえません(汗)

そんな状態でも第一世代読み直しで精いっぱいの私ではあります....。
(保守的なんだろうなぁ)

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