しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

スタータイド・ライジング上・下 ディヴィッド・ブリン著 酒井昭伸訳 ハヤカワ文庫

2016-06-27 | 海外SF
再びSFに戻り‘12年ローカス誌オールタイムベストの順で選び、41位である本作を手にとりました、1983年刊行。
1984年のヒューゴー・ネピュラ・ローカス賞のトリプルクラウンに輝く著者の代表作です。

本自体は年初にブックオフで購入済、本作も現在絶版のようです。


作者のディヴィッド・ブリンの作品は未読でしたが、アシモフのファウンデーションシリーズをモチーフとしてアメリカ気鋭のSF作家陣が執筆した「新銀河帝国興亡史」三部作の第3巻「ファウンデーションの勝利」を書いた作家のひとりとして名前は知っていました…。

余談ですが「新銀河帝国興亡史」は全巻そろえたのですが、読み始めるのが怖いような気がして未着手です、いずれは…。

内容紹介(裏表紙記載)
上巻
人類=イルカ混成チームの乗り組む探検船<ストリーカー>は、辺境宙域で銀河史上最大の発見をした。月ほどの大きさがある五万隻の大宇宙船団。それも既知の宇宙種族のものではなく、想像を絶するほど太古から漂流していたらしい。銀河の科学水準を凌駕するこの船団の秘密をめぐって、人類に敵対する種族が<ストリーカー>めがけ艦隊を繰りだしてきた!
米SF界の新星が、雄大な規模の未来史を背景に放つ大宇宙叙事詩

下巻
<ストリーカー>の発見は、銀河に覇を競う列強種族を色めきたたせた。この船団こそ、数十億年前に宇宙進出を果たし、全知的種族の<始祖>となった幻の種族のものではないか? その秘密をわがものにせんと迫る彼らの艦隊を超空間ジャンプでかわした<ストリーカー>は、海洋惑星キスラップに身を隠したのだが・・・・・・雄大な構想と豊富なアイディア、息もつかせぬ展開で、全米SF界の熱狂的な支持を受けたSFスペクタル!


本作「ファーストコンタクトもの」という評価があったとうな気もしていたのですが、銀河の他知性体とはすでにコンタクトを済ませており、太古の「<始祖>?」については「見つけた」というだけでなんの解決もされませんので、毛色を変えたスペースオペラ的な作品と感じました。

どたばたと場面と視点が地球人・イルカ・異星人へ転回してめまぐるしく進んでいくのですが、なによりも知性化されたイルカたちの個性的なところが突出して楽しめる作品です。
イルカが俳句的なものを出すところなどなかなか風情があります。

80年代らしく日本文化的なものがはやっていてそれを取り入れたりしたんでしょうか?
(日本人からみるとくすぐったかりもするのですが)

本作の背景にある世界観は単一の<始祖>に知性化されたと思われる知性化生物と、その知性化した生物(知性化した生物に対して「主族」として使役できる)がまた知性化した生物でなりたっている銀河世界で、これまで得られたすべての知識が「アーカイブ」という巨大メモリー的なものに保存れているというものです。

この多種多様な銀河の知性生物の間につい最近入り込んだ地球人類ですが、人類はそれを「知性化」した主族が、見当たらず人類がもし単独で知性化した存在だとすれば「例外的ケース」ということでこの辺も気になるようになっていますが、作中では全然解決されないのでハードSF好きにはもどかしさばかりが残るかもしれません。

私的には人類を知性化したのだとすると6000年くらい前の「シュメール人」にという設定になるのかなぁ」などとロマンに浸れました…。

不時着したキスラップの生命体含めこれでもかというほど多種多様な知性生物がでていて大暴れするドタバタSF、またその独特な世界観は楽しむための道具として非常に楽しめましたので小難しい理屈抜きでSFを雰因気で楽しめる人にはお薦めです。

またイルカ好きにも最高かと、友達になりたくなります。
同じく知性化されたチンパンジーの描き方は…愛がないかなぁ(笑)

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ナイン・テイラーズ ドロシー・L・セイヤーズ著 浅羽莢子訳 創元推理文庫

2016-06-11 | 海外ミステリ
ピーター卿シリーズ第9長編、1934年刊行です。

殺人は広告する」に続き勢いで読み始めました。

本書は1990年英国推理作家協会ベスト18位、1995年アメリカ探偵作家協会ベスト28位2012年週刊文春海外ミステリベスト45位にランクインしています。

江戸川乱歩が名作推理小説ベスト10の10位に推した作品ということもあり、セイヤーズの中では最も日本で有名な作品である本作ですが、永らく「幻の名作」扱いされていた作品とのこと。
(海外では次作「学寮祭の夜」の方が英国4位、米国18位と評価が高いようですが…。)

作品自体はブックオフで入手済でした。

有名作だけにブックオフでもセイヤーズ作品としては最も目にする作品だったりします。

内容紹介(裏表紙記載)
年の瀬、ピーター卿は沼沢地方の雪深い小村に迷い込んだ。蔓延する流感に転座鳴鐘の人員を欠いた村の急場を救うために久々に鐘綱を握った一夜。豊かな時間を胸に出立する折には、再訪することなど考えてもいなかった。だが春がめぐる頃教区教会の墓地に見知らぬ死骸が埋葬されていたことを告げる便りが舞い込む・・・・・・。堅牢無比な物語に探偵小説の醍醐味が横溢する不朽の名作。


前作「殺人は広告する」がモダンなロンドンのあわただしさを描いた作品なのに対し、一転して中世の香りを引きずる田舎町が舞台になっています。

名作の評判高くかなり期待して読んだのですが…。

「探偵小説」としてみて名作かと聞かれると「う~ん」というのが正直な感想です。
中世の香り漂う沼沢地方を舞台にしたファンタジーというか幻想小説という雰因気です。

車で中世的世界に訪れる所、少女(ヒラリー・ソープ)を助けるおじさん(ピーター卿)、ラストの水と中世のイメージがなにやらとても「ルパン三世カリオストロの城」のイメージとダブりました。
ネット上を調べてみても誰も書いていませんでしたが…私は宮崎駿は本作読んでいたんじゃないかと確信しております。

殺人(?)方法が突飛という評価になっているようですが、殺人場所と時期がわかった段階で普通の人ならまぁ推察つくと思います、しかしまぁそうくるか…という感じではありますが...。

中世的雰因気と幻想的な因果応報、ラストのクライマックスと楽しめる部分はいっぱいありますが純粋にミステリーとして期待して読むと肩すかしされた気分になる作品かもしれません。

正直「ミステリー」として「不朽の名作」とは私には思えませんでした。

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殺人は広告する ドロシー・L・セイヤーズ著 浅羽莢子訳 創元推理文庫

2016-06-07 | 海外ミステリ
死体をどうぞ」に続くピーター卿シリーズ第8長編です1933年刊行。

1990年英国推理作家協会ベスト22位、1995年アメリカ探偵作家協会ベスト56位にランクされている名作です。
こちらもAmazonで購入しました。

内容紹介(裏表紙記載)
広告主が訪れる火曜のピム社は賑わしい。特に厄介なのが金曜掲載の定期広告。こればかりは猛者揃いの文案部も鼻面を引き回される。変わり者の新人が入社してきたのは、その火曜のことだった。前任者の不審死について穿鑿を始めた彼は、社内を混乱の巷に導くが……。広告代理店の内実を闊達に描く本書は、真相に至るや見事な探偵小説へと変貌する。これぞセイヤーズの真骨頂。

「死体をどうぞ」で進展したように見えたハリエットとピーター卿の仲の方も気になるところなのですが本作中その件にはまったく触れられていません。

解説によると次作「ナインテイラーズ」の執筆が間に合わず、別建てで執筆していて出来上がりに満足していない本作を出版社との契約を守るためにいたしかたなく出版したらしいです、それが名作として評価されているのだからわからないものですね。
(といって「ナインテイラーズ」にもハリエットは登場していないのですが…。)

作者のセイヤーズはコピーライターとして広告会社に勤めていた経験があるらしくその経験を下敷きにしています。
執事のパンターもほとんど登場しないので本作の探偵は「ピーター卿」でなくても別に問題ないような気もしますが…コピーライターとしての才人ぶりと怪人として登場する場面のノリノリぶりはやはりピーター卿でないと無理かなぁ。

比較的オーソドックスに殺人が行われ謎解きが進行する前作までに比べ本作では、捜査対象である殺人がすでに行われてかなり経過した時点がスタートでなんの説明もなく、思いっきり広告業界に飛び込むので状況が把握できずかなり戸惑います。

その辺も広告業界のあわただしさを表現するためにわざとしたことなのかもしれませんね。

その他全般的に、殺人事件はほとんど脇に追いやられており、その背景にある事件の捜査メインに話は進むのですが主役は「犯罪」というよりも「広告業界」と当時の時代性、都市のあわただしさ、日人間性を浮き彫りにすることがメインのような展開になります。
そんなこんなの展開でミステリーーとしてどんな話だったかを記述するのは難しいのですが…。

「ミステリー」というよりも社会派サスペンスというところを狙って書かれた感もあるのでそれでいいんでしょうね。

「謎解き」メインのミステリーの可能性を拡げる実験作として1930年代に書かれた作品としては新鮮なものだったかもしれません。

ただし現代に生きる私としては素直に「新鮮味」は感じられなかったのは正直なところですが1930年代英国の近代性とピーター卿のテンションの高さが印象に残りました。

特に夜ダイアン・デ・モリーの前に現れるときのピーター卿のテンションの高さは素晴らしいかったです。

クリケットでムキになっているのもなかなか(笑)

でもラストで殺人事件の犯人をあのように処理しちゃうのはどうだか….。
人命に関する観念は少なくとも現代より薄かったんでしょうね。

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