しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

無人島に生きる十六人 須川邦彦著 新潮文庫

2013-06-27 | ノンフィクション
毛色変えようシリーズ第二弾。
「行かずに死ねるか!」と一緒に大森のブックオフで買いました。
250円。

ある雑誌の書評欄で本書が紹介されていて興味を持っていたため購入しました。

内容(裏表紙記載)
大嵐で船が難破し、
僕らは無人島に流れついた! 明治31年、帆船・龍睡丸は太平洋上で座礁し、脱出した16人を乗せたボートは、珊瑚礁のちっちゃな島に漂着した。飲み水や火の確保、見張り櫓や海亀牧場作り、海鳥やあざらしとの交流など、助け合い、日々工夫する日本男児たちは、再び祖国の土を踏むことができるのだろうか? 名作『十五少年漂流記』に勝る、感動の冒険実話。

本書を読み出して最初に驚いたのは、解説が椎名誠氏であること。
昨日読了の「行かずに死ねるか!」と同じ。
趣味が合うのでしょうか?(笑)
解説を読むと本書は椎名氏が再発見して新潮文庫での発行となったようです。
「旅」とか「冒険」「写真」と椎名氏と私は親和性ありそうですが作品を読んだこともないし、読もうと思ったこともなかった。
別に特に嫌いといわけでもないんですが....なんでだろう?

この本はもともとは昭和23年に子供向け海洋冒険譚として発行されたもののようです。
とても読みやすく通勤行き帰り、昼休み、帰って少し正味4時間くらいで読んでしまいました。

南の島の冒険譚として楽しく読めました。

どこまで実話なのかが???ですが、帆船でハワイまで行ったり、その船に小笠原諸島が日本の領土になった時に住んでいた帰化米国人がいたりと当時の日本はかなり国際的だったんだなぁと感じました。
堂々としている船長、船員さんもスゴイ、明治の男・海の男ののたくましさを感じました。
昔の日本人はたくましかったんでしょうね...。
顧みてチョット自分が恥ずかしくなったり増します。

「感動」という感じではないですが「感心」と「スゲェたくましさ」を感じました。
漂流譚ですがなんだか島に行きたくなります。
お薦めです。

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行かずに死ねるか! 石田ゆうすけ著 幻冬舎文庫

2013-06-26 | ノンフィクション
SF濃度がかなり濃く、大作であるハイペリオン二部作を読んで毛色を変えてライトなものを読みたくなり本書を購入しました。
大森のブックオフで105円。

余談ですが大森のブックオフは私好みの文庫が多くてお気に入りスポットです。
この本の副題が「世界9万5000km自転車ひとり旅」
著者の石田ゆうすけ氏は先月図書館で借りたサイクル・スポーツ誌での連載で知っていて本書も先月から気になっていました。
いわゆる「旅」に憧れる気持ちは常にありますが、現状(妻子、職持ち、オヤジ)ではまず無理なのでこういう本で匂いだけでも嗅ぎたくなります。

内容(裏表紙)記載
「平穏な人生?それが運命なら自分で変えてやる!」そう決意してこぎだした自転車世界一周の道。だが、砂漠地帯で拳銃を持った強盗がー! 身ぐるみはがされた後も疾走し、出会いと別れを繰り返しながら駆け抜けた七年半の旅。笑えて泣ける、大興奮紀行エッセイ。単行本を大幅に加筆・訂正し、新たなエピソードも収録した文庫改訂版。

「ライトなもの」求めていましたが、通勤+αで月、火 二日 正味6時間で読んでしまいました。
(解説の椎名誠も6時間で読んだといっていました)

全体的印象、
「放浪の旅」の気分が十分味わえます。
私もむかしオートバイにテントを積んで旅をしていた時(マックス2週間ですが)「放浪」(気味)な人と出会っていろいろあったなぁなどという思い出に浸れました。
青春だなぁ。
ただ「旅」に焦点があたっているので「自転車」の話を求める人には物足りないかもしれません。

構成、文章がうまく安心して読めます。
各エピソードごと「ちょっといい話」的に仕上げています。
ただ...文章うまいといっても「ライター」的うまさで、「作家」的うまさではないような気もしました。
人によっては「なんだかなぁ」とか思う人もいそうです。

私の個人的感想ですが、この著者多分いい人で素直なんだろうなぁと感じました。
「作品」としての「すごみ」が出るためにはどこか「おかしい」感性がないと出ないような気がする。

冒険ものでは植村直己の書いたものが好きですが、この人はかなり「おかしい」人ではないかと思っています。
そのちょっと(すごく)ずれた感性で書いたものだからなんだか「すげぇ」と思えるのではないかという気がしました。

この本は普通に気持ちよく読む分にはうまい文章だと思いますし、多分植村直己よりうまいですが...「すげぇ」という文章ではない。
いやとにかく普通に読むにはおもしろいですし、「いい話だなぁ」と感じられます。

あと感じたことは、著者の旅していた90年代後半から2000年代初頭時点で実に多くの日本人が世界中放浪旅しているんだなぁということ。
日本の当時の(今でも?)経済状況であればある程度働いて貯金に努めれば放浪に必要な資金は貯められるんでしょうね。
で、私でも憧れるんですから「放浪の旅」に出たい人っていっぱいいるんだろうなー。
実際に行動に移すかどうかまではハードル高いと思いますが。

その辺も植村直己氏の60-80年代と違うところですね。

また「世界」も自転車で旅するくらいなら「冒険」というより「旅」の延長になっているんだなぁというのも肌で理解できました。
「インターネット」で連絡取ってうんぬんという記述もありましたし、時代は変わっているなぁ。
この辺この著者の「俺は大したことはしていない」という基本的に謙虚なスタンスでそう思う部分もあるのだとは思いますが...。
(この人いい人なくがする)

とにかくジャイアントのグレートジャーニーでも買ってテントツーリングに出たくなる...そんな本です。

でも...しばらく行か(け)ないなぁ、10年後体力あったら1週間くらいやってみたいところですが。

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ハイペリオンの没落上・下 ダン・シモンズ著 酒井 昭伸訳 ハヤカワ文庫

2013-06-23 | 海外SF
2週間ちょいぶりの更新となりましたが、大作(少なくとも分量は)である本書上・下を読むのに2週間かかりました。
(ほぼ通勤時間で読んでいるので)

ちなみに下巻を大森のブックオフで500円で入手した後、上巻を秋葉原のブックオフで見つけ500円で購入しました。
求めれば出てくるもんです。

本書は「ハイペリオン」の続編、というか「ハイペリオン」の謎解決編というような位置づけで2作で1対となっています。
ハイペリオンのところでも書きましたがこの2部作非常に評価の高い作品。
'06SFマガジンオールタイムベストで10位となっています。(ローカス誌ではハイペリオンが4位)

内容(裏表紙記載)

連邦の首星TC2から、色鮮やかな光条を描いて、FORCE無敵艦隊が出撃していく。めざすは謎の遺跡<時間の墓標>を擁する惑星ハイペリオン。宇宙の蛮族アウスターから人類連邦を守るための壮絶なる戦いの火蓋が、いままさに切って落とされようとしていた。いっぽうハイペリオンでは、連邦の密命を受けた七人の男女がついに<時間の墓標>に到着していた。長い旅路のはてに、その地で彼らを待ち受けていたのは・・・・・・。

連邦の誇る無敵艦隊は、アウスターの大軍勢を前に苦戦をしいられていた。高度な予測能力をもつ独立AI群<テクノコア>の助言を信じ、連邦は対アウスター戦にもてる戦力のすべてをそそぎこむ。だがそのころ、惑星ハイペリオンを訪れた人々の眼前では、ついに<時間の墓標>が開き、驚くべき光景が展開されていた! はたして彼らの運命は? そして戦いの帰趨は? 壮大な物語はここに驚異のクライマックスを迎える!

読了後の全体の感想。
前作「ハイペリオン」、本作前半でいろいろ謎を拡げていきますが一応それらは解決されます。
無理は...あるといえばあるのですが一応納得できる形です。
話としても面白いのは間違いない。
非凡な手腕だと思いますが....なんだか釈然としないものがあります。

うまく言えませんが名作映画のつもりで見たら、TV映画の名作だったというような感じ。

前作同様SF的な基本的しかけ過去の名作SFから持ってきている感じがあります。
解説でも触れられていましたが、個々の作品の話は出ていませんので独断感じた部分としては、

主人公各の女性連邦CEOマイナ・グラッドストーン。
アシモフの「ファウンデーションの彼方へ」で出てきたターミナス市長ブラノに似ているような...。
(書かれた時代が近いからないかもしれませんが)
「コア」の居場所探究というテーマだけ見ると第二ファウンデーションを探し求める「ファウンデーション」シリーズ三部作にも似ているような気もする。
字体を変えたケレン味たっぷりの描写はベスターの「虎よ!虎よ!」に似ているような、人類の成長的なテーマもクラークあたりがどこかで書いていそうなテーマ。
うまいんですが...なんだか「これでいいのか?」と感じてしまいました。

そんなこんあ批判的に読んでいましたが、上巻の終わり頃から物語が急展開し出して引きずり込まれていき下巻からは最後まで一気に持っていかれました。
エンターテインメントとしての出来は素晴らしいと思います。
が...「なにかその他」をSFやら小説に求める人には消化不良になるかもしれません。
解説に「絶妙な人物描写」というようなことを書いてありましたが深みが足りないような気もする。
前期のCEOグラッドストーンなどももっと「弱さ」とかなにか違った面を感じさせる書き方もあったような気がする。

ただコンピューターとネットの関わりという点では、80年代後半に書かれたにしては今のインターネットやスマートフォンがなければなにもできないという状況をかなりリアルに描写しています。(これは前作ハイペリオンでもいえる)
今の時代ある意味SFですね。

名作度=なにか心が揺さぶられるという意味では「ハイペリオン」の方が上だと感じました。
でも「ハイペリオン」だけ読んでなんだか謎解きが中途半端に感じる人にはお勧めです。
これだけ読むという人は...まぁいないでしょうから問題ないでしょう。

なんだか微妙な読後感なんですが...とりあえずこのシリーズ第三作「エンディミオン」も入手してはいますがすぐに読もうという気分にはなりません。
まぁここまで評価の高い作品なので私の読み手としての力に問題があるようね気もしますが...。
う~ん。

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ハイペリオン上・下 ダン・シモンズ著 酒井 昭伸訳 ハヤカワ文庫

2013-06-05 | 海外SF
久々の更新ですが....。
なんだか読書に疲れてしばらく本を手に取っていなかったのと、本作「ハイペリオン」が大作なためでした。
下記には色々書いていますが、本作は読書の楽しみを感じさせる良作ではありました。

さて本作ローカス誌オールタイムベスト第4位、06SFマガジンでも第8位(二部作・四部作としても評価されている)ととても評価の高い作品ということで手に取りました。
原書の刊行が1989年邦訳版刊行が95年(文庫版が2000年)ですからSFを全く読んでいない時期でしたので今まで存在を知りませんでした。
まったく知らない作家のものを読むというのはなんだか新鮮ですね。
上巻下巻とも大森のブックオフで購入(上巻450円、下巻105円)

裏表紙記載のあらすじと表紙の感じからなんとなくスペースオペラっぽいものを想像していましたが全然ちがいました。
内容(裏表紙記載)

28世紀、宇宙に進出した人類を統べる連邦政府を震撼させる事態が発生した! 時を超越する殺戮者シュライクを封じ込めた謎の遺跡-古来より辺境の惑星ハイペリオンに存在し、人々の畏怖と信仰を集める<時間の墓標>が開きはじめたというのだ。時を同じくして、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンへ大挙侵攻を開始。連邦は敵よりも早く<時間の墓標>の謎を解明すべく、七人の男女をハイペリオンへと送り出したが・・・・・・。

迫りくるアウスターの脅威と、殺戮者シュライクの跳梁により惑星ハイペリオンは混乱をきわめていた。連邦政府より密命をうけ、この地に降り立った、神父、軍人ら経歴もさまざまな七人の男女は一路<時間の墓標>をめざす。その旅の途上で明らかにされていく、数奇な宿命を背負う彼らの波瀾にみちた物語とは・・・・・・? あらゆるSFの魅力を結集し卓越したストーリーテリングで描く壮大なる未来叙事詩、ここに開幕!

ネットで「評判高いので読んだがSFあんまり読んだことがないのでつらかった」との評判をちらっと見ましたがたしかに読み出しがつらいかもしれません。
SF的な用語やら概念がなんの説明もなくばんばんでてきます。
慣れていれば目新しいことはないのですが...。

ストーリーは巡礼に向かう男女がそれぞれそこに至るまでの経緯を語る劇中劇と、巡礼模様をつづる文章とで構成されているなかなか凝ったつくりです。
それぞれホラーありファンタジーあり、親子の情愛で泣かせあり、恋愛ありとなっています。

読んでみての全体的な印象として、確かに「名作だなぁ」と思いました。
引き込まれますし、面白い!
(若干とっつきづらいかもしれませんが)
ただ、なんだか過去の作家やら作品のエッセンスをうまく集めて料理しただけというようなうさんくさいような釈然としないものも感じました。
(例えば司祭の物語は「闇の左手」風、舞台はニューギニア風ですが)
アシモフやらなにやらから見れば第三世代の作家という感じで新奇なアイディアやら構図を売りにしていた「SF」がその道具立てを使って「ストーリー」「中身」で勝負しようという時代になっているということかもしれません。
解説にも書かれていましたが、「圧倒的な筆力」「巧みなストーリーテーリング」が本質なんだと思いますが...オリジナリティのない作品という言い方もできるかもしれません。
まだ出てから新しいので評価が高いですが、50年・60年耐えられる作品であるかはわからないかもしれません。

出来としては前半の
司祭の物語、兵士の物語、詩人の物語、学者の物語まで「すごい!どうなってしまうんだろう」という感じで「これはものすごい作品かもしれない」と思いましたが、終盤の二つの物語は全体を収束に向かわせる位置づけということもあるためか今一つと感じました。
前4つの物語だけ他全部を「謎」にしてしまって終わっていれば不朽の名作になったような気がします。(私見ですが)

後の2つの物語で、ハイペリオンを巡る謎の正体的なもの背景的なものが徐々に見えてきます。
これが「俗」というか、なんだかわかりやすい構図でどうも興ざめな気がしました。
「ハイペリオン」全部読んでみての感想は....まぁ普通の名作かなぁ。
でもこの「ハイペリオン」では巡礼も謎も完結されていません。
続編「ハイペリオンの没落」を読んでみないと全体の評価はできないかもしれませんね。(入手済み)
「ハイペリオンの没落」を読んだら4部作全部読まなきゃになるかもしれませんが....。

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