清水伯鳳という人物をご存じだろうか。
以前、大槻ケンヂさんがエッセイで何度か紹介されており知ったのだが、この人の人生というか生き様というのが、実にハッタリがきいていてよい。
オーケンによると、清水氏は
「世界各国の要人を守るプロボディーガード一家の17代目」
いきなり、ハッタリがきいている。池上遼一先生とか、一昔前の劇画に出てきそう。
「プロボディーガード」だけでなく、「一家」とつくところが、またいい。
そんな彼の所属する極秘部隊は、その名も「闇部隊・ブラック」。
闇部隊・ブラック。
これまた、レインボーマンとかコンドールマンとか、昔のヒーロー特撮に出てきそう。死ね死ね団とか。
なんでも、この組織は
「国家レベルの極秘事項」
だそうだが、清水氏の著作に堂々と紹介されており、そのあたりがまた落合信彦というか角川春樹風味で、ナイス極秘である。
そんな清水氏は当然、幼少のころから英才教育を受けることに。
要人警護のための、日夜猛特訓を課されていたのだが、その内容というのが、
「食事は片足立ち」
「その際、テーブルはなく上げている方の足の膝に皿を置く」
「もし落としたら一食抜き」
「夜は丸太の上で寝る」
「その際、テーブルはなく上げている方の足の膝に皿を置く」
「もし落としたら一食抜き」
「夜は丸太の上で寝る」
映画『少林寺三十六房』を思わせる修行、というか苦行。内容的に、
「すごいのはわかるけど、それって意味あるの?」
そう疑いたくなるあたりも、味わい深い。
しかも、家にいてもスキあらば、父親や祖父が襲いかかって来るという。
もちろん寝ているときでも。24時間、気が抜けないのだ。
よく思春期の女の子などが、
「ウチの両親、すごく干渉してくるの。マジウザイ」
なんて愚痴を言ったりしているが、清水家とくらべれば、たいしたことはなかろう。
というか、これってほとんど児童虐待なのでは?
そんな清水一家も、時には家族で旅行することもある。
だが、もちろん「闇部隊・ブラック」の人間に、のどかな旅行などあるはずもない。
ハイキングで山を登り大自然にふれ、「パパ、空気がきれいだね」なんて深呼吸でもしたところで、清水パパはこう宣言するのだ。
「ここで生きてみろ!」
どんな宣言だ。
凡百の育児書には決して載っていないであろう、オンリーワンすぎる親父の子育てメソッド。
さらにはコブラとマングースを戦わせて
「ここから一瞬の攻撃を学び取れ!」
なんてイメージトレーニング(たぶん)をさせられたり、いきなり飛行機に乗せられて、パラシュート初体験なのに決死のダイビングを敢行とか、もうやりたい放題。
まるで虎の穴か竜牙会。私が子供なら、「気ィ狂うとんのか!」とのつっこみが抑えられないところだ。
そんな過酷な試練をクリアすると待っているのが、卒業試験。
でまた、その内容というのが、
「麻薬中毒からの更正」
「電気ショック」
「足の指の間にキリを刺す」
「電気ショック」
「足の指の間にキリを刺す」
三つの中からひとつ選んで、
「これに耐えてみろ!」。
いや、どれも普通に拷問なんスが……。
ここまでで充分にお腹一杯な気持ちだが、修行にはさらに続きがある。
無事卒業試験を終え(ちなみに「キリを刺す」を選ばれたそうです)ボディーガードとして一人前になったのかといえば、そこにはまたもやパパが立ちはだかり、こんな指令が。
「お前は笑うということを知らない。それではいかん。今すぐお笑い芸人に弟子入りしろ」
国家機密レベルのボディーガードが、なぜお笑い。
やはりこれからの時代には、警護にもユーモアのセンスが大事なのだろうか。
これを受け、清水氏は実際に萩本欽一さんの付き人をやっていたそうある。
欽ちゃんファミリーだったのか。これは、さすがの私も、
「オーケン、それは話作ってるやろ!」
つっこみたくなったが、後日『欽ちゃんの仮装大賞』にゲストで出たオーケンが、欽ちゃんご本人にたずねると、
「あ、清水君、いたね。無口な人だったよ」
ホンマの話やったんかい!
そんなハードなんだかスットコなんだか、よくわからない清水伯鳳さんには娘さんがおられるそう。
「筋肉番付」や「ウルトラマンメビウス」他にも、なんと「水戸黄門」にまで出演しているアクション女優さんなのであった。
写真を拝見したが、清水あすかさんといって、とってもおきれいな方。
雑誌『映画秘宝』ではお父さんに続いてオーケンと対談し、「正拳突き」についてマニアックな知識(テレビと違ってバックスイングを取らない、とかなんとか)を披露されておられた。
やはり彼女もお父さんから、「ここで生きてみろ!」と密林の中に放り出されたのであろうか。
想像するだに、実にハッタリがきいていて、いい話である。
18代目の活躍が、今から楽しみだ。