前回(→こちら)の続き。
「空手美女、フィリピンで強盗をノックアウト」。
という記事が日本の新聞に掲載されたと、バックパッカー専門誌『旅行人』に紹介されたことがある。
夜、現地のチンピラに襲われた日本人女性が空手で見事、ならず者どもを撃退したというのだ。銃を奪い取って威嚇発砲など、素人ばなれした度胸の持ち主である。
しかしである、楽しく読んだその記事には、当然のごとく、こんな疑問がわきあがってくるではないか。
これ、ホンマの話なんかいな。
空手美女、強盗をノックアウト。おもしろい記事ではあるが、ちょっとおもしろすぎるのではないか。もしかしたら、若干「ネタ」が入ってるのではないか。
と、思っていたら、あにはからんや。なんとこの記事、調査が進むにつれ真実とは違うことが明らかになったという。
おお、それはどういうことだ。新聞といえば、真実を報道するのが仕事である。ましてやこれが掲載されていたのは朝日新聞ときたもの。
昨今、なにかと風当たりの強い朝日だが、私は全面的に信頼していた。天下の大朝日が捏造など、するわけあるけどないのである。
その判断は誤りではなかった。朝日は一切ウソなど書いていなかった。ただ、現地の新聞を、「そのまま誠実に」訳しただけなのである。
ことの真相はこうらしい。
日本人女性がフィリピンで強盗に襲われた、ここまでは合っている。女性二人が強盗に対して抵抗したのも事実だ。
だがそこに「空手で大立ち回り」などといったアクションは存在しなかった。必死で抵抗する女性に業を煮やした強盗たちは、途中であきらめて逃げていった。
その際、落とした拳銃をその女性が拾って空に威嚇発砲したのは本当らしいけど(これはこれでけっこうすごいけど)、話はそこでおしまい。
え? そんだけ? なんか、聞いてたのと、ずいぶんとちがうような……。
では、なぜそれが
「空手美女、フィリピンで強盗をノックアウト」
なんて勇ましいことになったのかと問うならば、どうもこの記事を担当した記者が、こまかいことは知ってか知らずか適当に書いた、ということらしい。
事件を耳にした記者は、
「なに、日本人旅行者が強盗を追い払ったやと? 記事になるやんけ!」
すぐさまタイプを叩きはじめる。
が、取材された事実を見るにつけ、
「なんや、こらまた、ありがちなトラブルやなあ。いまいち、おもろないやんけ」
と思ったのかどうか、
「あかん、こんなんでは読者はよろこばへん! もっと盛り上げなアカンわ!」
なんて、記者氏は妙なサービス精神と、エンターテインメント魂を発揮。そこで、
「日本人いうたら空手ちゃうんかい!」
と思ったのかどうか、なぜか話は大きくふくれあがり、記者氏もタイプのキーを叩きながら
「アチョー!」
「ホアア!」
「チェストー!」
などと一人で勝手に盛り上がり(推測)、そのまま筆は豪快にすべり、いつの間にかショー・コスギもまっ青の空手活劇に。
そういった流れで、事実よりも大幅にふくれあがった記事を書き上げてしまったのである。
ほとんど私の妄想だけど、たぶん8割がた合っていると思う。いや、たしかにできあがった記事はおもしろいけど、勝手に話作るなよフィリピンの新聞!
いい面の皮なのは、それをそのまま訳して掲載してしまった朝日新聞だ。後日、
「そのような事実はありませんでした」
とちゃんと訂正したのであるが、とんだ大迷惑であった。
一方フィリピンの方も、こちらもきちんと訂正・謝罪記事は載せたのだが、その内容というのが、
「いやー、なんかホンマは空手とか使ってなかったらしいね、すまんッス。でも、おもしろかったからええよね、ナッハッハ!」
といった南国的フランクなノリであり、どう考えてもそれは、謝罪しているようには見えない。なんて、ええかげんな。
そんな「大スポかよ!」とつっこみたくなるようなお騒がせ記事であるが、
「話を盛り上げるためには、多少のふかしは誤差の範囲内」
という妙なサービス精神は、なんとなく憎めないところはあるなあ。
「空手美女、フィリピンで強盗をノックアウト」。
という記事が日本の新聞に掲載されたと、バックパッカー専門誌『旅行人』に紹介されたことがある。
夜、現地のチンピラに襲われた日本人女性が空手で見事、ならず者どもを撃退したというのだ。銃を奪い取って威嚇発砲など、素人ばなれした度胸の持ち主である。
しかしである、楽しく読んだその記事には、当然のごとく、こんな疑問がわきあがってくるではないか。
これ、ホンマの話なんかいな。
空手美女、強盗をノックアウト。おもしろい記事ではあるが、ちょっとおもしろすぎるのではないか。もしかしたら、若干「ネタ」が入ってるのではないか。
と、思っていたら、あにはからんや。なんとこの記事、調査が進むにつれ真実とは違うことが明らかになったという。
おお、それはどういうことだ。新聞といえば、真実を報道するのが仕事である。ましてやこれが掲載されていたのは朝日新聞ときたもの。
昨今、なにかと風当たりの強い朝日だが、私は全面的に信頼していた。天下の大朝日が捏造など、するわけあるけどないのである。
その判断は誤りではなかった。朝日は一切ウソなど書いていなかった。ただ、現地の新聞を、「そのまま誠実に」訳しただけなのである。
ことの真相はこうらしい。
日本人女性がフィリピンで強盗に襲われた、ここまでは合っている。女性二人が強盗に対して抵抗したのも事実だ。
だがそこに「空手で大立ち回り」などといったアクションは存在しなかった。必死で抵抗する女性に業を煮やした強盗たちは、途中であきらめて逃げていった。
その際、落とした拳銃をその女性が拾って空に威嚇発砲したのは本当らしいけど(これはこれでけっこうすごいけど)、話はそこでおしまい。
え? そんだけ? なんか、聞いてたのと、ずいぶんとちがうような……。
では、なぜそれが
「空手美女、フィリピンで強盗をノックアウト」
なんて勇ましいことになったのかと問うならば、どうもこの記事を担当した記者が、こまかいことは知ってか知らずか適当に書いた、ということらしい。
事件を耳にした記者は、
「なに、日本人旅行者が強盗を追い払ったやと? 記事になるやんけ!」
すぐさまタイプを叩きはじめる。
が、取材された事実を見るにつけ、
「なんや、こらまた、ありがちなトラブルやなあ。いまいち、おもろないやんけ」
と思ったのかどうか、
「あかん、こんなんでは読者はよろこばへん! もっと盛り上げなアカンわ!」
なんて、記者氏は妙なサービス精神と、エンターテインメント魂を発揮。そこで、
「日本人いうたら空手ちゃうんかい!」
と思ったのかどうか、なぜか話は大きくふくれあがり、記者氏もタイプのキーを叩きながら
「アチョー!」
「ホアア!」
「チェストー!」
などと一人で勝手に盛り上がり(推測)、そのまま筆は豪快にすべり、いつの間にかショー・コスギもまっ青の空手活劇に。
そういった流れで、事実よりも大幅にふくれあがった記事を書き上げてしまったのである。
ほとんど私の妄想だけど、たぶん8割がた合っていると思う。いや、たしかにできあがった記事はおもしろいけど、勝手に話作るなよフィリピンの新聞!
いい面の皮なのは、それをそのまま訳して掲載してしまった朝日新聞だ。後日、
「そのような事実はありませんでした」
とちゃんと訂正したのであるが、とんだ大迷惑であった。
一方フィリピンの方も、こちらもきちんと訂正・謝罪記事は載せたのだが、その内容というのが、
「いやー、なんかホンマは空手とか使ってなかったらしいね、すまんッス。でも、おもしろかったからええよね、ナッハッハ!」
といった南国的フランクなノリであり、どう考えてもそれは、謝罪しているようには見えない。なんて、ええかげんな。
そんな「大スポかよ!」とつっこみたくなるようなお騒がせ記事であるが、
「話を盛り上げるためには、多少のふかしは誤差の範囲内」
という妙なサービス精神は、なんとなく憎めないところはあるなあ。