底抜けロールプレイングゲームで遊ぼう 友野詳『バカバカRPGをかたる』

2017年12月27日 | オタク・サブカル
 『バカバカRPGをかたる』を読む。
 
 タイトル通り、この世にはびこるおバカ(もちろんホメ言葉)なロールプレイングゲームを語るというもの。
 
 著者はグループSNEに所属し「ルナルサーガ」や「妖魔夜行」シリーズなどで活躍する友野詳さん。
 
90年代、ひそかに到来したRPGブーム時代に青春期をすごした身としては、たいそうなつかしい一冊だ。
 
 ここでひとつ注意なのは、RPGといってもいわゆる『ドラクエ』や『FF』のようなコンピューターゲームのことではないこと。
 
 『ダンジョンズ&ドラゴンズ』とか、最近ニコニコ動画でブームらしい『クトゥルフの呼び声』。
 
 またSNE発信の国産本格RPG『ソードワールド』のような、いわゆるTRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)のことなんですね。
 
 一口にロールプレイングゲームといっても、その裾野は幅広い。

 ドラクエ的ファンタジーだけでなく、ホラーSF学園ものにスチームパンクなど、さまざまなバリエーションが用意されている。
 
 となると当然「ギャグ」ものもあって、それがさらに悪ノリして「バカ」にいきつくゲームだって出てくるわけで、そんな世界のB級RPGを紹介していくのが、この友野さんの本だ。
 
 どれだけ腰砕けかというと、開口一番に取り上げられる作品からして『マッチョウィメンウィズガン』。
 
 乙一さんの『銃とチョコレート』ならぬ、『筋肉ねーちゃん』。
 
 このタイトルだけで、もう中身はだいたい想像がつくというもの。
 
 まず、キャラクターの能力値に堂々と「のサイズ」というのが存在する。
 
 「筋力」「知力」「精神力」「魔力」といったところの数値が大事なのは、TRPGでもコンピューターRPGでも変わらないけど、そこに並んで
 
 「バストサイズ」。
 
 実にスカタンだが、設定だけでなくルールの方も負けてない。
 
 たとえば、交渉などで力を発揮する「カリスマ(魅力度)」の数値を3倍すると、それがそのままバストサイズに。
 
 このルールだとつまり
 
 
魅力ある人物」=「とにかくのデカい奴」
 
 
 ということになり、その「乳原理主義」がほとばしっている。
 
 さらにすごいことに、基本キャラクターが全員バカのこのゲームで、たまさか「知性派」キャラを選んでしまうと、彼女の胸のサイズは強制的に「Aカップ」にされてしまう。
 
 
「巨乳」=「美人」
 
 「頭がいい女」=「貧乳
 
 
 下品なオヤジ中学生のごとき、豪快な偏見がほとばしっている。胸は「ほどほど」派の私にはついていけませーん。
 
 さらにはこのゲーム、クラスは「エルフ」や「ドワーフ」でなく
 
 
 「マッチョねーちゃん」
 
 「ブチギレ修道女」
 
 「うっふん女悪魔」
 
 
 「戦士」「魔法使い」の代わりに
 
 
「大暴れ女子高生」
 
 「地獄のナース」
 
 「プロの女王様」
 
 
 敵キャラには「スライム」や「ドラゴン」ではなく
 
 
 「ショタゴスロリ」
 
 「弁護士」(なぜ?)
 
 「AV監督」
 
 「殺人サンタ」
 
 「顔面チ○チン」
 
 
 特殊技能も「暗黒魔法」「鍵開け」などはなく。
 
 
 「(車に乗って)アクロバティックに銃弾の雨をかいくぐり、壊れた橋をジャンプする」
 
 
 ちなみに、上記の「ジャンプ」は難易度でいえば「楽勝」でサイコロ判定にプラス2のボーナスがあるにもかかわらず、「縦列駐車」の難易度は「超至難」でマイナス5のペナルティー。
 
 欽ちゃんのように、「なんでそーなるの?」といいたくなるところだが、答えは簡単で
 
 
バカだから」
 
 
 このゲームでは、かわいいではなくバカが正義なのですね。

 超絶カーチェイスはできても、ふつうの駐車はできないという楽しさ。

 そういや、ムチャクチャ運転うまいのに免許の試験で落とされるヤンキーとかいたよなあ。
 
 ここまで読んで「すげーなー」とゲラゲラ笑う方と、「ふざけんな!」と本をブン投げる方とで、本書の評価は大きく分かれることだろう。
 
 とにかく、全編開いた口が塞がらないスットコゲームばっかし。他にも、

 

 女子高生が、イヤボーン(追いつめられた女の子が「イヤー!」とさけんだ瞬間に能力が覚醒して大爆発が起こるSFアニメの「あるある」シーン)で河童天狗と戦う『パンティ爆発』(原題もバッチシ『Panty Explosion』だ!)。



 人類滅亡が近い近未来で、ドラッグ漬けの放火魔露出狂が大活躍する『ASYLUM


 
ゾンビになって、ロメロのようにショッピングセンターで暴れまわったり、中世ヨーロッパによみがえってを恐怖で支配したり。

 主君である浅野内匠頭を殺された47体のゾンビが吉良邸に討ち入ったり。

 果てはカンフーの達人ゾンビがヌンチャクを手に吠えまくる『燃えよゾンビ』なんかが遊べちゃう『オールフレッシュマストビーイートン


 
 キミもNINJAになってハンバーガーの配達をしよう!

 ただし、30分たっても届かないときは責任を取って切腹だ! 『ニンジャバーガーロールプレイングゲーム



 
 
 といった香ばしいラインアップがまぶしい。
 
 嗚呼、なんて楽しそうなんだ。どれも遊んでみたいぞ、バカ万歳
 
 
 

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