『バカバカRPGをかたる』を読む。
タイトル通り、この世にはびこるおバカ(もちろんホメ言葉)なロールプレイングゲームを語るというもの。
著者はグループSNEに所属し「ルナル・サーガ」や「妖魔夜行」シリーズなどで活躍する友野詳さん。
90年代、ひそかに到来したRPGブーム時代に青春期をすごした身としては、たいそうなつかしい一冊だ。
ここでひとつ注意なのは、RPGといってもいわゆる『ドラクエ』や『FF』のようなコンピューターゲームのことではないこと。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』とか、最近ニコニコ動画でブームらしい『クトゥルフの呼び声』。
またSNE発信の国産本格RPG『ソード・ワールド』のような、いわゆるTRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)のことなんですね。
一口にロールプレイングゲームといっても、その裾野は幅広い。
ドラクエ的ファンタジーだけでなく、ホラーにSF、学園ものにスチームパンクなど、さまざまなバリエーションが用意されている。
となると当然「ギャグ」ものもあって、それがさらに悪ノリして「バカ」にいきつくゲームだって出てくるわけで、そんな世界のB級RPGを紹介していくのが、この友野さんの本だ。
どれだけ腰砕けかというと、開口一番に取り上げられる作品からして『マッチョ・ウィメン・ウィズ・ガン』。
乙一さんの『銃とチョコレート』ならぬ、『銃と筋肉ねーちゃん』。
このタイトルだけで、もう中身はだいたい想像がつくというもの。
まず、キャラクターの能力値に堂々と「胸のサイズ」というのが存在する。
「筋力」「知力」「精神力」「魔力」といったところの数値が大事なのは、TRPGでもコンピューターRPGでも変わらないけど、そこに並んで
「バストサイズ」。
実にスカタンだが、設定だけでなくルールの方も負けてない。
たとえば、交渉などで力を発揮する「カリスマ(魅力度)」の数値を3倍すると、それがそのままバストサイズに。
このルールだとつまり
「魅力ある人物」=「とにかく胸のデカい奴」
ということになり、その「乳原理主義」がほとばしっている。
さらにすごいことに、基本キャラクターが全員バカのこのゲームで、たまさか「知性派」キャラを選んでしまうと、彼女の胸のサイズは強制的に「Aカップ」にされてしまう。
「巨乳」=「美人」
「頭がいい女」=「貧乳」
下品なオヤジか中学生のごとき、豪快な偏見がほとばしっている。胸は「ほどほど」派の私にはついていけませーん。
さらにはこのゲーム、クラスは「エルフ」や「ドワーフ」でなく
「マッチョねーちゃん」
「ブチギレ修道女」
「うっふん女悪魔」
「戦士」「魔法使い」の代わりに
「大暴れ女子高生」
「地獄のナース」
「プロの女王様」
敵キャラには「スライム」や「ドラゴン」ではなく
「ショタゴスロリ」
「弁護士」(なぜ?)
「AV監督」
「殺人サンタ」
「顔面チ○チン」
特殊技能も「暗黒魔法」「鍵開け」などはなく。
「(車に乗って)アクロバティックに銃弾の雨をかいくぐり、壊れた橋をジャンプする」
ちなみに、上記の「ジャンプ」は難易度でいえば「楽勝」でサイコロ判定にプラス2のボーナスがあるにもかかわらず、「縦列駐車」の難易度は「超至難」でマイナス5のペナルティー。
欽ちゃんのように、「なんでそーなるの?」といいたくなるところだが、答えは簡単で
「バカだから」
このゲームでは、かわいいではなくバカが正義なのですね。
超絶カーチェイスはできても、ふつうの駐車はできないという楽しさ。
そういや、ムチャクチャ運転うまいのに免許の試験で落とされるヤンキーとかいたよなあ。
ここまで読んで「すげーなー」とゲラゲラ笑う方と、「ふざけんな!」と本をブン投げる方とで、本書の評価は大きく分かれることだろう。
とにかく、全編開いた口が塞がらないスットコゲームばっかし。他にも、
女子高生が、イヤボーン(追いつめられた女の子が「イヤー!」とさけんだ瞬間に能力が覚醒して大爆発が起こるSFアニメの「あるある」シーン)で河童や天狗と戦う『パンティ爆発』(原題もバッチシ『Panty Explosion』だ!)。
人類滅亡が近い近未来で、ドラッグ漬けの放火魔や露出狂が大活躍する『ASYLUM』
ゾンビになって、ロメロのようにショッピングセンターで暴れまわったり、中世ヨーロッパによみがえって村を恐怖で支配したり。
主君である浅野内匠頭を殺された47体のゾンビが吉良邸に討ち入ったり。
果てはカンフーの達人ゾンビがヌンチャクを手に吠えまくる『燃えよゾンビ』なんかが遊べちゃう『オール・フレッシュ・マスト・ビー・イートン』
キミもNINJAになってハンバーガーの配達をしよう!
ただし、30分たっても届かないときは責任を取って切腹だ! 『ニンジャバーガー・ザ・ロールプレイング・ゲーム』
といった香ばしいラインアップがまぶしい。
嗚呼、なんて楽しそうなんだ。どれも遊んでみたいぞ、バカ万歳!