ダウンタウンの「ヤングタウン木曜日」とミニFMパーソナリティー

2020年03月26日 | 若気の至り

 「ラジオのことイジってくるんやったら、もうお前とは終わりやな」

 

 友人センボク君にそう詰められたのは、まだ高校生だったころの話である。

 今では自分のをだれかに届けるとなると、ネットでわりと気軽に出来るけど、YouTubeニコ生の環境などない、いにしえの時代には、それなりのハードルがあった。

 文章が書きたければワープロで起こしたものをせっせとコピーし、ミニコミの表紙はハサミノリで切り貼りして作り、動画編集がしたければビデオデッキ2台買ってテープに録画したものをダビングする。

 そんな古代人でラジオがやりたい人は「ミニFM」というものを手に入れ、それで電波を発信していた。

 といっても、届く距離は微々たるもので、せいぜいが「学校の放送室」レベル。

 それでもちゃんとした「オンエア」であることは間違いなく、将来ラジオの仕事がしたいという若者は、マイクを前にせっせと音楽を流しトークを披露していたわけなのだ。

 で、あるときその「ミニFM」が取り上げられたことがあって、それが若き日のダウンタウンがやっていたラジオ番組「ヤングタウン木曜日」。

 オープニングトークの次にある「ハッピートゥデイ」というコーナーにこんなハガキが来たのだ。

 

 「ボクは高校生男子ですがラジオが大好きで、ミニFMを使って自分の番組を持っています」

 

 ハガキでは続けて、

 

 「番組名は《キヨくんFМ》というもので、音楽だけでなくボクのギャグセンスあふれるおしゃべりもあり、とってもステキな内容に仕上がっています。よかったらダウンタウンのおふたりも、ボクの番組を聴いてみませんか」

 

 なにか「仕込み」ではないかと疑ってしまうような、さわやかに若気が至っている。

 案の定というか「ボクのギャグセンス」あたりで浜田さんが「チッ」と舌打ちし、松本さんも「あーもー」とイヤそうな声をあげる。

 そこからハガキを最後まで聞くこともなく、

 

 「全然おもんない」

 「そんな才能もないこと、やめてまえ」

 「コイツ、なにをいうとんねん」

 「ホンマにおもろい奴は、こんな前に出ようとせえへんからね」

 

 なんてダルそうにダメ出しをしまくりで、アシスタントのYOUさんが

 

 「いいじゃん。だって、まだ高校生だよ」

 

 とフォローに奔走させられる始末。

 私がキヨ君だったら、すぐさまトイレに走って胃の中のもの全部、泣きながら便器にぶちまけると思うけど(もちろん番組は即刻終了だ)、まあ他人事なら大笑いである。

 で、なにかの流れでセンボク君にこの話をしたのだが、そこで出たのが冒頭の言葉。

 それ嘲笑するんやったら、もうおまえとはしゃべらん、と。

 ずいぶんと剣呑な雰囲気で、「あ、なんかやらかしたかな」という空気感はすぐに伝わったが、このことを別の友人カワチ君に話すと、彼はそれこそ腹をかかえて笑いながら、

 

 「それはアカンわー。だって、センボクのやつ、自宅でミニFMの番組やってるもん」

 

 ゲ、しまった。そういうことか。

 そうなのである。センボク君はヤンタンや「鶴瓶新野のぬかるみの世界」「青春ラジメニア」などのリスナーで大のラジオ好きだったから(確認はしてないけど、たぶんハガキも送ってる)、その可能性に気づかなかったのは不覚であった。

 まあ、こういうのはイジるのもイジられるのも、YOUさんの言う通り

 「だって、まだ高校生だよ」

 ってことだけど、これは気まずかったッス。

 しかも彼は、のちに大阪芸術大学放送学科に進学するくらいだから、「自分の番組を持つ」のも、ガチ中のガチであったのだ。そりゃ怒りますわな。

 苦笑いするしかないというか、自分だって当時から舞台に立ったりミニコミを作ったりしていたんだから、どのツラ下げてミニFMをイジッてるねんという話だ。

 反省した私は「ゴメン、あやまるわ」と頭を下げたわけだが、センボク君はまだ不機嫌な顔こそしていたが、

 

 「ええよ。オレがメインで聴いてるのはヤンタンやなくて、『鶴光のつるつる90分』やから」

 

 ボソッとそれだけ言って、ゆるしてくれたのであった。

 

 

 ★おまけ ダウンタウンの「ヤングタウン木曜日」は→こちらから。私にとってダウンタウンは「ごっつ」でも「ガキ使」でもなく「ヤン木」なのです。

 

 


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