アラビア語は激ムズである。
ここ2年程、スキマ時間に語学の学習をするのにハマっている。
昔は外国語、特に第二外国語を勉強するなれば高い参考書を買って、さらに高い辞書も手に入れないといけなかった。
参考書は2000円くらいで、辞書は4500円くらい。
文法はまだ独学できるとしても、発音やリスニングはこれまた高いカセットテープ(!)やCDを買ってきてやることに。
たぶん、ネイティブ的には不自然なんだろうなーみたいな、教科書的例文を暗唱。
手間も金銭的負担もなかなかで、そもそも勉強自体も大変だしと、かなりハードルの高いものだったのだ。
それが今では、YouTube見ればネイティブや留学生の講座が山ほどあり、学習アプリも充実。
単語の意味や文法のわからないところも、検索するなりAIに聴くなり、コメント欄で質問するなりすればいいのだから、ホントにいい時代になったものだ。
マジで、自分が大学でドイツ語やってたとき、今みたいなアイテムあったら、どんだけ助かったことか!
なんて、完全にオジ……豊富な人生経験を持つ壮年紳士のグチから入ってしまったが、こんないろんな便利なものは使わないにしくはないと、せっせと外国語を学ぶ日々。
大西泰斗先生の『ラジオ英会話』と、あとは1日10分ほどアプリで遊んだりYouTubeを見たりするだけだけど、それでもコツコツやってれば、それなりの成果は出るから継続は力なり。
フランス語をやって、軽くドイツ語をさらって、そのあとはスペイン語に。
スペイン語はもともと日本人向けの言語なうえに、あらかじめ同じロマンス語圏のフランス語をやっていたから、かなりスムーズに勉強できた。
特に発音が楽なのは本当に大きく、あとローマ字読みでいいと単語がおぼえやすいということにも気づいて(だからドイツ語も単語は覚えやすかった)、言い方は悪いが、
「フランス語のイージーモード」
みたいな感覚だった。
もちろん、基礎の部分をサラッとやるだけだから(過去形と未来形くらいまでで終わり)、ネイティブみたいになれるとかは全然ないけど、それでも、
Tu es gros, tu devrais manger de la pizza.
(あなたは太っているので、ピザを食べるのがよいでしょう)
Wollen wir Mahjong mit Blut spielen?
(血液を賭けて麻雀をしませんか?)
Ese es el que me hirió con una pistola de aire comprimido
(あれが私をエアガンで撃った人です)
くらいの文章なら一応読めるのだから、継続というのは偉大である。
私の目的は旅行で買い物をしたり、現地の人と軽い雑談くらいできればいいのだから、こんなもんでも十分なのだ。
こうして、日・英・独・仏・西のペンタリンガル(ちょっとだけ)になった私は、さらなる獲物を探して世界地図を見つめる。
次に目をつけていたのが、アラビア語。
当初の予定では、フランス、ドイツ、スペインのメジャー言語を押さえたあと、アラビア語、中国語と進む予定だった。
昔、専攻してたドイツ語はそんなに広く使えないけど(戦争に負けたから)、英語はもともと通用度の高い言葉で、インド、東アフリカなどでも使える。
フランス語はフランス(ベルギー、ルクセンブルク、スイス)とマグリブ、西アフリカで活躍する。
スペイン語で南米は全押さえとなれば、あとアラビア語と中国語をマスター(あくまでちょっと)すれば、もう世界中どこでも旅行できるんじゃね?
かつてイスラム圏を旅行した経験からアラビア語には興味あったし、できればヨーロッパ言語以外の言葉を知りたいという欲求もあった。
なにより、あのエキゾチックなアラビア文字が読めたら、結構自慢というか、合コンの話のタネにも使えるだろう。
そういや、昔モロッコで買ったアザーン(イスラム圏で流れる《お祈りしましょう》という学校放送みたいなやつ)のCDを女の子にプレゼントしたら、すげえ微妙な顔されたなあ。
その後、演劇をやっていた友達が「音響に使えそう」って持って行ったっけ。
そんなことを思い出しつつ、ここに発動された「イラルアム作戦」により、森本公誠『イブン=ハルドゥーン』など読みながら、アラビアンな気持ちも高まっていたのだが、あにはからんや。
このアラビア語なるものが、言語学習者泣かせというか、気ちがいというか。
まさに「ラスボス級」のガチさを誇るとは思いもしなかったのだった。
(続く)