ジョー・ダンテ『MANT!』と『マチネー/土曜の午後はキッスで始まる』はB級映画大好き青春映画

2022年12月22日 | 映画

 『マチネー/土曜の午後はキッスで始まる』を観る。

 ジョーダンテ監督。1960年代のアメリカ、フロリダ州の田舎町を舞台にした青春ラブコメディーだ。

 子供たちのういういしい恋愛感情に、世界を震撼させた「キューバ危機」をめぐる混乱と、監督自身の映画へのをまぶした、なかなかいい感じの佳作に仕上がっているが、やはりこの映画の最大のポイントは、オープニングで紹介されるアレ

 主人公たちがのドタバタを披露するのは、街にある映画館(と、その地下にある核シェルター)なんだけど、そこでかかる映画というのがイカしている。

 忍び寄る突然変異体、逃げまどう群衆、絹を切り裂くような美女の悲鳴……。

 そう、それこそが蟻と人間の合体した「アリ人間」が人を襲う恐怖映画、『MANT!』なのだ!

 『MANT!』。

 

 

 

 

 これを見せられた時点で、みんな思いますよね。

 あ、これ絶対オモロイ映画やん、と。

 オープニング・クレジットのバックに予告編が流れるんだけど、これがやたらと演出がおどろおどろしいとか、悲鳴がやかましいとか、役者の演技が微妙とか。

 でも、アリ人間の着ぐるみだけやけに出来がいいとか(笑)、いやもう、

 

 「ジョー、わかってるやん!」

 

 という内容。タイトルもすばらしい!

 

 

 

 

 

 開始数分で「勝ったも同然」と思わせる出だしだが、さらにピュウと口笛でも吹きたくなるのが、『MANT!』の監督であるローレンスウールジー

 

 

 

 

 アルフレッドヒッチコックのバッタもんのようだが(劇中間違えられて不機嫌になるシーンもある)、モデルはオーソンウェルズとか、ウィリアムキャッスルとか、エドウッドとか、ロジャーコーマンとか、そのへんの「ハッタリ」系の天才映画人が持つケレン味を詰めこんだ感じ。

 口八丁の手八丁、サービス精神旺盛で、映画が当たりさえすればどんなウソでも平気でつけるという、クリエイターというよりは興行師という呼び名の方が似合うタイプ。

 この人が実に味があって、「アトモビジョン」(もしかして「アトミック・ビジョン」?)なる、あからさまにうさんくさい「発明」を看板にあげながら、堂々と会場に乗りこんでくる。

 その正体は映画のアクションに合わせてが出たり、が立ち込めたり、スクリーンの向こうから本物(?)のアリ人間が飛び出してくるなど、今でいう「4DX」の走りのようなもので、これがなかなかのアイデア。

 実際、劇中の上映シーンでも観客は大喜びで、ストーリとともにそのドタバタもゴキゲンで楽しいのだ。

 そのB級感が、なんともいえない。「4DX」のような「流行の最新設備」ではなく、どちらかといえば移動遊園地の「見世物小屋」テイスト。

 マリトッツォやカヌレでなく、カルメラ焼きベビーカステラのお店。チープだけど、それがいい。楽しい

 本編の恋模様と、このやたらと大仰なスラップスティックのバランスがよく、実にうまくできている。

 いやあ、オレも、この映画館行きたいよ!

 ストーリー自体は正統派なラブコメで、中学のクラスメートであるジーンサンドラが、ひょんなことから地下の核シェルターに2人きりで閉じこめられて、もうドキドキ。

 そのうち『MANT!』が上映されると、その音や振動で2人は「第三次大戦」がはじまったとカン違いして、

 

 「どうせ死ぬんやったら……」

 

 顔が徐々に近づいて行って、いやもうこれキスするんちゃうか……。

 ……て、ワシらがアリ人間の映画観てるウラで、お前ら、そんなイチャイチャすな!(笑)

 そんな、とってもカワイイお話です。 

 バカっぽく見せかけてるけど、当時の風俗とか、「核戦争」「第三次大戦」の緊張感など、意外と幅広い見どころのある作品。

 上映時間も90分ちょっとと、コンパクトでサクッと見られるし、それこそ土曜日のデートにもいいかも。

 あと、この映画とかローレンス・ウールジーに魅せられた人は、ぜひセオドアローザックフリッカー、あるいは映画の魔』という小説もどうぞ。

 ちょっと長くてマニアックだけど、メチャクチャにおもしろいです。『このミス1位は伊達じゃない!
 

 

 ★おまけ ウールジーの傑作『MANT!』(ジョーはちゃんと全編撮っているのだ。エライ!)は→こちら

 

 


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