少年たちのアブノーマルな性の目覚めあれこれ その2

2016年03月06日 | 若気の至り

 「子供のころの『性への目覚め』って、どんな感じやった?」



 あるとき飲み屋でそんなことを言い出したのは友人ヒメマツ君であった。

 そこで前回(→こちら)は、



 「『ジョイスティック』という言葉にエロスを感じた」

 「ウルトラセブンが、ボーグ星人に押し倒されるところで興奮した」



 などといった、

 「ツイストの効いた性の目覚め」

 を紹介したが、もちろんのこと私にも、そういう経験はあって、それは江戸川乱歩なのである。

 

 「乱歩先生→ホームズクリスティー→乱読バリバリ」

 

 という、正統派ミステリファンである私だが、乱歩先生のスタートもご多分に漏れず「少年探偵団シリーズ」であった。

 小学生のころ、その中の一冊である『魔人ゴング』という本を手に取ると、こんなシーンがあった。

 怪人二十面相扮する魔人ゴングのアジトに、名探偵明智小五郎は、助手の小林少年を潜入捜査に送りこむことにした。

 だが、そのままの姿だと、すぐ正体がバレてしまう。

 そこで明智探偵は小林少年に女装をさせる作戦を提案(小林少年は大変な美少年)。

 このあたり、乱歩先生の趣味が丸出しで大変ナイスな展開だが、策もむなしく、小林少年は囚われの身になってしまう。 

 そこで二十面相は



 「フフフフフ、このまま殺してしまってはおもしろくない。ここでひとつゲームをしよう。助かるか、助からないか、それはお前の運次第だ」



 不敵に笑うと、小林少年をブイに閉じこめて、海に放つのであった。

 ブイの中から、必死で助けを呼ぶ小林少年。

 もし、それに気づいてくれる人が、いれば助かるが、流されたのはどことも知れぬ大海

 近くに船などが、偶然通ってくれればいいが、その可能性は限りなく低い。

 絶望的な状況の中、せまいブイの中で鼻血を流しながら、懸命に助けを求める小林君。

 さすがは世紀の悪党二十面相、なんと残酷な事を考えるのか。

 ひどいではないのか、と憤る以前に、このシーンも明らかに乱歩先生の趣味が炸裂している感がある。

 いたいけな少年を監禁拷問

 先生、ステキです。

 子供心に私は、このシーンを読みながら、なにやらゾクゾクしたのを憶えている。

 今思えば、あれが私の「初めてのヰタ・セクスアリス」であった。

 当時は、そういうボキャブラリーもないほど幼かったが、とにかく、ものすごくエロチックだったのである。

 まとめると、私が生まれてはじめて、セクシャルに興奮した体験というのは、


 「女装した紅顔の美少年がせまいブイの中に閉じこめられて、鼻血を流しながら必死に救助を求め、最後は気絶してしまう」


 というシチュエーションであった。

 なんだか妙にマニアックなところで反応している気もするが、まだ子供だったので、その理由はよくはわからなかったものだ。。

 ただ不思議なのは、そんな、ややアブノーマルな場面でグッと来たにもかかわらず、その後大人になっても、

 

 「女装」「美少年」「監禁」「鼻血」

 

 というキーワードに、まったくひっかからないことだ。

 よく、子供のころ、きれいなスチュワーデスさんを見て、

 「それ以来、客室乗務員いうたら燃えるわ」



 などという人がいるが、どうもそれが、ピンと来ない。

 私には、子供のころのそういった刷りこみは、あまりないようであった。

 「女装」は修学旅行の女装大会でやったが、なんにも感じなかったし、少年も興味ない。

 たとえそれが、スカートをはいていても。

 ブイに閉じこめるなんて、かわいそうなだけだし、世に

 「鼻血女子

 が好きというフェチがいるというのでそういう写真も見てみたが、

 「はよ鼻ふけよ」

 としか思わなかった。

 スタート地点の感動(?)が、長じてからは、ちっとも興味の対象になっていない。

 まあ、たしかにウルトラセブンで興奮したオーケンも、別に大人になっても

 

 「セブン以外はダメ!」

 

 てわけでもないし、最初の目覚めが、そのまま本線の趣味嗜好となるわけでも、なさそうである。

 こういうことをなつかしく思い出していると、もう一度『魔人ゴング』を読みたくなってきた。

 とはいえ、こういうのって今の視点で見ると、案外「ふーん」くらい、なのかもしれないなあ。
 



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