ノバク・ジョコビッチもまた男である! と独眼鉄先輩は言った その2

2016年03月26日 | テニス
 前回(→こちら)の続き。

 「ノバク・ジョコビッチは男の中の男だ」

 そう言い切る根拠は、彼が無敵の王者だからではない。いやむしろ、痛恨ともいえる敗北を喫したあと語った言葉にある。

 フレンチ・オープン決勝でまさかの逆転負け。最大の目標であったタイトルを目の前でかっさらわれたノバクは、ここで落ちていくのかと思いきや、雄々しく試合後のインタビューや取材に応えた。

 そこで言ったことというのが、

 「テニスにおいてもっとも重視されるべきなのは結果だが、それ以上に大事なことがある。それは気骨を見せることと、対戦相手に敬意を払うことだ。僕はそのために出てきた。そしてスタンのテニスはすばらしかった。勝利に値するプレーだった。優勝おめでとう」。

 雑誌でこの一文を読んだとき、私は大げさではなく震えた。人目もはばからずに立ち上がり、吠えたのである。

 「くわあ、ノバク、おまえ、カーッコエエエエエエエエエエエエー!

 スポーツにおいて絶対的な正義というのは勝つことだが、勝負というのはいつもそうあれるわけではない。

 ときには負けることもあり、テニスのような相手のいるスポーツでは、結果を100%自分ではコントロールできないのだ。

 ならば、逆の目が出てしまったときにどういう態度をとれるかが、試されることであるといえる。

 勝って、はしゃいだり、名言を言ったりするのは、きっとたやすいことなのだ。でも、すべてがうまくいかなかったときにどうすべきか。

 気骨を見せること、そして対戦相手に敬意を払うこと。

 これ以上ないほどの見事な解答。正しく、完璧で、そしてなにより正義の答えだ。

 しかも彼は、それを皆の前ではっきりと実践した。

 グチらず、泣き言も言わず、言い訳もせず、ライバルをおとしめることもなく、彼は気骨を見せた。

 おそらく、泣きたかったろう、いや実際トイレでひそかに泣いたかもしれない。マッチポイントが決まった瞬間からこのかたずっと、ショックで、その場にへたりこみたかったにちがいない。

 それをグッと飲みこんで、スタン・ワウリンカに拍手する。なんてカッコイイ。私はこういう強がりや、やせがまんを軽く見ない。本当に強くないと、人は案外強がったりできないものなのだから。

 そして、さらにすごいことに、ノバクは次のウィンブルドンで見事に優勝した。

 もちろん、勝負の世界は「切り替えが大事」だし、「敗戦の傷をいやすのは次の勝利」でもあるわけだが、それにしても、そんな簡単にできることでもないはずだ。

 それをまあ、かくも鮮やかにやってみせる。それどころか、USオープンも取り、マスターズ6勝をふくむ年間11勝、最終戦も勝って、勝率9割越え、本人も納得の「最高のシーズン」でしめくくったのだ。すごい精神力ではないか。

 この事実をもって、独眼鉄先輩に言いたい。「真の男は、ノバク・ジョコビッチである」と。

 テニスの強い男はかっこいい。優勝する男もかっこいい。

 だが、もっともかっこいいのは、きびしい敗北のあと、胸を張ってあらわれ、そして「気骨を見せ」「対戦相手に敬意を払える」そんな男だ。

 それが王者ノバク・ジョコビッチである。

 こんなシビれる男に、テニスの神様がもう意地悪などするはずがない。

 今年こそノバクはフレンチ・オープンを、それも「今までのもたつきはなんだったんだ?」と思わせるほどの圧倒的な強さで取り、見事「ジョーカースラム」を達成することだろう。

 そのことを私は、ほぼ間違いないと確信している。




 ☆おまけ ジョコビッチといえば、この試合。2012年全豪決勝のナダル戦(→こちら)。5時間53分
の死闘でした。





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